【日本株週間展望】4週ぶり反発へ、日米中銀の協調注視−動き荒さも 2016/01/22 16:50 JST (ブルームバーグ):1月4週(25−29日)の日本株は、底値を固めつつ4週ぶりの反発を目指す。欧州中央銀行(ECB)総裁が金融緩和拡大の可能性を示唆、世界市場の混乱を収束させるため、日米の中央銀行が協調姿勢を取れるかどうかに注目が集まる。原油価格の動向がなお不透明で値動きの荒さは残るものの、国内企業決算で業績堅調を確認すれば、相場も徐々に安定へ向かう。 第3週の日経平均株価は週間で1.1%安の1万6958円53銭と3週続落。下げ止まらない海外原油価格や株安連鎖で世界的なマクロ景気への不安が広がり、20日の取引で2014年10月31日以来、およそ1年3カ月ぶりの安値に急落。21日も大きく下げ、年初からの下げ幅は3000円を超えたが、ドラギECB総裁の追加緩和示唆と原油反発などを材料に週末は一気に1000円近く買い戻された。 第4週は米国で26ー27日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、国内では28ー29日に日本銀行が金融政策決定会合を開く。金利先物が織り込む今回の米利上げ実施の確率はゼロ。市場関係者の間では年内4回の可能性が指摘されてきた米利上げ回数について、連邦準備制度理事会(FRB)首脳からハト派的な示唆が出るかどうかが注視されている。国内でも年初からの株価急落を受け、追加緩和措置への期待が高まってきた。 日本株投資家の恐怖心理を表す日経平均ボラティリティ指数は22日時点で41.1。前日の42.8からはやや低下したが、中国株波乱が始まった昨年8月以来の高水準にあり、引き続き値動きの荒い展開が想定される。こうした中、国内主要企業の決算発表が始まり、26日に三井住友フィナンシャルグループ、28日にファナックやキーエンス、信越化学工業、29日はホンダやソニー、村田製作所、JR3社、コマツなどが予定。経済統計では、29日に国内で昨年12月の鉱工業生産や家計調査、米国では26日に1月の消費者信頼感指数、28日に昨年12月の耐久財受注、29日に10ー12月期の国内総生産(GDP)が公表され、相場を動かす可能性がある。 ≪市場関係者の見方≫●アストマックス投信投資顧問の山田拓也シニアファンドマネジャー 乱高下を繰り返しながら少しずつ底値を固めるイメージ。外部環境の落ち着きが一番大事だが、企業決算が心配したほどでなければ、3、4%上下動するような相場は少しずつ解消されていく。原油価格は少し下げ過ぎている。価格が下がれば当然利用者も増え、絶対値として使わないといけない量がある。さらに1バレル=10ドルになるというのは少しナンセンス。 ●大和住銀投信投資顧問の岩間星二シニア・ファンドマネジャー テクニカル指標からも一定の戻りは十分期待できる。来期1桁台後半の増益が2カ月前の前提だったが、それは少し厳しい。為替が少し円高に進み、世界経済の見通しも新興国中心に怪しくなっている。それでも割安ではある。春闘が始まったばかりで、物価見通しを日銀は弱めに見始めているようで、日銀がアクションを起こす可能性はある。ただ、国債購入額を10兆円増やすとなると、購入の限界に近づいているという認識になってしまうかもしれず、行動が難しい。 ●野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジスト 下げ止まりから反転を探る展開とみて良い。日米欧のG3がマーケットの混乱に対し目線をそろえるということが確認できれば、市場心理は落ち着こう。米国は間違いなく政策据え置き。声明文、周辺の発言などで市場の混乱を見ているとの話が出てくると、実際のアクションがなくても目線がそろってきていることになる。日銀も経済見通しの改定をするため、インフレ率を下げるとき、緩和を行わなくて良いのかということになり、アクションを起こす可能性はある。なかったとしても、市場の混乱をきちんとみているとのメッセージは出てくるだろう。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 竹生悠子 ytakeo2@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 院去信太郎 更新日時: 2016/01/22 16:50 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1CDCE6JTSES01.html
Business | 2016年 01月 22日 15:41 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 日経平均941円高、ECB緩和示唆で買い戻し 値上がり銘柄99%に [東京 22日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は3日ぶりの反発。上昇幅は前日比で941円27銭と今年最大となった。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が3月の追加緩和を示唆したことで、欧米株が上昇。原油価格の下落一服に加え、日銀追加緩和への期待感も支援材料となり買い戻しの動きが広がった。 東証1部銘柄の99%が上昇する全面高商状となり、節目の1万7000円に接近した。 日経平均は前引け時点で575円高と堅調に推移していたが、直近で荒い動きを続けており、警戒感もくすぶっていた。前日に2015年4─12月期決算を発表した日本電産(6594.T)が4%近く上昇してから一時下げに転換したことも、不安材料として意識された。 後場の寄り付き後に日経平均はいったん上げ幅を縮小する場面があったものの、底堅さをみせてからは上昇基調を強めた。「短期筋によるショートカバーが継続した」(大手証券トレーダー)という。業種別の上昇率上位には、鉱業、倉庫・運輸関連に続き、不動産がランクイン。「日銀の追加緩和の思惑で売りが細ったことも上昇に拍車を掛けた」(国内証券)という。 ただ日経平均ボラティリティー指数.JNIVは41ポイント超と依然高水準。相場の先行きに対する投資家の警戒感は根強い。 ちばぎん証券顧問の安藤富士男氏は「日経平均は12月1日高値から前日までの間に、ほぼ20%の下落となったが、昨年夏や2013年の調整局面でも20%近くとなっており、大底を形成したとの見方が広がった」と指摘。日銀追加緩和への期待も刺激材料となったとする一方、「国内企業収益に対しては懸念も残っている」とし、買い戻しが継続するかはなお不透明とみている。 個別銘柄では第一生命保険(8750.T)が堅調。21日付で関東財務局に提出された大量保有報告書で、シンガポールを拠点とする投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、1月15日現在で同社株を5.11%保有していることが明らかとなり、材料視された。 半面、タムロン(7740.T)が連日で昨年来安値を更新。21日に2015年12月期連結業績予想を下方修正したと発表した。一眼レフカメラ市場の低迷継続やクリスマス商戦の不振により、自社ブランド交換レンズの販売が低迷。一転営業減益の見通しとなったことが嫌気された。 東証1部騰落数は、値上がり1920銘柄に対し、値下がりが8銘柄、変わらずが7銘柄だった。 日経平均.N225 終値 16958.53 +941.27 寄り付き 16336.72 安値/高値 16332.45─16993.96 TOPIX.TOPX 終値 1374.19 +72.70 寄り付き 1327.93 安値/高値 1327.84─1375.95 東証出来高(万株) 260431 東証売買代金(億円) 28194.91 (長田善行) http://jp.reuters.com/article/tokyo-sto-idJPKCN0V00GH?sp=true 日本株は大幅反発、昨年9月来上げ幅−ECB期待と原油反発で全面高 2016/01/22 15:37 JST
(ブルームバーグ):22日の東京株式相場は大幅反発。欧州中央銀行(ECB)が次回政策委員会での金融緩和拡大の可能性を示唆し、市場混乱を収束させる政策発動への期待が高まった。原油市況の急反発や為替の円安推移も受け見直し買い、売り方の買い戻しも入り、鉱業など資源関連、輸送用機器など輸出関連、鉄鋼など素材株に加え、不動産や証券株など東証1部33業種は全て高い。 TOPIXの終値は前日比72.70ポイント(5.6%)高の1374.19、日経平均株価は941円27銭(5.9%)高の1万6958円53銭。両指数の上げ幅と上昇率は昨年9月9日以来の大きさ。 アストマックス投信投資顧問の山田拓也シニアファンドマネジャーは、「売り崩すにもエネルギーのいるところまで下がってきたため、前日のドラギECB総裁のコメントをきっかけに反発した」とみる。ただし、自信を持って一気に上がってきたというよりも、「いったん下げる余地がなくなってきているため、戻っている部分もある」となお慎重姿勢も示した。 きょうの日本株は朝方から日経平均が500円以上上げ、午後半ば以降に先物主導で一段高、上げ幅は1000円に迫った。前日は1年3カ月ぶりの安値を連日で更新、年初来下げ幅が3000円以上に達した中、東証1部の騰落レシオは54%と約8年ぶりの低水準、予想PERは13.3倍と昨年9月の水準を下回っていたため、見直しの買いも入りやすかった。 欧州の政策期待と原油高、為替の円安も好感される中、サンライズ・ ブローカーズのトレーダー、マイキー・シア氏は信用取引の「踏み上げが起きている」と指摘。多くはテクニカル上の理由による上げで、「ボラティリティ―の高さは常態化している」と話す。 時間外で原油続伸、為替も円安方向に ECBのドラギ総裁は21日、政策委員会で金利据え置き決定後の会見で、3月の次回会合で政策を再検討するとし、ECBの責務の範囲内で採用する政策手段に「制限はない」と言明。ここ1年間で3回目となる金融緩和拡大の舞台を整えた。 同総裁の発言を受け、21日のニューヨーク原油先物は4.2%高の1バレル=29.53ドルと、約12年ぶり安値から急反発。アジア時間22日の時間外取引でも上げ、一時30ドルを超えた。投資家のリスク回避姿勢の後退は為替市場にも広がり、きょうのドル・円は1ドル=117円50銭−118円台と前日の日本株市場の終値時点116円80銭から円安方向に振れた。