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天才起業家の呼び声も高いイーロン・マスク(左)だが……
テスラEVの経営体質に危うさ 「マスク信仰」いつまで続くか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160123-00000005-pseven-bus_all
NEWS ポストセブン 1月23日(土)7時0分配信
稀代の天才起業家か、はたまた大言壮語のホラ吹きか――。電気自動車(EV)や太陽光発電を全世界に普及させることで地球環境を守り、最終的には「人類を火星に移住させる」という途方もない野望に向かって宇宙ロケット事業まで参入している米国の経営者、イーロン・マスク氏。
そのマスク氏がCEOを務めるEVメーカー、テスラ・モーターズが日本での知名度を上げつつある。
もともと同社は2010年に日本市場参入を果たし、ノートPCなどに広く使われるリチウムイオン電池を約7000個も搭載したEVスポーツカー『ロードスター』やセダンタイプの『モデルS』を販売してきたが、認知度はいまひとつだった。
自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がいう。
「テスラ車は名だたるスーパーカーをも凌ぐほどの加速性能や、路面状態に合わせディスプレイ操作で車高を自由に変えられるなどの革新的なクルマづくりで、欧米では高い評価を受けています。『ロールスロイス』や『ベントレー』に代表されるプレステージカーから乗り換える人までいるくらいですからね。
ただ、いかんせん1000万円を軽く超える車体価格に加え、EV自体が次世代車の主役になっているわけではないので、ごく一部の富裕層にウケているのが実情です。日本ではさらに、スピードを実感しにくい道路環境や、充電設備が整っていないことも認知度がなかなか上がらない理由です」
テスラ社は販売台数を公表していないが、調査機関のレポートによれば急速充電スタンドを張り巡らせる全米でも、モデルSの売れ行きは年間3万台に届いていない模様なので、日本は推して知るべしだ。
しかし、マスク氏はテスラ車のプレゼンスを高めようと、次なる布石も打っている。モデルSユーザーに提供される新たなソフトウェアをインターネット上で更新するだけで、高速道路での車線変更や追従走行、一般道の縦列駐車など「自動運転機能」を追加することができるというものだ。日本でも国内メーカーに先んじて国交省の承認を得たことで、驚きの声が広がっている。
さらに、今年から家庭用・法人用の蓄電池市場に参入したり、車体価格が400万円前後と噂される普及タイプの次期EV「モデル3」の予約も開始する。
日本市場への攻勢を強めるテスラだが、ここまで規模を拡大できたのも日本メーカーの協力があったからに他ならない。
「これまでテスラ車に積んでいたリチウムイオン電池のほとんどをパナソニックが生産供給してきたうえ、過去にはトヨタ自動車ともEV開発に関する業務提携を結び、約50億円の出資を受けた。パナソニックの津田一宏社長、トヨタの豊田章男社長ともにマスク氏とホットラインを持ち、テスラの壮大な事業計画を後押ししてきた」(経済誌記者)
ところが、手の平を返したようなマスク氏の強引で横暴な経営ぶりに、日本メーカーも距離を置き始めているという。
リチウムイオン電池の一部をパナソニックと競合する韓国のLG化学から調達したり、「燃料電池は永遠の“ミライ技術”でクソ」と、トヨタを敵に回すような発言をしたりと、マスク氏の言動に不信感を持つ向きも多い。さらに、社内では無謀ともいえる目標を課し、達成できない社員や自分の気に入らない部下は次々と首を切る“超ワンマン”な一面も報じられている。
日本でいえば立派なブラック企業といえるが、こんな危うい経営体質でテスラの未来は本当に明るいのだろうか。
「マスク氏は思い込みと信念の経営者。ときに破滅的な言動で批判を浴びますが、常にシリコンバレー生まれの斬新な発想でクルマづくりを追求しているので、自社の守りを優先する重工業的なメーカーとは違うという自負があるのでしょう。投資家は会社の業績云々よりも、そうしたマスク氏の情熱とカリスマ性にお金をつぎ込んでいるのです」(井元氏)
とはいえ、なかなか夢に現実が追い付かないようでは、マスク信仰もいつまで通用するか分からない。井元氏が続ける。
「テスラ社の経営は、莫大な初期投資を回収できるようなビジネスモデルにはなっていません。クルマの量産により、ようやく単年度黒字になるかどうかのラインまで来ましたが、累積赤字を解消するメドも立っていないのが現状です。
世界中でEVを普及させると掲げている以上、今後はさらなる販売促進策を打つ必要があります。日本市場でも、もっと富裕層に食い込んだマーケティングや営業活動をしなければ、いくら革新的で感動させるクルマを作っても振り向いてもらえないでしょう」
EV開発にせよ、宇宙ビジネスにせよ、マスク氏は壮大な夢を少しずつ実業に結び付けていることは確かだが、未来の可能性を広げる本当の正念場はこれからといえる。
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