3. 2015年10月23日 18:39:15
: OO6Zlan35k
イギリスよ、中国に媚を売るのはやめてくれ! 〜ヒトラーをつけあがらせた「大失敗」を繰り返してはいけない2015年10月23日(金) 長谷川 幸洋 ロンドンでキャメロン首相と歓談した習近平主席 〔PHOTO〕gettyimages 「イギリスが中国を大歓待」のワケ 英国が中国の習近平国家主席を異例の厚遇で迎えた。一方、米国は南シナ海における中国の軍事基地建設を許さず、埋め立てた人工島周辺12カイリ内に米軍を展開する構えだ。中国をめぐって緊迫する世界情勢をどう読むか。
まず英国からだ。英国は習主席夫妻の宿泊先にバッキンガム宮殿を提供し、エリザベス女王主催の歓迎式典や晩餐会を開いて手厚くもてなした。宮殿提供の一事をもってして、大歓待ぶりが分かる。 肝心の経済協力では、英国で人民元建ての国債発行を認めたり、新設する原発の事業に中国が出資することで合意した。英国への観光ビザ費用も値下げする。 私は4月30日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/42747)で、中国が設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国はじめ欧州勢が参加したのは「インフラ投資ビジネスへの参加と人民元国際化の取引だ」と指摘したが、その通りの展開になった。 欧州勢はアジアでのインフラ投資に参画することで利益を得る。一方、中国はロンドンやフランクフルトの金融市場で人民元建て取引が盛んになれば、人民元の国際化が進んで米国のドルに対抗できる。 欧州と中国は地理的に遠いから、欧州にとって中国が自分たちを脅かす安全保障上の脅威になる可能性はない。だからこそ、中国とはビジネスのウインウイン関係を築けばいい。一言で言えば、英国は今回の習訪英でビジネスパートナーとしての中国の位置付けをはっきりさせた。 もちろん国内に慎重論もある。中国の人権問題を懸念しているチャールズ皇太子は国王主催の晩餐会を欠席した。これは、まったく異例だ。「中国の人権侵害や安保上の懸念を無視して歓待一辺倒でいいのか」という一部の世論に配慮した形である。 中国が埋め立てを進めるファイアリー・クロス礁の衛星写真 〔PHOTO〕gettyimages 英国は「ミュンヘンの失敗」を繰り返すのか 次に米国だ。米国は中国の南シナ海軍事基地化を許さず、フィリピンなど周辺国に「近く人工島12カイリ内に米軍を侵入させる」と通告した。
これは英国のフィナンシャル・タイムズ(FT)が10月8日付で報じて、世界にあきらかになった(http://www.ft.com/intl/cms/s/0/868ab0d2-6d6c-11e5-aca9-d87542bf8673.html#axzz3pFiwzAWH)。 FT記事は「米艦船の侵入作戦は今後2週間以内に始まる」と伝えていたから、その通りなら10月22日が期限だった。コラム執筆時点(22日午後)で米軍侵入は報じられていないが、習主席の訪英が23日までなので、米国は英国に配慮したのかもしれない。 国を挙げて主席を歓待している真っ最中に米国が中国と対決すれば、同盟国の英国は面子丸つぶれになってしまう。 とはいえ、米軍の侵入は秒読みと見て間違いないだろう。記事が伝えたように米当局者が英国のFTに侵入方針を確認したのも、英国に対する警告の一環とみて間違いない。 さて、これらの展開を目の当たりにして、私は歴史の先例を思い出す。 1つ目は1938年の英国の宥和政策だ。当時、英国のチェンバレン首相はドイツのヒトラーがチェコスロバキア・ズデーデン地方の割譲を要求したのに対して、独仏英伊の4ヵ国が開いたミュンヘン会議でヒトラーの要求に屈し、割譲を認めてしまった。 英国の弱腰をみたヒトラーは調子づいて翌39年9月1日、ポーランドに侵攻する。