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原油価格の予測に欠かせない重要なデータとは?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160120-00101246-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 1月20日(水)19時1分配信
世界的な株価下落が続く中で、原油安が止まりません。ニューヨークの原油先物市場でWTI期近物がついに1バレル=30ドルを割り込み、12年ぶりの安値をつけました。
原油安は2014年末から本格化していました。その背景は、(1)ここ数年の米国のシェール革命、(2)サウジアラビアのシェア優先戦略、などで原油生産の増加が続く一方で、中国など新興国経済の減速で世界的に原油需要が鈍化していることです。さらにここへきてサウジとイランの断交をきっかけに、原油価格は一気に下げ足を速めました。
こうした原油安の背景は、国際エネルギー機関(IEA)が毎月発表している「世界石油市場月報」のデータから読み取ることができます。IEAは日欧米など先進国中心に29カ国が加盟する組織で、世界のエネルギー需要と供給について石油輸出国機構(OPEC)など非加盟国も含め国別の動向を調査し「月報」として発表しています。
最新の月報は2015年11月。まず米国の原油生産の増加ぶりからみましょう。かつてはサウジが世界の原油生産1位でしたが、00年代に入ってロシアが1位となり、13年以降は米国が1位となっています。米国の原油生産量は10年ごろまで日量700万バレル台。微増傾向でしたが10年以降は急増し、15年11月には同1280万バレルに達しています。5年間で65%もの増産で、シェール革命の勢いを見せつけた格好です。
これに対してサウジはここ10年ほど微増ないし横ばいにとどまっています。OPECの盟主として、生産枠を守るため全体の調整役を果たしてきました。しかしその結果、米国にシェアを奪われてしまったため、14年11月のOPEC総会では「減産せず」の決定を主導し、それ以後は自らも増産に動いています。15年11月の生産量が14年の年間平均より約7%増加したことが、それをよく物語っています。
ほかのOPEC加盟国の多くもサウジに追随し増産しています。OPEC全体の生産枠は一応、日量3000万バレルですが、実際にはかなり上回る水準で、11月は3173バレルを記録しました。昨年12月のOPEC総会では、現状の生産水準を容認して生産枠を棚上げ。もはやOPECは機能停止状態と言ってもいいでしょう。
その中で、サウジ以上に増産が目立つのはイラクです。同国は00年代のイラク戦争の影響で原油生産が落ち込んでいましたが、復興が進むにつれて原油生産も急ピッチで増えており、15年11月は29%もの増産となっています。
いわば主要産油国が増産競争に走っている形で、その結果、世界全体の原油生産も増加が続いているのです。むしろ、増加ピッチは速まっていると言っていいでしょう。
■ サウジの財政は原油安で急速に悪化
一方で需要の伸びは追いついていません。中国など新興国経済の減速が響いています。従来は、世界の原油需給はほぼ均衡、または生産よりも需要が上回るケースが多かったのですが、14、15年は供給過剰となっており、その幅も日量151万バレルと、かつてないほどに大きくなっています。
価格がここまで下落してくれば、減産という力学が働いてもよさそうなものですが、今のところOPECが減産に動く気配は見られず、米国との我慢比べの様相を呈しています。この構図に変化が出てこないかぎり、価格下落圧力はなかなか弱まりそうにありません。
これに加えて、サウジとイランの対立が、事態を一段と複雑なものにしています。断交といった事態は、本来なら「地政学リスク拡大→原油価格上昇」との展開になるはずですが、今回はOPEC内での協調減産が困難になったとの見方から、原油下落を加速する要因となりました。
もともと、イスラム教スンニ派のサウジとシーア派のイランは宗教上の対立関係にありましたが、サウジの南隣のイエメンで起きた内戦をめぐって両国の対立が激化しています。14年末からの原油価格下落にもかかわらずサウジが減産に動かないのは、原油の生産コストが高いイランにより大きな打撃を与える狙いもあると言われているほどです。
イランとの断交の背後にはサウジの国内事情も隠されているようです。原油安のためサウジの財政は急速に悪化しており、昨年末に発表した16年予算は日本円で約10兆5000億円にのぼっています。サウジと日本のGDPの差を考慮すると、この赤字額は日本なら60数兆円に相当する巨大な金額です。
これまでサウジは豊富な石油収入を原資に、国内の福祉や教育などの補助金を手厚くしていましたが、もはやそれらを続けることが困難となり補助金削減や公共料金の値上げを打ち出しています。イランとの断交はそうしたことに対する国民の不満を外に向けさせる狙いもありそうです。
■ イランの経済制裁解除で原油一段安も
一方、イランは欧米との間で核開発に関する合意が成立し、近く経済制裁が解除される見通しです。前出のIEAのデータを見ると、イランの原油生産量は経済制裁の影響で減っていますが、もともとは中東でサウジに次ぐ生産国です。したがって経済制裁が解除されれば、イランは原油を生産し輸出を再開することができるようになります。これはサウジにとっては好ましくない事態であると同時に、原油価格の新たな下落要因ともなりうるものです。
こうしてみると、現状では原油安の続きそうな要因が多そうです。サウジとイランの対立が一段と深刻化し軍事的な緊張が高まるようなことになれば、原油価格が反騰する可能性がないわけではありませんが、それもまた好ましくない展開です。
両国の対立はシリア情勢やテロとの戦いにも悪影響を及ぼす恐れがあり、世界経済にとってもマイナスです。サウジは米国の中東政策に対しても不満を強めているとみられる一方で、同国内の政治的安定にも陰りが出てきました。サウジが今後どう動くのかが、原油価格の先行きを占う大きなカギと言えそうです。
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
岡田 晃
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