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習氏とプーチン氏―便宜上の同志 ANDREW BROWNE
原文（英語）
2015 年 5 月 13 日 12:47 JST
【上海】ロシアのプーチン大統領の人気の高さを示すための宣伝用動画の中で、ある中年の中国人女性は照れながら、自分の気持ちを打ち明けた。
彼女は「プーチンさんって、大きくてハンサムよね」と叫んだのだ。
また、濃い色の縁の眼鏡をかけた若い男性は「すごい筋肉だ」と言ってニコッと笑った。すると、同じくプーチン氏に夢中になっている様子の20代の女性から究極のほめ言葉が出てきた。「習大大（Big Daddy Xi＝習近平国家主席に対する親しみを込めた敬称）と同じくらいハンサムだわ」
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週末にモスクワで行われた第2次世界大戦（欧州戦）の戦勝記念日を祝うパレードに先立ち中国の国営メディアは、習氏と並んでプーチン氏を高く持ち上げた。
だまされないで欲しい。ある意味で、習、プーチンの両氏は似た考え方を持ち、強い意思を持ったナショナリストとして米国に立ち向かっているものの、習氏は上級パートナーのように振る舞っている。習氏の率いる中国経済は力強いが、ロシア経済は低迷している。中国は世界的な存在だが、ロシアは地域的な存在にとどまる。政治アナリストたちは、このような中国の優越的な態度が、中ロの共同戦線よりも、不安定な関係を生み出す公算がはるかに大きいと指摘する。
また、彼らが公の場で心地よい同志関係を見せつけているとしても、厳格な独裁主義者であるこの2人は、米国が主導する欧州と東アジアの秩序に対する別々の挑戦（異議申し立て）を代表している。
プーチン露大統領（右）と習近平・中国国家主席（9日、モスクワ） European Pressphoto Agency
プーチン氏は弱さから行動している。同氏は、ロシアの主要な輸出品であるエネルギーの国際価格が低迷するなか、生活水準を改善することができないため、偉大な国の復活という夢をロシア国民に対して描き始めている。2014年のクリミア併合とウクライナ東部への介入（ロシアはこれを否定している）により、ロシア国内でのプーチン氏の支持率は急上昇した。だが、歳入減に加え、西側諸国による制裁が大きな打撃になっている。
経済を浮揚させるため、プーチン氏は中国に頼らざるを得ない状況になった。同志意識と同じく、必要性に迫られて、ロシアは戦闘機「Su-35」を含む高度な軍事兵器の中国への販売を検討している。かつて執拗（しつよう）に抵抗していた兵器だ。ロシアはまた、戦略的な油田の権益を中国に格安で譲り渡している。
プーチン氏は昨年5月、4000億ドル（約48兆円）の契約に署名した。これは融資を受ける代わりに低価格で天然ガスを供給する契約だった。双方は詳細をめぐり、今も交渉を続けている。
ロシア経済高等学院のミハイル・カルポフ准教授は、ロシアと中国が反西側枢軸を形成しつつあるとの見方に懐疑的な人物の1人だ。それどころか、「経済協力の行き詰まりによって」中ロの相互不信が高まる公算が大きい、と同氏は論文で書いている。
中国はプーチン氏の不安感を理解している。それゆえ、中国はプーチン氏の「メンツを保つ」ことに出来るかぎり腐心しているのだ。
ロシアの戦勝70年軍事パレード
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モスクワの赤の広場で行われたナチスドイツ戦勝70周年軍事パレードで、習氏はプーチン氏の横に立った。大半の西側指導者はこのパレードへの出席をボイコットした。黒海沿岸のノボロシースク港で行われた記念式典には、中国の儀仗（ぎじょう）兵が行進するなか、中国の軍艦3隻が参加した。習氏は戦時中、ロシアと中国がいかに「喜びと悲しみを共有したか」に思いをはせた。
現在では、中ロ両国は共通するものがずっと少ない。自らの旧帝国の影を引きずっているロシアは、政治的暴力と経済的苦境に陥っており、中国の将来をめぐる習氏の最大の懸念を代弁している。習氏は、共産党が権力を放棄した場合に状況がどんなに悪くなるかについてロシアを教訓としている。モスクワでは共産党のために立ち上がって戦う「度胸のある」者が誰もいなかった、と習氏は軽蔑的に述べたことがある。習氏は国家主席として中国共産党をそのような運命から救うことに献身してきた。
習氏は、力の強さから行動している。それはアジア太平洋地域における米国の主導権に対するもっと計算されて慎重な挑戦（異議申し立て）に反映されている。
習氏は忍耐強くなれる。同氏は国内的な支持取り付けのために性急な軍事征服を必要としない。ただし、経済がつまずけば、同氏のナショナリズムが先鋭化する可能性はある。
むしろ、習氏が鋭敏に計算しているのは、中国の拡大する経済がやがて戦わずして近隣諸国を中国の軌道に引き込むことだ。習氏の戦略は、誘導と威嚇の周到な混合である。
台湾が格好の例だ。それは中国のウクライナだ。つまり、首都が熱心に求めている戦略的に重要な周辺地域の領土だ。ロシアとの大きな違いは、中国が台湾を決して独立国として認めていないことだ。中国は長年、台湾を離脱した省だとみなしてきた。それでもなお、台湾は独自の道を進んだ。それは、名目はともかく実質上の主権国家だ。中国がこの膠着状態に終止符を打つため軍事的な解決を選択したら、それは潜在的に米国との戦争につながるだろう。
だが、現時点で、習氏の領土的な振る舞いは漸進的だ。それは、米国とその同盟諸国との間でプーチン氏が引き起こしたようなダメージを伴う対決状況をまさに回避しようとするためだ。
現実はといえば、中国が米国市場と技術なしでその躍進を継続するのは不可能だろうということだ。習氏は、ロシアが欧州から離反しているようなやり方で、米国に背を向けることはできない。
習氏は、プーチン氏が役立つとみている。それは、欧州でのプーチン氏の挑発行動が、米国をアジア太平洋から目をそらせる効果があるという意味で役立つのだ。
そして、習氏が安いエネルギーとロシアでの中国インフラ建設業者向けの契約を歓迎しているのは言うまでもない。しかし、中ロ両国の関係は厄介だ。それは昨年北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議（APEC）首脳会議の場で、ささいだが印象的な形で目撃された。野外イベントで、プーチン氏が習氏の彭麗媛夫人の両肩にショールを掛けた時だ。プーチン氏は 女性に対する気遣いの意味でそれを行ったし、中国のファーストレディも微笑んだ。しかし、その後、彼女は出来るかぎり素早くそれを脱いだのだった。
中国の一般市民はプーチン氏の男らしさを称賛するかもしれない。だが、習氏は引き続きガードを固めるだろう。彼には失うものが多過ぎるからだ。
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