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トランプ氏、外交側近の「正体」[日経新聞]
編集委員 秋田浩之
2016/3/11 3:30
米共和党の大統領候補選びで、勢いづく「不動産王」、ドナルド・トランプ氏。日本に多額の防衛費を負わせると公言するなど、不安な発言が多い。そんな彼がようやく、外交・安全保障政策のアドバイザーを指名したという。
「ジェフを私のチームに迎えることができ、光栄だ。彼をとても尊敬している」
今月3日、トランプ氏はこう発表し、一人の上院議員(共和党)を国家安全保障担当チームの委員長に任命した。
■助言の元高官、トランプ氏と正反対の外交哲学
その人とは、南部アラバマ州選出のジェフ・セッションズ氏(69)。今のところ、トランプ氏支持を正式に表明している「ただ一人の上院議員である」(4日付、米CNN電子版)。
セッションズ氏はアラバマ州の検事、司法長官を経て、1996年に上院議員に初当選し、政界入りした。保守系が多い共和党内でも右派に属し、上院では軍事委員会の活動が長い。
トランプ氏と共鳴する政策のひとつが、不法移民への厳しい態度だ。不法移民合法化の動きにも反対している。さらに、米国の利益を何よりも重視し、海外の紛争介入に慎重な点でも、トランプ氏に通じる。
「米国が他国に介入しても、成功できる能力はかぎられている。この点を私たちは理解すべきだ。中東では現地の政権を転覆し、民主主義を植え付けようとするのではなく、利益を共有する国々と協力するのが望ましい」
セッションズ氏は国家安保チームの委員長就任に当たり、こんなコメントを発表した。アジア政策には触れていない。だが、南シナ海や東シナ海で危機が起きた場合の介入についても、慎重な意見を持っている可能性がある。
だとすれば、中国の軍拡にさらされる日本などアジア諸国にとっては、大きな心配の種だ。この点について、著名な米軍事戦略家であるエドワード・ルトワック氏に聞いてみよう。
「トランプ氏は問題発言が注目されているが、その思考は共和党保守派の本流である不介入主義に近い。彼が大統領になれば、中東などの紛争からは手を引く公算が大きい。だが、アジア太平洋は米国の国益にとって、とても重要だ。トランプ氏は、アジア太平洋への関与は続けるだろう」
つまり、トランプ氏が不介入主義者だとしても、米国経済にとって大切なアジア太平洋は例外というわけだ。
トランプ陣営は今後、セッションズ氏を中心に外交・安全保障チームを構築するつもりだ。本格的な人選はこれからだが、すでに非公式に外交・安保政策を助言している元高官もいるようだ。
そのひとりと噂されるのが、マイケル・フリン元国防情報局長官だ。同局は「DIA」の略称で知られる米スパイ機関。国防総省に属し、約1万7千人をかかえる巨大な組織。中央情報局(CIA)とならび、米国の安全保障を支える大黒柱である。フリン氏は2014年8月までトップに君臨し、世界中の情勢を熟知している。
ただ、ふに落ちないのは、フリン氏の外交哲学がトランプ氏とは正反対のように思えることだ。彼は中東への関与に及び腰なオバマ政権とそりが合わず、退任したといわれる。
米ニュースサイト「デイリー・ビースト」によると、15年1月下旬、ワシントン市内のシンポジウムで、フリン氏はこう言い放っている。
「率直に言って、米政権では多くの人たちが、機能マヒに陥っている。彼らは受け身の態勢を取ってさえいれば、敵を挑発せずにすむと思っている」
彼が酷評したのは、オバマ政権の中東政策。過激派組織「イスラム国」(IS)や国際テロ組織・アルカイダの脅威を直視せず、対応が後手に回っていることを批判したのだ。
■共和党系専門家グループ「当選阻止」訴え
フリン氏は陸軍の特殊部隊出身。イラクやアフガニスタンの修羅場も経験した。DIAの局長時代には、イスラム過激派を抑えるため、本格的な掃討作戦に出るようホワイトハウスに提言したが、聞き入れられなかったという。
だとすれば、中東介入に批判的なトランプ氏の思考とは、水と油のように映る。米有力シンクタンクの安保専門家にたずねると、こんな答えが返ってきた。
「トランプ氏は思い付きで意見を言っているだけで、まともな政策体系などない。言っていることがころころ変わり、随所に矛盾がある」
つまり、トランプ氏は政策体系が空っぽなので、だれが補佐官になっても気にしないというわけだ。別の共和党系の外交専門家はさらに手厳しい。
「まともな共和党系の外交・安保専門家で、トランプ氏のアドバイザーになろうと思う人は少ないだろう。そんなことをすれば、自分の評判を落とし、経歴に傷がつきかねないからだ」
実際、共和党系の外交・安保専門家グループは3月2日、トランプ氏の当選阻止を訴える公開書簡を発表した。書簡には60人が署名し、ゼーリック前世界銀行総裁(元国務副長官)や、チャートフ元国土安全保障長官らも含まれている。
書簡はトランプ氏の政策について「一貫性がない」と批判。彼が当選すれば、米国の安全は損なわれると警告した。米国が防衛義務を負う見返りを日本に求めていることに関しても「ゆすりだ」と断じた。
もし、このまま共和党系識者の離反が広がれば、仮にトランプ氏が大統領候補になったとしても、きちんとした外交・安保チームを立ち上げるのは難しいのではないか。トランプ旋風が放つ外交リスクは、さらに膨らみそうだ。
秋田浩之(あきた・ひろゆき)
1987年日本経済新聞社入社。政治部、北京、ワシントン支局などを経て編集局編集委員。著書に「暗流 米中日外交三国志」。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98208800Z00C16A3000000/?n_cid=DSTPCS001
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