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「偏差値50のバラ色人生を考えよ!」 ニーズ至上主義の本末転倒 実学重視の教育が凡人を生む 
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投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 17 日 08:53:58: tW6yLih8JvEfw
 

(回答先: 「コネ採用」は制限されるべきか?  「好き嫌い」で決まってしまう人事評価をなくす 社長が考える「優秀な若手」が意外に伸び 投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 17 日 08:14:38)

「偏差値50のバラ色人生を考えよ!」 ニーズ至上主義の本末転倒

実学重視の教育が凡人を生む

2015年6月16日(火)  河合 薫


 今回は、「ニーズと思考」についてアレコレ考えてみる。 

 遂に、大学のカタチが変わることになった。L型とG型。昨年、物議をかもした「ローカル人材を育成するL型」に、多くの大学が移行を迫られることになったのである。

 今月4日。「大学を職業教育学校に」との方針が政府から示され、実践的な職業教育や技能訓練を行う「職業教育学校」に既存の大学や短大などに転換してもらい、2019年度からの実施を目指すことになった。

 職業教育学校とはL型のこと。改革の目的は、産業界のニーズに合った即戦力型の学生の育成。職業教育学校への転換は、少子化で学生の確保に苦しむ私立大学などの救済にもなる。

 続いて、8日。文部科学省は、全86の国立大学に、既存の文学部や社会学部など人文社会系の学部と大学院の廃止や分野の転換の検討を求めた。

 国立大に投入される税金を、ニーズがある分野に集中させるのが狙い。財政事情が悪化する中、大学には「見返り」の大きい分野に力を入れさせるという考えだ。

 職業訓練校の設置自体には反対ではない。だが、産業界のニーズ、即戦力、見返り………、カネ、カネ、カネを臭わす言葉のオンパレードが、どうもしっくりこない。

 とはいえ、“L型”の具体的な内容を忘れちゃった方もいると思うので、ベースとなった「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」と「新たな高等教育機関を『4流の大学もどき』にしないために」という、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏のの資料を、ちょいとばかり振り返っておこう(以下抜粋)。

@ L型大学の学ぶべき内容
 L型大学で学ぶ内容については、以下のように記されている。

 文学・英文学部では、「シェイクスピア、文学概論」ではなく、「観光業で必要となる英語、地元の歴史・文化の名所説明力」を、
 経済・経営学部では「マイケル・ポーター、戦略論」ではなく、「簿記・会計、弥生会計ソフトの使い方」を、
 法学部では「憲法、刑法」ではなく、「道路交通法、大型第二種免許・大型特殊二種免許の取得」を、
 工学部では「機械力学、流体力学」ではなく、「TOYOTAで使われる最新鋭の工作機械の使い方」を、学ぶことになる。

 これらは(例)として書かれたものだが、提案した冨山氏によれば、
 「筆者(=冨山氏)は日本のトップ経営コンサルタントの一人だが、ポーターの5Forcesは使ったことがない」のだそうだ。

A 教員について
 職業大学になれば、教員改革も余儀なくされる。

 「民間企業の実務経験者から選抜し、実践的な教育を実施」し、 「文系のアカデミックライン(Lの大学には、従来の文系学部はほとんど不要)の教授には、辞めてもらうか、職業訓練教員として訓練、再教育を受けてもらう」そうだ。
 「理系のアカデミックラインでGの世界で通用する見込みのなくなった教授も同様」となる。

B Lの大学の評価
 職業大学の評価は、「論文数や研究成果」ではなく、卒業生の就職状況(数と初任給)が基本となる。

 で、これまたちなみに、
 「私(=冨山氏)が卒業したスタンフォード大学のMBAプログラムさえ、その本質はいわば高等簿記学校にすぎない!」のだという。

C なぜ、大学で職業訓練なのか?
 教育改革の柱が職業大学の設置になる理屈は、次のようにされている。

「職業教育」に重点を置いた仕組みにする→ 産業界が必要とする人材を輩出→社会全体の生産性・効率性(≒賃金と安定雇用)を改善!
 産業界のニーズに特化すれば、“バラ色の未来”が待ち受けている……との図式らしい。

 ついでに、冨山氏が日経新聞のインタビューに答えていた内容も追記しておく(日本経済新聞5月27日付朝刊「大学で職業訓練せよ 普通の学生には実学重視」より)。

 「過半数が大学に行く時代に、職業訓練は原則しないというのは間違っている。平均的能力の学生がよりよい人生を送れるようにするため、何を教育すべきかを第1優先順位に考えるべきです」

自分の人生を他人に考えてもらわなくていい

 よりよい人生……か。ううむ、な、なんだろう……。このなんとも言えないムラムラ(アッ、違う)、ムカムカ(アッ、言い過ぎ)、モヤモヤ……そう、モヤモヤ感。論理的に持論を展開し、日本の未来を考えている方には申し訳ないけど、

