原油と相関強める市場、米利上げで禁断症状も 米株式、直近高値から23%の下落もあり得る? By RANDALL W. FORSYTH 2016 年 1 月 19 日 08:32 JST ?FRBの利上げで禁断症状か 米株式市場は過去最悪のスタートを切り、ダウ工業株30種平均(NYダウ)にとっては金融危機のどん底に達する直前の2009年2月以来で最悪の月となりそうだ。 S&P500指数は先週、さらに2.2%下げて年初からの下落を8%超とした。さらに肝心なのはS&P500指数が過去3週間で8.8%の急落を示したこと。これほどひどく落ち込んだのは金融危機が始まったばかりだった2008年10月24日までの3週間以来である。それ以上の打撃を受けてきたのがナスダック総合指数で、この3週間で11.09%の暴落となった。その3週間が始まる少し前の12月15〜16日には直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が開かれていた。 2016年の株価急落の原因を突き詰めると、この数カ月間にわたって市場を悩まし続けてきた3大要因である「中国」「原油」、それに関連した「ハイイールド債市場の急落」が挙げられる。これら全ては中央銀行の金融政策と深く関わっている。 日々のデータ、その時々のデータで見ると、原油価格の動きはその他の市場の値動きをかつてないほど決定付けてきたということがわかる。カナダの資産運用会社グラスキン・シェフのチーフエコノミストでストラテジストのデービッド・ローゼンバーグ氏は、「今や全てが原油価格と相関している。相関関係は恐ろしいほど劇的に変化した」と書いている。 この1年間のハイイールド債と原油価格の相関率は85%で、それ以前の約23%から急激に高まった。かつてはゼロパーセントに近かったS&P500指数と原油価格の相関率は50%前後まで高まっている。 ローゼンバーグ氏の勤務地、トロントで使われているカナダドルと原油価格の相関率は10年前の80%から92%に高まり、S&Pトロント総合指数と原油価格の相関率も10年前のわずか30%から82%に高まっている。10年前と言えば、アップル(AAPL)が「iPhone(アイフォーン)」の初期モデルを発売するずっと前のことで、カナダに拠点を置くブラックベリー(BBRY)が依然としてスマートフォン市場を支配していた時代だ。それはまた別の話ではあるが。 銀行株のアナリストたちは、そのチームにエネルギー専門家を雇わざるを得なくなっている。ローゼンバーグ氏はそれを「信じがたいことだ」と言う。その一方で、シティグループ(C)、JPモルガン・チェース(JPM)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)の第4四半期(10-12月期)決算では、明かされたエネルギー関連企業へのエクスポージャー(変動リスクにさらされている量)が株価下落の材料となってしまった。 原油価格があり得ないと思われていた水準まで落ち込むと、特に金融株とハイイールド債の原油価格に対する感応度がさらに高まった。米国産標準油種のウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)と欧州産原油の指標であるブレントの両方において、価格は先週、1バレル=30ドルという節目を割り込んだ。価格が下がれば下がるほど、価格低迷が長引けば長引くほど、レバレッジへの依存が高いエネルギー生産業者の存続に対する脅威は大きくなる。このことは、そうした業者の社債が額面1ドル当たり50セントというディストレス水準、一部はそれ未満で取引されていることからもわかる。 しかし、その下落が加速したのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が大々的に予告していた短期金利の利上げを12月に開始してからである。そして、投資顧問会社ウィルシャー・アソシエイツの試算によると、米国株の時価総額は年初来で約2兆1000億ドルも目減りしたことになるという。これは禁断症状と見なされるべきだろう。 ?不安に輪をかける3連休 米主要株価指数は1月15日に2%以上も下げ、NYダウは391ドル安の1万6000ドル割れで引けたが、取引時間中には537ドルも下げた場面があったので、その程度で済んだのは不幸中の幸いだった。債務によるストレスが大きくなっているという兆しは、それ以前から出ていた。ハイイールド債市場では、先週の終わりにエネルギー関連企業の社債の利回りが17.43%に達し、過去最高だった2008年12月5日の17.05%を更新した。さらに、投資適格級社債の米国債に対する利回り上乗せ幅(スプレッド)も景気後退期かその直後にしか見られない水準にまで達していた。 ルイーズ・ヤマダ・テクニカル・リサーチ・アドバイザーズ創立者のルイーズ・ヤマダ氏は15日の下落後の米株式市場について、一時的な反発はあり得るが、すでにシクリカル(循環的)な弱気相場に入っていると思うと述べた。同氏は金融株、ハイテク株、バイオ株の急落を指摘し、現在は「最良のセクターが最後に下落する」という段階に入っていると付け加えた。 今月初めの顧客向けレポートで同氏は、そのシクリカルな弱気相場について、2013年に始まり、2007年と2000年の高値を更新した「FRB誘導の」構造的強気相場を背景とするものだと説明。その場合は直近の高値から2013年の保ち合い離れの水準までとなる23%の反落が起きても全くおかしくないと、同氏は付け加えた。 投資家の不安に輪をかけているのが16、17、18日の3連休である。1月18日は米国の祝日(マーティン・ルーサー・キング・デー)であるため、この3日間のうちに海外、特に中国から予期せぬ悪いニュースが飛び込んでくる可能性がある。米国株の取引が再開される19日には正常に戻るだろうと期待しない方がいいかもしれない。 景気後退を伴わない弱気相場、不安の原因は? By BEN LEVISOHN 2016 年 1 月 19 日 08:29 JST ?弱気相場はどんな種類?
