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「人類はいずれ、ロボットになる」
不老〜若さはここまで買える
トランスヒューマニストが語る「不老不死」の必然
2016年7月12日(火)
長野 光、篠原 匡
日経ビジネス7月11日号では、特集「不老〜若さはここまで買える」を掲載。特集内では米国の美容医療の実態や日本のアンチエイジングの取り組み、老化研究の最先端などをリポートしている。その中で、体に機械を埋め込み不老不死を目指す米国の「トランスヒューマニスト」のムーブメントにも迫った。連載第2回目は、トランスヒューマニスト党を設立し米大統領選にも出馬した、ゾルダン・イシュトバン氏のインタビュー。トランスヒューマニストが目指す世界とは何か。
あなたはトランスヒューマニスト党を設立して、今回の大統領選に出馬した。まず、トランスヒューマニズムとは何かという点から聞かせて欲しい。
作家、未来学者、哲学者。1973年カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。コロンビア大学で宗教と哲学を学び、ナショナル ジオグラフィック チャンネルで記者として活躍。2013年に小説「The Transhumanist Wager」を発表。トランスヒューマニストとして認知され、ハフィントン・ポスト、VICE、サイコロジー・トゥデイなどに定期的にコラムを掲載している。2014年にトランスヒューマニスト党を設立、2016年の米大統領選に出馬した。
(写真:林 幸一郎、以下同)
ゾルダン・イシュトバン氏(以下、イシュトバン):トランスヒューマニズムは世界で数百万人が参加する社会運動だ。1950年代から始まり、最初はSF(サイエンス・フィクション)の中で用いられる概念や思想だったが、次第に社会運動になっていった。科学やテクノロジーを用いてラディカルに人間を変えるという考え方で、我々の生命のあり方そのものを変えるものだ。
例えば、私は自分の手に小さなチップを埋め込んでいる。特定の機種に限られるが、私が手を近づければ、私の名刺情報を送信することができる。今はこの程度だが、いずれは自動車のカギを開けたり、オフィスの入館証、空港のセキュリティーシステムなどで使われたりするようになるだろう。医療関係者も、血液型や持病など搬送されてくる患者の情報を瞬時に得られるようになる。
トランスヒューマニズムとは、テクノロジーの発展を今以上に進め、生活や肉体により積極的に取り入れていくという考え方か。
イシュトバン:その通りだ。そして、ゴールは科学とテクノロジーを駆使して死を乗り越えることだ。私は今後25年くらいの間に人々は体のいろんな部分を取り替えるようになると考えている。事故で肉体が不随になった人の脳にデバイスを移植して身体を動かせるようにしたり、目の見えない人の眼球にデバイスを移植して目を見えるようにしたり。失われた機能の再生が基本だが、それだけではない。
「25年後には身体の一部が機械になる」
私の予測では、10年後には50%の米国人が身体に何かしらのチップを埋め込むだろう。25年後には実際に身体の一部を機械と取り替えるようになるだろう。それが便利だからだ。クレジットカードも身分証も飛行機のチケットも不要になる。
最近、米海軍の関係者から相談を受けた。新たに入隊する若者の中には身体の中にデバイスを入れているものがいる。だが、そのデバイスは米軍が移植したものではなく、セキュリティー上の不安がある。どう対処すべきかと私のところに相談に来たんだ。こういったラディカルな状況はもはや無視できないものになっている。
今後、我々の生活を変え得るテクノロジーには他に何があるか。
イシュトバン氏:人工心臓は研究が進んでいて、既に試験的に移植されている。フランスのバイオメディカル企業カルマトなどが有名だ。心臓にかかわる病気で亡くなる人は少なくない。心臓が交換可能になれば、死は劇的に変わるだろう。心臓が健康であれば、その他の臓器もいい状態に保てる。
