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もはや機能しないロシアの赤の恐怖
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2016年1月22日 マスコミに載らない海外記事
Finian Cunningham
2016年1月19日
"Sputnik"
アメリカとイギリス政府は、クレムリンがヨーロッパの政党やマスコミに工作員を潜入させているという大げさな主張で、ロシアを悪魔化する更なるマスコミ・キャンペーンを開始した。卑劣なロシアの狙いは、欧州連合を破壊することだと我々は教えられたのだ。
ウクライナと"新ヒトラー、プーチン"に関するこの脅し作戦の別バージョンを我々は見てきた。だが、このあくびを誘うような行動は、かつて支配者たちが持っていた欧米の大衆に対する魔法が、もはや機能しないことを実証している。欧米プロパガンダという阿片は、効力を失ったのだ。
ロシアは気にすることなどない。ワシントンの無謀な政策への意気地のない追随ゆえに、EUは、その現在のストレスや緊張を、自分以外の誰にも責める相手はいないのだ。
冷戦終結とソ連解体から25年後、ワシントンとロンドンの忠実な助手は、自国民を、恐ろしい物語で支配することができていた"古き良き時代"に、時計を必死に逆転させようとしている。
欧米当局が、自国民を、恐怖心と、"ロシア人がやってくる"という不安から動員した"潜入している共産主義者"、"赤の脅威"、"悪の帝国"等々、人を脅すために使い古された悪い子をさらう鬼のお話を想起願いたい。
今振り返ると、そうした脅し戦術をしたのに、この欧米の洗脳作戦がまんまと逃げきれたのは驚くべきことだ。しかも当時は、それがかなり機能したのだ。それでアメリカと、NATO同盟諸国が、地球を何度も絶滅できる膨大な核兵器蓄積を構築することが可能になった。この洗脳が、全て、"悪のロシア"に対して、"自由世界"を守るという口実で、アメリカが、特に世界中の何十もの国々に軍事的に干渉し、政権を打倒し、残酷な独裁制を据えつけることを可能にしたのだ。
先週、我々は冷戦の洗脳公式の再現を目の当たりにすることになった。悪名高い心理戦御用達業者、イギリスのデイリー・テレグラフが、ロシアとウラジーミル・プーチン大統領を、 "政党への資金提供"と"モスクワが支援する不安定化"によって、ヨーロッパの統一を破壊させようとしている悪の妖怪として描く記事を掲載した。
イギリスの右派政治支配体制との深いつながりゆえに、嘲笑して"トリーグラフ"として知られている新聞は、匿名のイギリス政府幹部の発言を引用している。
"実際に新冷戦が起きている。EU全体で、様々な極めて重要な戦略問題について、ヨーロッパの統一という構造を破壊しようとしているロシアの取り組みの憂慮すべき証拠を、我々は目にしている。"
同じ記事で、アメリカ議会が、ジェームズ・クラッパー国家情報長官に、"過去十年のヨーロッパ政党に対するロシアの秘密資金提供に対する本格的調査を行うよう"命じたとも報じられていた。
ロシアが操作している推測されるヨーロッパの政党には、デイリー・テレグラフによれば、ジェレミー・コービン率いるイギリス労働党、マリーヌ・ルペン率いるフランスの国民戦線や、オランダ、ハンガリー、イタリア、オーストリアやギリシャの他の政党が含まれている。
ヨーロッパの政治を不安定化させるためのロシアの陰謀とされる話を裏付ける証拠は一片たりとも提示されていない。ロシア政府に向けられた"ニュース" として脚色された典型的な、かつての欧米の冷戦プロパガンダ非難は、当て付けや偏見や悪魔化に頼っていた。ロシアと、指導者のウラジーミル・プーチンが "悪い"のは、そう、我々が彼らは"悪い"というからだ。
ここで本当に起きているのは、膨大な人数の普通の市民が、非民主的な奇怪さに全く幻滅しているがゆえに、欧州連合の縫い目部分が、実際にピンと張りつめているのだ。このEUに対する不満は、右派、左派両方の政党に投票した人々にあてはまる。
容赦のない緊縮策という経済政策、失業と貧困の増加、公共サービスの極めて過酷な削減をする一方、銀行と大企業の利益と、裕福な少数の人々を益々豊かにし続け、EU5億人住民のうち非常に多くの部分を敵に回すこととなった。