古いことわざを言い換えるなら、「熊のようなうなり声を上げて、熊のようにかみつくならば、本物の熊だと認識せざるを得ない」ということになる。ここで言う熊とは、もちろん弱気(ベア)相場のことだ。 先週、S&P500指数は2.2%下げたものの、弱気相場に求められる20%の下落には至っていない。森で熊につきまとわれた際に、それが黒いクマなのか、それともグリズリーなのかを立ち止まって考えるのは賢明ではないだろう。だが、S&P500指数が下落し始める際には、どんな種類の弱気相場なのかを問いかけてみることが重要だ。 大半の弱気相場は景気後退と共に起こる。1928年以降に起こった15回の弱気相場のうちの10回がこのパターンに当てはまる。この種の弱気相場は長期にわたり(中央値は20カ月強)、しかも下げ幅は大きい(S&P500指数の下落率は平均で44%)傾向にある。 ニュースの見出しだけを見ると、最悪の事態を想像するのは簡単だ。中国の株式市場は急落し、ジャンク債市場はエネルギー・セクターを除いても景気後退の確率が20%というシグナルを発し、米国の製造業は鈍化しつつある。決算発表シーズンがまずまずのスタートを切る中で、鉄道大手CSX(CSX)のマイケル・ウォード最高経営責任者(CEO)は、同社が景気後退以外には決して感じたことのない圧力にさらされていると述べた。これが単なる成長不安でないとすれば、前途は明らかに厳しくなりそうだ。 しかし、国内外の混乱にもかかわらず、今年、米国は景気後退を回避する可能性が高い。RBCキャピタル・マーケッツのエコノミスト、トム・ポルセリ氏は、月次の雇用の伸びが20万人程度で推移しており、鈍化する気配がほとんどないと指摘する。製造業を対象にした調査では持続的な低調が示唆されるものの、製造業が米国経済全体に占める割合は12%にとどまり、全体の86%を占める非製造業セクターは良く持ちこたえているもようだ。「問題があるのは確かだが、米国経済の状況は相対的に健全だ」と、同氏は述べている。 では、市場はなぜ不安におののいているのだろうか。ストラテガス・リサーチ・パートナーズのテクニカル・アナリスト、クリス・ベローネ氏によると、市場はエネルギーとコモディティ・セクターで起こる可能性の高い、ある種の金融危機を織り込みつつあるのだという。両セクターでは債券価格が下落し、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のコストが跳ね上がっている。また、市場は中国通貨の暴落が発展途上国、ひいては世界経済に波及するのではないかとの不安にも駆られている。現時点で不安が過剰なものであるか否かは重要ではない。市場参加者はそれを信じており、そのこと自体が弱気相場を引き起こす可能性があるからだ。 ?景気後退を伴わない弱気相場に備えよ 景気後退を伴わない弱気相場の中で最もよく知られているのが、1987年のケースだ。この時は10月19日のブラックマンデーの21%安を含め、S&P500指数は34%下落した。その他にも、2011年5月に付けた高値から10月の取引時間中の安値までにS&P500指数は22%下げ、1998年の新興国危機の際には23%下げた。この種の弱気相場は短期(中央値は5カ月)で、下げ幅は小さい(平均で「わずか」26%)傾向にある。 希望の兆しがあるとすれば、市場が数カ月前に比べてかなり割安になっている点だ。バンクオブアメリカ・メリルリンチのストラテジスト、サビタ・スブラマニアン氏によれば、12カ月予想株価収益率(PER)は15.9倍と、2014年初めの水準にある。つまり、投資価値が存在するというわけだ。 同氏が推奨するのは、現金が潤沢な企業(債務負担の重い企業を年初来で4.8%ポイント、アウトパフォーム)、投資適格企業(ジャンク格付け企業を4%ポイント、アウトパフォーム)、そして質の高い企業(質の低い企業を4%ポイント、アウトパフォーム)で、売り圧力が収まるまでは、この状況に変化はないと同氏はみている。 そして運が良ければ、実は黒いクマでもグリズリーでもなく、コアラだったという可能性もある。
米株が調整局面入り、予想引き下げ相次ぐ原油安と世界経済懸念でストラテジストが弱気に By VITO J. RACANELLI 2016 年 1 月 19 日 08:36 JST ?調整局面入り 米国株式市場は週間ベースで3週連続の下落となり、前週末からさらに2%値下がりした。投資家は値動きの荒さにすくんでしまい、S&P500指数は高値から10%を超える値下がりとなり、昨年8月以降で2回目の調整局面入りとなった。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MD543_ONBP26_NS_20160117221404.gif 下落要因はまたしても世界と中国の景気懸念と、16カ月以上続いている原油価格の下落だった。原油価格は先週11%下落して1バレル当たり29.42ドルとなったが、2014年6月時点では107ドルだった。この下落を受けてエネルギー株は先週2%、2014年半ばからだと44%の下落となったほか、株式市場全体にも原油価格下落の影響が出ている。 加えて、先週は銀行株が高値から20%下落して弱気相場入りとなった。背景には連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの観測がある。 先週、ダウ工業株30種平均とS&P500指数は2.2%下落して1万5988ドル08セントと1880.33で引けた。