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(回答先: 欧州、急進政党が台頭 スペイン・仏の地方選で支持:この潮流がギリシャ問題協議でEUがアメを供与する呼び水に 投稿者 あっしら 日時 2015 年 4 月 04 日 14:15:23)
[核心]英総選挙の死角、世代間格差
違いなき二大政党どこへ 欧州総局編集委員 大林尚
3月5日夜、ロンドン。ビッグベンに連なる英議会議事堂のアトリー・スイートで東日本大震災の復興支援コンサートが開かれた。
1時間あまりを熱唱したのは地元の歌手、鈴木ナオミさん。演奏は福島県いわき市出身の大友スミス亜紀子さんが指揮するホクサイ・オーケストラ。主催した英日議員連盟のフーパー上院議員は「4年前に思いをはせる機会になった」と語った。施設を開放した議会に度量の広さを感じる。日本の国会は、どうだろうか。
その英議会はきょう30日、下院が解散される。5年に1度の総選挙。5月7日の投開票に向けた号砲だ。同じ議院内閣制を採る日本も無関心ではいられない。成長戦略、財政再建、高齢化対応、移民政策など日本の政策課題と重なる争点が多いだけに、なおさらだ。
議席数は650。前回2010年の総選挙で307議席を獲得した保守党は、57議席の自民党と連立を組んで過半数を確保し、258議席の労働党を13年ぶりに政権の座から追いやった。23日、英国放送協会(BBC)の取材に自宅の台所で応じたキャメロン首相(48)は包丁さばきを披露しながら語った。「3期目は私の頭のなかにない」。もう1期5年の続投宣言だ。
だが各種の世論調査の結果は保守、労働の二大政党がともに今回も単独過半数を得るのは難しいと示唆する。ハング・パーラメント(宙づり議会)である。連立入りして存在感が下がった第三極の自民党は支持がふるわず、その間隙を突いて急伸が確実視されるのが昨年9月、独立の是非を問う住民投票で名をはせたスコットランド民族党だ。
不思議な政党である。独立投票が小差で否決されたのちに党勢が急拡大し、当時2万5千人だった党員が先週、10万人を超えた。半年で4倍。地域政党が二大政党に続く勢力にのし上がった。スコットランドの政治風土は反保守。一時期のスウェーデンのような高負担・高福祉の大きな政府が理想だと考える有権者が多い。労働党に有利な地盤だが、今回はその票を民族党がさらうとみられている。
もう一つの台風の目は欧州連合(EU)からの離脱を唱える右翼の英国独立党だ。EU拡大に伴って急増する東欧などからの移民労働者の排斥が党是だが、旗印はその一点のみ。ほかの政策は候補者によって言うことがばらばらだ。とはいえ高まる反EU機運をキャメロン首相も無視できず、英国がEUにとどまるか否かを問う国民投票を2年内にすると公約している。
労働党のミリバンド党首(45)はいまひとつ精彩を欠く。階級社会の英国でイートン校からオックスフォード大に進みエリート臭がにじみ出るキャメロン氏との差を際だたせようと、街のファストフード店でメディアの取材に応じたが、その姿が板につかない。以降、タブロイド紙はことあるごとにハンバーガーを不格好に頬張るミリバンド氏のアップ写真を載せている。
タブロイド紙の影響は思いのほか大きい。写真1枚が選挙結果を左右することもある。1995年、労働党を率いていたブレア氏はサン紙を敵に回さぬよう、親会社がオーストラリアで開いた会議に駆けつけた。
混沌とする連立の取り合わせは賭けの対象になるほどだが、退潮著しい二大政党も単独過半数をめざす建前は捨てていない。保守党はイングランド南部、労働党は北部とロンドンなど大都市圏。支持層が多く住む地盤の票固めと相手票の切り崩しに余念がない。
英国の総人口は6400万人強。65歳以上人口の割合は17%程度と日本の25%超に及ばず、高齢化の速度も日本の半分ほどだ。合計特殊出生率は1.9前後と高い。高齢化、少子化、人口減の三重苦に直面する日本と対照的に、緩やかな高齢化のなかで人口は増えている。両国の総人口は半世紀後に逆転する勢いだ。
それでも高齢者の票が草刈り場になっている。
昨年来、キャメロン政権は周到に隠し玉を仕込んできた。55歳以上の人が確定拠出年金の積立金を一時金として引き出したとき、条件を満たせば懲罰的な所得税率をかけないようにする規制緩和だ。積立金は住宅改修や住宅ローンの一括返済に回せるようになる。雇用年金省の反対を押し切って4月から実施するこの制度は、引退世代の関心を研究し尽くした選挙対策だ。
首相は年金生活者への恩典を守るとも宣言した。テレビ受信料免除、バス無料券、冬の暖房費補助――。労働党のお株を奪う勇み足に、英誌は「豊かな高齢者が高級ワインを飲む誘因になるだけだ」と酷評した。
昨年、スコットランド独立に強く反対したのは、年金減額など変化を恐れた高齢層だった。保守党にも労働党にも飽き足りず賛成票を投じた若者が今、スコットランド民族党の躍進を支えている。こうしてみると、世代論こそが隠れた争点かもしれない。
この総選挙を「これでいいのか選挙」と形容するのは、在日英大使館を経てコンサルタント会社を経営するフィリップ・ハワード氏だ。有権者の多くがため息をつきつつ投票する。経済や社会保障など関心が高い争点に、くっきりとした違いを出せない二大政党への失望が渦巻く。
世代間格差の緩和に政治が及び腰なのは、日本だけではなさそうだ。
[日経新聞3月30日朝刊P.4]
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