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ユーロ圏はギリシャの離脱を避けられるだろうか (c) Can Stock Photo
ギリシャが離脱すればユーロは脆弱になる あと1回だけの最後のチャンス、残っているのは悪い選択肢のみ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44257
2015.7.9 Financial Times
(2015年7月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
さて、ユーロ圏はこれからどうすべきなのか。筆者は先週、ギリシャ国民は緊縮を受け入れる「イエス」に投票すべきだと結論付けた。彼らは逆に、撤回された救済案の条件を圧倒的多数で拒否した。これは何を意味するのだろうか。そして、ユーロ圏はどう反応すべきなのか。
見たところ、投票した人の多く――あるいは大半――が、ギリシャが拒否したら他のユーロ圏諸国は翻意せざるを得ないと考えているようだ。
パートナー諸国は自分たちの残酷なやり方の過ちを認識し、ギリシャを緊縮から解放する一方、ギリシャがユーロを自由に使うために必要な財源を与えてくれる、というわけだ。
しかし、パートナー諸国の大半は、この結果を屈辱的な降伏と見なすだろう。つまり、それよりずっと可能性が高いのは、勇気を得たギリシャ政府と激怒した債権者との対立だということだ。
■ギリシャと債権者の対立がもたらす「ステルス・エグジット」
そのような対立は、「ステルス・エグジット(密かな離脱)」につながるだろう。ギリシャの銀行は営業を再開することができない。次に政府が何らかの形の(建前上は一時的な)通貨代替手段を創設する。その後、人々は暫定的な取り決めが恒久的になったことを理解する。最後に、多くの口論の末にギリシャは新たな通貨を持つことになるが、まだ欧州連合(EU)内にはとどまる。
離脱への道を阻止できるのは、3つの展開の1つ(ないし、それ以上)だけだ。
まず、ギリシャ人は当面、銀行休業に耐えることができる。これは不可能ではない。だが、その見込みは薄い。
次に、欧州中央銀行(ECB)はギリシャの銀行に対する緊急融資枠を拡大することができる。もしECBが通常の中央銀行であれば、まさにそうするはずだ。ギリシャでは銀行取り付け騒ぎが起きている。最後の貸し手として、中央銀行には、そのような取り付け騒ぎに対して資金を貸し付ける義務がある。
もしECBが銀行に支払い能力があると考えたら、融資しなければならない。銀行に支払い能力がないと考えたら、保険がかかっていない債務を株式に転換したり、銀行を新たなオーナーに売却したり、欧州安定メカニズム(ESM)から資金を確保したりして、銀行の自己資本増強を手配すべきだ。
残念ながら、ECBは通常の中央銀行ではなく、中途半端な通貨同盟の中央銀行だ。
ECBは損失から身を守ることで、2012年7月のマリオ・ドラギ総裁の「必要なことは何でもする」という発言が取り除くはずだったリデノミネーション(通貨単位変更)のリスクを再び生んでしまう恐れがある。
恐怖心が恐れられているものを生み出すのだ。
第3に、ユーロ圏諸国の政府はまだ、ギリシャと合意に達することができる。ギリシャ政府が成し遂げようとしているのは、これだ。だが、合意はユーロ圏にとって理にかなうだろうか。この疑問に答えるためには、人々が今、通貨同盟そのものをどう見ているか検討する必要がある。
■誰のための「ギリシャ救済」だったのか
ユーロ圏に対する1つの見方は、これを相互連帯の地域として見ることだ。ギリシャ自身が訴えかけようとしているのは、これだ。それに対する債権者たちの返事は、連帯は相互義務の上に築かれている、というものだ。債権者側は、ギリシャ人は危機の前にも後にも自分たちの義務をごまかしたのだから連帯に値しないと主張している。
ギリシャは銀行休業と資本規制導入を余儀なくされ、市民生活に多大な影響が出ている〔AFPBB News〕
