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脳科学で鍛える仕事力
「出世鬱」にご用心 「キレる」「逃げる」が対処法?
早稲田大学研究戦略センター教授 枝川義邦氏
シェアツイートクリップ2016/8/8
鬱病が増加の一途をたどっている。意外なのは会社で昇進した際に起こる、いわゆる「出世鬱」だ。上司になっても部下をうまく指導できないとか、目標達成などのプレッシャーが強くなり、鬱化するという人もいる。4月の定期異動で昇進してから3〜4カ月、疲労がたまりやすい夏が危ないとの指摘もある。なぜ出世鬱に陥るのか。対処法などを、早稲田大学研究戦略センター教授で脳科学を専門とする枝川義邦氏に聞いた。
◇ ◇ ◇
――ビジネスパーソンに昇進時の鬱が増えているとの指摘があります。
早稲田大学研究戦略センター教授の枝川義邦氏
鬱病の原因は様々で複雑です。環境要因や身体要因が重なることで発症することが多いことから、昇進したことだけが原因となることは少ないようですが、大きな要素にはなり得るものです。厚生労働省も我が国での鬱病患者数の増加を指摘しています。鬱病全体の総数が増えている中で、「昇進鬱」も増加している、というのが実態ではないでしょうか。
昇進鬱とは、昇進で責務が重くなったり、それまでとは内容の異なる仕事に就いたりして、プレッシャーが大きくなりすぎたことで、抑鬱状態になってしまうことをいいます。これは、慢性的な疲労や倦怠(けんたい)感、不安や焦燥感、頭痛や腹痛、高血圧、動悸(どうき)、めまい、不眠といった実際の鬱病の症状を示すものと理解されています。
――「パワハラ」や「セクハラ」に対する目が厳しくなり、部下を叱責しづらくなったとか、年功序列の崩壊で年上部下が増え、うまくコントロールできなくなったとか、リーダーにとって職場環境が厳しくなったことを要因にあげる声もあります。
何かをうまくコントロールできないとジレンマを感じたときの反応は、「キレる」か「逃げる」かに大分されます。「キレる」とはジレンマに対して怒りの感情を持つ場合で、怒ることでコントロールしづらい場をなんとか支配しようとするのです。もう一方の「逃げる」のは、コントロールが効かない場から立ち去ろうとすることですが、感情的に逃げていても状況的に逃げ切れていない場合は、抑鬱傾向になりやすくなります。どこかで合理的な解決策が見いだせればよいのですが、なかなかそうもいかない場合は、鬱病に近づいているといえるでしょう。
例えば、上司の立場上、叱るという場面もあるかと思いますが、叱ればつつかれ、叱らなくてもなめられるといった具合に、ダブルバインド(二重拘束)のように精神的にも状況的にもがんじがらめになっている状態が続くと、ジレンマが生じて自分の持っている“心のコップ”からあふれ出すように「キレる」か「逃げる」かの選択をせざると得なくなりかねません。
ご指摘の通り、現代の職場は、リーダーの立場の方にとっては力を発揮しづらくなっているようです。勢い余ってハラスメントになってはいけませんが、予防線を張りすぎていると、「上司の立場こそつらいのだ」となってしまいます。
若手は厳しい態度を嫌うと思っている方も多いと思います。確かにそういう風潮はあるでしょう。しかし、叱らないと甘く見られることにもなります。ここはやはり、「甘さ」と「優しさ」は別であることをよく理解させることも大切です。仕事をするために集まった組織である以上、甘いことばかりが良策ではないことを納得させて、しかし優しさにあふれる環境づくりを心がけていれば、上司も部下も、抑鬱とはかけ離れた気分になれ、その組織や環境に対するロイヤルティー(忠誠心)も上がっていくものです。
――そもそも鬱はどういうメカニズムで発症するのですか。
鬱病の発症は、脳の中での神経連絡に変化が生じていると理解されています。特に、セロトニンやノルアドレナリンという物質による情報伝達が弱くなっていることが明らかにされています。鬱病の治療では、セロトニンやノルアドレナリンに関連した神経連絡を強化するようなアプローチが奏功しています。そして、最近では、ある種の抗鬱薬が、脳の海馬という場所で新しい神経細胞が生まれる「神経新生」を介して効果を発揮することが分かってきたことから、鬱病と神経新生との関連も考えられてきています。
――鬱にはどのような対処が効果的ですか。
鬱病からの回復には、そのときの状態を受け入れる気持ちの余裕が必要です。「自分が鬱病であるはずがない」と心にむち打ってバランスを取ろうとしても、取りきれないこともあるものです。
鬱病は「心の風邪」といわれることもあります。風邪とはよくいったもので、かかっても頑張れば仕事を続けられることが多い一方で、やはり休まないと治りが悪くなってしまいます。鬱病にかかりそうだったり、医師に鬱病だと診断されたりしときには少しゆっくりと休めることも必要です。無理してこじらせるよりは、早めの対処が望ましいでしょう。
とはいえ、実際には様々な場面でうまくいかなくなっていることも自覚されているのではないでしょうか。このような場合、以前も触れた「セルフエフィカシー(自己効力感)」が下がっている場合が散見されます。
セルフエフィカシーは、目の前のハードルを越えるイメージを持てるか否かが重要なので、新しい環境と新しい立場で、自身の力の及ぶ範囲に不安を感じていると、スコアは下がってしまうのも無理はないことです。
その場合は、できることから少しずつ、焦らず自分の実感を伴って、を心がけるのがよいでしょう。
また、昇進を決めたのは、自分ではなく、他の評価者であることを思いだしてみることもよいでしょう。昇進できたことには理由があるはずです。その期待されていることを、ご自身のできる範囲で実現させるために昇進が決まったのですから、「期待以上のことをしなくてもいいんだ」くらいの心持ちで目の前のことをこなしていくのもよいのではないでしょうか。
枝川義邦氏(えだがわ・よしくに)
1998年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。2007年早大ビジネススクール修了。14年から現職。著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)、『記憶のスイッチ、はいってますか』(技術評論社)など。
(代慶達也)
「脳科学で鍛える仕事力」は随時掲載です。
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO05502900R00C16A8000000?n_cid=LMNST010
その疲れは「休め」のサイン!あなたの疲労度は?
