サウジとの断交、原油市場への影響は一時的=イラン政府高官 [ドバイ 6日 ロイター] - イランの石油輸出国機構(OPEC)代表は6日、サウジアラビアとイランの外交関係の断絶が原油市場に与える影響は一時的になる、との見解を示した。イラン石油省が運営するシャナ通信によると、イランのOPEC代表Mehdi Asali氏は「政治的緊張が石油市場にもたらす影響は短期的なものだ。供給が確保されたとみられた時点で市場は落ち着く」との見方を示した。 過剰供給が「最大の脅威だ」と指摘し、イランに経済制裁が課せられた時に原油生産を増やした国が市場安定に向け減産に動くべきだ、との考えを示した。 http://jp.reuters.com/article/saudi-iran-oil-idJPKBN0UK15520160106
焦点:サウジ・イラン関係は悪化の一途たどる恐れ [リヤド 5日 ロイター] - サウジアラビアとイランが過去に国交を断絶したのは直近では1988年まで遡り、その後、1990年のサダム・フセインによるクウェート侵攻という形で中東地域のパワーバランスの変化をもたらした。
今回鮮明になったサウジとイランの対立劇が、当時よりも穏便な展開を経てやがて収まりがつくと考えるのは難しい。それどころか、両国の関係は今後悪化の一途をたどる恐れがある。 複数の外交筋によると、現在起きている危機の核心は、サウジがサルマン国王の即位以降、イランとその連携勢力に対して軍事力で立ち向かう姿勢を強めていることにある。国王はムハンマド・ビン・サルマン副皇太子を腹心として選び、舞台裏での根回しを駆使した外交を放棄しようとしている。 サウジは昨年、イエメンでイランと同盟する軍事勢力が政権を握るのを防ぐため武力行使に踏み切り、シリアでもイランと手を組むアサド大統領に反抗する諸勢力の支援を強化した。サウジがシーア派の有力指導者ニムル師の死刑を執行したのは、主に国内政治情勢が理由とはいえ、イランとのあからさまな対決方針も一因になっている、というのが政治アナリストの分析だ。 こうした軍事介入は、サウジにとってはイランによる中東各地域への影響力行使が「野放し」にされているという不満が何年も積み重なった結果といえる。イランが各地のシーア派勢力を支持し、ペルシャ湾岸諸国の反政府グループに武器を密輸した、ともサウジは批判している。 サウジのジュベイル外相は4日ロイターに「われわれはイランが地域の安定を損い、わが国や同盟国の国民に危害を加えるのを看過せず、対抗していく」と語り、強硬姿勢を崩さない構えを示した。 シリアやイエメンでの軍事介入は、イランが欧米などとの核合意よって中東で積極的行動を取るための資金力や政治力を高めることへの警戒感の裏返しでもある。 <相互不信> 1960─70年代までは、サウジとイランは決して心から許せる間柄ではなかったものの、米国がソ連の中東への影響を抑える戦略における「2本柱」として連携する関係にあり、宗派上の争いも表面化しなかった。 しかしその後サウジは潤沢な石油収入を背景に、厳格なイスラム信仰を主張してシーア派を異端とみなすスンニ派「サラフィー主義」の守護者に任じ始めた。逆にイランは1979年の革命を経て、「ヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者の統治)」という教義を採択し、同国の最高指導者がシーア派の頂点に君臨することになった。 こうした宗派上の路線の違いで相互不信が生まれ、地政学的に両雄相争う事態へとつながった。 またイランは、1980─88年の対イラク戦争の後、アラブ諸国内のシーア派勢力との結びつきを利用して新たな敵の侵攻に備えた拠点を築く「前進防衛」戦略を打ち出したが、サウジはこれを革命を扇動して地域の安定をかき乱す動きだと不安を抱くようになった。 そして1988年にテヘランのサウジ大使館が襲撃されると、イランとサウジは国交を断絶。サダム・フセインのクウェート侵攻への対応で一時的に敵対関係が棚上げされたが、2003年にフセイン政権が崩壊してイランがイラク国内で多数を占めるシーア派を利用して影響力を強めたため、双方がより公然と対立するようになった。 <対立がエスカレート> 足元では、両国の対立がエスカレートする余地がある。 カーネギー国際平和財団のシニアアソシエーツ、Karim Sadjadpour氏は「1979年以降、両国は中東各地域でずっとさまざまな代理戦争を闘ってきた。