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[大機小機]日銀総裁は職務に専念すべし
2月12日の経済財政諮問会議での黒田東彦日銀総裁の発言が話題になっている。政府に財政再建の推進を強く求めたという。
日銀総裁がこのような発言をすることには問題がある。なによりもまず、日銀総裁は課された使命を果たすべきだ。それは2013年1月22日に政府との間で締結された合意文書に始まり、13年4月4日の量的・質的金融緩和発動時の記者会見で明示された「2年程度で2%のインフレ率」を達成することだ。
現状では、日銀はこの課題を達成していない。2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、ついに2%にまで下がった。消費税増税分を除けばゼロである。インフレ率低下の理由には、原油安と消費税増税の影響が考えられる。このうち原油安は中長期的に日本経済にとってはプラスの要因である。問題は消費税増税の影響がもたらす内需の低迷だ。
今後について日銀の見通しは強気だ。しかし日銀が4月に発表した生活意識に関するアンケート調査、企業短期経済観測調査では企業と家計の予想インフレ率は横ばいか、やや低下している。
中央銀行総裁が財政政策について発言することが常に望ましくないわけではない。財政政策と金融政策は密接に関連している。長期的に財政再建が必要というのもその通りである。しかし、問題はデフレ脱却と財政再建にとって最も有効な政策は何かである。現時点での増税による緊縮財政はデフレ脱却と財政再建をむしろ遠のかせてしまう。
これに対して黒田総裁は名うての消費税増税論者であるから、話は複雑になる。昨年4月の消費税増税が需要を落ち込ませ、日銀のインフレ目標と財政再建にとって障害となっているのは明白だ。仮に黒田総裁が財政再建について発言するならば、性急な消費税増税に対して政府に慎重姿勢を求めるのが筋である。あるいは金融緩和は消費税増税の影響を打ち消すほどであるというのなら、現状で目標未達であることの理由を明確に説明すべきだろう。
ここまでの黒田総裁の業績はまことに大きい。しかし、2年程度で2%のインフレ率を達成するという約束は達成されない可能性が大きい。黒田総裁は日銀総裁としての職務に専念すべきである。
(カトー)
[日経新聞4月17日朝刊P.17]
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[真相深層]国債保有規制に強い懸念
黒田総裁、首相への直言全容は… 財政再建重視、持説曲げず
財政再建を巡り、黒田東彦日銀総裁が安倍晋三首相に直言した2月の経済財政諮問会議でのやりとりが14日分かった。公表済みの議事要旨では削除されていたが、黒田総裁は「(2020年度の基礎的財政収支黒字化に)もっと本腰を入れてやらないといけない。リスキーな状況になってきている」と強く主張した。首相と日銀総裁の間に緊張が走った会議の模様を再現してみると……。
「ここからはセンシティブな話なので、外に出ないように議事録から外してもらいたい」
2月12日午後5時から首相官邸4階大会議室で開いた諮問会議。やや遅れて入室した安倍首相も交えた議論が一気に張り詰めたのは黒田総裁がこんな「オフレコ要請」を口にした瞬間だった。
「欧州の一部銀行は日本国債を保有する比率を恒久的に引き下げることとした」
消費再増税の先送りを決めた昨年秋以降、日本国債の格下げが相次いだ。国際的な銀行の資本規制では「外国の国債についてはその格付けに応じて資本を積まなければならない。格付けが下がるとどうしても外国の国債を持たなくなる。現に欧州の一部の銀行がそのように動いた」。黒田総裁はこう指摘した。
現時点で格下げの影響が軽微だったことは黒田総裁も認めている。「国債保有者に占める外国の銀行等の比率が6〜7%ぐらい」だったため「国債の金利にはほとんど影響がなかった」。会議の約3週間前、日本の長期金利は0.195%まで低下したほどだ。だが、黒田総裁には先行きへの懸念が強かった。
「これからお話しすることはもう少し深刻な話である。実はドイツ、アメリカ、イギリスなどが強硬に、銀行が自国の国債を持つことについても資本を積むべきであると主張している」
いまの規制では銀行が自国の国債を持っていてもリスクとはみなされないが、ドイツなどの言い分が通れば、日本の銀行は保有する国債の量に応じて資本を積み増す必要が出てくる。事実、(国際規制を決める)バーゼル銀行監督委員会は今年に入ってから具体的な議論を始めたもようだ。
