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過度の抗菌や潔癖は体に危険?かえって汚いほうが病気予防&健康?
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14795.html
2016.04.21 文=新見正則/医学博士、医師 Business Journal
今回は「抗菌」に関する話題で激論が展開されています。
“極論君”は「抗菌」の虜です。抗菌グッズを揃え、アルコールでの手洗いは欠かさず、当然帰宅すれば茶色の抗菌作用がある液体で入念にうがいを繰り返します。入浴時はナイロンタオルと液体石けんで体中をまんべんなく洗います。垢すりも大好きです。シャンプーも連日欠かしません。子供は抗菌の砂場で遊ばせ、抗菌ランドセル、抗菌机、抗菌鉛筆、抗菌消しゴムを揃えます。
インターネット通販で抗菌とあるものはどんどん購入します。抗菌パジャマに、抗菌布団、抗菌タオルなどを使用します。屋台の食べ物は雑菌がいそうで食べません。人が握ったおにぎりも心配で食べません。ここまで徹底すると凄いですね。
一方で“非常識君”は、「むしろ汚いほうが元気なのだ」という持論です。手洗いもうがいもしません。お風呂で体は洗いません。湯船につかれば、それで十分きれいというのが持論です。床に落ちたものも食べます。子供を外で遊ばせるときは、野生のサルのように放し飼いです。子供たちは、野いちごやアケビなどをそのままほうばります。ころんで泥んこになって、泥が口に入ることも少なくありません。そして家畜やペットと一緒に過ごしています。遊びの途中で家畜の乾いた糞が誤って口に入ることもあります。
抗菌大賛成で潔癖志向の極論君と、まるで正反対の非常識君です。どちらに軍配が上がるというよりも、そこまで徹底するとすごいですね。
“常識君”が非常識君に援軍を出します。「デンマークなどの研究では、家畜と一緒に住んでいる子供や、家畜がいる家庭に出向いて遊んでいる子供はアトピーなどのアレルギー疾患の頻度が少ないという報告は有名ですよ」と発言します。
確かに、いくら完璧に抗菌を徹底しても、腸の中のばい菌をゼロにはできないですね。当然限界があるわけですから、どこかで妥協する必要があります。口の中のばい菌も、皮膚についている常在菌もゼロにはできません。そして、抗菌という言葉の意味も実は不明ですね。菌がまったく存在しない「無菌」なのか、菌を減らす「減菌」なのか、または菌が増殖しない「静菌」なのか。
■免疫を培うことが大切
常識君は白熱した議論に問題提起をします。
「どの菌を駆除したいのかが不明だから問題だ。体には悪玉菌も善玉菌もいるでしょう。命にかかわるような病気の原因となる菌を除去すれば、それで十分ではないか」
確かにそうですね。無菌論者の極論君の対応では、体に必要な、体にとってためになる善玉菌も駆除されます。ナイロンタオルと液体石けんでごしごし体を洗うと、菌も洗い流されますが、垢も取れます。垢は皮膚のバリアの一部ですから、必要以上にこすり取ると弱い皮膚になります。かえってアトピーが悪化することもあります。
そして体には免疫があります。子供の頃から少々体に悪い菌に暴露されていると、それに対する免疫が出来上がります。つまり、だんだんと強い体になるのです。問題は、免疫ができていないのに命にかかわるようなばい菌に遭遇すると、それこそ「命取り」になります。いろいろな環境下で、だんだんと強くなるのが体です。そして人が集まる組織も、集団も、実は些細な困難に適度にさらされているほうが、ひるまない、壊れない、そして倒れそうになっても復活できる力を保てます。
つまり、極論君と非常識君の間で、そして少なくとも命にかかわるような悪玉菌は除去する一方で、弱毒の悪玉菌を数少なく持つことによって、体の力強さ、つまり免疫を培うことが大切にも思えます。さらに折れない心の強さ、折れても復活できる対応力の強化も実は必要です。極論君と非常識君の間に答えがあることは間違いないでしょうが、どの程度を実行すればいいのかはまだ未知の領域です。
常識君は、「少々汚いぐらいの世界を生き抜くことが良いように思える」と、今回はホンネを漏らしていました。
(文=新見正則/医学博士、医師)
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