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「塩分摂りすぎや高血圧は悪い」のまやかし…忙しい人とのんびりの人に医学的根拠?
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13359.html
2016.01.19 文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士 Business Journal
世間には忙しい人ものんびりした人もいますが、このような漠然とした分類を医学的に説明することができます。忙しい人は、自律神経のうちの交感神経刺激状態で生きている人です。のんびりした人は、自律神経のうちの副交感神経優位状態で生きている人なのです。このような理解ができると、体調不良や病気になる原因にたどりつくことができます。
最近の医学は多くの病気を原因不明にすることが多いのですが、自律神経の働きを考慮することが少なくなったせいだと筆者は考えています。自律神経はあまりにも当たり前の知識として考えに入れずに、難しい医学知識を使いすぎて物事を複雑化する傾向が強くなっています。
まず、血圧の調節系を考えてみましょう。そもそも、交感神経刺激は活動の体調をつくっていますが、科学的表現をすると「エネルギー消費時のからだの働き」です。逆に、副交感神経刺激は休息の体調をつくっていますが、別の表現では、「エネルギー蓄積時のからだの働き」と連動しています。休息、睡眠、ものを食べる時の反応です。そして、エネルギー消費の活動時に血圧は上昇し、エネルギー蓄積の休息時に血圧は下降します。
このような仕組みがわかると、忙しい人は血圧が高めになり、のんびりした人は血圧が低めになることがわかるでしょう。血圧の高い人の生活パターンを考えることなく、本態性高血圧症などと診断してはいけないわけです。病気の前に、本態性とか、特発性とか便利な名前をつけて原因不明として、病気の成り立ちを考えない流れが拡大しています。
必要に迫られて忙しい人もいるし、忙しく生きないと気が済まない人もいます。いずれも、交感神経は刺激されるので血圧は高くなるのです。その人の生き様を無視して血圧の正常値を決めて、「140mmHg以下がいい」というのは問題であることが理解できます。
■現在の血圧基準値は低すぎ
このような間違いが生まれた理由も、少し説明しておきましょう。
昭和20〜40年代までの日本はまだ貧しくて、寒さ、ひもじさ、過重な肉体労働の下で生きていました。いずれの条件もからだにとっては厳しく、交感神経緊張を強いる環境にいたのです。人々は、御飯を何杯もおかわりし、しょっぱいおかずを食べて血圧を上げて生きていました。これが当時の一般的な日本人の食生活です。食生活が間違っていて、塩分をたくさんとっていたわけではありません。必要に迫られてのことです。
昔は脳卒中で死んだり、半身不随になる大人が多く、還暦になったらうれしくて熱心に御祝いしていました。今は、多くの人が還暦までたどりつくので、御祝いすることもほとんどなくなりました。このようなトラウマが誤解されて、「塩分の摂りすぎはよくない」「高血圧はよくない」といわれるようになったのです。
ちなみに、昔の高血圧症の境界値は180mmHgで、それでも高血圧症の人は多かったのです。今は、基準値が下げられすぎています。
血圧は自律神経が決めるので、生き様や性格とつながっています。簡単にひとつの正常域を決めてはいけません。いつも血圧が高い人は、忙しさに気をつけましょう。忙しさがないのに血圧が高い人は、遺伝的素因の可能性が高いです。早めに床について睡眠時間を十分にとれば、バランスがとれます。血圧が180mmHg以上でも長寿になれるでしょう。薬で無理に血圧を下げると血流障害がきて、認知症や寝たきりになってしまいます。
(文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士)
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