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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
食事に30分以上で要注意 「食べる機能」の衰えはこう防ぐ
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/176304
2016年3月1日 日刊ゲンダイ
「一生懸命食べているのに食事時間が30分以上かかる」――。もし老親に該当するなら、「食べる機能」が落ちてきている疑いがある。
■嚥下機能低下ならリハビリ必要
80代半ばのAさんは数年前から軽い認知症だ。食事にかかる時間がどんどん長くなっている。かかりつけ医からは、「飲食物が誤って気道に入り込んで肺炎を起こすリスクが高いから」と、体の外からチューブで胃に直接流動食を送り込む胃ろう造設を勧められている。
Aさんのケースは珍しいものではない。「年を取っているから仕方がない」と周囲も受け止めているかもしれない。しかし、まずは「食べる機能」を取り戻すためのリハビリが必要だと、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック・菊谷武院長が言う。
「高齢になると筋肉や身体能力が低下するのと同様に、嚥下機能も低下します。すると栄養状態が悪くなり、免疫力も落ちます。使わなければ嚥下機能は一層落ち、栄養状態がさらに悪くなる。悪循環に陥るのです」
急に脳梗塞などの脳血管障害に襲われて後遺症があれば、リハビリ病院に入院し、専門家の指導の下で機能を取り戻す訓練が行われる。嚥下機能に関しても行われる。
しかし、加齢で徐々に嚥下機能が落ちてきた人、認知症の進行に伴い食べられなくなってきた人などは、嚥下機能のリハビリに出合うきっかけがない。それを行う言語聴覚士や、通院できるリハビリ病院の数が少ないなどさまざまな理由があるが、嚥下機能のリハビリがあるということを知らない人も少なくない。
「嚥下機能が悪くても、何も手を打たなければもっと悪くなります。訓練や食べ方の工夫次第で、口から食べ続けることができるのです」
菊谷院長が指導しているのは、@機能が落ちたところに働きかけるリハビリA現在ある嚥下機能を生かせる食事の指導。
@では、主に「喉の力を鍛える」「舌の力を鍛える」「食べるタイミングとのみ込むタイミングを合わせる」ことが目的になる。
やり方は複数あるが、喉の力を鍛えるには、上向きに寝転がり首だけを持ち上げ、首の前の筋肉を収縮させる。
舌の力は、柔らかい歯ブラシなどを舌に押し付け、歯ブラシは下方向に、舌は上方向に力を入れる。
「タイミング」は、「息を吸う→唾液をのみ込む→息を吐く」という健常者なら当たり前にできている動作を一つ一つ意識してやり、体に覚えこませる。
「食事の指導では、タイミングが合わずにのみ込めない人は、食事にとろみをつける。チャーハンのようなパラパラした食事がのみ込めない人はあんかけにするなど、『どうすれば食べられるか』を考えた個々に応じた提案を具体的にします」
■「年を取って食欲がない」も危険
嚥下機能が20%しかなければ、その20%をフルに生かして口から食べる。100%の力は取り戻せなくても、口から食べることで食事の楽しみを味わえる。それが大事だと、菊谷院長は言う。
一方、嚥下機能はまだ大丈夫かもしれないが、今後どんどん落ちていく可能性があるのが、「年を取って食べなくなった人」だ。
70代後半のBさんは妻を亡くして以降、近所で総菜を買うなどしているが、一人の食事はわびしく面倒。動かないので腹もすかない。自然と食事量が減り、妻を亡くしてから5キロ以上痩せた。
「これでは栄養状態が落ち、嚥下機能の低下を招きます」
無理に食べさせるわけにはいかないが、元気でいてもらいたければ、何らかの手を講じる必要がある。
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