この見方はあまりに単純だ。現在の混乱については、無責任な(主にフランスとドイツの)民間金融機関と、そうした金融機関を救済するためのお金をギリシャに貸し付けた各国政府にも、ほとんど同じくらい大きな責任がある。
この債務の借り換えはギリシャにとって取るに足りない恩恵でしかなかった。
互いに歩み寄るべきだとする連帯の論理は強力だ。ギリシャ人が経験してきた不況を考慮すると、特にそうだろう。
別の見方は取引と関係している。各国はそれぞれ自国民の利益にかなうと考えることをする。その場合、ギリシャと歩み寄る理由は、それ以外の道筋――つまり、グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)――は単に大規模なデフォルトを確実にするだけでなく、ユーロ圏内に恒久的な不安定性を生み出すから、というものになる。
ショックは状況を不安定にする投機につながる。離脱の選択肢がある通貨同盟は、昔の為替相場メカニズム(ERM)の強化バージョンに過ぎず、通貨危機の代わりに債務危機に対して脆い。
一部の中核国は、そのような危機の不安が無責任な借り手に貴重な規律を課すことになるとさえ考えているように見える。
危機から脱しつつある国々の指導者は、緊縮からの楽な脱出を約束する国内の政敵を潰したいと思っている。
一方、フランスは反対側の立場に立っている。フランスにとっては、通貨同盟はERMに代わる制度だった。もしユーロ圏が離脱を認めたら、同盟創設が無駄骨だったということになりかねない。
■離脱リスクをユーロ圏の構造の中核にすべきか否か
要するに、大きな問題は、通貨同盟のメンバーは離脱リスクがユーロ圏の構造の中核になるのを望むべきか否か、ということだ。筆者は望むべきではないと考えている。そのようなユーロ圏は恐ろしいほど脆弱になるからだ。
ギリシャ国旗を背景に撮影された1ユーロ硬貨(右)とギリシャの旧1ドラクマ硬貨〔AFPBB News〕
このリスクに照らすと、少なくともすべての選択肢が尽きるまでは、離脱を強制しない危機解決策を模索することが加盟国の利益にかなう。
各国はギリシャの債務が持続不能であることも認識すべきだ。債務減免は避けて通れない。
では、ユーロ圏は何をオファーすべきなのだろうか。シティグループのウィレム・ブイター氏が考えられる計画を挙げている。
まず、支援プログラムはこれ以上実施しない。次に、ユーロ圏は、ECBと国際通貨基金(IMF)に対して満期が訪れる融資を返済し、それによって向こう数年間ギリシャが直面する流動性問題に対処するためにESMを利用すべきだ。第3に、公的融資残高の返済期日を遠い将来に延長し、債務の支払い金利に上限を設ける。最後に、必要であれば、ギリシャの銀行に資本を注入する――。
その時点で、ギリシャ政府は市場で資金を借りる自国の能力に依存することになる。
もし借りることができなければ、予算を均衡させるか、または新しい通貨を創設して離脱への道を歩み始めるしかない。
ギリシャはいわば「ラスト・チャンス・サルーン*1」にいる。今いる場所のロジックは確実に離脱に傾いている。だが、筆者はまだ、離脱がギリシャの利益、あるいは大半のユーロ圏諸国の利益にかなうということを確信できずにいる。
■あと1度だけのチャンス
各国は別の方法を試すべきだ。代替策では、ギリシャの債務に対する追加支援が正しいと同時に賢明であるという現実を認識する。銀行を政府から保護する方法を見つける。その後は、ギリシャの裁量に任せる。そうなったら、この国に割かれている時間をほかの場所で使うべきだ。
債務が管理可能になり、銀行システムが健全になったら、ギリシャはユーロ圏内かユーロ圏外で独自の道を選ぶかもしれない。最後にもう1回だけチャンスがある。それでおしまいだ。
*1=成功する最後の機会と見なされる状況を指す言葉
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