「一に健康、二に仕事」 from 日経Gooday
その日の疲れはその日のうちに回復させる、これが鉄則
2016年8月9日(火)
塚越小枝子=フリーライター
「だるい」「朝、起きられない」「休日にゴロゴロしても休んだ気がせず、疲れが残る」…。こんな状態が続くビジネスパーソンは珍しくない。気になる疲れの正体やその解消法を、疲労研究に25年以上携わる関西福祉科学大学教授・倉恒弘彦さんに聞いた。第1回は疲れのメカニズムについて。意外なことに倉恒さんは、疲れは人間にとって必要な感覚だと言う。
約4割の人が半年以上続く慢性的な疲労を感じている
慢性的な疲労を感じている人が増えている。(©alphaspirit 123-rf)
2012年に厚生労働省疲労研究班が一般地域住民2000人を対象に実施した疫学調査によれば、38.7%の人が半年以上続く慢性的な疲労を感じており、そのうち2.1%には日常生活に支障をきたすような慢性的な疲労が見られた。
また、2012年に文部科学省研究班が行った医療機関受診患者の調査でも、約45%に半年以上続く慢性的な疲労が認められた。
「1970年から1980年代にも6〜7割の人に疲れが見られましたが、大半は一晩寝ればとれる軽い疲れでした。インターネットやスマートフォンの普及、企業でのリストラの加速、成果主義の浸透など、生活や労働環境の変化に伴い、今は慢性的な疲れに変わってきています。ストレスの質が変わってきたといえるかもしれません」(倉恒さん)
疲労は体の異常を知らせるアラーム信号
疲労のきっかけの一つは、ストレスだ。ストレスには人間関係の悩みなどの「精神的ストレス」だけではなく、過重労働や激しい運動のような「身体的ストレス」、紫外線や化学物質、猛暑、感染症などのさまざまな「生活環境ストレス」もある。
これらのさまざまなストレスがかかると、体の神経系・免疫系・内分泌系のシステムにひずみが生じ、細胞レベルではタンパク質や遺伝子に傷がつく。本来、人間にはそれを修復する能力が備わっているが、運動や作業を止めずに続けた場合や、過度のストレス状況に置かれた場合などには傷を修復することができない。そのため、人は「だるい」「しんどい」という感覚で疲労を自覚することによって、休息をとり、元の健康な状態に回復させている。
「疲労は痛み・発熱と並んで、体の異常や変調を知らせる三大アラームの一つ。人間にとって必要な感覚なのです」(倉恒さん)
では、「休め」という体の警告を無視して働き続けるとどうなるのだろう?
「休め」という警告を無視して働き続けると?