ナスダック総合指数は3.3%安となって4488.42、小型株のラッセル2000指数は3.7%下落して1007.72で週末を迎えた。 ?米国の経済指標に弱さ 独立系のケニー・アンド・カンパニーの株式ストラテジストであるピーター・ケニー氏は、米国と世界全体の需要がどうなるかという投資家の懸念が原油価格と中国経済を通して顕在化し、値動きの荒さにつながったと語る。昨年は緩やかながらも確実に成長した米国経済が株式市場の最高値更新の土台となった。しかし、発表された最新の国内総生産(GDP)成長率や小売売上高、鉱工業生産などの米経済指標は、景気の衰えを示していると同氏は指摘する。 ケニー氏は短期的に株式市場を警戒すると語り、「株式が弱気相場入りしてもおかしくない」と付け加えた。銀行株や小型株のように既に弱気相場入りしているセクターもある。同氏は、強気相場に戻るには需要が回復し、FRBが利上げを先送りし、原油価格が戻る必要があると言う。 弱気はケニー氏だけではない。ジョーンズトレーディングでマーケット・ストラテジストを務めるヨウセフ・アバッシ氏は「原油価格とエネルギー株の回復がなければ、株式市場が上昇するのは非常に難しくなった」と述べる。 普通であればこうした週の後の月曜日の休日は歓迎されるところだが、アバッシ氏は米国時間の月曜夜に発表される中国のGDP成長率や鉱工業生産など、多くの経済指標が気にかかると指摘する。「これらの数字が低調だと、また世界の需要見通しが低下する」からだ。この週から本格化する第4四半期の決算発表も注目される。 前週の金曜日に発表された12月の米鉱工業生産は前月比マイナス0.4%と3カ月連続の減少だった。公益セクターと暖冬が不振の要因で、市場の予想である同マイナス0.2%を下回った。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MD545_ONBP26_NS_20160117221502.gif もちろん全員が先行きを懸念しているわけではない。JPモルガン・アセット・マネジメントでチーフ・グローバル・ストラテジストを務めるデービッド・ケリー氏は、市場の混乱が2週間ほど続くものの、乱高下の中で感情に左右された投資行動をとるべきではないと語る。調整が続くためにはそのための材料が必要になるわけだが、中国経済や原油価格、米国経済、企業業績、株式市場のバリュエーションを見ると、下落を続けさせるほどの材料ではないと指摘する。 ?ストラテジストが目標を下方修正 2016年に入ってから2週間が過ぎただけだが、2人のトップストラテジストが16年の相場に関して強気のトーンを大幅に転換した。そのうちの1人はフェデレーテッド・インベスターズの最高投資責任者(CIO)であるステファン・オース氏で、同氏はこれまで10人のトップストラテジストの中でも最も強気だったが、株式市場が自律反発するまでに弱気相場入りする可能性があると述べた。 同氏によると、今年に入ってからの8%の下落と昨年5月高値からの12%の調整は大きすぎて無視できないという。同氏は2016年末のS&P500指数の目標を2500から2150に引き下げ、S&P500指数の1株当たり利益(EPS)の予想を125ドルから120ドルに下方修正した。2017年についても年末の目標値を2500とし、EPSは135ドルから130ドルに引き下げた。「市場に対する見方に大きな変化が生じた。多くの出来事を受けて今年の見通しを変えた」と同氏は述べる。 もう1人は、ゴールドマン・サックスのチーフ米国株式ストラテジストのデービッド・コスティン氏だ。同氏は昨年12月の本誌調査で最も弱気のストラテジストだったが、主にエネルギー・セクターに対する懸念から、2016年のS&P500指数のEPS予想を3ドル引き下げて117ドルとした。 オース氏は、昨年8月の人民元切り下げや最近の「ブレーキをかけ、はずし、またかける」ような市場対策によって、中国当局には市場に政策の一貫性を示すことができないことが分かったと述べる。同氏は依然として中国経済の「ソフトランディング」を期待しているものの、世界の株式市場は「実績を確認したいという態勢になっており、それには何カ月もかかる」と指摘する。 原油価格の下落に関してオース氏は、まだ終わりが見えず、1バレル当たり20ドル台前半の可能性もあると述べる。最近報道されたサウジアラビアのアラムコ(国営石油会社)の一部の株式の新規株式公開(IPO)について同氏は、サウジ政府による原油価格の低迷長期化に備えた動きではないかと考えている。一方、コスティン氏は2015年のエネルギー・セクターの営業利益が1967年以降で初めて赤字になると予想する。同氏は同セクターのS&P500指数の利益に対する貢献度を、1カ月より前よりも小さく見積もっている。 オース氏の予想変更の中にはFRBの利上げが中断されることも含まれている。FRBは今年4回の利上げを示唆したものの、同氏は1回だけになるとみている。これは金融セクターにとって打撃となる。 S&P500指数の上昇をこれまで支えていたのは数少ない大型株だ。もしこれら銘柄が他の銘柄と同様に下落したら、S&P500指数を弱気相場入りさせることになる。オース氏はS&P500指数について「さらに下押しする可能性がある」として、弱気相場入りを示唆する。S&P500指数が弱気相場になるのは1700を少しだけ下回った水準だ。「現時点では2016年が横ばいで終われば上出来で、問題を解決するには時間がかかる」オース氏は続けた。 ただし、オース氏は長期的には強気を維持している。同氏は世界景気の後退局面入りを予想しているわけではなく、前回の強気相場を終わらせた2008〜09年のような深刻な状況とは「全くかけ離れている」と述べる。 コスティン氏は自社株買い戻しに希望を見出している。これまでも自社株買い戻しが市場を落ち着かせるきっかけになったからだ。2月5日までに、S&P500指数の時価総額でみて約75%の企業の業績発表が終了するが、その発表後に自社株買いが再開される見通しだと同氏は指摘する。 2016年の最初の2週間の下落を経験した投資家は、コスティン氏が正しいことを期待するのみだ。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MD546_ONBP27_NS_20160117221555.png