心臓に限らず、我々は様々なものを取り替えることになるはずだ。触れたものを感じることができる人工の手の研究も始まっている。冷たいとか、柔らかいとか、最初はそういう情報を指先から得るレベルだが、やがて人間よりも正確になり、触れたものの温度とか、触っただけで何に触れたかまで分かるようになる。電子レンジのように、握ったものを指先で温めることさえできるようになるかもしれない。
あらゆるテクノロジーを肯定するのか。
イシュトバン:そのテクノロジーが人を攻撃しない限り、あらゆるものを容認する。
人間は「自然ではないもの」に恐怖を覚えるものだ。テクノロジーを取り入れることで、肉体や生命が不自然なものになっていく恐怖や嫌悪感をどう克服すべきか。
「自然、不自然という二項対立は虚構」
イシュトバン:自然、不自然という二項対立こそ不毛な虚構だ。例えば、人間の手というものについて議論するとしよう。確かにこの手は私の手だが、数百万年前は我々の手はもっと毛深く、より動物的だったはずだ。自然不自然というのはその時の価値観に過ぎない。仮に未来にロボットになっていたとしても、その時はそれを自然と感じているのではないか。
道具や科学を用いて深化することは我々に備わった性質だ。我々は何にだってなれる。環境問題もテクノロジーによって解決可能だ。遺伝子操作で森を10倍のスピードで成長させることができるだろうし、人工肉の開発が進めば動物を殺す必要も、家畜のために木を切り倒す必要もなくなる。世界中では広大な農地が家畜のために使われている。今のように肉を消費しつつ、自然をもっと豊かにできるだろう。
「そのテクノロジーが人を攻撃しない限り、あらゆるものを容認する」とイシュトバン氏は語る
「生命自体がバーチャルなものになる」
その考えを突き詰めると、人間はロボットやサイボーグになってしまうのでは。
イシュトバン:いつか人類はそうなると思う。だが、それを恐れるべきかなのかは分からない。重要なことは人間性をどのように残すかということだ。人間の良いところ残して、テクノロジーの良いところと融合させる。そして、今よりも良い世界の実現を目指す。
今日、多くの人はロボットに仕事など様々なものが奪われるのではないかと恐れている。だが、むしろロボットは多くのものを与えてくれるはずだ。
さらに、遠い未来には人類は記憶をコンピュータからダウンロードできるようになるかもしれない。あるいは生命自体がバーチャルなものになり、肉体はどこかに何かしらの形で残しておく程度のものになるかもしれない。記憶情報をロボットに移植することも、3Dプリンティングで作った人体に記憶を移植することもできるかもしれない。これは記憶のクローンという新しいアイデアだ。
コロンビア大学の専攻は宗教と哲学だった。なぜトランスヒューマニズムに目覚めたのか。
イシュトバン:初めてトランスヒューマニズムを知ったのは、大学の授業でクライオニクスを学んだ時だ。死んだ人間の肉体を凍らせて、技術が進歩した遠い未来に解凍し、蘇生を試みるというアイデアだ。ただ、その時はまだトランスヒューマニストになろうとは思わなかった。
大学卒業後、私はナショナルジオグラフィックのテレビチャンネルで働いた。そこでの仕事は世界の戦地に赴き、独自の視点でリポートするというものだった。
そしてある時、私はベトナムの地雷撤去に関する取材をしたのだが、その最中、うっかり不発弾を踏みかけた。現地のガイドが私を押しのけてくれて助かったが、その時、私の中で何かが変わった。これからは死を乗り越えるために人生を使うべきだと強く感じたんだ。そこからトランスヒューマニズムという概念にのめり込んだ。
その後、私は2013年にトランスヒューマニズムとテクノロジーの未来を描いた『The Transhumanist Wager』という小説を発表した。この本は哲学とサイエンス・フィクションの部門でベストセラーとなった。それからトランスヒューマニストと認知されるようになり、ハフィントン・ポストやVICEなど現在3つのメディアで定期的にコラムを書くようになった。
トランスヒューマニスト党まで設立
民主党でも共和党でもなく、独自に「トランスヒューマニスト党」なるものを立ち上げて、今回の大統領選に出馬したと聞いたが……。