前日の欧米株高の流れを受けたきょうのアジア株は香港や韓国、シンガポールなどが上昇、中国上海もプラス場面が多い。 野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは、日米欧の「G3がマーケットの混乱に対し目線をそろえることが確認できれば、市場心理は落ち着く方向になる」とみていた。 東証1部33業種は鉱業や倉庫・運輸、不動産、鉄鋼、その他金融、ゴム製品、証券・商品先物取引、その他製品、非鉄金属、輸送用機器が上昇率上位。東証1部の売買高は26億431万株、売買代金は2兆8195億円。大阪取引所の日経平均先物3月物は、買い戻しやヘッジ売り解消の動きから出来高が膨らみ、午後3時15分時点で20万8400枚と前日の18万8700枚を上回った。 売買代金上位ではトヨタ自動車やソフトバンクグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ファーストリテイリング、三井住友フィナンシャルグループ、村田製作所、富士重工業、ファナック、JT、住友不動産、ブリヂストンなどが軒並み急伸、産業革新機構主導の再建で大筋合意したと22日付の日本経済新聞朝刊が報じたシャープも高い。東証1部の上昇銘柄数が1920に達する一方、下落はわずか8。下落の少なさは昨年9月9日の14銘柄を抜き、1994年1月31日の3銘柄以来。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 竹生悠子 ytakeo2@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 院去信太郎 更新日時: 2016/01/22 15:37 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1BR5U6JTSEG01.html
International | 2016年 01月 15日 19:44 JST 関連トピックス: トップニュース 米原油先物が12年ぶり安値、イラン制裁解除観測で [ロンドン 15日 ロイター] - 米原油先物CLc1が15日の取引で急落し、一時1バレル=29.61ドルと12年ぶりの安値をつけた。イランへの経済制裁が数日中に解除され、同国の原油輸出が増加するとの観測が背景。 0936GMT時点では1バレル=29.75ドルと4%以上下落している。 北海ブレント原油先物LCOc1は0.95ドル安の同29.93ドル。一時、2004年2月以来の安値となる同29.73ドルをつけた。 国際原子力機関(IAEA)が15日、イランによる核合意の義務完全履行を確認する「最終」報告を出し、西側諸国の経済制裁解除に道が開かれる可能性がある。 http://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKCN0UT139 Top News | 2016年 01月 22日 15:23 JST 関連トピックス: トップニュース 来週はドル下値リスクに注意、日銀決定会合めぐる思惑が交錯 [東京 22日 ロイター] - 来週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)、日銀金融政策決定会合、米国の第4・四半期実質国内総生産(GDP)の発表など、主要イベントが目白押しとなる。外為市場では、ドルの下値リスクに警戒が必要だとみられている。 予想レンジは、ドル/円が115.50─119.00円、ユーロ/ドルが1.0750―1.0950ドル。 26―27日開催の米FOMCでは、イエレン議長の会見の予定がない。これまで底堅かった米経済指標の予想比下振れが相次ぐなか「声明がタカ派的なものであっても、早々に利上げ期待は高まらないだろう。一方、ハト派的なニュアンスが強ければ、直ちにドル売りを誘発する可能性がある」とみずほ証券、金融市場調査部、チーフ為替ストラテジストの山本雅文氏は警鐘をならす。 29日発表予定の2015年第4・四半期の米GDPの市場予想は前期比0.7%増。アトランタ連銀のGDPナウが1月20日に推計した最新予想値も前期比0.7%増だった。 予想程度もしくはそれを下回る増加幅では、年率換算するとゼロ近傍か、あるいはマイナスに落ち込む可能性もあり、金融市場の失望感を招き、くすぶり始めた「米経済のリセッション(景気後退)入り」との見方を強めかねないとの指摘が聞かれた。 金融市場では、昨年末の利上げ開始が時期尚早な政策転換であり、米国が利上げ後に景気後退に陥り、事実上ゼロ金利の状況がさらに長期化するとの見方も出ている。 日銀決定会合については、さまざまな思惑が出ている。 今週は、日銀内で追加緩和論が浮上しており今回の会合で議論される見込みとの報道や、柴山昌彦首相補佐官が、追加緩和について「まだ判断をするには早い」と述べたとの情報が伝わった。 野村証券チーフ為替ストラテジストの池田雄之輔氏は「今回日銀が行動を起こさなければ、ドルは115円を割り込むリスクがあり、機関投資家や輸出企業などの相場観に不可逆的なダメージを与える危険がある」とし、ETF購入額の倍増、国債購入額を100兆円に増額、地方債購入を開始などの追加緩和措置を予想する。 一方、市場のリスク回避の原因である中国の景気減速や原油安は「日銀の追加緩和で解決できるものではない」(邦銀)と、追加的措置を予想しない声もある。 (為替マーケットチーム) http://jp.reuters.com/article/dollaryen-nextweek-idJPKCN0V00EN
FX Forum | 2016年 01月 15日 17:14 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:米利上げでも円高へ、日銀緩和は春か=上野泰也氏
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト [東京 15日] - 今年のドル/円相場の見通しは市場で割れているようだが、筆者は「円高派」に属しており、年間の予想レンジは108―125円である。そして、最も重要なポイントだと考えているのは米国の追加利上げの困難さだ。年内の追加利上げは最大で2回だろう。 ドル/円のレンジシフトは、「リスクオフ」の中で、年末年始から始まっているように見える。120円前後のレンジから117―118円台中心のレンジへと移行してきており、125円はかなり遠くなった。 次の大きなヤマ場は、米国の年内の利上げ回数がどうなるかを見ていく上でカギを握る、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)だろう。筆者は最近、機関投資家の方々に対し、年内の米利上げ回数がどう転んでも、結局のところ今年は円高ドル安に動くだろうと説明している。ケース分けして考えると、以下のようになる。 ●年内の利上げがFOMC参加者の見通しどおり4回(ないしそれ以上)になる場合 中短期ゾーンにおける日米の金利差が現在の市場の織り込みよりも大きくなることは、短期的には円安ドル高の材料に使われるとみられる。 だが、一段のドル高は「自爆」シナリオ、すなわち米企業業績のさらなる悪化や輸入物価下落を通じたインフレ率の鈍化につながる。新興国などのマネーフロー変調が増幅されるという悪影響も出てくるだろう。米国の利上げ路線は早晩行き詰まり、2000年8月の日銀ゼロ金利解除失敗と同じような政策ミスを米連邦準備理事会(FRB)が犯してしまったという見方が、市場で急速に広がる可能性が高い。 米国のリセッション(景気後退)入りを市場が意識する中で株価は下落し、長期・超長期ゾーンの米国債利回りは急速に低下。市場は利下げを催促する様相を呈するとみられる。為替市場では円高ドル安が進む可能性が高い。 ●年内の利上げが2回以下にとどまる場合 年間4回というFOMC参加者の昨年12月時点の金利見通しが未達に終わるということである。根が深い「中国リスク」などからマーケットが不安定化したり、米国の賃金・物価統計の数字がはかばかしくなかったりするようだと、イエレンFRB議長は利上げ路線の「一時停止」ボタンを押すだろう。すると「利上げ局面はすでに終了」「次は利下げ」といった見方が市場で浮上し、当然のことながら円高ドル安が進みやすくなる。 2%のインフレ目標に向けた物価上昇見通しが立ちにくいことが利上げ回数抑制の主因となる場合は、円高の進行はおそらくマイルド。だが、「リスクオフ」の深刻化によって利上げが困難になる場合は、円高の進行は急激なものになり得る。 なお、間にはさまる利上げ3回のケースでは、状況次第でどちらかに近い動き方になるだろうが、どちらかと言えば、利上げ4回のケースに近くなる可能性が高い。 FOMC議事録(昨年12月15、16日開催分)の内容などから考えて、追加利上げ問題で今後大きな焦点になるのは、雇用の改善ペースではなく、1)物価(個人消費支出デフレーター)が目標の2%に接近していく見通しが本当に立つのかどうか、2)中国を中心とする米国外の経済・金融情勢にまつわるリスクの大きさ、の2点である。 そのように整理した上で足元の状況を照らし合わせた場合、3月といった早いタイミングでの追加利上げは非常に困難で、最も早いチャンスは6月と見るのが順当だろう。 さらに言えば、昨年12月の最初の利上げは日銀の「ダム論」的な、「たられば」をベースにした主張をしながら、差し迫ったインフレリスクが皆無であるにもかかわらず、なんとか実現にこぎつけたものである。政策転換の失敗例である2000年8月の日銀によるゼロ金利政策解除と似ている点は数多い。 <日銀追加緩和は4月濃厚、切れるカードはあと2枚か> 今年のドル/円を見ていく上でもう1つ注目されるのは、日銀が追加緩和に動くタイミングである。 黒田東彦日銀総裁は1月4日と5日に、報道されたもので3回、追加緩和の用意があることを強調する発言を行った。 1回目は、4日昼頃に全国信用金庫協会の名刺交換会で行った挨拶。「必要ならば、さらに思い切った対応を取る」という発言が報じられた。2回目は、4日午後に生命保険協会の賀詞交歓会で行った挨拶。「必要と判断すれば、さらに思い切った対応を取る用意がある」という発言があった。3回目は、5日午後に連合の新年交歓会で行った挨拶。上記と同様の発言が報じられた。 