「とんでもない話。日本やイタリアが反対しているためなかなか合意に至らないと思うが、ドイツや米国が自国でそういった規制を導入する可能性がある」
そうなれば「アナリストは日本の銀行がどれほど国債を持っているか、同じルールが適用されればどれほど資本が不足しているか言い立てるようになる」と総裁は心配する。国債の格付けが低いほど必要な資本は多くなりかねない。「資本不足と言われるのを恐れ(銀行は)国債を手放してしまうかもしれない」
安倍政権発足直後の13年1月、政府と日銀は共同声明を発表した。同声明では日銀が2%の物価目標の導入を打ち出す一方、政府が「持続可能な財政構造確立への取り組みを推進する」ことも盛り込んでいた。だが異次元緩和をテコに低金利が日常となるなかで、政府・与党内には「低金利ボーナス」を活用した財政出動拡大論も浮上する。
安倍首相はこう応じた。「格付け会社にしっかりと働きかけることが重要ではないか。(政府の1000兆円規模の債務総額である)グロスで見ると確かに大きいのだが、(政府債務から資産を差し引いた純債務である)ネットで見ると他国とあまり変わらないという説明などをしなければならない」
これに対して黒田総裁は「まさに総理のおっしゃる通り」と言いつつ、持説を貫いた。
「私が財務官の時(2002年)日本国債がボツワナ国債と同じ(ような)格付けにされてしまい2つの格付け会社の社長にまで説明をしたが格付けが変わるということはなかった。またあの時は日本の債務残高も国内総生産(GDP)比で現在の半分程度であった」
政府は今年夏までに財政健全化計画をつくる。日本の成長力を高めつつ、財政の健全化もきちんと進めてほしい。その軸がぶれれば、脱デフレのための異次元緩和が、政府の財政赤字を穴埋めするための国債購入にすぎないと金融市場が見なしてしまう。こんなことを黒田総裁は恐れているようだ。
(石川潤)
[日経新聞4月15日朝刊P.2]
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金融政策、物価偏重に懸念 浜田内閣官房参与に聞く 「日銀は雇用に目配りを」
安倍晋三首相の経済政策の助言役を務める浜田宏一内閣官房参与は13日、日本経済新聞の取材に応じ、日銀は物価目標に加え、雇用情勢にも目配りすべきだとの見方を表明した。
――物価上昇率を2年で2%にするとした日銀の目標をどうみますか。
「インフレ目標はそんなに重要ではない。インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい。日銀も我々も2〜3年前に石油価格が半分以下になるとは思っていなかった。その責任を日銀がとる必要はないから(エネルギー価格の影響などを含んだ)消費者物価指数を目標とするのは合理的ではない。(デフレの主因である)需給ギャップが狭まっていることは間違いない。2%というのはどちらかといえばインフレの上限とみるべきだ」
「雇用の方を目標にするのが正攻法だ。(安定雇用のための)手段として中間目標の物価目標がある。完全雇用で成長率が良ければ(2%目標に)こだわる必要はないといってもよい。ただ、いまの状態ではインフレにしない限りそういう事態にはできない」
――成長率を高めるにはどのような政策が必要になりますか。
「法人税についてはまじめに考えてほしい。日本の法人実効税率は米国とともに世界的にみても高い水準だ。日本が法人税を10〜15%下げるといえば、投資機会を待っている外国企業から多くの投資が回ってくる。日本の投資がシンガポールに逃げていかない。日本は(20%台前半の)英国や韓国よりも下げるというジェスチャーが必要だ」
「欧州の例では法人税を下げたけど法人税収はかえって上がったという逆説がある。法人減税によって財源不足になるというのを心配する必要はない。法人税の逆説はむしろ正論といえる」
――中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本は参加すべきでしょうか。
「どういうルールで資金を配分するのかなど何も決まっていない。ガバナンスの正確なルールがなくて入ってどんな良いことがあるのか。ルールを決めて日本に有利なら入ってもよいとする日本の考えは正論だと思う」
[日経新聞4月14日朝刊P.5]
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