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2016米大統領選 細る中間層
(下)既成政治への不満顕著 「社会主義者」受け皿に
「米国民は既成の政治・経済体制に飽き飽きしている。立ち上がって政治的革命を起こそう」。昨年12月15日、米ニューハンプシャー州の海沿いの町、ハンプトン。民主党の大統領候補指名を目指すバーニー・サンダース上院議員(74)の呼び掛けに、集まった約千人の聴衆は総立ちになった。
重要州で健闘
サンダース氏は「中間層が消えゆくなかで、一握りの富裕層は富を増やしている」と主張。富裕層に増税し、全国民への公的医療保険の提供や公立大学の無償化を実現するという格差是正の公約をアピールした。
共和党の指名争いでは、不法移民の排除などを掲げる不動産王のドナルド・トランプ氏(69)が保守派ブルーカラー層の不満を追い風に首位を走る。一方の民主党側でリベラル派を中心に格差への不満の受け皿となっているのが「民主社会主義者」を自称するサンダース氏だ。
サンダース氏は、民主党予備選の全米世論調査では本命候補であるヒラリー・クリントン前国務長官(68)に20〜30ポイントの差をつけられている。だが初戦のアイオワ州に続いて予備選を開く重要州ニューハンプシャー州ではクリントン氏をリードする。
CNNが昨年12月上旬に実施した同州の世論調査では、サンダース氏の支持率が50%となり、クリントン氏を10ポイント上回った。特にサンダース氏に格差解消への手腕を期待する有権者は61%に上り、クリントン氏の33%に大きく差をつけた。同州のサンダース氏支持者の一人、ダナさん(62)は「ヒラリーは大口献金者の大企業の影響を受けていてわたしたちの真の味方ではない」と語った。
サンダース氏はフェイスブックなどのソーシャルメディア上で若者のカルト的な人気も集めている。CNNの世論調査では35歳未満の支持率が74%に達した。学生のメーガンさん(18)は「同性婚や公平な税制など、サンダース氏の価値観は私たちの世代に近い」と言う。
サンダース氏はニューハンプシャー州で勝利すれば、他州でも番狂わせが可能と訴える。ただ、有権者の間には「サンダース氏の政策に共感はするが、大統領には極端すぎる」(同州の男性)との懸念も強い。また地元・バーモント州に隣接し、白人が人口の94%を占めるニューハンプシャーでは健闘しているが、他州では黒人やヒスパニック(中南米系)の強い支持を受けるクリントン氏の優位は揺るいでいない。
企業に縛られず
トランプ氏とサンダース氏は、個人や企業、団体から無制限に政治献金を集金できる政治団体「スーパーPAC」の支援を拒否しているという共通点がある。トランプ氏は自身の資産などで選挙資金を賄い、サンダース氏は草の根の小口献金に頼る。両氏の支持者の多くが、企業献金に縛られず独立していることを支持の理由の一つに挙げる。
サンダース氏はトランプ氏について「国民の失望を利用する扇動政治家だ」と警告している。政治的には両極にみえる2候補の台頭が、格差と既成政治への有権者の不満を反映している。
(ワシントン=芦塚智子)
[日経新聞1月3日朝刊P.5]
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[地球回覧]米大統領選と男女の格差
大統領選の年を迎えた米首都ワシントンには熱気が漂う。1カ月ほど前、米議会に近いホテルで民主党の本命候補ヒラリー・クリントン前国務長官(68)が、同党の女性議員13人を従えて印象的な演説をぶった。
「家計収入を高める最も確実な道は何か。それは女性の給与に関する不平等を解消することです」。いつもの濃紺のドレスに身を包んだクリントン氏が声を張り上げた瞬間、会場に詰めかけた女性支持者が「Women For Hillary(ヒラリーを推す女たち)」と青地に書かれたプラカードを掲げ、大きな歓声でこたえてみせた。
米史上初の女性大統領という悲願を目指すクリントン氏。環太平洋経済連携協定(TPP)への態度などを巡り「変節」と批判されることもあるが、「男女同権」は立候補の表明時から一貫して掲げる政策目標の柱だ。米国では所得の伸びが富裕層に偏る格差問題も深刻だが、支持者からは集会のたびに男女の所得格差の解消を訴えられている。
世界経済フォーラムが2015年に公表した調査によると、米国は「経済活動の参加・機会」で145カ国中6位に入り、女性の登用が進む社会だとされる。ゼネラル・モーターズなど最高経営責任者(CEO)が女性の企業も珍しくない。被雇用者の半数は女性だ。
にもかかわらず経済協力開発機構(OECD)が14年に発表した男女の給与格差で、米国の女性は男性より2割少ない。男女格差は34カ国のうち23位と下位に入る。米国では女性の社会進出を妨げる要因として、この格差が取り上げられている。
ワシントンから1600キロメートル南下したニューオーリンズ。ミシシッピ川の河口でフランス植民地時代の雰囲気を残すが、同市を中心とするルイジアナ州は男女の給与格差が全米最大だ。同州のフルタイム雇用の女性は給与が男性の65%でしかない。なぜなのか。
そのカラクリは就業構造が示唆する。ルイジアナ州の主要産業は鉱業と観光業だ。労働省の雇用統計によると、15年11月の全米の平均時給は、鉱業(林業含む)が31.75ドルで業種別の最高水準だが、観光・接客業は14.47ドルにすぎない。女性の就業率は観光業が52%だが鉱業(同)は14%にとどまる。高賃金の職種は男性の比率が高い傾向があり、それが明確に表れているのがルイジアナ州なのだ。
「それだけではない。同一職種でも男女の賃金格差は根強い」。クリントン氏らは主張する。技術者や教師など専門職の週給は男性が1345ドル、女性は970ドル(15年7〜9月期の雇用統計)。国際通貨基金(IMF)で男女の給与格差の国際調査を担当したカルパナ・コッハー戦略政策審査局副局長は「労働時間の差などから、男性が女性よりも昇進機会を得るケースが多いためだ」と主因を説明する。
「なぜ私は男性より報酬が少ないのか」。ハリウッド女優のジェニファー・ローレンスさんが15年秋、こんなエッセーを公表して論争に火をつけた。アカデミー賞の候補になった映画「アメリカン・ハッスル」の出演料が、男性共演者に比べ格安だったと配給会社のメール流出で発覚。ローレンスさんは「扱いにくいと思われたくなくて、女性は報酬の増額交渉をあきらめてしまう」と吐露した。出産や育児が心理的な重荷になり報酬の交渉を妨げる場合がある。そんなことから男女格差が広がるとローレンスさんは訴える。
11月の選挙で女性大統領が誕生すれば、歴史に残る出来事になるだろう。日本よりも「男女同権」で先を行く米国だが、経済活動の隅々に残る格差の解消は容易でない。
(ワシントン=河浪武史)
[日経新聞1月3日朝刊P.11]
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