しかし直接対決は自制し、最終的に冷戦状態に落ち着かせることに合意している」としながらも、イランが今後、国交断絶したサウジやバーレーン国内のシーア派コミュニティに騒動を起こさせようとする可能性があるとの見方を示した。 サウジによるニムル師処刑後、同国やバーレーンのシーア派による抗議行動が再燃し、イラクではスンニ派の2カ所のモスクが爆破された。サウジ側はこれらをイランの使嗾(しそう)とみなすかもしれない。 一方サウジは同盟諸国にイランとの断交を促すとともに、イスラム協力機構(OIC)のような組織にサウジのテヘラン大使館襲撃事件で非難声明を出すよう圧力もかけている。場合によってはシリアの反政府勢力支援を強化することもあり得るだろう。 サウジ、イランそれぞれの政府内にいる強硬派でさえ、全面衝突は避けたいと考えている可能性が大きい。ただ、実際の出来事が関係者の戦略などあっさりと崩し去ってしまうことは今回の一連の動きで証明されている。 イランの革命防衛隊は、ニムル師が死刑を執行された後、近いうちにサウジ王家は「手厳しい復讐」を受けると警告した。 サウジの民間シンクタンク、ガルフ・リサーチ・センターの責任者、Abdulaziz al-Sager氏は「革命防衛隊はイラン政府の一部であり、彼らの脅しは深刻に受け止めるべきだ。なぜなら彼らはレバノンやシリア、イラク、イエメンの民兵組織を統括しており、対サウジの軍事行動に利用したとしても何ら驚かない」と話した。 (Angus McDowall記者) http://jp.reuters.com/article/saudi-iran-escalation-idJPKBN0UK0BU20160106?sp=true サウジ、イランとの対立拡大 航空便の運航と貿易停止へ [リヤド 4日 ロイター] - サウジアラビアは4日、イランとの対立を深め、航空便の運航と貿易を停止する方針を明らかにした。断絶した外交関係の回復にはイランが「正常な国家として行動」することが必要と強調した。 サウジのジュベイル外相はロイターとのインタビューで、同国によるイスラム教シーア派有力指導者ニムル師の処刑を受けた緊張の高まりはイランに責任があると指摘。 「われわれの措置はすべて(イランの動きを受けた)対応だ」と述べた。 イスラム教スンニ派のサウジ王室と国民の大半をシーア派が占めるイランの関係は、サウジが王室に批判的だったシーア派のニムル師を処刑して以来、急速に悪化。イランでサウジ大使館が襲撃されたことを受け、サウジは外交関係を断絶した。 ジュベイル外相は「イランとの間の航空便の運航も停止し、すべての通商関係を絶つ。イランへの渡航も禁止する」と語った。 イスラム教最大の聖地であるサウジのメッカやメディナへの大巡礼(ハッジ)や小巡礼(ウムラ)を行う巡礼者の入国は引き続き歓迎するとした。 同相は、外交関係の回復には「(イランが)国際的な規範や条約、協定を順守し、近隣諸国の領土を尊重する正常な国家として行動すること」が必要と強調した。 http://jp.reuters.com/article/jubeir-interview-idJPKBN0UI24B20160104?rpc=188 欧州の多重危機は偶然の産物ではない ひどい妥協と順境向きの構造に傾いてきたEU、さらなる分裂は好機 2016.1.5(火) Financial Times (2016年1月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
機能不全に陥っている欧州連合(EU)の展望は・・・ (c) Can Stock Photo ?2010年代の後半に入った今、欧州連合(EU)が3本の断層線に沿って分裂しつつある。1本目は、裕福な北と債務を抱えた南を分けている。2本目は欧州統合に懐疑的な周縁国と欧州統合を支持する中心国を隔てている。3本目の断層線は社会的にリベラルな西と独裁色を強める東の間に走っている。これは分裂と崩壊の現場だ。 ?2016年について具体的な予想をするのは難しい。もちろん、既知のリスクはたくさんある。 ?EU加盟に関する英国の国民投票。着実に流れ込む難民。拡大する経済的不均衡。ギリシャのメルトダウン。ほぼ支払い不能状態のイタリアの銀行システムと、財政政策を巡り、ドイツとユーロ圏周縁諸国の間で生じようとしている緊張。 ?ジハード(聖戦)主義者のテロ。スペインとポルトガルの政治的不確実性。