投資専門家9人が見通す市場の今後とは ラウンドテーブル3回シリーズの第1回となる今回は、当代最高の投資専門家の市場に対する今後の大局的な見通しを紹介する PHOTO: BRAD TRENT FOR BARRON’S By LAUREN R. RUBLIN 2016 年 1 月 19 日 08:48 JST ?バロンズ・ラウンドテーブル 本誌は先週、ニューヨークのハーバードクラブで毎年恒例の世界トップクラスの投資家9人によるラウンドテーブルを開催した。楽観的な見方は少なく、参加者は総じて株式市場の一層の乱高下、ジャンク債市場の崩壊、世界中での困難を見込んでいる。また、割安銘柄の買いがインデックスファンドよりもはるかに高いリターンを上げられることで、意見がほぼ一致している。ラウンドテーブル3回シリーズの第1回となる今回は、当代最高の投資専門家の市場に対する今後の大局的な見通しを紹介する。またブライアン・ロジャース氏とオスカー・シェーファー氏による推奨取引を紹介する。 ?参加者と所属 氏名/所属 1.スコット・ブラック/デルファイ・マネジメント創設者で社長 2.アビー・コーエン/ゴールドマン・サックス証券 シニア・ストラテジスト 3.マリオ・ガベリ/ガムコ・インベスターズ会長兼CEO 4.ジェフリー・ガンドラック/ダブルライン・キャピタルの共同創業者兼CEO 5.ウィリアム・プリースト/エポック・インベストメント・パートナーズ CEO兼共同CIO 6.ブライアン・ロジャース/T.ロウ・プライス会長 7.オスカー・シェーファー/リビュレット・キャピタル会長 8.メリル・ウィトマー/イーグル・キャピタル・パートナーズ ゼネラル・パートナー 9.フェリックス・ズラウフ/ズラウフ・アセット・マネジメント(スイス)社長 ?景気見通し 本誌:今年の景気見通しから始めてほしい。 ガベリ氏:米国経済の70%を占める個人消費は好調に推移している。賃金は上昇し、雇用は増加しており、株価下落後でも消費者のバランスシートに問題はない。今年の新車販売台数は横ばいの見込みだが、個人の消費は続き、住宅も改善している。消費者の食品と燃料向け支出は引き続き減少するだろう。議会は、インフラストラクチャー関連法案と税制関連法案を通過させており、軍事費も増加することになる。政府の各種給付金支出には対処しなければならず、ドル高も輸出にとって逆風となっている。ただ全般的には、今年の米国経済は2%で成長する可能性がある。 欧州では、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が金融刺激策を実施しており、状況は引き続き改善するだろう。中国では、経済の40%を占める個人消費が向こう5年間で年率10%増加する可能性がある。その他の経済セクターの成長率は年率3〜4%で、課題もある。インドや日本の状況を好感しているが、大半の中南米諸国に関しては、あまり楽観視していない。 ロジャース氏:世界の経済成長には課題があり、その原因は世界の金融危機までさかのぼる。今年の米国の経済成長率は2.25%とみている。欧州は改善しつつあり、中国について唯一分かっていることは、政府が経済指標を水増ししていることだ。経済成長率が10%と公表されたとしても、現実は違う。 金融危機処理モードから脱するのは、2017年か2018年になるだろう。人々は依然として、個人的な財務上の課題克服に取り組んでおり、その一つの証拠は投資家の投資意欲が回復していないことだ。個人投資家は市場に対して信頼感を持っておらず、マネー・マーケット・ファンド(MMF)の0.01%の金利で満足している。 ブラック氏:経済を修復するためには、財政政策の構造的な変化が必要だ。2009年から14年までの国内総生産(GDP)の年平均成長率は1.4%だったが、戦後の標準的な成長率は年率3%だ。オバマ大統領就任以来、税制政策には超党派的な合意はなかった。米国で雇用を取り戻すためには税制の大幅な改革が必要で、製造業のために投資減税が必要だ。大半の政治家は、公共政策について議論していない。結論としては、名目GDP成長率は引き続き2〜2.5%になるだろう。 ガンドラック氏:根本的な問題の一つは人口動態だ。米国では、労働人口と退職者(退職を検討中の人々を含む)の比率は悪くない。しかし、日本では20年前に人口動態の急速な悪化に突入しており、中国も今では20年前の日本の状態にある。イタリアは次の世代では労働力の3分の1を失う見込みで、ロシアは史上最大の人口減少の危機にひんしている。総人口に占める労働者数の割合が低下すれば、生産性のある人々によるはるかに高い経済成長が必要になる。米国ではこの問題は、給付金プログラムを通じて現れるとみられ、2020年頃までは問題はないだろうが、給付金を維持できなくなる時がいつかは訪れるだろう。 債券投資家として、私は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に注目している。7〜8年にわたったゼロ金利政策は、投資行動の変化を促し、誤った投資につながった。市場の株価収益率(PER)が上昇した一因はここにある。 