 「超グレートなオレ様レベルの学生以外は、企業のニーズに合った人になってね。大丈夫! 何にも考えなくていいよ。ちゃんとキミがいい人生を送れるように、ニーズに合ったスキルを教えてあげるからさ」

 そんなふうに言われてる気分になった。

 あんまり賢くないオツムは稼働させなくていいから、手を動かして!
 ニーズに合った知識と、ニーズに合った技術だけで大丈夫!
 だって、僕たちグレート軍団が、“キミたちがいい人生”を送れるようにちゃんと考えるからさ!と。

 いや、もちろん「よりよい人生を送れる」ために本気で、めちゃくちゃ考えてくださったのだと思う。

 でも、「あなたのため」とか、「キミのために言うけどさ」と、その人の“枠”の思考と価値観に入れられてしまうのって、ちっともうれしくない。人生まで考えてくれなくていいよ……などと、つい、ホントについ、ひねくれた感情がわき立ってしまうのだ。

 まぁ、私の個人的感情は置いとくとして、日本の大学が今、大きく変わろう、いや、変えられようとしているのは紛れもない事実。昨年5月に行われたOECD(経済協力開発機構)閣僚理事会で、安倍晋三首相が
「私は教育改革を進めています。学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な職業教育を行う」と宣言した通り、教育の場は数年前の「英語至上主義」から「ニーズ至上主義」へ。

 「思考する場」から、「実学の場」へ。

 超グレートなオレ様たちの枠に入れられる方向に進んでいる。

 一体この改革のどこを「教育改革」というのだろう? どうも合点がいかない。

 何度でも繰り返すが、私は職業訓練校を作ること自体には反対はしていない。

 以前、本コラムで書いた通り、スイスのデュアルシステムのように、国と企業が共同で訓練校を運営し、現場と理論、頭と手、考えながら動く、といった実践的なキャリア教育の場を学生に提供するシステムには、大賛成だ。

15歳で自分の人生を決める

 だが、今回の職業訓練校は、デュアルシステムとはかけ離れている。デュアルシステムは、学歴偏重主義にこだわらない社会と、子どもたちの生き方を尊重しようとするオトナたちの温かいまなざしの上に成り立っている。

 スイスでは約300種の職種が準備されていて、子どもたちには、どの職種を選ぶかを思考する教育がしっかり行われている。

 カントン(州)によってやり方は若干異なるが、大抵の場合、義務教育の最後の2年間に、適応訓練と呼ばれる制度を取り入れている。

 毎週2時間程度、職業選択のための授業を学校の先生だけでなく、様々な職種の人や、企業などが担当し、子どもたちが社会のナマの声を聞ける時間を作る。

 そして、「この仕事をもっと知りたい」と思った子どもには、企業を訪問する機会も設けられている。何社でも訪問が可能。子どもたちの意見や気持ちを最大限に尊重し、子どもたちが納得するまで、子どもたちの不安が解消されるまで、学校、地域、企業のオトナたちが連携して、とことん全力でサポートする。

 適応訓練は、単なる職業選びの時間ではなく、15歳という、まだ若い、幼さの残る子どもたちの自立心と責任を育む期間。子どもが将来を決める思考のプロセスに、オトナたちも真剣に参加しているのである。

 しかも、“選択”は途中でもやり直すことができる。職業訓練校で「もっと学びたい」と思った学生は、単科大学扱いの高等専門学校への転校が可能。

 産業界のニーズに合った教育じゃない。オトナになって社会で生きていく将来の子どもたちのニーズに合った教育システム。カネじゃなく、ヒト。今回、手が付けられようとしている教育改革に、その“視点”がちょいとばかり、欠けてやしないだろうか。

 だいたい「TOYOTAで使われる最新鋭の工作機械の使い方」を学んでいるうちに、TOYOTAの最新鋭の工作機械は旧型になるかもしれないわけで。ニーズなんてものは、時代とともに変わる極めて短期的なものでしかない。

 「ニーズを踏まえ廃止・転換促す」というけど、狂牛病の病原体のプリオンの研究をしていた大学の研究者たちは「そんな世の中に役に立たない研究をするな」と常に非難の的だった。ところが、狂牛病が起こり、プリオンの基礎研究をやっていた研究者たちの知識が役に立ち、一気に脚光を浴びた。

 グローバル人材っていうけど、どんなに実践的な英語を話そうとも、「日本人」は日本人として見られる。古事記や日本書紀を語ることもできない人を、グローバルな人と言えるだろうか。

 「よりよい人生」っていうけど、海ほたるで真っ赤な沈む夕日に出くわしたとき、海ほたるをあれこれ説明されるより、シェイクスピアの一説でもつぶやいてもらった方が、ホレるぞ。あっ、これは関係ないか。

 いずれにしても、大学は、いや、せめて大学くらいは、ニーズとか、産業界とか、生産性とか、とは無縁の場であってほしいし、思考する力の必要性を否定する人はいないはずだ。