だが、いずれの発言も市場で材料視されなかった。中国の動向が市場で最大の関心事になっていたからだろう。 日銀が追加緩和に動くタイミングについて筆者は、主要企業の16年春闘における賃上げの動向を見極めた上で、4月の金融政策決定会合で黒田総裁が追加緩和カードを切る決断を下すというシナリオを掲げている。 ただし、円高ドル安が早い段階で大幅に進行してしまうと、それより前の金融政策決定会合で追加緩和が急きょ決まる可能性が膨らむことになる。昨年1月16日につけたドル安値(円高値)である115.85円を決定的に割り込むことが、追加緩和に向けて日銀が「臨戦態勢」に入る前提条件とみられる。 ドル/円がそこまで円高に動いてくるまでの間は、2%の物価目標達成に向けて日銀は引き続き「本気」であり、必要が生じた場合は躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和に動く方針だというメッセージを総裁が繰り返すことにより、円高圧力を少しでも和らげようとするだろう。 もっとも、そうしたメッセージを発する中で、黒田総裁はジレンマに直面し得る。追加緩和に関するレトリックを強化し過ぎると市場の「期待値」が高くなってしまい、実際に追加緩和に動いた際に市場の失望を招いてしまいかねないのである。 ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁による「追加緩和予告」発言をもとに市場が勝手に「期待値」を高くしていき、実際にECBが追加緩和に動くとその内容への失望感からユーロ相場が急上昇したことは、まだ記憶に新しい。日銀にとって、追加緩和したものの為替は円高に動いてしまったという事態は最悪だろう。黒田総裁の円高けん制トークには「微妙なさじ加減」が要求されてくる。 また、追加緩和の手法を従来の延長線上の措置であるマネタリーベース年間増加ペースの10兆円上積みと見る場合、昨年12月に日銀が決定した「量的・質的金融緩和」を補完する諸措置が短期間のうちにきわめて大きな効果を発揮する場合を除き、追加緩和カードはせいぜい2枚(マネタリーベース10兆円上積み×2回)までとみられる。 先々のさまざまなリスクを考える場合、数少ないカードをどこで切るかという戦術面の熟慮も、日銀には要求されてくる。たとえば7月の参院選より前にカードを2枚とも切ってしまったというような事態は、日銀としては間違っても避けたいのではないか。 *上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasunariueno-idJPKCN0UT0K0 Business | 2016年 01月 22日 14:30 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス コラム:世界的リスクオフ反転へカギ握るFRB、焦点はイエレン証言
田巻 一彦 [東京 22日 ロイター] - ドラギ欧州中銀(ECB)総裁が3月に金融政策スタンスを見直す考えを示し、世界の株式市場には、買い戻しの動きがみえてきた。だが、年初からの世界的なリスクオフ心理の強まりは、米利上げが起点になっており、米連邦準備理事会(FRB)がどのようなシグナルを出すのか、見極めないとリスクオンへの転換は難しいだろう。その意味で2月10日のイエレンFRB議長による米議会での発言が、当面の焦点になりそうだ。 <とりあえず効いたドラギ発言> ドラギECB総裁の発言は、「底なしの下落リスク」を感じ始めていた株式市場やコモディティ市場の関係者にとって、願ってもない朗報となった。 というのも、昨年12月に追加緩和を実施したばかりであり、その結果も市場の期待値を下回って、ユーロが下落するどころか上昇。「ドラギマジック」に陰りが見え、今回は何もないという声が多かったからだ。 しかし、21日の会見では、年明け以降、新興国の成長見通しや金融、コモディティ市場の混乱、地政学リスクなどをめぐる不透明感が強まる中で「下振れリスクが再び高まった」と明確に指摘。「そのため次回3月初旬の理事会で、金融政策スタンスを見直すとともに、おそらく再検討する必要がある」と踏み込んだ。市場は「追加緩和示唆」と受け取った。 22日の東京市場では、日経平均.N225が一時700円を超える上昇となり、1万6700円台を回復した。 ただ、この相場上昇が、トレンド変換となるのか、それとも一過性の「息継ぎ」に過ぎないのか──。多くの市場関係者は、判断を下しかねているようだ。 <中国市場の波乱・原油安、起点は米利上げ> 年明け早々の市場では、株安の原因を人民元や中国株の下落と捉え「中国経済は緩やかに成長しており、相場は行き過ぎ。いずれ落ち着きを取り戻す」との見方が多かった。 また、原油価格の下落に関しても「20ドル台はオーバーシュート。いずれ30ドル台から40ドル台に戻る」との見方が多かった。 しかし、ここにきてようやく今回のリスク回避現象の中心に「米利上げ」があるとの見方が広がり出してきた。 中国市場の変動にしても、コモディティ市場の下落にしても、昨年12月に始まった米利上げによって、マネーがドル建て資産に回帰するという見通しや思惑によって、その動きが加速している要素が大きい。 2016年に4回の利上げがありうるとした年初のフィッシャーFRB副議長の発言は、8日に送信したコラム「世界的株安の中心に米利上げの反作用、4回維持なら振幅拡大」[nL3N14S1HH]で指摘したように、リスクオフ相場のトリガーを引いた可能性が高い。 <FRB幹部発言、変化の予兆も> ただ、ここにきてFRB幹部から、微妙な軌道修正を「予感」させる発言が出てきている。これまでタカ派的な発言を繰り返してきたセントルイス地区連銀のブラード総裁は14日、原油価格の継続的な下落は、インフレ期待の「厄介」な低下をもたらす恐れがあると発言。最近の市場動向に警戒感を持っていることを明らかにした。 また、イエレン議長に近いとみられているダドリーNY連銀総裁は15日、原油安とドル高がインフレ率目標の達成を困難にしているとの見解を表明した。 ただ、期待の低下は「利上げを思いとどまらせるほど十分ではなかった」とも発言。16年の成長率は2%超、労働市場は多少ながらさらに引き締まるとの見通しも示した。 もし、FRBが年4回の利上げペースを緩める方針を明確にすれば、年初から顕在化してきたリスクオフ心理とマネーのリスク回避現象は、いったん小康状態になる可能性があると予想する。 実際、米アトランタ地区連銀は発表しているGDP・NOWは、1月20日時点でプラス0.7%にとどまっている。低成長で利上げを繰り返せば、景気の足踏みとともにFRB幹部が懸念するインフレ期待の低下を招くことになりかねない。 <イエレン発言次第で、日米欧の協調ムード演出も> その意味で2月10日の米下院金融委員会、11日の米上院銀行委員会でのイエレン議長の金融政策に対する発言は、当面最大の材料になるだろう。 ここで3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げに消極的なスタンスを示せば、リスク資産からのマネー流出に一定の歯止めをかけることができる。 日銀が1月28、29日の金融政策決定会合でどのような結論を出すのか、今のところ断定的なことは言えないが、仮に1月会合で追加緩和を見送っても「必要ならちゅうちょなく」というスタンスの黒田東彦総裁が、3月にいよいよ動くとの思惑は一層高まることになるだろう。 また、ドラギ総裁は3月の追加緩和の可能性を強くにじませる発言を行った。2月10日にイエレン議長が3月の利上げ見送りを示唆するメッセージを出せば、日米欧が市場の急変動に対し、足並みをそろえるという「協調イメージ」を演出することが可能になると考える。 1月最終週のFOMC、日銀金融政策決定会合と続くイベントの先にあるイエレン議長の米議会証言が、マーケットの暗夜行路を導く「一条の光」になるのかどうか。FRBからのメッセージは、いよいよ重要度を増しそうだ。 http://jp.reuters.com/article/world-riskoff-idJPKCN0V00BJ?sp=true 市場に広がる悲観論は行き過ぎ−テンプルトンの4.9兆円運用担当者 2016/01/22 14:02 JST
(ブルームバーグ):テンプルトン・グローバル・アドバイザーズの調査ディレクター、ヘザー・アーノルド氏は世界各国の経済や株式市場の見通しを日々分析しているが、不安はそれほど大きくない。 アーノルド氏は、世界の金融市場の混乱の震源地となっている中国について、成長の原動力が交代する自然な移行期にあるとみており、中国当局の人民元政策も、中国株の下落も世界の投資家にとって大きな懸念材料にならないはずだと話す。原油相場の下落で需要が着実に拡大する一方、米国内では減産が行われるため、原油安自体が調整役を果たす見通しだ。アーノルド氏は株式を買い増している。 テンプルトンで約420億ドル(約4兆9400億円)を運用するファンドマネジャーでもある同氏は今週東京を訪問し、「悲観論の広がりは妥当でないように見える」と説明。この状況は「最終的にはわれわれにとって好都合だ」と述べた。 原題:Templeton’s $42 Billion Manager Says the Gloom Has Gone Too Far(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 Tom Redmond tredmond3@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net John McCluskey 更新日時: 2016/01/22 14:02 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1C6LE6K50XT01.html