PHOTO: JENNA BASCOM FOR BARRON’S ズラウフ氏:スタグネーションは、今後15年から20年続くだろう。人口動態の観点では、ベビーブーマーの就職、東欧諸国の世界経済への参加、中国の世界経済への参加という、世界経済をけん引する三つの波があったが、いずれも終わりを迎えている。 もう一つの問題は債務だ。世界経済は1980年代初めからレバレッジを高めており、経済主体は借入能力の限界に達している。定義によれば、これは需要低下を意味する。また、規制も過去15年間で強化されており、さらに強化される方向にある。最後に、誤った経済政策によって数十年にわたって需要喚起に焦点が当てられてきた。われわれは、債務を再編し、規制を緩和し、一段と健全な政策を追及すべきだが、そのいずれも議論または対処されていない。 Q:皆さんの話を聞くと、逆張り派は好景気の入り口にあると想定するかもしれない。 ズラウフ氏:逆張り派は、常に間違っているわけでも、常に正しいわけでもない。米国の住宅市場が前回の景気サイクルにおいて世界経済に及ぼしたことを、現在の中国が行っている。中国は国際収支危機の状態にあり、大半の専門家はそれを理解していない。国際収支の危機は景気後退と共に終わる。人民元は下落の方向にあり、それを下支えする唯一の手段は資本流出の制限だが、それは中国国内にさらなるバブルを生み出し、問題が大きくなる。中国はいずれ、通貨下落を容認するだろう。 通貨安を今容認しないのは、それが最良の解決策だからだ。人民元が現状から15%ないし30%下落すれば、中国の貿易相手国のみならず、輸出における競争国にも悪影響を及ぼす。人民元が安くなれば、輸入が急減し、輸出価格も低下することになり、それは世界経済に対するデフレショックとなる。そうなれば、中国国外の企業の売上高と利益を減少させ、企業は費用削減を強いられ、世界的な景気後退となる。 ガンドラック氏:人々は、少なくとも公式統計によれば、中国経済が過去に7.5%以上の成長を達成してきたために、同様の成長率が今後も可能であると信じ始めている。そして、中国経済が減速するたびに、政府が成長率を高める施策を打ち出すと考えている。 また、人々はインフレ率が永遠に低水準にとどまるとも考えている。インフレ指数連動国債(TIPS)や通常の債券の価格に基づくと、市場は3年後から30年後までの毎年のインフレ率を1.75%と予想している。それは、合理的ではない。 PHOTO: JENNA BASCOM FOR BARRON’S コーエン氏:米国には人口動態面の優位性があり、金融システムの再建が他の先進国よりも早かった。米国の消費者の景況感は改善しており、バランスシートも修復されている。世界経済に対する中国のリスクは計算通りではないものの、ポートフォリオマネジャーや企業経営者には心理的な影響がある。今年の米国のGDP成長率は2〜2.5%程度だろう。米国では、過去3〜4年にわたって財政の重石があったが、今年は中立から若干プラスの見込みだ。エネルギー関連の設備投資も大きな逆風となったが、これ以上落ち込まなければ差し引きではプラス要因となる。 2015年のS&P500指数の利益は、決算時の海外事業の為替換算とエネルギー価格急落の打撃を受けた。ドルは貿易加重ベースで2014年半ばから約30%上昇したが、さらに30%上昇する公算は小さい。つまり、為替換算後の企業利益に対する今年の打撃は小さい。エネルギー関連企業の利益急減も、今年は昨年程にはならないだろう。 プリースト氏:興味深いことに、2008年から14年にかけて、そして恐らく15年も、先進国の中で利益が増加したのは米国だけだった。全ての産品の限界的な買い手だった中国が突然買わなくなっており、コモディティーの価格暴落と販売量の急減は依然として経済システムに影響を及ぼしている。コモディティー価格にはまだ底が見えない。 シェーファー氏:消費者の状況は良好で、エネルギー以外の企業も順調だ。私は不測の事態を懸念している。 ガンドラック氏:米国と欧州の間で、GDP成長率の差がわずか0.6%ポイントにもかかわらず、金融政策が対照的なことは注目に値すると考えている。GDP成長率は米国では横ばいの一方で欧州は加速しており、恐らく2四半期後には成長率が同じになるだろう。欧州では金利がマイナスでQE拡大が議論されている一方で、米国では利上げが実施され、与信も厳しくなっている。ちなみに米国が、サプライ管理協会(ISM)の景況指数が50以下、および名目GDP成長率がわずか2%の状態で利上げしたことは過去にはない。 ロジャース氏:ゼロ金利が7年続いた後で、FRBは1回利上げしただけだ。設備投資は、25ベーシスポイント(bp)の利上げの影響を受けない。FRBは、12〜18カ月前にGDP成長率が3%に達した時に、利上げを開始すべきだった。 ブラック氏:消費面をみると、個人所得と小売売上高は増加し、貯蓄率は上昇している。2015年には250万人が新規雇用された。一方、企業側をみると、新規受注は減少し、掘削リグの設備稼働率は低下しており、利益には勢いがない。イエレン議長は12月の利上げ後に米国経済の好転に言及しなければならなかったが、鉱工業関連企業をみれば状況が良くないことが分かったはずだ。 プリースト氏:世界の債務残高は増加しており、GDPに対する割合も上昇している。実質GDPが成長したのは与信のおかげで、小売売上高が予想を下回っているのは、人々が債務を返済しなければならないことが理由だ。 PHOTO: JENNA BASCOM FOR BARRON’S ?金利見通し Q:金利の見通しは。 ガンドラック氏:米国10年債の現在の利回りは2.17%で、2014年末と全く同じだ。利回り低下を予想した14年ほどの確信はないが、16年は上昇を予想している。