疲労感を覚えたら、一旦活動を休止して休息するというのが健全な状態だ。とはいえ、現実的には「分かっていてもなかなか休めない」という人も多い。「休め」というアラームを無視して働き続けると、「細胞の傷が修復できなくなり、心筋梗塞や脳血管障害などの深刻な事態に陥ることもある」と倉恒さんは言う。
そうした疲労のメカニズムをもう少し詳しく見てみよう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/111700008/080400091/2.jpg
図1 慢性的な疲労に陥るメカニズム
ストレスは、体の神経系・免疫系、内分泌系のシステムに絶えず影響を与えているが、通常は体にひずみが生じても修復され、この3つのシステムが大きく崩れることはない。
しかし、修復能力を超える強大なストレスや、長期間にわたりストレスがかかると、次第にナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫力が低下して、ウイルスに対する抵抗力が弱くなる。すると体に潜在していたウイルス(ヘルペスウイルスなど)が元気になってきて、口唇ヘルペスのような発疹ができたり、風邪を繰り返したりする(ウイルスの再活性化)。
こうなると免疫系は防御体制を発令して、体を守るための免疫物質をつくり出す。この免疫物質はウイルスを抑えるのには有効だが、脳に悪影響を与える。それが、なかなかとれない疲れや不安・抑うつなどの症状を引き起こすのだという(図1)。
「最近の研究で、このような免疫物質は脳の中でもつくられていることがわかってきました。免疫物質が脳内でつくられると、セロトニンなどの神経伝達物質を介して行われる情報交換がうまくいかなくなり、さまざまな慢性疲労の症状が現れるのです」(倉恒さん)
長年の疲労研究の成果により、さまざまな疲労に伴う症状には、脳の機能異常が関係していることが明らかになってきている。機能異常が起こる脳の部位と、全身の痛み、疲労感、抑うつなど、現れる症状との相関もわかってきており、これからは脳の画像で疲労を診る研究が進むとみられる。
セロトニンなどの神経伝達物質による脳内の情報交換がうまくいかなくなると、疲れているのに疲労感を自覚できなくなることもある。いわば「疲労感なき疲労」だ。
「周囲からほめられて一時的に達成感を味わったり、自分は必要とされていると思うと、脳の中で快楽を司るドーパミンや、怒りのホルモンといわれるノルアドレナリンなどの神経伝達物質が増え、疲労感が覆い隠されてしまうのです」(倉恒さん)
実はこの「自覚なき疲労」が危険だと倉恒さんは指摘する。
慢性疲労に陥る前にまずは自分の疲れを意識しよう
覆い隠された疲労は、自覚はなくても体の活動能力は低下している状態。気づかずに活動し続ければ、最悪の場合、過労死などの急激な破綻につながることもあるため注意が必要なのだ。こうした自覚しにくい疲労の状態を知るためにも、客観的に疲労を評価できるバイオマーカー(生物学的指標)が求められる(詳しくは第3回目の記事で紹介する)。
個人レベルでは、慢性的な疲労に陥る前に、自分の疲れの状態に心を配り、その日の疲れはその日のうちに回復させることを意識したい(詳しくは次回の記事で紹介する)。また、同じストレスでも、それに対する感受性やストレス処理(コーピング)の仕方によって、疲れの感じ方は大きく違ってくる。
「こだわりが強い固着性気質、完璧主義の人は高い成果を上げることができますが、ストレスを強く感じやすいことも知られています。より意識してしっかりとマネジメントすることが大切です」(倉恒さん)
具体的にどうすればいいかというと、ストレスがあるときは誰でもその原因を分析し、解決しようとするが、なかなか解決できない場合は、可能であればその状況から“抜け出すこと”が重要だ。それができない場合は、家族や友人、同僚などに自分の状況を説明して共感してもらう、あるいは、怒る、泣くといった感情表現をすることも大切だという。
1日の睡眠や週末の休息では回復しない疲労が蓄積している場合は要注意だ。1カ月以上続けば「遷延性疲労」、6か月以上続けば「慢性疲労」と呼ぶ。慢性疲労症候群と呼ばれる病気が慢性疲労と混同されることがあるが、慢性疲労症候群は日常生活そのものが破壊されるような深刻な病態であり、単なる「慢性疲労」とは区別する必要がある。長く疲労が続いている場合は、医療機関へ相談を(慢性疲労症候群については第4回目で詳しく解説する)。
次ページで紹介する疲労度チェックリスト(図2)も参考に、まずは日頃から疲れの状態をセルフチェックする習慣を持とう。
自身の疲労度をセルフチェックしよう!
図2は、疲労度を自己診断するためのチェックリストだ。各項目(の白い点数欄)に、「全くない」から「非常に強い」まで当てはまる点数を記入する(ピンク色の点数欄には記入しなくてよい)。記入が終わったら同じ列の点数を合計すると、身体的、精神的、それぞれの疲労度合いが、両方を足すと総合評価が分かる。「疲れたな」と感じたら、こうしたリストを使って疲れ具合をチェックしよう。
図2 自己診断疲労度チェックリスト
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/111700008/080400091/3.jpg
科学技術振興調整費「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」2004年成果報告書を基に作成
本コラムの関連記事はこちらからお読み下さい。
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「苦しいときほど〇〇」 スポーツ心理学者が明かすプレッシャーに強い人の共通点
倉恒弘彦(くらつね ひろひこ)さん
関西福祉科学大学健康福祉学部教授、東京大学特任教授
1987年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。2003年より現職。同年より大阪市立大学客員教授。2009年より東京大学特任教授。厚生労働省「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班代表研究者、日本疲労学会理事などを務める。著書に『危ない!「慢性疲労」』(共著、NHK生活人新書)など。
この記事は日経Gooday 2016年3月22日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
このコラムについて
「一に健康、二に仕事」 from 日経Gooday
健康・医療の総合サイト「日経Gooday」が、メタボ解消・ダイエット・アンチエイジング・快眠・不調改善に役立つ最新情報やセルフケア実践術を、厳選してお届けします。ビジネスパーソンは「体が資本」。お酒と健康の意外な関係、カラダの謎に関するトリビアなど、思わず人にも話したくなるウンチクもお届けします。
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