Special | 2016年 01月 22日 13:41 JST 関連トピックス: トップニュース 視点:日本に必要な「3つの変化」=イアン・ブレマー氏 ユーラシア・グループ社長 [東京 22日] - 国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は、日本の課題として、中国との補完関係追求、女性の雇用拡大に向けたコミットメント強化、外交政策における防衛・安保傾斜の是正を挙げる。 同氏の見解は以下の通り。 <中国との補完関係強化で政治・経済力の底上げを> 安倍晋三首相は、中国と補完し合える分野をできるだけ多く見つけるための内部プロジェクトを立ち上げるべきだ。 日本は、世界で最も強く、世界で最もレジリエントな(しなやかな回復力を持つ)サービス産業を有する。同産業は、世界トップレベルの消費材や優れた高齢者向けヘルスケアを提供している。 社会インフラの強靭さも際立っている。中国は今後、このすべてを切に必要とするだろう。日本はこれらを提供することで、自国の経済や政治にとって重要な推進力を得ることができる。 <女性の雇用拡大へ、より深いコミットメントが必要> 女性の雇用拡大という安倍首相の取り組みには、より深いコミットメントが必要だ。安倍首相は、この取り組みの重要性を訴えてはいるものの、実際に変化が訪れるスピードは遅すぎる。 もちろん、これは政治的なだけでなく、文化的な問題でもある。その点においては、首相が発する言葉は非常に重要だ。 だが、若い女性が新たなキャリアに乗り出し、継続していくのに十分な理由が持てるように、職場の文化を変えられるように、そして日本の産業界やビジネスで指導的役割を引き受けられるようにするための政策手段はたくさんある。 これは、単なる公正さの問題ではない。日本が自国の潜在経済力について自覚しているならば、(女性の雇用拡大は)極めて重要なステップだ。 <外交政策の防衛・安保傾斜は是正すべき> 最後に、安倍首相の外交政策は、防衛・安全保障分野に偏向しすぎている。このようなアプローチの外交的な代償は明らかだ。日本は代わりに、経済・産業・通商政策という真の強みをもっと活用して世界と向き合うべきだろう。 環太平洋連携協定(TPP)は非常に重要だが、それは始まりにすぎない。アジアをはるかに越えて、通商や投資で深いつながりを築くことは、日本の将来の繁栄にとって欠かせないだろう。また、そうすることで、日本が取り組む改革の真意を世界に示すことができる。 *イアン・ブレマー氏は国際政治学者で、国際政治リスク分析・コンサルティングを手がけるユーラシア・グループの創業社長。1994年、スタンフォード大学で博士号取得。同大学フーバー研究所のナショナルフェローに史上最年少25歳で就任。98年にユーラシア・グループを設立。主導国なき状況を「Gゼロ」と名付けたことでも有名。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2016年の視点」に掲載されたものです。 http://jp.reuters.com/article/view-ian-bremmer-idJPKCN0UO078
FX Forum | 2016年 01月 22日 13:38 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:「リスクオフの円高」終焉は目前か=鈴木健吾氏 みずほ証券 チーフFXストラテジスト [東京 22日] - 以前も当コラムで指摘したが、昨年以降、為替市場では「リスク許容度」と「金融政策」の2つがテーマとなり、ドル円相場のドライバーとなってきた。 リスク許容度が縮小しリスク回避傾向が強まった場合には質への逃避から先進国通貨が買われる傾向が強まる。特に円やスイスフランなどが上昇し、ドル円は円高ドル安方向に動く。また、金融政策に焦点が当たると、利上げに踏み切ったドルと追加緩和の可能性を残す円との構図からドル円は円安ドル高傾向が強まる。 2016年はリスク許容度を強烈に意識しながらのスタートとなり、金融政策やファンダメンタルズはどこかに飛んで行ってしまった。実際、昨年末にかけて米連邦準備理事会(FRB)の利上げと日銀の量的緩和補完措置などにより、日米2年債金利差は急拡大したが、市場は全く興味を示していない。 8日に発表された12月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が大幅な増加をみせたにもかかわらず、この日のドル円相場が円高ドル安となったのも象徴的だ。リスク許容度をにらみつつ、為替市場では一方的な円高が続いている。 リスクを演出しているのは原油価格と中国の動向だ。原油価格はもともと供給過剰の状態だったにもかかわらず、12月4日の石油輸出国機構(OPEC)総会で減産が見送られたことをきっかけに下落基調を強めた。年明け以降も宗教上の対立からサウジアラビアがイランと国交断絶を発表し、これがOPECによる減産合意をさらに難しくするとの判断から一段の下落につながったうえ、12月に核査察をクリアしたイランに対する経済制裁が解除される見通しとなったことが需給悪化懸念を後押しした。 ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は実に03年5月以来の1バレル=26ドル台まで下落した(1月20日時点)。 中国では昨年夏場以降、混乱が一段落したかにみえたが、年初に発表された購買担当者景気指数(PMI)の悪化を受けて株価が急落。加えて、当局が発表する人民元の基準値が断続的に切り下げられたことから不安が増幅される展開となった。 このようなリスクの加速を受け、日経平均株価は昨年12月の2万円台から1万6千円台に下落。ドル円も約1年ぶりの1ドル=115円台後半をつける場面がみられている。 ちなみにテクニカル的には、この水準はドル円のサポートポイントとして非常に重要な水準だ。14年終盤以降、約1年数カ月にわたりドル円は115円台後半から116円台前半がサポートされてきた。心理的節目とされる115.00円とあわせ、これらを下抜けると次の心理的節目110.00円近辺までサポートポイントは見当たらない。テクニカル的には115円を下抜けると一気に110円近辺に急落する可能性を示唆しており、注意が必要だ。 <今年のドル円予想レンジは115―126円> リーマンショック時の「リーマン・ブラザーズ破たん」といった「これ」というリスクイベントがないなかで、原油安や中国に対する漠然とした不安が疑心暗鬼をかきたて、売りが売りを呼ぶかのように金融市場が動揺しているが、その改善の兆しがないわけではない。 原油価格の大幅下落を受けて、ナイジェリアはOPECの臨時総会開催を要請した。サウジアラビアとイランの対立はあるものの、サウジアラビアは原油安によって財政赤字が急拡大し、16年の予算では電気や水道など公共料金の大幅値上げを予定する状況まで追い込まれている。 政治的権利を王族が独占する代わりに手厚い公共サービスを提供してきた同国には異例のことだ。中東産油国の財政収支が均衡する原油価格は1バレル40ドルから100ドル超とされるなかで「痩せ我慢」も限界に近づきつつある。需給の劇的改善は望めないとみられるもののOPECの減産が現実味を帯びれば原油価格は安定を取り戻す可能性が高い。 中国当局も人民元切り下げ観測がリスクオフにつながる流れを断ち切る姿勢を鮮明にしている。11日以降は人民元の基準レートを前日並みに押さえ続けているほか、オフショア市場でも大規模な介入を断続的に実施した。中長期的には、事実上米ドルにペッグしてきたことに対する歪みの解消のため、人民元はさらに下落するとみられるが、昨年8月と今回の混乱の経験を踏まえ、その下落は非常に緩やかにコントロールされるとみている。 加えて言えば、中国では今年から20年に向けて、習政権下で初の経済5カ年計画がスタートしたばかりだ。アジアインフラ投資銀行(AIIB)も今月設立されたなかで、当局は中国が震源地となる第2のリーマンショック阻止に本腰で臨むとみられる。 現状、世界中で株価が下落し、原油をはじめとする商品市況も悪化、円の独歩高が続くなど、過熱するリスクは終わりのないトンネルにも思える。ただ、昨年を振り返っても、ギリシャや中国などのリスクが市場を揺さぶる場面があったが、いずれもやがて落ち着きを取り戻す動きとなった。前述の通り、動揺に歯止めをかけようとする動きがあるなかで、一方的な悲観論のクライマックスは近いのではないかと考えている。 リスクオフムードが一定の落ち着きを取り戻せば、市場は今回の混乱が実体経済に与える影響を推し量りつつ、米利上げや日銀緩和の有無に注目をシフトさせるだろう。現状落ち着きを取り戻したとは言えない状況ではあるが、ここにきて欧州中央銀行(ECB)が3月も金融政策を見直す可能性を示唆。日銀に対する追加緩和期待も徐々に高まってきており、市場の焦点が金融政策に移行する予兆がみえ始めている。 筆者は今年半ばまでに日銀による緩和とFRBによる次の利上げが実施されるとみており、これらがドル円相場を押し上げる場面を演出すると考えている。 昨年以上にリスクが意識されるスタートとなるなか、1ドル=130円台といった円安水準の達成は難しい状況となった。一方で、昨年同様、金融政策の方向性やファンダメンタルズの格差もドル円相場の押し上げ材料として機能すると考えており、結果として今年のドル円は115円から126円程度のレンジでの推移を想定している。 *鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-kengosuzuki-idJPKCN0V0093 Business | 2016年 01月 22日 15:39 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 焦点:浮上する政策限界論、消費増税見送りなら市場の洗礼も [東京 22日 ロイター] - 金融マーケットでは、政策対応の限界が意識されてきた。金融・財政の政策選択の余地が狭まるなか、せっかくの政策発動でもコストに見合った効果が望めないとの冷ややかな視線が政府・日銀に向けられている。特に債務残高が1000兆円を超える超借金大国・日本が、やむにやまれず10%の消費増税を延期すれば、今度こそ市場の「洗礼」を浴びかねないという危機感も広がってきた。 <「マジック」再現には疑問も> 市場のリスクオフムード拡大に歯止めをかけたのは、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の発言だった。21日の理事会後の会見で、3月の追加金融緩和を示唆すると、欧米市場で株価が反発、ドイツの2、5年債利回りは過去最低を更新した。 しかし、市場では冷ややかな受け止め方も少なくない。「(日本株は)あくまで自律反発。海外勢の処分売りが終わった感触はない」(国内証券・株式トレーダー)という。