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ギリシャ情勢の進展を妨げる神話
当事者が間違った信念に固執すれば、悪い結末を迎える
2015.4.23(木) Financial Times
(2015年4月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アテネとヒルトンホテル、富裕層に人気
ギリシャ危機に関する「神話」が解決を妨げている(写真はアテネ)〔AFPBB News〕
ギリシャの叙事詩が続いている。自分は神話にしがみついているのだということに当事者が気づかない限り、良い終わり方をすることはないだろう。以下に神話を6つ挙げる。いずれも、問題解決を妨げる知的、感情的な障害をもたらしているものだ。
■ギリシャの離脱はユーロ圏のためになる
「この小うるさい司祭をわしから遠ざけてくれる者はおらぬか」。これはイングランド王のヘンリー2世がトマス・ベケット大司教について口にしたとされている問いだ。
ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相はギリシャの交渉相手に対し、全く同じ思いを抱いているに違いない。
しかし、このイングランド王の願いはかなえられたものの、災いをもたらすこととなった。もしギリシャがユーロ圏を離脱すれば、同様な展開になる公算が大きい。
確かに、離脱がもたらす悲惨な影響にギリシャが苦しむことになれば、欧州各地のポピュリストによる政治運動はその分効果的でなくなるだろう。だが、ユーロ圏への参加は取り消しできないものではなくなってしまう。
そうなれば今後、危機が起きるたびに、市場を不安定にする憶測が生じることになりかねない。
■ギリシャの離脱はギリシャ自身のためになる
ギリシャが弱い新ドラクマ通貨を導入すれば、痛みを感じることなく繁栄への道をたどることができると考えている人が多い。だがそれが正しいのは、国際的な競争力を持つ財・サービスの生産を容易に増やせる場合に限られる。ギリシャには、そういう力はない。
そして、離脱直後には為替管理、デフォルト(債務不履行)、外国への信用供与の停止、そして政治の混乱の拡大などが引き起こされる公算が大きい。安定した通貨には一定の価値がある。うまく運営されていない国では特にそうだ。ユーロを捨てることは代償をもたらす。
■悪いのはギリシャだ
ギリシャへの貸し付けを強制された人は誰もいない。当初は民間の銀行がギリシャ政府に、ドイツ政府向けの貸し付けと全く同じ条件で喜んで資金を貸し付けていたのだ。
しかし、ヤニス・パレオロゴス氏の著書『The 13th Labour of Hercules(ヘラクレスの13番目の難行)』が活写しているように、ギリシャの政治がどのようなものであるかは秘密でも何でもなかった。
そして2010年、ギリシャが借金を返せないことが明白になった。諸外国の政府(そして国際通貨基金=IMF)は必要だった債務減免に同意するのではなく、ギリシャの借り換えに応じることで民間の債権者を救済することを決めた。
ここから、返済期限を延長して問題がないふりをする「extend-and-pretend」のゲームが始まった。愚かな貸し手は損をする。昔からそうであり、今日でもそれに変わりはない。
■ギリシャは何もしていない
ギリシャはこれまで、財政収支と対外収支において大変な規模の調整を経験してきた。2009年から2014年にかけてプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)は国内総生産(GDP)比で12%改善した。構造的財政赤字は同20%、経常収支は同12%それぞれ改善している。
また2008年第1四半期から2013年第4四半期にかけて、ギリシャ経済の実質支出は35%減少し、GDPは27%縮小している。一時は、失業率が28%に達した。
これらは大変な規模の調整だ。実際、このような調整が生じたことは、ギリシャ支援の条件を巡る行き詰まりがもたらした悲劇の1つに数えられる。ギリシャには、これ以上の方策は不要だ。
■ギリシャは借金を返済する
この神話が生まれたのは、当事者がサンクコスト(埋没費用)の認識を拒んでいるせいでもある。貸し付けの焦げ付きと、その貸し付けの停止に対する調整はいずれも過去の話だ。
そもそも実行されるべきでなかった巨額のローンの返済にギリシャが向こう数十年間をささげるか否かは、まだ決まっていない。
この問題をさらに悪化させているのは、債務再編が行われたにもかかわらず、GDP比で見た債務負担が危機発生以降に倍増していることだ。返済の免除はもう避けられない。実際、経済政策研究センター(CEPR)が先日まとめた報告書によれば、過剰債務はギリシャのみならずユーロ圏全体の重荷になっている。
■デフォルトはギリシャのユーロ離脱を伴う
6つ目の神話は、もしギリシャがデフォルトすれば、新しい通貨を作ってユーロ圏から離脱しなければならない、というものだ。
ギリシャ政府がデフォルトした場合、ギリシャの銀行がギリシャ中央銀行から「緊急流動性支援(ELA)」を受ける資格を失ったと見なされる可能性はある。
だとすれば、銀行はほぼ間違いなく預金引き出しに停止措置を講じなければならないだろう。支払い停止に踏み切る可能性さえある。
一部には、デトロイト市政府がデフォルトした時に米連邦準備理事会(FRB)に同市内の銀行への融資をやめる権利がなかったように、ギリシャの銀行に関して欧州中央銀行(ECB)が最後の貸し手としての役目を果たすことをやめる権利はないと主張する人もいる。
ギリシャのユーロ離脱はハルマゲドンか、損失額80兆円の試算も
ギリシャがデフォルトすれば、ユーロ圏から離脱し、ドラクマを復活させなければならない、という考えも「神話」の1つ〔AFPBB News〕
だが、2つの話には違いがある。デトロイトのデフォルトによって支払い能力を失ってしまうほどデトロイトに対するエクスポージャー(投融資残高)が大きかった米銀はなかった。
だが、加盟国ごとに異なる19の銀行市場があり、各市場で政府が大きな存在を占めるユーロ圏では、ある国の政府のデフォルトは国内銀行を破綻させる可能性がある。
ECBは、明らかに支払い能力のない銀行に融資すべきではない。だから問題は、どう対応すべきか、というものになる。
ギリシャの銀行の機能が限られた状態でギリシャ経済を運営するのは可能かもしれない。現金が枯渇したギリシャ政府は、借用書(IOU)で支払いを行い、政府自身への債務の支払いとしてIOUを受け入れるかもしれない。これは望ましくはないものの、可能ではある。
このような神話潰しは、満足のいく解決策を与えてくれない。だが、解決に向けたスタートにはなる。
最善の結果は、ギリシャ経済・政治機構の機能に関する改革完了後に債務負担の恒久的な削減を盛り込んだ合意だ。
実際、パレオロゴス氏は、ギリシャは単なる経済改革の問題だけでなく、開発問題を抱えていることを示している。
だが、そのような取り決めがうまくいくのは、ギリシャがコミットした場合に限られる。7つ目の神話――もしかしたら最も危険な神話――は、強制的に同意させられた改革がうまくいく、というものだ。そうした改革がうまくいくことは、めったにない。
そのような合意をまとめることができなければ、最もましな結果は、デフォルトの現実を受け入れ、どうすべきかをギリシャに決めさせることかもしれない。これは間違いなく悪い結果だ。だが現時点で、それより良い結果を確信している人などいるだろうか。
By Martin Wolf
- ギリシャ支援 結論先送り ユーロ圏財務相会議 あっしら 2015/4/25 03:05:42
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