その理由の一つは、海外の米国債保有者の売りだ。外国中央銀行や政府系投資ファンド(SWF)の売りが安全への逃避に伴う需要を圧倒している。 Q:債券のインデックスファンドを保有する場合、利回りの上昇で債券価格下落を相殺できるか? ガンドラック氏:現時点で金利が40bp上昇したら、利回り上昇分は吹き飛ぶだろう。FRBが金融を引き締めれば、イールドカーブはフラット化するだろう。実際、2014年6月から金融環境は引き締まり始めており、イールドカーブはそれ以降フラット化している。フラット化は一部の金融機関にとって深刻な問題で実際に株式市場にも影響が見られる。これはFRBが16年に4回という利上げの方針を撤回していないからだ。FRBは、今年早々に利上げして、その後利下げすると私は予想している。 ロジャース氏:私は、FRBが今年4回の利上げではなく、2回の利上げを実施すると予想している。10年債利回りは3%に近づくとみており、債券で3〜4%の損失を被ることを意味する。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は0.75〜1%へ上昇するとみており、それは2回の利上げを意味する。 コーエン氏:FRBの今後の利上げは経済指標次第だ。FRBはFF金利の誘導目標として、0.5〜1%の間を目指している。 プリースト氏:私は、世界が良好な状態にないために、追加利上げは1回だけとみている。航空電子部品大手ハネウェル・インターナショナル(HON)や複合企業スリーエム(MMM)、事務用品小売り大手ステープルズ(SPLS)の決算発表時のコメントはひどかった。 ズラウフ氏:経済成長率が予想を下回る見込みのため、FRBが今年は利上げしないとみている。連邦公開市場委員会(FOMC)は金利の正常化を望んでいるが、現状には問題がある。海外の中央銀行が自国通貨下支えのために米国債を売っており、利回りが予想水準まで低下しない理由となっている。ただし、今年後半にはドルがユーロ、さらには円に対してさえ大幅に調整する可能性があり、10年以上の長期債利回りは低下した後に上昇する可能性がある。 ?株式市場見通し Q:株式市場の見通しは。 ブラック氏:年初の水準と比べて横ばいとみている。S&P500指数のアナリスト予想利益は、2015年の106.39ドルに対して16年は125.56ドルの18%増だ。私は1株当たり利益(EPS)の増加を、純利益分で4%、自社株買い戻し分で3%と予想しており、それに基づくと16年予想利益は114ドルで、S&P500指数の予想PERは16.9倍となる。過去との比較では若干割高だ。 中小型株の昨年のパフォーマンスは悪く、両方共に依然として割高だ。予想PERは、中型株のラッセル2500指数が約21倍で、小型株のラッセル2000指数は約22倍だ。個別銘柄に価値を見出すことも、米国株式市場全体に強気になることも難しい。 ウィトマー氏:8日の引け値からであれば、5〜7%は簡単に上昇するとみている。企業の手元現金は増加しており、債務の返済に充てられている。年初に高かったバリュエーションは相場急落で低下しており、投資機会はある。 シェーファー氏:昨年は、隠れた弱気相場だった。株価指数は横ばいだったが、ラッセル2000指数構成銘柄の70%は、それぞれの52週高値から20%超下落した。同様に下落した銘柄の割合は、S&P500指数では49%、ナスダック総合指数では68%である。今や30%〜40%下落した銘柄も多く、今年は銘柄選択の年だ。 ガンドラック氏:市場の物色の狭さはひどい状態にある。FRBが12月に利上げした際の、ジャンク債とS&P500指数のパフォーマンスの乖離(かいり)は売りのシグナルだった。 ロジャース氏:今年の増益率が4%で、2.2%の配当利回りを加味すると、今年のトータルリターンは約7%となる。PERは横ばいと想定している。 コーエン氏:私の同僚は、2016年のS&P500指数の利益が117ドルになると予想している。横ばいのPERを想定して、ゴールドマン・サックスのストラテジストであるデービッド・コスティンは年末のS&P500指数の目標を2100としている。 ガベリ氏:株価は、11日の水準からは上昇するが、年初来では横ばいになると予想する。中国の人民元切り下げが遅かろうと早かろうと、今年の為替の動向は私の保有する企業にとってプラスになる。もう一点、原油価格を押し上げるサプライズがあるだろう。 PHOTO: JENNA BASCOM FOR BARRON’S ?新興国市場 Q:新興国市場についての見方は? ズラウフ氏:新興国市場は、中国を中心に動いている。北東アジアは下請け会社で、中南米はアジアに対するコモディティーの供給者だ。ブラジルは実質的に景気後退状態で、改善の兆しは見えない。新興国通貨は人民元に先駆けて下落し始め、まだ終わっていない。大半の新興国は国際収支危機の状態にあるため、新興国の通貨、債券、株式を回避する。 ガンドラック氏:新興国の株式市場はコモディティー価格との相関性が高い。米国株よりも新興国株式を保有する理由は見出せない。 コーエン氏:新興国の中で、インドは逆行する可能性がある。改革を進展させ、構造的問題にはゆっくりとではあるが対処している。 ガンドラック氏:インドの労働力は大幅に拡大する可能性がある。今年のインド株式がどうなるかは分からないが、超長期保有の対象だ。 ?大統領選挙 Q:次の米国大統領は? ブラック氏:ヒラリー・クリントン氏。 ガンドラック氏:ドナルド・トランプ氏。 ガベリ氏:トランプ氏。 コーエン氏:ヒラリー・クリントン氏かポール・ライアン氏。 プリースト氏:クリントン氏。 ロジャース氏:クリス・クリスティー氏が共和党の候補になり、クリントン氏に僅差で勝利する。 シェーファー氏:クリントン氏。 