22日の日経平均.N225は900円を超える反発となったが、前場の東証1部売買代金は1.1兆円に過ぎない。 みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、ECBが追加緩和でできる施策は限られていると指摘。「想定されるのは、拡大資産購入プログラム(APP)の月間購入額の増額だが、前回はこれができず市場に失望を与えた。ECB内は決して一枚岩ではなく、3月の会合でも12月のように、肩透かしとなる可能性もある」と話す。 高まる金融緩和の限界論に対し、ドラギ総裁は「われわれには行動する力と意欲、そして決意がある」とし、金融政策手段の活用範囲に対しても「制限はない」と強く否定したが、市場は言葉通りには受け取っていない。 日銀の次の一手としては、ECBのようなマイナス金利導入も選択肢の1つだが、日本では金融機関の負担が大き過ぎるとして、導入には否定的な見方が多い。 超過準備に対する付利の引き下げについても、準備預金の残高が集まらなくなり、マネタリー・ベースの目標が維持できなくなる可能性がある。追加緩和で国債買い入れの増額があっても、0.1%の付利がある限りは、10年債利回りのマイナス突入は考えにくい。 <狭い財政対応の余地> 大和証券・チーフエコノミストの永井靖敏氏は、日銀が大規模に進めている国債買い入れを増額した場合、むしろ出尽くし感が浮上し、「玉切れ(限界論)」を意識せざるを得なくなるとみる。 このため、市場では、金融政策に限界が到来したならば、次は財政政策だとの声も徐々に強まっている。 しかし、2015年度1次補正の成立後、政府は来年度予算の年度内成立に全力を挙げる構えであり、2次補正予算案の編成と国会成立は現実味が薄い。15年度には基礎的財政収支(プライマリーバランス)赤字のGDP(国内総生産)比半減目標もある。 4月以降に2016年度の1次補正を早期に組むケースを想定する声も多い。7月には参院選があるためだ。「円高・株安がさらに進行し、企業業績が悪化、デフレ脱却どころか、アベノミクス崩壊で選挙を迎えるようなことは、政府・与党としては何としても避けなくてはならない」(外資系証券エコノミスト)との思惑が、すでに出始めている。 2月中旬に発表される2015年10─12月期実質国内総生産(GDP)が、個人消費の落ち込みによって、小幅マイナス成長になるとの観測も市場では浮上。安倍政権は、なりふり構わず景気テコ入れ策を打ち出してくるとの観測もある。 ただ、建設現場などで人手不足が目立つなか、公共投資拡大は容易ではない。金利が歴史的低水準にあるのは、日銀の買い入れもあるが、投資機会が減少しているからだ。無理な財政拡大は、中国のように過剰な設備を増やしかねない。 円債市場が警戒するのは、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ延期だ。政府は再三、財政規律を強調しているだけに、増税延期の市場インパクトは想定以上に大きくなる可能性がある。2度目の延期は財政規律への疑いも強くなりかねない。 円債市場からは「延期になると、複数の格付け会社から日本国債の格付けが引き下げられることになるだろう。日銀のQQE(量的・質的金融緩和)があるため、金利の急騰はないだろうが、市場参加者はリスク許容度を考慮に入れたうえで、日本国債への投資を控えることになり、ますます市場規模が縮小しかねない」(国内金融機関)と、警戒する声も出ている。 世界的なリスクオフが強まる中で、政策対応を求める声も高まってきた。しかし、2008年のリーマン・ショックで大規模なマクロ政策を打った後に、残っている「駒」はかなり少なくなっているのが「日本だけでなく世界の主要国の実態」(大手銀関係者)だ。 3年目を迎えた安倍政権とアベノミクスは、世界的な資産価格下落の大波を受けながら、重大な岐路に差し掛かっている。 (伊藤武文 取材協力:星裕康 編集:伊賀大記) http://jp.reuters.com/article/abenomix-mkts-idJPKCN0V00F4?sp=true
International | 2016年 01月 22日 13:17 JST 関連トピックス: トップニュース ブラジル、2015年税収は5年ぶり低水準 財政健全化に試練 [ブラジリア 21日 ロイター] - ブラジル連邦国税庁が21日発表した2015年12月の連邦税収BRTAX=ECIは前年同月比4.32%減の1215億レアル(292億5000万ドル)だった。15年通年では前年比5.62%減の1兆2210億レアルで、5年ぶりの低水準となった。 ブラジル経済が過去数十年で最悪の景気後退に陥る中で、財政状況の改善を迫られる政府の課題の大きさを浮き彫りにした。 9人のエコノミストを対象に実施したロイター調査によると、12月の予想中央値は1170億レアル。11月の税収は950億レアルだった。 1990年以降で最も深刻な景気後退に陥り、税収は落ち込んでいる。投資家の信頼を回復したいルセフ大統領の財政健全化の取り組みは達成困難な情勢だ。 大半のエコノミストは、政府が2016年にプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字を対国内総生産(GDP)比0.5%相当にする目標を達成できないとみている。2015年の目標も、歳入減で未達に終わった可能性が高い。 http://jp.reuters.com/article/brazil-budget-idJPKCN0V009X ユーロ圏の経済目標、財政赤字削減は達成が視野に
イタリアのレンツィ首相 PHOTO: GEERT VANDEN WIJNGAERT/ASSOCIATED PRESS By MIKE BIRD 2016 年 1 月 22 日 12:35 JST ユーロ圏加盟国の経済目標のうち少なくとも一つについては達成がほぼ視野に入った。 域内経済大国の一部は、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑えるという、安定・成長協定で義務付けられた目標を達成しつつある。 欧州中央銀行(ECB)は21日、ユーロ圏のインフレ率が目標とする2%弱に届いていないことなどから、追加緩和に踏み切る可能性を示唆した。 信用危機以降、ユーロ圏加盟国の大半は財政赤字目標が未達となっており、しかも目標を大きく上回る始末だ。 2010年にはユーロ圏の4大経済大国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)がいずれもこの規則に違反したが、現在も違反しているのはスペインとフランスだけで、いずれも目標との乖離(かいり)は1%弱にとどまる。 ドイツは11年までに財政赤字を3%未満へ抑制し、イタリアは13年に欧州委員会の「過剰財政赤字是正手続き」の対象から外れた。 ユーロ圏4大経済大国はいずれも財政赤字目標(GDP比3%以内)の達成が視野に入る【財政黒字・赤字の対GDP比率。マイナスは赤字】 ENLARGE ユーロ圏4大経済大国はいずれも財政赤字目標(GDP比3%以内)の達成が視野に入る【財政黒字・赤字の対GDP比率。マイナスは赤字】 コンセンサス・エコノミクスは、向こう2年間のユーロ圏の財政収支に関するアナリスト予想をまとめた。それによると、ユーロ圏4大経済大国のうち、フランスだけが17年まで同規則に違反し続ける見通しだ。これらの数値に基づくと、ユーロ圏全体の財政赤字は17年までにわずか2%へ低下する。 財政不均衡の是正で他国よりも劇的な進展を遂げた国もある。12年時点でスペインのプライマリーバランス(基礎的財政収支)はGDP比で10.4%の赤字だった。フランスの赤字はその半分弱のGDP比4.8%だった。 その後の4年間でスペインの財政赤字は減り、景気回復という追い風もあって赤字水準はフランスと同程度まで低下した。今年は両国とも財政赤字がGDP比3.5%近辺となる見通し。 一部の加盟国は今後も増税のほか、歳出の抑制や凍結を通じて、財政赤字の圧縮を続ける可能性が高い。しかし、財政赤字がGDP比3%を下回れば、安定・成長協定の大部分を履行したも同然だ。 その場合、財政赤字の抑制に役立ってきた一方、経済成長を抑えたとの批判もある緊縮財政といった政策を今後も続ける必要があるのか、といった議論が再燃しかねない。 イタリアのレンツィ首相は21日付の英紙ガーディアンへの寄稿で、緊縮策を推進する欧州連合(EU)を批判した。だが、ユーロ圏の規則に関する限り、多くの加盟国はこれまで予算削減でさまざまな手を尽くしてきた。 それでも、安定・成長協定のもう一つの目標を踏まえると、欧州委員会はまだ当分、警戒を解くわけにはいかないだろう。その目標とは、債務残高をGDP比で60%に抑えるというものだ。現状では大半の加盟国がこの水準を大幅に上回っている。 関連記事 欧州の新たな火種、EU・独に反発強めるイタリア ギリシャの債務軽減交渉、当事者の温度差埋まるか http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MF070_barsau_M_20160121084238.jpg ドラギ総裁発言、ECBと市場に新たな試練 By RICHARD BARLEY 2016 年 1 月 22 日 11:58 JST