EUの政治指導者連中は、保守派、リベラル、社会主義者、あるいは他の様々な名で呼ばれていようとも、より民主的な政策を生み出したり、大衆の需要に合わせたりする能力がないことをさらけ出している。多くのヨーロッパ人の目から見れば、既成政党は全て同じで、いずれも奴隷のように、既に大富豪な人々のための資本家の福祉という方策を守っている。
問題の大きな部分は、EUがワシントンからの自立を全く示せないことだ。アメリカが率いるNATO軍事同盟のくびきのもと、ヨーロッパ政府は、アメリカのアフガニスタン、イラク、リビアとシリアでの政権転覆のための破滅的で違法な戦争に無批判に参加した。こうした戦争は、ヨーロッパに、第二次世界大戦以来最悪の難民危機を負担させられるという跳ね返りになっている。
困難を悪化させているのは、ウクライナ危機を巡る、ロシアとヨーロッパの間の全く無用かつ不毛な対立だ。地政学的な狙いで、ロシアを孤立化させるためウクライナを不安定化させるワシントンとブリュッセルの政策のおかげで、ヨーロッパの農民、企業や、労働者が苦しんでいるのだ。ワシントンが、ヨーロッパ大陸への主要エネルギー供給者としてのロシアを追い出そうという自らの私利のために、ロシアを孤立化させたがっていることが明らかなので、この点、ヨーロッパ政府は特に嫌悪すべきだ。自らの墓穴を掘っているのだ。
こうした一連の問題を考えれば ヨーロッパ諸国民が、彼らのいわゆる政治指導部に不満を抱いていても不思議はない。ブリュッセルに対する大衆的な侮蔑は、最高レベルに達しているが、それも当然なのだ。
ワシントンの経済・外交政策に対する、ヨーロッパの痛ましいほど卑屈な服従が、抗議行動と、EUというプロジェクト全体に対する反対という形で表現されている。ポーランドの右翼、国粋主義与党の勃興は、時代の兆しの一つだ。
ところが、ヨーロッパ全体に広がった不満を潔く受け止めることはせず、ワシントンとイギリスなどの大西洋主義同盟諸国がしようとしているのは、ロシアを生贄にすることだ。
皮肉なのは、ワシントンとロンドンが、苦悩と、ヨーロッパにおける不一致の増大を、ロシアのせいにしようとしていることだ。ヨーロッパが、縫い目からほころびているようにみえる主な原因は、ワシントンとロンドンであるのに。
それを狙って、全ヨーロッパに対する自らの悪意ある破壊的な影響力から注意をそらす方法として、アメリカとイギリスが、ロシアを悪魔化するためのかつての冷戦の口汚い言葉を再開しているのだ。
何十年も前は、反ロシア悪口も大衆に効果があっただろう。特に欧米報道機関と連中のCIA、MI6が潜入した"ジャーナリスト" が、世論に対して効果的な独占を享受していた頃には。そういう時代は終わったのだ。欧米大衆はもはや、子どものように怖いお話の影響を受けはしない。より正確な構図を得るために彼らが利用できる多数の代替情報源が存在しているのだ。
しかも、このヨーロッパ問題の正確な構図はロシアの不正行為とされるものとはしっくりしない。そうではなく、不正行為はワシントンと、追従者のヨーロッパ諸国政府に十分帰せられるのだ。
ワシントンとロンドンによる"赤の恐怖"巻き戻しの企みは、簡単に確実に片づけられよう。しかし興味深いのは、それが、益々イライラして、怒った欧米の国民の注意をそらすための、この二国のプロパガンダ・アイデアがどれほど種切れかという深い印を漏らしていることだ。
人々は益々募る社会・経済問題に対して、何十年も前に有効期限が切れた馬鹿げた怖いお話ではなく、本当の解決策を求めている。欧米の大衆は、このようなたわごとで侮辱されればされるほど、彼らは自国の支配者連中を益々軽蔑するようになる。破綻して、無能な欧米資本家の権力は、行き詰まり状態だ。かかってこい。
この記事で表明されている見解は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもスプートニクの公式的な立場を反映するものではない。
記事原文のurl:http://sputniknews.com/columnists/20160119/1033390804/russia-media-tactic-west.html
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