解決とはほど遠いウクライナ危機。人々の意識からは薄れたが、欧州大陸にまだ残っている産業力の支柱の1つを損なう恐れのあるフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正スキャンダル――。 EUの失敗に見て取れる1つのパターン ?これだけ多くの危機が同時に進行しているため、大きな構図を見た方が有益だと筆者は考える。具体的にどれか1つの危機ではなく、これほど多くの危機と同時に対峙することから生じるシステミックリスクに目を向けるのだ。 ?一歩離れてみると、危機の多重性はそれほど偶発的なものに見えなくなる。共通の経済機構、財政政策、法制度がない通貨同盟を創設したら、いずれ壁にぶつかるのは確実だ。同じように、共同の沿岸警備隊と国境警備隊がなければ、パスポートなしで移動できる通行地域は永続し得ない。 ?ここに1つのパターンがある。EUには、ひどい妥協と、順境に向いた構造に傾く生得的な傾向があるのだ。この問題が従来よりずっと多くの人にとって明白になったことを除くと、昨年、根本的なことは何一つ変わっていない。 ?それでも断裂が生じたときには、人はやはり衝撃を受けるかもしれない。だが、断裂は好機ももたらす。筆者は、EUが犯し得る最大の過ちは、旧来のやり方をそのまま続けることだと思っている。大きな変化は、政治家と外交官よりも、英国で近く行われるような国民投票を通じて有権者から直接強いられる可能性の方が高い。 ?EUのプロセスには、唐突な方向転換を避ける傾向がある。各国の首都からの圧力が強すぎるようになったときに初めて、物事が崩れるのだ。 ?これが制御されていない分裂の引き金を引く危険はある。だが、欧州の政治指導者たちが建設的な精神で前進するだけの分別を持っている可能性も十分ある。 ?英国が国民投票でEU離脱を決めた場合、長期的にはEUが大変貌を遂げるきっかけになり、統合の深化を図る内側の加盟国グループと、英国その他の国々が完璧に満足している外側のグループに分かれるかもしれない。 ユーロ圏の断裂は大再編のチャンス ?筆者がまだいつか起きると見ているユーロ圏の断裂は、大きな再編の機会ももたらす。ユーロのことを、不可逆の通貨同盟ではなく、共通通貨を持った固定為替相場制として考えれば、思考のもやは消えるはずだ。 ?そのような制度は、概して収斂した経済を持つ少数の国の間でしか機能しない。オーストリアとドイツは1970年代以降、準固定相場制を維持してきた。あと50年、これを続けない理由はあるだろうか。 85歳女性、1億円超の紙幣切り刻んで死去 遺族への嫌がらせ? ユーロ圏を不可逆の通貨同盟として見るのをやめた方が思考が明確になる〔AFPBB News〕 ?フランスとドイツは1980年代以降、本質的に固定された為替相場制を保ってきた。両国は今なぜ、1つの為替レートの別々の側に収まる必要があるのか。 ?ドイツとフランスの間で経済・政治統合をさらに進めるべきだとする論拠は、依然、根本的に強い。 ?実際、一部の国が単一通貨に参加し、他の国々が決して参加する気のないEUの政治・経済統合を進めるべきだという主張よりもはるかに強固だ。 ?単一市場には単一通貨が必要だという議論には、説得力のあるロジックがあったためしがない。 ?しかし、逆のロジックは通用する。単一通貨を持つ国々は自国通貨を維持している国々よりも、ずっと深い市場統合を必要とするのだ。 ?我々が今そうすべきように、EUのことを複数通貨を含む同盟として認めたら、EUが単一市場ではなく、別々の市場の集まりであることを受け入れなければならない。 歴史的なミスだったEU拡大 ?経済的な分断に加え、欧州は政治的に東西に割れている。ハンガリーとポーランドはともに、欧州統合に懐疑的な右派政権を選出した。両国とも、司法の独立性と報道の自由を抑制した。筆者はしばらく前から、EU拡大は謳われていたような大きな歴史的チャンスではなく、歴史的なミスだと考えている。拡大は欧州の分裂を増大させ、EUを機能不全に陥らせた。 ?だから筆者は分断と断裂を、避けるべき脅威ではなく、つかむべきチャンスと見なしている。2016年に関する筆者の予想は、さらなる断裂が生じるということ。筆者の希望は、それが賢明に成し遂げられるということだ。 By Wolfgang Munchauhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45694
|