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(回答先: 新興国の失業率悪化 昨年5.6%、資源安が影 ILO「社会不安広がる懸念」 投稿者 あっしら 日時 2016 年 1 月 21 日 01:45:12)
[FINANCIAL TIMES]世界経済が求める新エンジン
チーフ・エコノミクス・コメンテイター マーティン・ウルフ
「強気相場は心配の壁を登る」といわれる。確かに、目下、世の中には懸念すべき事案はたくさんある。だが、市場はもはや、壁を登るような勢いで上昇はしておらず、強気の相場が死んでしまったことを示唆しているかのようだ。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が算出している米国市場の総合指数は、事実上、2014年6月から足踏み状態が続いている。米エール大のロバート・シラー教授のCAPEレシオ(景気変動調整後の株価収益率=PER)によると、米国市場の指数が今より大幅に高かった時期は、1929年と、2000年に弾けた破滅的なバブルの最中だけだ。シラー氏の著名な価値評価は完璧ではないが、これは株式市場の指数が高いことを告げる警鐘でもあるのだ。
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さらに重要なことは、ポートフォリオ・リバランス(運用資産の組み替え)が行われていることだ。ここに来ての最も重大な変化は、新興国の経済や金融の展望に対する認識の変化だ。それによって資本が今、新興国から流出しているのだ。こうした資本流出がドル高をもたらしている。そう考えてみると、金融引き締めを決めた米連邦準備理事会(FRB)の決断は、重大な失態に映る。
世界銀行の最新の報告書は、新興国に対する失望感(および、新興国内での失望感)の度合いを浮き彫りにしたものだ。規模が大きい上位20の途上国の株式市場の半数が、15年につけた最高値からすでに20%以上、下落したというのだ。
コモディティーの輸出国(ブラジル、インドネシア、マレーシア、ロシア、南アフリカを含む)、そして、政治的リスクの増大にさらされている巨大な途上国(ブラジルとトルコを含む)の通貨は対ドルレートと貿易加重ベースの双方で、数年ぶりの安値に下落した。
15年の第3四半期に、世界の投資家たちは、新興国の株式・債券ファンドから約520億ドルもの資金を引き揚げた。これは記録に残っている限り、四半期ベースで過去最大の流出だ。
さらに、中東における地政学的な不安定さも新興国からの資本流出などの要因の一つとなっている。汚職スキャンダルは、経済の潮が引くときに明るみに出る傾向がある。だから、ブラジルのルセフ大統領らが一大スキャンダルの渦中にあるのは決して意外なことではない。一方、中国の習近平国家主席は腐敗を一掃しようとしている。だが、そうした腐敗の追及自体が(共産党に対する)信頼感を損なうことになる。
そして最も重要なことは、景気循環の点においても、また、構造的な意味においても、新興国の景気が悪化しているということだ。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のうち、経済回復を遂げているといえるのはインドだけだ。
中国は断トツに重要な新興国だ。市場の混乱は中国指導部の能力に対する信頼を低下させた。だが、この国の問題で極めて重要なのは、問題を手っ取り早く簡単に解決することなどできないということを理解することだ。中国経済は極端にバランスを欠いている。貯蓄率が信じ難いほど高く、投資率が無駄に高いうえに、多額の債務を抱えているからだ。
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この問題を解決する方法は、中国の資本流出と大幅な人民元安、そして多額の経常黒字を容認することかもしれない。だが、そのような「解決策」は中国を除く世界経済の安定を脅かす。中国政府は世界からのこうしたプレッシャーに抵抗を見せる。中国の外貨準備高は14年6月以降、6600億ドル減少しているのもその表れだ。
だが、もしこの傾向が続けば(そして、これは確実に続く)当局は流出規制を強化せざるを得ず、改革は損なわれる。そうでなければ、世界を不安定化する元安を容認しなければならない。
途上国で起きていることは、何十億人もの人々の生活に直接影響を及ぼしかねない。それは、グローバル経済にとっても重要な意味を持つ。新興国で発生した一連の信用バブルが、今、大きな音を立てて弾けている。これは金融ショックという後遺症を残す可能性があり、また対応を誤れば、不良債権が残されるだろう。
重要なのは、古いエンジンが不具合を起こして壊れかけているなかで、新しくて強力なエンジンを見つけることだ。それがどこで見つかるのか、今はさっぱり分からない。
だが、世界は楽観的に、自分たちが望んでいるものを米国が与えてくれると期待している。しかし、残念ながらそうはならない。たとえFRBが金融引き締めを行わないという決断を下していたとしても、米国は希望をかなえてはくれなかっただろう。これほどの信用バブルに陥っている世界経済で、この先、その修正を行うことは難しい。それは恐らく、完全な惨事にはならないだろうが、大して楽しいものでもないだろう。
(13日付)
[日経新聞1月17日朝刊P.11]
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