イシュトバン:その通りだ。トランスヒューマニスト党を立ち上げた後、4カ月にわたって全米をバスツアーした。我が家の庭からスタートして各地を回り、最後にワシントンDCに行き、2014年12月にトランスヒューマニストの権利をまとめた「トランスヒューマニスト法案」を連邦議会議事堂に提出した。その狙いはもっと自由に科学を利用できる環境を作ることだ。自分の身体に好きなテクノロジーを自由に移植して、肉体をより良く保ち使えるようにする――。米国では、法的に簡単なことではない。
この国の政治は十分にテクノロジーを使っておらず、いかに世界が早いスピードで変化しているかということについても理解していない。ヒラリー・クリントンもドナルド・トランプも、最も重要な遺伝子の研究については言及していないだろう。この国の人々の多くはクリスチャンだ。だが、科学とテクノロジーを最重要視する大統領がいれば、この国を大きく変えることができる。
イシュトバン:我々の基本的な主張では、老化は病そのものだ。みんな年をとって死ぬ、それこそが自然な人間の姿だと誰もが思っているがそれは間違いだ。
遠い未来に人類は歴史を振り返って言うはずだ。なんでもっと早い段階で、こういう研究開発にお金を使わなかったのか、なぜアフガニスタンやイラクに予算を投じて殺戮を続けたのか、と。抹殺すべきは、「人間は年をとる」という事実だ。
私が今回の選挙で勝つ可能性はない。だが、アドバイザーになってくれと言ってくる政治家はいる。次回の大統領選も、その次も出馬する。私の支持者の90%以上は35歳以下。8年後にはかなり可能性があるだろう。
「私はロボットになりたい」
あなたの考える世界のあるべき姿とは?
イシュトバン:今後、社会はあらゆる意味で変わるだろう。いろんなことを考えなければならない。寿命が1000年だったら果たして人は結婚するだろうか。子供は何百歳のときにつくるだろうか。性的な快楽もテクノロジーから得られるようになれば、性行為自体が必要なくなるかもしれない。
一方で、我々はテクノロジーによって人間が怠惰にならないように気を付けなければならない。デストピア(理想郷の反対、暗黒郷)を作らないように気をつけなければならない。
私はロボットに介護される人間にはなりたくない。私はロボットになりたい。人間は、何かを飲んだり、食べたり、寝たり、排泄したりするが、ロボットにはそんなことは必要ない。最善の方法は人工心臓や人工足を取り入れ、頭にチップを埋め込むことだ。すべての生物性を取り去ることが重要になるだろう。これはトランスヒューマニストにとって重要な考え方だ。生物であることは原始的なんだ。
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トランスヒューマニストの自宅は想像以上に緑豊かだった
このコラムについて
不老〜若さはここまで買える
1977年、あるSF漫画が上梓された。JRが国鉄で、海外旅行は商店街の福引きで当たればという時代。星野鉄郎と謎めいた美女メーテルがSLに乗って、不老不死の機械の体を求めて宇宙を旅する奇想天外なストーリーに、胸躍らせた記憶がよみがえる。
あれから来年で40年。我々の夢想をかき立てた世界は、思った以上に実現に近づいている。
美容医療の進化に伴って、カネさえ払えば理想の容姿を手に入れることはある程度可能になった。90年代以降、遺伝子の解明が進んだことで、謎だった老化メカニズムも明らかになりつつあり、起業家たちもバイオテクノロジーとビッグデータを融合させて「不老」の実現を目指している。
もちろん、倫理や宗教との葛藤はある。だが、肉体と機械の融合も一部で進む。鉄郎が求めた機械の体はいまだ夢物語だが、不可能ではないと思えるくらいに研究は加速している。技術の進化と欲望の深化。それが空想の世界を現実に変えようとしている。
若さはどこまで買えるのか、「不老」はどこまで可能なのか、そして、テクノロジーは人間を超越できるのか──。その最先端をのぞく。
(日経ビジネス7月11日号の特集「永遠の欲望市場 不老 若さはここまで買えるの連動企画)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/070700053/070700003
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