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原油20ドル台定着の現実味 石油製品貯蔵量、上限に接近 新興国需要に不透明感
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投稿者 あっしら 日時 2016 年 1 月 20 日 02:10:11: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[ポジション]原油20ドル台定着の現実味
石油製品貯蔵量、上限に接近 新興国需要に不透明感

 原油相場がさらに下がるとの観測が強まっている。投機資金流出に加え、欧米で石油製品の貯蔵量が上限に接近、原油に割安感が出ても買い付け意欲が盛り上がらない展開になっているためだ。

 サウジアラビアなどが増産を続け、イランの国際原油市場への復帰も近づいている。米シェールオイルの減産や新興国の需要増で、今年は原油の需給が引き締まる、との予想も崩れつつある。ニューヨーク相場が1バレル20ドル台で推移する可能性が現実味を帯びてきた。

 14日のニューヨーク市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)終値は1バレル31.2ドルと前日比0.72ドル上昇した。大手商社トレーダーは「下げすぎたことが、唯一の上げ材料」と皮肉交じりに語る。再び15日の時間外取引で一時29ドル台まで下落。一段安の公算が出ている。

 2015年の1年間に3割超の原油安をもたらした供給過剰は年平均で日量170万バレル。16年は国際エネルギー機関(IEA)などによると、年後半に需給は均衡に向かう見立てだ。シェール減産や新興国の需要増で約50万バレルの生産過剰に縮む。だがこのシナリオの前提がほころび始めた。

 15年12月、米国を出港し欧州へ向かう石油製品タンカーが途中で引き返した。軽油など石油製品の貯蔵量が上限に近づいたからだ。欧州では15年秋に貯蔵施設利用率が9割台に達し、米国と合わせた利用率は15年11月で8割超。「欧米の暖冬や貨物輸送の停滞で、貯蔵量がさらに積み上がっている恐れがある」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之氏)

 米ゴールドマン・サックスは「1998年、09年も石油製品の貯蔵量が上限に近づき、原油価格の下落を招いた」と指摘する。中国が備蓄用に買っているが、今の状況は当時と似ており、市場では原油価格を押し下げるとの見方も広がる。

 米国で1月上旬、シェール大手のパイオニア・ナチュラル・リソーシズが14億ドルの増資を決定。開発投資に当て、増産に意欲的だ。さらに掘削したが生産していない「フラックログ(待機井戸)」が4千ほどある。日量30万バレル生産できるともみられ「減産が想定以上に進まない可能性もある」(住友商事グローバルリサーチの舘美公子氏)。

 ジャカルタ症候群が市場でささやかれ始めた。1997年末にジャカルタで開かれた石油輸出国機構(OPEC)会合で、アジアの需要増を見込み増産を決めた。だがアジアは経済危機に見舞われ供給過剰から、原油は1バレル20ドル台から10ドル前後まで下げた。産油国が見通しを誤ったためだ。

 仏ソシエテ・ジェネラルのマーク・キーナン氏は「中国や新興国の景気に不透明感が漂い、原油相場にも下げの力が働く」と指摘する。昨年、減産できなかったOPECの姿は97年と重なる。実際に原油需要が落ち込み、シェールの減産停滞やイラン原油の輸出再開が重なる可能性はある。100万バレル超の供給過剰が続く公算もある。

 「中国が景気対策を打たなければ、20ドルを割る公算もある」(野村証券の大越龍文氏)。今週、英バークレイズなどが原油価格見通しを引き下げる動きが相次いだ。UBSウェルス・マネジメントのジョバンニ・スタウノーボ氏は「原油への投資は避けるべきだ」と警戒する。

(飛田雅則)

[日経新聞1月16日朝刊P.17]

 

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