それは、挑戦的な物言いだった。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は21日、3月に追加刺激策を実施する可能性が十分あることを示唆したのだ。ただ、ECBは、12月の追加政策措置が事前の非常に高い期待を裏切る内容だったことで市場を揺るがしたばかりだ。投資家は、そのときの経験を忘れまいとしている可能性もある。 ドラギ総裁の言葉は断固たるものだった。「われわれは降伏しておらず、(中略)決してあきらめない」と述べ、世界的なディスインフレ圧力に対する各中央銀行の対抗策が乏しくなっているとの見方を否定した。総裁は投入できる「多くの手段がある」とし、それをどこまで適用するかについても「限度はない」と明言した。 今回の会見で総裁は市場に安心感を与える発言を行う、と予想する向きは多かったが、実際の言い回しはこれをはるかに超えるものだった。 市場の反応は予想通りだった。ユーロはドルに対して0.01ドル超下落し、欧州各国の株価は日中の最高値まで上昇、各国の債券利回りも追加緩和期待から低下した。しかし、12月の経験を踏まえれば、ドラギ総裁の今後の行動について大きな疑問がいくつかある。 最初の疑問は、投資家が昨年12月のような事態の再来に備えているかどうかだ。当時、ストラテジストやアナリストは、ECBが実施する可能性のある最も強力な追加策について予想を競っているような状態で、実際に政策が発表された時点ではすでに市場に過熱感が出ていた。最終的な決定では確かに追加緩和が行われたが、金利引き下げ幅や債券購入の拡大規模は期待外れに終わった。 追加策については、すでに予想が出ている。JPモルガンのエコノミストらは、預金金利をマイナス0.4%への引き下げ、月次債券購入額の100億ユーロ(約1兆3000億円)増加と購入期間の3カ月延長、そして、さらなるTLTRO(ターゲットLTRO=対象を絞った長期資金供給オペ)の拡充を予想している。 疑問の2つ目は、ECBが再度の追加策実施をここまで急いで決定した理由だ。総裁の声明は、ECBは現在の緩和策が機能しており、ユーロ圏の景気回復も進展していると判断しているとしていた。事実、現在のユーロ圏は、世界的な市場混乱の原因ではない。 しかし、ドラギ総裁は状況が「大きく」変化したと強調した。ECBの主な懸念事項であるインフレ動向については、原油安の継続が軌道を下振れさせたのは明らかだが、総裁は、新興国経済の減速と金融環境のひっ迫によるリスクについても指摘した。 実際には、総裁は市場を安心させつつ、懸念を抱くのは正しいと語っていたのだ。ただ、問題がユーロ圏外のことであれば、ECBの追加策がそれほど支えになるかは明確でない。 3番目の疑問は、12月の議事録で追加緩和策に対する疑問が示されていたことだ。この中では、金融緩和策が各政府の経済改革に対するコミットメントを後退させることも認めている。追加緩和策を示唆すれば、この問題を懸念する理事らの間で懸念が増幅する可能性がある。 昨年12月の決定は、ECBと市場の双方にとって試練であり、両者とも失敗してしまった。3月はそうはいかない。 関連記事 ドラギECB総裁会見、5つの注目点 By PAUL HANNON 2016 年 1 月 22 日 05:44 JST 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が12月の会見後に投資家から否定的な評価を多く受けたことを気にしていたとしても、2016年最初の記者会見ではその不安を全く見せなかった。ドラギ総裁はまだ市場への影響力があると考えていることを裏付けるように、昨年10月に使った文言を繰り返しつつ3月に追加刺激策を打ち出す可能性を示唆した。投資家の失望が明白だった12月とは違い、この日の市場は総裁が意図した通り株高・ユーロ安で反応した。以下に記者会見から5つの注目点をまとめる。 1. 3月の追加緩和 ドラギ総裁は記者会見の冒頭、ECBが14年6月以来実施している刺激策が世界経済の動揺に対するユーロ圏の耐性を強化したと指摘した。だがその後すぐに、12月の理事会以降の原油価格の急落のために、ユーロ圏の今年のインフレ率は予想を「著しく」下回る公算が大きく、向こう数カ月には物価がまたさらに下落する可能性もあるとの見方を示した。つまり、早ければ次の理事会で追加の措置が必要になるかもしれないということだ。ドラギ総裁は「3月の次回会合で金融政策スタンスを再点検し、見直しを図る可能性もある」と述べた。 2. 明確なメッセージ 投資家は昨年12月に打ち出した刺激策には失望したが、この日のドラギ総裁発言には肯定的に反応した。ユーロ圏の株式と債券相場は上昇し、ユーロは下落した。相場動向からは、理事会内で追加刺激に反対する声が強まっているとの懸念があるにもかかわらず、ドラギ総裁の信頼性は損なわれていないことが示された。ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)のエコノミストは「われわれは従来、6月にECBの追加緩和を予想していた。(中略)だがドラギ総裁のきょうのハト派的な発言を受けて追加緩和の予想を3月に前倒しした」と述べた。 3. 強い決意 ドラギ総裁は昨年12月に0.2%をつけたインフレ率をECBの目標である2%弱に向けて押し上げることについて、これまで以上に強い決意を持っている印象を与えた。総裁は「こうした世界的な要因には屈しない」とし、「不利な状況下でもわれわれの責務を引き続き果たすという決意を確認する」と述べた。総裁は1時間に及んだ記者会見を「われわれは諦めない」という言葉で締めくくった。 4. 強固な銀行システム 最近金融市場が混乱した背景には、わずか6年前に深刻な傷を負ったばかりの世界経済が先進経済大国を中心に再び危機に陥りつつあるとの懸念がある。ユーロ圏の銀行、特にイタリアの銀行の株価は年初来大きく下落しているが、ドラギ総裁は金融システムの健全性に自信を示した。「これまでに実施された全ての措置によって、銀行部門は危機前よりもかなり強固になったと確信している」とし、「市場の乱高下は以前であれば銀行システムを厳しい試練にさらしたことだろう。(だが)今のところかなり底堅く推移している」と話した。 5. 弱いインフレ期待 ドラギ総裁は低インフレの長期化が消費者や企業の期待に与える影響について、これまでとは異なる懸念を示した。物価が将来的に緩やかにしか伸びないとの見方が広まれば、ECBにとってはすでに厳しい目標の達成がさらに難しくなる。そのため、総裁は追加刺激の実施が迫っているとの期待を下支えすることに切迫感を持っている様子だった。 http://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CN851_ECBHER_16U_20160121175407.jpg ドル・円117円後半、ECB緩和拡大期待でリスク回避弱まる−日銀注目 2016/01/22 11:33 JST (ブルームバーグ):22日の東京外国為替市場ではドル・円相場が1ドル=117円台後半で推移。欧州中央銀行(ECB)による緩和強化への期待から欧米株に続いて日本株も上昇しており、リスク回避に伴う円買い圧力は弱まっている。 午前11時32分現在のドル・円相場は117円85銭前後で、一時117円95銭と3日ぶり円安値を付けている。20日には世界的な株価の下落や原油安を背景に円高が進み、一時1年ぶりとなる115円台に突入する場面があった。 上田ハーロー マーケット企画部の小野直人氏は、株価や原油の反発にECB総裁のハト派会見も加わり、投資家心理の悪化に歯止めがかかる形になったとし、アジア時間も株価が堅調なら「リスク回避の巻き戻しが進む可能性がありそうだ」と指摘。もっとも、世界経済への不安がくすぶる中では「スピード調整の域」を出ず、ドル・円も「来週の日銀会合への期待感がうっすらとあるが、118円台を積極的に買い上がる雰囲気は膨らみづらい」とみている。 ドラギ総裁は21日、ユーロ圏の回復への脅威の拡大に対応して3月にも金融緩和を強化することが必要かもしれないとの認識を示した。同日の会合では金融政策の据え置きを決めた。ECBは22日に四半期に一度の景気についての専門家予測調査を公表する。 ECBによる緩和強化への期待から前日の欧米株式相場は上昇。22日の日本株も大幅高となっており、日経平均株価は一時3.6%高となっている。 三井住友信託銀行NYマーケットビジネスユニットの海崎康宏マーケットメイクチーム長(ニューヨーク在勤)は、ECBは思ったよりハト派だったとし、「来週のFOMC(米連邦公開市場委員会)は特に政策変更はないと思うが、日銀に関しては期待がちょっと出つつあるので、ECBのように次につなげる形にするのか、やってしまうのか」が注目だと指摘。日銀会合に向けて「ドル・円は底堅く推移しそうな気がする」と言う。 ユーロ・ドル相場は同時刻現在、1ユーロ=1.0835ドル前後。前日の海外市場ではドラギ総裁の会見を受け、一時1.0778ドルと2週間ぶり安値までユーロが急落し、この日の東京市場でも1.08ドル台後半からじり安となっている。ユーロ・円相場は海外時間に一時1ユーロ=126円17銭と昨年4月以来の水準までユーロ安に進行。その後、128円台前半までユーロ買い・円売りが進んだが、東京市場に入ってからは127円台後半へ軟化している。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:山崎朝子 tyamazaki@bloomberg.net 青木 勝, 山中英典 更新日時: 2016/01/22 11:33 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1BRIY6JIJVL01.html 長期金利が一時1週ぶり高水準、ECB緩和観測受けた株高で売り優勢 2016/01/22 11:19 JST (ブルームバーグ):債券相場は下落。長期金利は一時1週間ぶり高水準を付けた。欧州中央銀行(ECB)による追加の金融緩和観測が広がり、前日の欧米株価が上昇し、米債相場が下落した流れを引き継いで売りが優勢だ。半面、日本銀行の長期国債買い入れオペ実施が相場を下支えしている。 22日の現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より1.5ベーシスポイント(bp)高い0.235%と、15日以来の水準で開始した。その後は0.225%に戻している。新発5年物の126回債利回りは0.5bp高い0.025%と、6日以来の高水準で推移している。 長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比9銭安の149円42銭で始まり、直後に149円41銭と日中取引で15日以来の安値を付けた。その後は下げ幅を縮める展開。一時は149円54銭とプラス圏まで値を戻す場面もあった。午前終値は1銭安の149円50銭だった。 バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「昨日の海外市場でドラギECB総裁発言や原油価格下げ止まりなどを受けて、リスクオフの流れが落ち着いて、センチメントが改善し、債券は売りスタートとなった」と説明。ただ、「リスクオフの流れは原油安、中国景気懸念、米利上げによる新興国からの資金流出、世界経済見通しの引き下げなどが背景にあり、根が深い。