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原油安、揺れる世界
(上)中国減速、消耗戦に拍車
「安い原油」が世界の新たな常識となりつつある。シェール革命を起点とする需給のゆるみに、新興国経済の減速が追い打ちをかけた結果だ。世界の経済・政治秩序も調整を迫られる。原油安は光明か、波乱の種か。
シェールは増産
米テキサス州南西部のシェール鉱区イーグルフォード。「この井戸は1バレル25ドルでも利益が出る」。地元の開発会社タイダルペトロリアムのテッド・スミス氏は胸を張る。
米シェールオイルの採算ラインは1バレル60〜80ドルと10ドル以下の中東産に大きく劣るとされた。だが日進月歩の技術革新で効率改善が進む。原油価格が1バレル100ドルから1年で40ドル台に下がっても油井の多くは生き残り、新規投資が減るなか生産量は逆に5%増えた。
シェール会社コンチネンタル・リソーシズのヘラルド・ハム最高経営責任者(CEO)は「原油急落は効率化を進める好機だ」と強気だ。
原油新秩序――。米ゴールドマン・サックスはシェールが起こす地殻変動をそう呼ぶ。需給を重んじた既存勢力を押しのけ増産に走るシェール業者は今や米原油生産の6割を担う。英BPによると米原油生産は日量1100万バレル台と過去5年で6割増加。サウジアラビアやロシアを超え昨年39年ぶりに世界一となった。「サウジアメリカ」の造語まで生まれた。
産油国の雄を自負するサウジの危機感は強い。「価格が20ドルに下落しても関係ない」。ヌアイミ石油鉱物資源相は昨年末シェール業者との消耗戦を宣言し、他の産油国も続いた。だがシェールはしぶとく生産を続け原油の余剰は拡大。世界では大型タンカー30隻ほどが備蓄に使われ、備蓄タンクも異例の特需に沸く。
負の連鎖に懸念
折しも原油需要にはブレーキがかかる。
「ついに来たか」。上海株の急落を受けた7月中旬、中国の自動車部品業界は動揺した。韓国・現代自動車などが生産計画の大幅縮小を決めたのだ。世界最大を誇る中国の新車販売は8月まで5カ月連続で前年割れ。自動車販売店の経営者による「夜逃げ」も相次ぐ。
中国東部、山東省莱州市。国有石油大手の中国海洋石油総公司の巨大プラントは静まりかえる。石油化学製品の需要減で操業を停止したのだ。
米国を上回る“爆食”で原油相場を支えてきた中国。今年の原油需要の伸びは2%台にとどまると米エネルギー情報局はみており、一段の鈍化を予想する声も多い。
ゴールドマンは新興国経済がさらに減速すれば原油価格は1バレル20ドル台になると予想。「長期の原油安を覚悟すべきだ」と商品担当のジェフリー・カリー氏は話す。
先進国の比率が圧倒的だった時代、原油安は世界経済の追い風だった。資源国も多い新興国が存在感を増した今、構図は複雑だ。米建設機械最大手キャタピラーは世界で1万人の従業員を削り、日立建機は14年ぶりに早期退職者を募る。油田掘削に使う鋼管の輸出価格も1年で2割下がった。資源国の経済悪化は先進国にも跳ね返る。
むろん原油安は永続はしない。米欧の石油大手は15年の投資を前期比で16%、300億ドル(4兆円近く)減らす。原油安が「開発投資の減少→生産減→価格上昇」へとつながる循環は、過去に何度も繰り返された。
だが目先、世界が気をもむのは原油・資源安が経済の減速と共鳴し合う負の連鎖だ。新興国の成長期待があおった原油枯渇への不安は遠のいた。市場の潮目は変わり、原油「余剰」時代の到来が強く意識されている。
[日経新聞10月2日朝刊P.1]
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