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新たな米住宅危機の到来
NICK TIMIRAOS
原文(英語)
2015 年 6 月 8 日 14:33 JST
新規形成世帯の人種別比率(上からヒスパニック、黒人、他のマイノリティー、白人)/マイノリティー世帯の住宅保有比率の推移/賃貸世帯の増加数
過去10年間続いてきた米住宅危機は、その姿を新たなものに変えている。住宅購入に必要な所得や貯蓄を持たない世帯が多いため、賃貸住宅に住む人が急増し、しかも手頃な価格の住宅が不足しているのだ。
足元の住宅危機は、サブプライム(信用力の低い借り手)ローンが急増した2000年代初めとは様相が大きく異なるが、一つだけ同じ特徴がある。政策当局が見たところ危機に気づいていないか、あるいは気づいていてもあまり対応には乗り気でなさそうな点だ。
米国の持ち家比率は現在63.7%で、クリントン大統領(当時)が全米レベルで住宅購入奨励策を導入した20年前の水準よりも低い。持ち家比率はこのまま横ばいに推移し、住宅バブルまでの10年間の水準で安定するというのが一般の見方だ。
しかし、シンクタンクのアーバン・インスティテュートの調査によると、こうした見方は間違っている可能性が高い。同社の予想では、持ち家比率は少なくともあと15年にわたり低下し続けるというのだ。
人口動態はこうした見方を支持している。同社の調査員らは新たに形成される世帯のうち、マイノリティー(少数派)の世帯が占める割合は2010年代に4分の3を超え、20年代に8分の7に達すると予測している。ヒスパニックが半数近くを占めるこうした世帯は、所得、富、持ち家比率がいずれも全米平均を下回る。
結局のところ、20年代末までに新たに生まれる世帯のうち、持ち家に住む世帯は半数に届かないということだ。対照的に、1990年代に形成された世帯の持ち家比率は約75%だった。こうした傾向が続いた場合、持ち家比率は2020年に62%を割り込み、30年には、記録が始まった1965年以降で最低となる61%近くまで落ち込むだろう。
持ち家比率の低下は、賃貸住宅住まいの世帯が急増している表れだ。賃貸世帯の増加は賃貸料の上昇を引き起こしている。国内有数の集合住宅開発業者、トラメル・クロウ・レジデンシャルの経営に20年来携わってきたロン・ターウィンガー氏によると、こうした家賃の値上がりと住宅ローン審査基準の厳格化を受け、住宅を買いたくてもローンを受けられない一方で家賃も高すぎて払えない、といった窮地に陥る世帯が増えているという。
カリフォルニア州サンタモニカ中心部の新築高級集合住宅、ギブソン・サンタモニカのオープンイベントに訪れた人々 Richard Vogel/Associated Press
賃貸の世帯は所得に占める賃貸料の比率が大きいため、ローンの頭金のための貯蓄もそれだけ難しいかもしれない。直近の景気拡大期で経済押し上げにあまり寄与できていない住宅市場にとって、このことは足かせとなりかねない。
1981〜97年に生まれた約7500万人規模のミレニアル世代が成人を迎え、社会人として独立していく中で、住宅建設が増加することは確実だ。アーバン・インスティテュートの調査員の1人、ローリー・グッドマン氏によると、問題となるのは、単に純然たる需要に見合う住宅を供給することではなく、むしろミレニアル世代世帯の富が従来の世代よりも少ないことだという。
賃貸住宅の建設はすでに急増している。今年の新設集合住宅はほぼ40万戸に達する見通しで、これは25年ぶりの高水準だ。だがターウィンガー氏は、その圧倒的大半が都会に住む専門職の若者向け住宅だと指摘する。開発業者は当面、分譲・賃貸向け高級住宅の建設だけで十分やっていけるため、結果的に値段が手頃な住宅の供給が不足している。
一つ気掛かりなのは、取得費用を考えると、持ち家は今後も一部の人たちにとって高嶺の花でしかないということだ、と同氏は言う。特に金利が上昇すれば負担は一層増える。
さらに、ローンの審査基準を満たした世帯であっても賃貸住宅から持ち家に移ることができないという懸念がある。住宅費用負担、賃金の伸び悩み、学資ローンなどに圧迫され、少額の頭金でさえも工面が難しくなるからだ。
住宅ローン担保証券(MBS)の生みの親の一人、ルイス・ラニエリ氏は「米国はこのことに気づかずにのほほんとしている」と話す。MBSが誕生したおかげで、ベビーブーム世代の大多数が1980年代初めにマイホームを取得した。同氏は「10年もしないうちにわれわれは急ピッチで危機に突入するだろう」とみる。
一方、政治家の間では、住宅問題よりも社会保障制度への関心の方がずっと大きい。同制度の原資は2030年代初頭まで枯渇することはない見通しであるにもかかわらずだ。
2000年代初めと同様、政府は住宅コスト危機への対応策として、まだ金銭的な余裕ができていない世帯にまで住宅購入を促進する手に出るのではないかと懸念する声も上がっている。ただ、銀行は住宅ローン審査に対し当時よりもはるかに慎重な姿勢を取っているため、そのような政策が打ち出される可能性は低い。
ではどうすればよいのだろうか。財政上の制約を考えると、政府に住宅関連支出の増額を期待するのは現実的でないかもしれない。共和党支持のターウィンガー氏は、従って今後は歳出配分の見直しに焦点を当てるべきだと指摘する。同氏は、こうした主張を推進するための基金を月内に正式に立ち上げる方針だ。同氏は16年大統領選後の法制化を目指している。選挙後の政局変化に伴い住宅政策も塗り替えられることが予想されるからだ。
政府の住宅関連予算は現在、年間およそ2000億ドル(約25兆円)で、この大半が税額控除を通じたものだ。予算の4分の3近くが持ち家政策に充てられており、そのうち最大比率を占めるのが年間1000億ドル程度の住宅ローン金利減免だ。
米議会予算局(CBO)によると、年間所得16万ドル超の富裕世帯上位20%がこの税額控除の75%を受け取っている。住宅保有者の多くは、税額控除を申請していないため、直接的にはこうした控除の恩恵に預かっていない。
過去20年間の住宅政策の失敗を鑑み、政府は、連邦政府の住宅支援の大半を高級住宅に住む富裕層に充てている現行政策を考え直す必要がある、というのがターウィンガー氏の主張だ。政府は既存の補助金対象を見直し、住宅購入に備えた若年世帯の貯蓄支援に回すべきだという。
金利減免の予算を縮小すれば、賃貸住宅対策のための資金を捻出できるだろう。政府は低所得世帯向け税額控除の拡大によって開発業者の事業意欲を喚起し、値段が手頃な住宅の建設を促進できるかもしれない。
政治的には、このどれもがたやすいことではなさそうだ。住宅所有者を犠牲にして賃貸世帯を支援するというゼロサムゲームだと指摘する人もいる。
だが、ターウィンガー氏は、違うと言う。賃貸住宅住まいの人たちが絶対に持ち家を取得できなければ、現在の住宅保有者が家を売却する必要が生じた場合、買い手がいなくなるというのだ。
- ダウ理論が告げる米株の調整入り 近づく米国株の調整−堅調な雇用統計が示唆 米小売売上高改善か 投資を成功させる5つの基本 rei 2015/6/08 17:03:59
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