 今の社会では、極端なことを言えば、スイッチの押し方さえ分かれば、どうにでもなる。人間が頭など使わなくても、コンピューターが勝手にうまいこと考えてくれる世の中になりつつある。

 会社でも、上司の言われる通りに動いていれば、とりあえずは生きていけるかもしれない。でも、そんな部下を産業界の、どこの、誰が、求めているというのだろうか。

 既存の価値感や考え方を疑い、自由に考えることが求められるんじゃないのか。

 何のためになるか分からないような、ちゃんとした「ドット(=知識、経験、研究)」をベースに、点と点を結んでいく自由な思考力が必要だと思うのだが、政府はそれをしなくていいのだという。

 ニーズに合った実務的なスキルのある人材を輩出すれば、社会の生産性が上がり、当人にもバラ色の人生が待っている、と。超グレートなオレ様たちは言っているのだ。

葉っぱに絵を描いて成長を確かめる

 何度か書いたことがあるのだが、小学生の低学年くらいまでは、自由な思考をする力がある。

 学生時代に家庭教師のアルバイトで教えていた小学3年生の子どもは、家の観葉植物の葉の一枚一枚に、マジックで似顔絵を描いた。それを見た母親は「何てことするの!」と激怒したが、子どもは、「植物の小さな葉っぱが、どうやって大きくなるのか?」を確かめるために描いた。

 「葉の周りから髪の毛が伸びるように成長していくのか? それとも自分の背が伸びるように葉全体が大きくなっていくのか?」。それを確かめるために葉っぱにお絵描きをし、自分の疑問を解決しようとしたのだ。

 子ども向けのお天気教室でも、低学年の子どもたちは、実に自由だ。
 「雨はどこから降ってくるのかな?」と問いかけると、
 「地面!」
 「水道!」
 「天井!」
 など、奇想天外な答えを、実に楽しそうに連発する。

 地面と答えた子どもは、「キャンプにいって雷がなって、パパが危ないから帰ろう!って車に乗ったら、地面からバシャバシャと降ってきたの!」と言い、
 水道と答えた子どもは、「ポトン、ポトン、って音がする方に行ってみたら、蛇口から雨が降ってた!」と語り、
 天井と答えた子どもは、「ママが大変!っていって、バケツを持ってきたの」とオトナたちの笑いを誘った。

天才だった子どもが凡人になる

 どの答えも、間違いじゃない。だって、雨は大気の水の循環だ。この「雨」から、アスファルトを学び、土壌の知識を習得すればいい。水道の仕組みを調べれば、なぜ雨が必要なのかを考えるきっかけになる。天井は…(笑)、建築の学びにつながるかもしれない。

 ところが、高学年になると、先ほどの答えは
 「上昇気流で雲ができて、雨は雲から落ちてきます!」と胸を張って答える。

 「じゃあ、上昇気流って何?」と聞くと沈黙し、
 「雨はなぜ、雲から落ちてくるの?」と聞くと、「まだ、習っていません」とふてくされる。

 天才だった子どもたちが、高学年になるとオトナの用意した答えを探す凡人になる。胸を張って正解を言えても、ちっとも楽しそうじゃない。

 そうなのだ。自由に思考することは、胸をときめかせる、実に楽しい知的な遊びだ。宇宙人のことをアレコレ議論すると、なぜ盛り上がるのか? サラリーマン川柳がなぜ、人気なのか?

 自由な思考を養い、思考を欲する教育が、今の日本には必要なんじゃないのか。教育改革をするなら、小学校からすべき。自分でよりよい人生を送れる、自由に思考する力を身に付けるために何をすべきか。それを“第1優先順位に考えるべき”だ。

 最後に、ぜひともみなさんにも自由に思考してもらいたい“ネタ”を書いておきます。

 今回の教育改革の審議が行われた「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」(座長:黒田壽二 金沢工業大学学園長・総長)の最終報告書には次のように書かれている。

 「4年課程の修了者が就職時に大卒と同等に処遇されることにより、新しい教育機関の位置づけが社会的にも既存の大学等と比肩するものとなるような配慮を期待する」

 前述した、「新たな高等教育機関を『4流の大学もどき』にしないために」では、学生保護機構(仮称)の設置なるものが書かれている。

 「プロフェッショナルスクール(PS)(=Lの大学)は、経営破綻に備え、学生保護機構(仮称)に保険料を拠出し、経営破綻した場合、機構は当該PSの整理支援・学生への資金援助等を行う」

 20年ほど海外の大学で研究をしていた知り合いの大学教授が、久しぶりに日本に帰ってきて驚いたと言っていたことがある。

 「いつのまに私大は、天下り先になってしまったのか」と。

「訳の分からない機構や財団、定年年齢が高く天下り先候補の私立大学の乱立、天下り先の民間企業との共同研究などなど。日本のアカデミズムはどこにいってしまったんだ」と。

 ふ〜ん、なるほど……。ニーズ、ね。教育改革の目的。自由に思考してみましょうかね。

このコラムについて
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20150612/284213  

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