2日後、英仏はついに戦争やむなしとみてドイツに宣戦布告した。第二次大戦の幕開けである。 いまではドイツの侵攻と世界大戦の悲劇を招いた一因は、チェンバレンの宥和政策にあったという見方が定着している。国際関係論の世界で「ミュンヘン」といえば、宥和政策の大失敗を意味する代名詞になっているほどだ。 そして今回だ。英国はまたも「ミュンヘン」を繰り返すのだろうか。 イベントに招待されウィリアム王子の歓迎を受ける習主席 〔PHOTO〕gettyimages ロシアもつけあがらせることにもなる 自国の利益追求のために東アジアで繰り返される中国の無法を見過ごしてしまえば、中国はますます図に乗っていく公算が高い。いくら遠く離れているといっても、無法は伝染する。
それはロシアの行動が証明している。プーチン大統領がウクライナで傍若無人にふるまっているのも、中国が南シナ海で無法行為を続けているのに世界は手出しできないではないか、と見切っているからだ。 そんな中国に英国が媚を売れば、ロシアはますます大胆になるだろう。中国への宥和政策はめぐりめぐって、英国を含む欧州にロシアの脅威となってふりかかってくるはずだ。 英国では欧州連合(EU)脱退論が勢いを増している。英国は大陸欧州と手を切って、マイナス分を中国の関係強化で補おうとしているのかもしれない。 だが、中国への異常接近は大陸欧州だけでなく米国との関係も緊張させる。英国の選択が吉と出るか凶と出るか。「ミュンヘン」の二の舞いにならない保証はない。英国が視野狭窄に陥っていなければいいが、と懸念する。 もう1つの歴史の先例は、1950年のアチソン演説である。米国のディーン・アチソン国務長官は同年1月、演説で「日本と沖縄、フィリピン、アリューシャン列島を結ぶ線が米国の防衛線」と表明した。 「アチソン・ライン」と呼ばれる防衛線の中に朝鮮半島が含まれていないことが決定的だった。この演説を聞いた北朝鮮の金日成国家主席は「そうか、米国は朝鮮半島で戦争が始まっても軍事介入しないのだ」と受け止めて、5ヵ月後の6月に38度線を超えて韓国に侵攻した。朝鮮戦争の始まりである。 この史実は朝鮮半島に「米国は手出ししない」と事実上、宣言したことが、かえって戦争を招き寄せた失敗の教訓として、これまた国際関係論の常識になっている。 ちなみにいえば、安倍晋三政権が安全保障法制の見直しで日本が介入する可能性がある具体的地域の明示を避けたのも、同じ理由からだ。日本が介入する地域を明示してしまえば、除外された地域はかえって不安定になりかねない。 安全保障の世界では「軍事的に対抗するかもしれないし、対抗しないかもしれない」と態度をあえてあいまいにしておくのがイロハのイである。それが抑止効果にもつながるからだ。 ついに決断したオバマ大統領 今回、もしも米国が人工島12カイリ内に侵入しないままでいれば、事実上、そこは中国の領海と容認してしまうのと同じことになる。領海の主張が既成事実化されてしまうのだ。 アチソンが「朝鮮半島は米国の利益に関係ない」と事実上、宣言したことが北朝鮮の侵攻を許したように、いま米国が侵入をためらっていれば、中国に「南シナ海は米国の利益に関係ない」という誤ったメッセージを与えてしまう。ひいては東アジアの平和と安定を損ねてしまう。 米国は歴史の教訓を学んでいる。オバマ大統領は侵入を求める軍司令官たちの進言にもかかわらず、ずっとためらっていた。だが、先の米中首脳会談で習主席がまったく非妥協的だったために、ついに決断したようだ。 米軍の侵入は時間の問題だ。ここから米中関係は新しい段階に突入する。それは間違いなく日本の安全保障にも大きな影響を与えるだろう。 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45982
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