すぐに解決が見えるものではない。目先はリスクオフの流れが底入れするイメージだが、すぐリスクオンにはなりにくい」と語った。 ドラギ総裁は21日、金利据え置き決定後の記者会見で、3月の次回政策委員会で政策を再検討するとし、ECBの責務の範囲内で採用する政策手段に「制限はない」と言明した。 日銀国債買い入れ 日銀は今日午前10時10分の金融調節で、今月8回目となる長期国債買い入れオペ実施を通知した。残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、10年超25年以下、25年超が対象で、買い入れ総額は1兆2600億円程度となる。 バークレイズ証の押久保氏は、「足元では銀行勢を中心に短いゾーンに売りが出やすい。一方、超長期ゾーンは、売られる局面では押し目買いが入り、底堅い」と言う。 21日の米国債相場は下落。米10年債利回りは前日比5bp上昇の2.03%程度で引けた。欧州株や米株式相場が上昇したことに加え、原油相場が大きく反発したことが売り材料となった。この日の東京株式相場は大幅反発。日経平均株価は一時前日比3.6%高となった。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 池田祐美 yikeda4@bloomberg.net;東京 山中英典 h.y@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 山中英典, 青木 勝 更新日時: 2016/01/22 11:19 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1AL9O6JTSE801.html
【日銀ウォッチ】黒田総裁、追加緩和の賭けに出るか
By TAKASHI NAKAMICHI 2016 年 1 月 22 日 09:31 JST 【東京】日本銀行の黒田東彦総裁は、デフレ対策にあらゆる手を尽くすと繰り返し表明している。金融政策決定会合が迫る中、総裁にまだその決意があるかどうかに注目が集まっている。 インフレ喚起と景気回復に向けた黒田総裁の3年に及ぶ取り組みが試練に直面している。世界市場の混乱で円相場が急伸する一方、日経平均株価は20日に弱気相場入りした。日本経済は足踏み状態で、エネルギー価格を含む物価上昇率はゼロ近辺にとどまっている。 こうした全体の状況を受け、早ければ28日・29日の金融政策決定会合で日銀が追加緩和に踏み切るとの期待が高まっている。 明治安田生命のチーフエコノミスト、小玉祐一氏は、追加緩和しない場合「日銀の金融政策のクレディビリティー(信頼性)は低下する」と指摘した。 また、「マーケットは、日銀は動きたくとも動けない、もしくは(質的・量的金融緩和は)限界だと受け止める可能性が高い」と述べた。 安倍晋三首相の側近は匿名を条件にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、日銀は来週追加緩和すべきだとの見方を示したうえ、「追加緩和の条件を満たしている」と述べた。 日銀は物価見通しをたびたび引き下げている ENLARGE 日銀は物価見通しをたびたび引き下げている この側近は、追加緩和を見送れば、日銀の信頼性に疑問符が付き、期待に働きかけるという「アベノミクスの基本フレームワークが、壊れはしないが、毀損してしまう」として警戒感も示した。 日銀は2013年4月に導入した質的・量的金融緩和の下、年間約80兆円の資産買い入れを実施している。その目的は円相場を下落させ、2%の物価安定目標を達成し、長きにわたるデフレとの闘いで決定的勝利を収めることにある。緩和を受けて円はドルに対して30%下落し、企業利益は過去最高レベルへ押し上げられた。また、日経平均株価は年初こそ下落しているが、2015年末は19年ぶりの高値水準で取引を終えた。 黒田総裁は、原油価格の下落が低インフレの原因であり、物価の基調はエネルギー価格を除くとしっかりしているとして、日銀の政策は所期の効果を発揮していると主張している。 懐疑的な見方の高まりに直面した黒田総裁はここ数週、「さらに大胆な措置を取る用意がある」、「できることは何でもやる」と発言するなど、語調を強めている。 黒田総裁にとって信頼性は極めて重要な問題だ。総裁の言う「デフレマインド」の払拭(ふっしょく)は、国民が総裁にはインフレを喚起する力も決意もあると信じるかどうかで成否が決まる。 黒田総裁の政策姿勢に対する投資家の疑念は、昨年秋以降に高まりを見せている。日銀は10月、物価見通しを引き下げると共に、2%の物価目標の達成時期を2017年初めへとさらに先送りしたが、追加緩和には踏み切らなかった。当時は7-9月期の実質国内総生産(GDP)速報値が前期比年率換算で0.8%減となり、日本経済は2年間で2度目のリセッション(景気後退)に陥ったかに思われたが、後の改定値で0.3%増に上方修正された。 日銀は12月、量的・質的金融緩和を「補完」するための一連の措置を決定したが、規模の小ささや手詰まり感、そして、その寄せ集め的な内容に投資家やエコノミストは当惑した。 日銀の金融緩和は限界に達したとみる向きは多く、資産買い入れを大幅に拡大した場合、市場は混乱に陥るのではないか、また、これ以上の効果があるのだろうかとの疑問が浮上している。 オリエンタル・エコノミスト・アラート誌編集長のリチャード・カッツ氏は、日銀はジレンマに直面していると指摘する。政策姿勢を疑問視する見方がある一方、追加緩和すれば、政策が効果を上げていないというメッセージを送ることになる。 エコノミストらによれば、追加緩和を見送ることで予想される最悪の結果は円高だ。円高が進めば、企業の利益は圧迫され、アベノミクスの重要な要素である賃上げにただでさえ慎重な企業幹部の説得は難しくなる。 明治安田生命の小玉氏は、日銀が市場に好印象を与えるためには、年間の資産買い入れ目標を少なくとも20兆円引き上げ100兆円とする必要があると述べた。前回の引き上げは2014年10月で、買い入れを30兆円増額している。 黒田総裁にとってのリスクは、追加緩和で投資家は一時的に満足するものの、国民や企業の間にはさほど楽観が広がらないことだ。 日銀の追加緩和にほとんどあるいは全く効果がなかった場合、投資家は万策尽きたと結論づけ、黒田総裁に対しては、中国経済の急減速といったさらなる衝撃が発生した場合に対処できるとの信頼が損なわれる恐れがある。 JPモルガン証券のチーフエコノミスト、菅野雅明氏は「日銀にとっては、これが最後の緩和だという印象を与えないことが極めて重要だ」と述べた。 関連記事 日銀、追加緩和の条件満たす=安倍首相側近 【社説】日銀「不発」、経済の命運は首相の手に 2016年金融政策:日銀、1-3月期の追加緩和ないもよう http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AF200_BOJ_16U_20160121024807.jpg Business | 2016年 01月 15日 19:26 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス インタビュー:雇用は良好、1月の日銀追加緩和は不要=浜田参与 [東京 15日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は15日、ロイターとのインタビューに応じ、中国経済の先行き懸念などを背景に金融市場が不安定化しているが、今月28、29日に日銀が開く金融政策決定会合での追加緩和は必要ないとの認識を示した。雇用環境が引き続き良好なことなどを理由に挙げた。 原油価格の下落が消費者物価を下押し、日銀が見込む2016年度後半の物価2%到達が難しい情勢になっているが、原油安は日本経済にとって深刻な問題ではないとし、生鮮食品とエネルギーを除いた物価が2%に向かっている限り、達成時期にこだわる必要はない、と語った。 <原油安はグッドニュース、2%達成時期こだわる必要ない> 中国の経済不安や市場の不安定化、中東・北朝鮮問題という地政学リスクの高まりなどを背景に、国際金融市場ではリスク回避の動きが強まっている。東京市場も年明けから株安・円高が進行しているが、浜田氏は中国と日本の経済情勢の違いなどを踏まえ、「中国経済のファンダメンタルズや政策対応は弱いが、日本経済は良いので、日本株が中国株ほど落ちる理由はない。日本株はどこかの時点で回復すると思う」との見通しを示した。 株安・円高に加え、下げ止まらない原油価格を受けた物価の低迷を背景に、市場では1月の金融政策決定会合で、日銀が追加緩和に踏み切るとの観測も出始めている。 浜田氏は「日銀は日々の市場動向を心配する必要はない」と述べるとともに、日本の雇用情勢が改善を続けていることを重視。金融政策は日銀が決めることとしながらも、1月会合での追加緩和は必要ないとの認識を示した。 原油価格の下落が続く中、消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)見通しの下方修正や、2016年度後半と見込んでいる物価2%の到達がさらに後ずれする可能性が高まっている。 浜田氏は、原油輸入国である日本にとって、原油安は「グッドニュース」と指摘。日銀が物価目標を設定した当時は「大幅な原油安はまったく予想できなかった。原油の影響を含んだ2%のインフレ目標を達成することは、理にかなっていないのではないか」と述べ、日銀が試算している生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(日銀版コアコアCPI)が2%に向かっている限り「(コアCPIによる)2%の達成にこだわる必要はない」と強調した。 日銀版コアコアCPIは、直近で明らかになっている11月の前年比上昇率がプラス1.2%となっており、同月の消費者物価(総合)の同プラス0.3%、コアCPIの同プラス0.1%に比べて高めの伸びを示している。 <消費低迷、再増税見通しも影響している> また、14年4月の消費税率引き上げが、個人消費の抑制に「思った以上に効いている」と主張。加えて17年4月に消費再増税が予定されていることも「消費の足を引っ張っている面がある」との認識を示した。 そのうえで、17年4月の消費税率引き上げについて「日本の経済にとっても政治にとっても重要な決断」とし、「増税するのか延期するのか、安倍晋三首相に自由度を与えるべきだ」と語った。 *見出しを修正しました。 (伊藤純夫 金子かおり 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/hamada-interview-idJPKCN0UT0Z2 米新規失業保険申請、先週は29.3万件−予想に反し増加