ズラウフ氏:クリントン氏が勝つだろう。トランプ氏は世界経済にとって非常に危険だ。彼は米国の世界に向けたドアを閉ざすことになる。同氏は、国民が現在の政治の支配階層に対してどれほど気を悪くしているかを写し出している。欧州でも同様の動きがあるが、それは、大衆迎合主義者の権力を増し、世界の安定性を損ねるため、悪いニュースだ。 ウィトマー氏:共和党が勝つと思う。 ?ロジャース氏の推奨取引 Q:各人の推奨について、まずロジャース氏から聞きたい。 ロジャース氏:耐久力があり、株価に意見の相違が反映されている銘柄の特定を試みた。トリプルA級の優良企業は少なくなっているが、特定した銘柄は景気サイクルを生き延びており、今後も生き延びると見込まれる。また、これらの企業の経営陣は、強い意欲を持つか、プレッシャーを受けているか、業績改善の必要性を感じている。最後に、これらの企業のバリュエーションは格好の投資機会を提供している。 アルファベット順で紹介すると、最初の企業はアメリカン・エキスプレス(AXP)だ。私にとって同社は優良企業の代表格だ。経営陣は伝統を重んじると共に革新的だ。アナリストは大抵の場合、会員制量販店大手コストコ・ホールセール(COST)との独占契約終了(3月31日の予定)に言及する。株価は2015年に25%下落して、1月8日の引け値は63.63ドルだ。EPS予想は2015年が5.30ドル、2016年が5.50ドル。配当利回りは1.8%で、昨年に続き今年も増配が見込まれる。 観光や出張での支出が増える一方で、クレジットカードの与信費用は減少している。ガソリン価格や航空運賃低下の打撃を被っているが、約13倍のPERが維持されるとすれば、株価は今後18カ月で82ドルになる可能性がある。PERが10倍まで低下しても18カ月後の株価は60ドルと試算され、下値リスクは限定的だ。状況が改善しなければ経営陣が更迭されるという憶測もあり、経営陣には相当のプレッシャーがある。自社株買い戻しを続けており、発行済み株数は年率約5%減少している。 アメリカン・エキスプレスは今や銀行同様に、配当と自社株買い戻し計画に関して毎年FRBの承認を受けなければならない。リスクは、与信費用の増加、規制の一段の逆風、景気減速だ。 次は、ケーブルテレビ最大手のコムキャスト(CMCSA)だ。昨年の下落率は2.7%で、今回の推奨銘柄の中では唯一あまり下がっていない。EPS予想は、2016年が3.70ドル、2017年は4.15ドル。昨年、同業のタイムワーナー・ケーブル(TWC)買収に乗り出した時には市場は興奮したが、計画は4月に失敗し、同社は自社株買い戻しに関心を転じた。2015年には時価総額の3%相当の自社株を買い戻し、2016年も買い戻しは継続される。各種のバリュエーション手法を用いた結果、目標株価を69ドルとしている(8日の引け値は54.67ドル)。中国のリスクもなく、他の企業と比較して景気循環のリスクも小さい。 Q:ケーブルTVについては、加入者の解約が広く懸念されているが。 ロジャース氏:加入者の増加は維持できている。複数のプラットフォームを接続するインタラクティブなサービスであるX1を導入しており、その投資が減少する2017年以降にはキャッシュフローが改善するだろう。 今回の議論で、米国産業の勢いの欠如が話題となった。その観点では、自動車部品・油圧装置製造大手イートン(ETN)を推奨する。株価は、2014年に11%、2015年に23%下落した(8日の引け値は49.17ドル)。事業は良好だが、厳しい業績見通しによって株価が下落している。予想EPSは、2015年が4.25ドル、2016年は4.30ドル。配当は昨年、1株当たり2.20ドルへ増配され、配当利回りは4.4%。配当性向は約50%。2008年から2009年にかけて同業他社が厳しい状態に直面した際にも、同社は黒字を維持した。ピークの収益力は6〜7ドルの範囲だ。株式の価値は、65〜75ドルの範囲。経済情勢が好転すれば、大幅な上値余地がある。 シェーファー氏:他のばかげた買収をする企業よりも、配当する企業を好むということか? ロジャース氏:その通りだ。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MD513_160118_NS_20160117195331.jpg
次の推奨銘柄は、百貨店チェーンのメーシーズ(M)だ。同社は最近、ガイダンスの下方修正を発表したが、同日の株価の若干の上昇を私は良い兆候とみている。2016年1月期の最新の会社予想EPSは3.85ドルで、8日の引け値は35.89ドルだ。業績予想は難しいが、市場では16年1月期は4.25ドルと予想されている。17年1月期は横ばいとみられるが、楽観的な可能性もある。配当は1.44ドルで、配当利回りは4%。PERは9.3倍で割高ではない。インターネット事業では進展をみせているが、第4四半期にはオンライン小売業者との競争が激化し、暖冬にも苦しんだほか、ドル高で観光客の来店も減少した。これらの要因が逆に作用する可能性があるし、経営陣は一部店舗の閉鎖や経費削減で対応している。発行済み株数は10年前の5億4000万株から3億3000万株へ減少している。 アクティビストのスターボード・バリューが株式を保有しており、資産価値は210億ドルと主張している(ちなみに時価総額は120億ドル)。メーシーズはこれを受けて、変化のための別の可能性を模索している。 石油大手オクシデンタル・ペトロリアム(OXY)は(テキサス州の)パーミアン盆地最大の産油会社だ。この春に最高経営責任者(CEO)の交代が予定されている。質の低い企業とみなされた時期もあったが、経営陣は資産売却、資産の収益化、正しいセクターへの投資など、素晴らしい仕事をした。 企業価値の評価は困難だ。