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世界株安連鎖、震源地は日本
http://www.nikkei.com/money/gold/toshimagold.aspx?g=DGXMZO9637445021012016000000
2016/1/21 17:13 豊島逸夫の金のつぶやき 日経新聞
いま、世界で一番注目されている株式市場は日本。そして、最も注目の通貨は円である。昨日(20日)今日(21日)と、日本発世界株安連鎖が意識され始めた。
世界の投資家が、日本株を売ることで、アベノミクスへの不信任票を投じている。そのアベノミクスの司令塔たる人物の一人に、金銭授受疑惑が浮上したことも、なんともタイミングが悪い。海外勢も日本の政局に強い関心を寄せている。
頼みの綱は日銀追加緩和だが、バズーカの大砲はあっても、弾丸が尽きた印象を海外には与えている。ヘッジファンドのなかには、追加緩和発表で一時的に上がったところは、絶好の売り場と意気込む輩(やから)もいる。政策効果の賞味期限は48時間程度と言ってはばからない。もし自分が日銀の立場だったら、なんといわれようと、やるぞと言い続けて、売りへの抑止効果を狙う、とまで語る。やったら、それで、おしまい。やらないほうがマシというわけだ。
内部要因として注意すべきは、昨日あたりから、信用取引の追加証拠金(追い証)の連鎖が見られ始めたこと。さしたる理由もなく、2日で日経平均が1000円以上下げたことの理由の一つとして挙げられよう。
相場の怖いところは、こうなると、後講釈でなんといおうと、低い価格水準で新たなレンジが既成事実として形成されてしまうことだ。これまで下値のメドとされていた1万7000円が、1日で上値抵抗線と化してしまう。しかも、プログラム売買が機械的に売り注文を発動するので、これまでの「相場の法則」が役に立たないことが頻繁におきる。企業業績というミクロ要因も、マーケットの売りのエネルギーに圧倒されるパワープレーの世界なのだ。
この下げの連鎖を断つには、日本側からの回復要因が見えぬ限り、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長あるいは米連邦公開市場委員会(FOMC)の「一言」しかない、と筆者は感じている。
上海株と人民元は当局のなりふりかまわぬ介入で支えるのがやっと。原油価格は政策対応や国際協調が効かない。生産者が我慢比べに徹し、石油輸出国機構(OPEC)が価格調整役を放棄したことは、市場原理に任せたということ。原油市場の市場原理とはニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物市場での売買による価格形成ということだ。ここは、いずれきたるべき自律反転を待つしかあるまい。
その点、米国の政策金利は、その名の通り、政策対応で決まる。来週のFOMC声明文で、利上げ回数1〜2回とほのめかせば、政策の先行きを示すフォワードガイダンスとして、市場の不透明性を和らげる効果が歓迎されよう。
米利上げが、今回の世界株安要因の全てではないが、そもそもの原点にはなっているので、その帰趨(きすう)が市場に与える影響は依然大きい。
「中銀依存の相場」といわれようと、「NY市場頼み」といわれようと、とにかく負の連鎖にブレーキがかからないと、原状回復はなるまい。
豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
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