By ERIC MORATH 2016 年 1 月 21 日 23:02 JST 【ワシントン】米国では先週、新規失業保険申請件数が小幅に増加した。レイオフの件数が微増したものの、全体の水準は雇用が安定して生み出されている様子を示している。 米労働省が21日発表した16日までの週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比1万件増の29万3000件で、昨年7月上旬以来の高水準となった。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がまとめたエコノミスト調査では27万7000件と予想されていた。 週ごとのばらつきをならした4週移動平均は6500件増の28万5000件で、昨年4月以来の高水準だった。 新規申請件数はここ4週間のうち3週間で増加した。ただこの時期には申請件数の変動が大きくなりやすい年末年始が含まれており、申請件数は歴史的に見て極めて低い水準を維持している。 9日までの週の新規申請件数は従来発表から1000件下方修正され28万3000件となった。 同週の継続申請件数は前週比5万6000件減の220万8000件となった。継続申請件数は1週間遅れで発表される。 「難民債」発行も、対策費捻出に知恵絞るEU 世界の難民対策予算の不足額は1兆7700億円
オーストリアとスロベニアとの国境に設置された越境防止柵 PHOTO: ASSOCIATED PRESS By GABRIELE STEINHAUSER 2016 年 1 月 22 日 09:52 JST 【ダボス(スイス)】世界的な広がりをみせている難民危機が、各国政府や国際機関の予算を圧迫しており、対策費の捻出のため民間からの資金調達や、燃料、航空券への特別課税など、さまざまなアイデアが打ち出されている。 国連が先週末に発表した報告によれば、戦争や自然災害に巻き込まれ、人道支援に頼るようになった難民は1億2500万人と、21世紀初めの12倍に達した。難民対策予算の不足額は150億ドル(約1兆7700億円)に上っており、このギャップを埋めることが不可欠になっている。 一方で、過去1年間で100万人を超えたアフリカ・中近東からEUに流れ込む難民に対する住宅、教育、医療のコストの増加は、ドイツやオーストリア、スウェーデン、フィンランドなどに大きな財政負担を強いている。ドイツのショイブレ財務相は、こうした膨れ上がるコストを賄うため、EU全域で燃料特別税を課すことを提唱している。 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)出席のため当地に滞在中の欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、難民のための特別税の導入のほか、「難民債」の発行もあり得るとの見解を表明した。同委員は、「難民流入をいかに欧州の経済的機会にするかの方策について検討するのにタブーはない」と強調した。ただ、特別税、難民債のいずれについても具体的な計画は持ち合わせていないとしている。 しかしこうしたアイデアは、実現に向けて弾みがつき始めている。週末に発表された国連報告も、難民対策予算の補てん策として、いわゆるソーシャルインパクト・ボンドの発行のほか、航空券購入や企業取引に対するごく小規模な課税に言及している。ソーシャルインパクト・ボンドとは、民間投資家から集めた資金で社会的な事業を実施し、成果を挙げた場合には行政コストの削減分を投資家に還元するというもの。英国やベルギーの一部地方自治体や国際機関はすでに、ソーシャルインパクト・ボンドの実験を行っており、これを難民対策など人道支援にも応用する発想だ。 しかし、EUでは難民債や特別税の構想には、誰もが賛同しているわけではない。ショイブレ財務相の燃料特別税のアイデアには、直ちにドイツの政治家から反対の声が挙がった。またドイツなど財政健全派国は、債券発行に反対している。 フィンランドのストゥブ財務相はWSJとのインタビューで、「難民対策費捻出のためのアイデアをことごとくつぶすべきだとは思わないが、多額の資金調達は最終的には、EUではなく各国につけが回ってくるのを理解する必要がある」と述べ、消極的な姿勢を示した。 関連記事 【特集】ダボス会議 デンマーク、難民の金品を接収へ 滞在費対策で 独メルケル首相、「難民受け入れ」の賭けで苦境に 悪夢に変わる移住の夢−たどり着けない欧州 国内回帰するジャパンマネー、海外コスト高で超長期債買いに弾み 2016/01/22 09:07 JST (ブルームバーグ):外国債券に向かっていた国内の銀行や生命保険会社などの投資資金が日本国債に回帰している。日本銀行による異次元緩和下で国内金利は超低水準で推移しているものの、為替ヘッジコストの高止まりで、外債での運用も難しくなっていることが背景にある。 日本証券業協会の統計によると、都市銀行や地方銀行、信用金庫と生損保は昨年12月に超長期国債を合計6880億円買い越した。1年前は3850億円の売り越しだった。財務省の統計では、国内勢による海外中長期債の売越額は先週、3752億円と昨年9月27日−10月3日の週以来の大きさとなった。 世界経済の減速懸念を受け、国内外の株式相場は年初から急落が続出。外国為替相場や原油相場でも物価の押し下げ要因になる円高と原油安が進行し、物価上昇を目指す日銀の黒田東彦総裁に逆風が吹いている。米国では連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めが続くとの見方から、ドルの調達コストが高止まり。外債投資でこうした費用を差し引いた後の利回りは、日本の超長期債を下回る水準まで低下している。 メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、超長期債の買い越しは「国内回帰の一環だ」と指摘。「ベーシススワップの拡大に加え、海外金利が低下している。10年債利回りはあまりにも低いので、20年債に向かっている」と言う。日銀が同社の予想通り、4月に追加緩和した場合、「国債買い入れオペを超長期債を中心に増やすのは間違いない。ブルフラット化がさらに進む要因になる」とみている。 国内勢が円を元手にした外債投資で、将来的に円高が進んでも為替差損を被らないようにする場合、円と外貨のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の格差に加え、クロス通貨ベーシススワップが映す通貨間の需給格差に基づく上乗せ金利などで回避措置(ヘッジ)を講じる必要がある。両者を合わせた1年物は足元で144ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度に上っている。 ベーシススワップの1年物は52bp前後と、米FRBの量的緩和政策の終了や日銀の追加緩和前に当たる2014年半ばからの約1年半で3倍程度に拡大した。米雇用情勢の大幅な改善で約9年半ぶりの利上げ観測が高まった15年11月9日には73bpと約4年ぶりの水準に急拡大し、その後も高止まりが続いている。 米10年物国債利回りは20日に1.94%と約3カ月半ぶりの水準まで低下。為替ヘッジコストを差し引くと0.5%強しか残らない計算だ。日本の10年債利回り0.2%台よりは高いが、20年債の0.9%台を大きく下回る。日本の機関投資家にとって、住友生命保険のように外債投資の対象を信用スプレッドが得られる事業債などに広げていかないと厳しい状況だ。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net; Tokyo Chikako Mogi cmogi@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:山崎朝子 tyamazaki@bloomberg.net 崎浜秀磨, 青木勝, 山中英典 更新日時: 2016/01/22 09:07 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1AYUF6JTSFI01.html 中国、ドルペッグ制からの移行に真剣=上級経済顧問 Lingling Wei and Jon Hilsenrath 2016 年 1 月 21 日 22:24 JST 【ダボス(スイス)】中国の習近平国家主席の上級経済顧問を務める方星海氏は21日、人民元のドルペッグ(連動)制から離れる意志があると述べた。国際通貨基金(IMF)は外国為替制度改革に関わる意思伝達を改善するよう中国政府に求めている。 中国は長年にわたり、事実上のドルペッグ制を採用してきた。だが昨年12月、13通貨から成るバスケットを参照する制度へ移行する方針を示した。 だが人民元の大幅安も一因となった中国市場の混乱で、海外の投資家や政策担当者らは中国の為替政策をめぐる不透明感を指摘していた。 方氏はダボス会議でパネル討議に参加し「バスケット方式に真剣だ」と語った。「これは決定済みの戦略だ」とも述べた。 ドルペッグ制の下、人民元はドル高に伴って上昇し、中国の製造業者の競争力を損なってきた。ドルペッグ制との決別は、中国政府の成長促進努力に寄与する可能性がある。 方氏は人民元相場を調整する中で「若干の巻き返し策が必要だ」としつつ、「それを成し遂げれば、人民元は再び安定する」と話した。 IMFのラガルド専務理事は方氏と同じパネル討議に加わり、市場との対話を是正するよう中国政府に呼び掛けた。 ラガルド専務理事は「大規模な移行であることを踏まえると、コミュニケーションに問題がある」とし、「より良いコミュニケーションが移行に役立つはずだ」と述べた。 方氏はこれに対し「われわれはもっと良くできるはずだ。学びながらそうしようとしている。コミュニケーションをするためにここにいるのだ」と答えた。
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