2013年の利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)は140億ドルで、15年は50億ドルの見込み。配当は3ドルで、配当利回りは4.7%。少なくとも今後2〜3年の配当原資はある。特に同社の場合、設備投資を2014年の90億ドルから2015年には40億ドルへ減額している。長期的には良い戦略ではないが、短期的には正当化される。 同社の生産量は増加しており、石油業界の中でも生き残り組になるだろう。減配する石油会社が出てきたとしても、オキシデンタル・ペトロリアムは先陣を切らない見込み。逆張り派にとっては、魅力的な状況だ。 最後は、無線通信技術大手のクアルコム(QCOM)で、キャッシュフローの株主還元が投資テーマだ。株価は2015年に32%下落した。8日の引け値は45.88ドル。15年9月期のEPSは4.60ドルで、16年9月期のEPS予想は4.90ドル。 配当は1.92ドルで、配当利回りは4.2%。スティーブ・モレンコフCEOは株主価値に焦点を当てており、自社株買い戻しや増配が加速している。技術ライセンス事業を20年のキャッシュフロー還元法で1株当たり40〜43ドルと評価し、半導体事業を利益の12倍に基づき16ドルと評価し、1株当たり10ドルの現金を加えると、1株当たり69ドルと評価される。 アクティビストのジャナ・パートナーズが昨年関与を始め、企業分割を主張しているが、クアルコムは分割に反対している。また、複数のアジア政府との間で、ライセンス供与の紛争も抱えている。ライセンス事業と半導体事業のキャッシュフローから判断すると、株価は大幅なディスカウントとなっている。 ?シェーファー氏の推奨銘柄 Q:次にシェーファー氏にお願いする。 シェーファー氏:まず、プエルトリコの決済処理の大手企業であるエバーテック(EVTC)で、同社は商業取引の75%、ATMおよびデビットカード取引の70%以上を処理している。また、金融持ち株会社のポピュラー(BPOP)が保有するバンコ・ポピュラー向けの銀行決済処理サービスも提供している。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MD514_160118_NS_20160117195357.jpg エバーテックは中南米へも事業を拡張しており、収入は定常的で、自己資本利益率(ROE)は高く、多額のフリーキャッシュフローを生み出している。にもかかわらずPERは10倍割れだ。対して、米国、欧州、南米の同業他社のPERは20〜25倍となっている。 プエルトリコにおける事業が全体の80%以上を占めることが嫌気されて、大幅なディスカウントとなっている。プエルトリコの債務危機がいつ解消されるかは分からないが、債務再編がついに実施されているもようだ。プエルトリコ経済が改善すれば、同社にとって大変なプラス要因となるが、それ以外にも株価上昇要因はある。 同社は、支払いにおける現金から電子決済への移行から恩恵を受けている。銀行口座を持つ人々の割合は、米国の75%に対してプエルトリコではわずか50%だ。昨年就任したモーガン・シュエスラーCEOは同業のグローバル・ペイメンツ(GPN)での実績がある適任者で、プエルトリコ事業の管理とその他諸国の成長加速を託されており、既にプエルトリコ第2位の銀行の業務を勝ち取り、コロンビアで初の買収も発表している。 新CEOが成長を加速できれば、同社は米国の同業他社並みの評価を得て、株価は現在の15ドルから2倍上昇する可能性がある。また中南米に関心のある大手決済サービス会社にとって魅力的となる可能性もある。グローバル・ペイメンツは最近、同業のハートランド・ペイメント・システムズ(HPY)のPER30倍での買収に合意した。 次に独立系発電会社のカルパイン(CPN)だ。同社はカリフォルニア州、テキサス州および北東部の天然ガス火力発電所と地熱発電所を運営しており、株価は23ドルから14ドルへ下落している。時価総額は50億ドル。同社は電力卸売会社であるため、規制下にある公益企業のような安定的で保証されたリターンを得られない。 同社の株価は無視できないほど割安となっている。2017年の株価フリーキャッシュフロー倍率はわずか5〜6倍で、再取得価額の半分以下だ。株価が下落した理由は二つある。暖冬で電力価格が低下し、投資家は再生可能エネルギー源による競争の長期的な影響を懸念している。天候は予測できず、再生可能エネルギーが引き続き成長すると予想しているが、短期的には、大半のエネルギー源は石炭火力発電や原子力発電所に依存する。同社のキャッシュフロー創造力は引き続き力強く、経営陣は賢明な配分を行うだろう。 次は、コムスコープ・ホールディング(COMM)で、同社は携帯電話サービス会社向けの無線塔に設置されたアンテナの提供者であるとともに、家庭用やデータセンター用の光ファイバー・ソリューションも提供する。事業は年率3〜4%で成長しており、無線周波数帯域に対する需要増加で引き続き恩恵を受ける見込み。 同社の業績は、四半期毎および毎年の変動が大きく、株価もその影響を受けている。とはいえ、経営陣は利益率改善に優れた手腕を発揮しており、営業利益率は過去10年間で2倍の20%へ上昇した。8月には3度目の買収を完了しており、過去2回の経緯から、今回も今後3年間で利益が大幅に増加する可能性がある。 株価は23.36ドルで、予想PERは2016年が10.5倍、2017年が8.5倍。上値余地は少なくとも50%あり、今後18カ月では約75%となる。 昨年、企業向けソフトウエア企業のナイス・システムズ(NICE)を推奨した。株価はそれ以降で10%上昇したが、まだ40%の上値余地がある。新経営陣には、膨張した費用構造と資本過剰のバランスシートの最適化で、株主価値を大幅に高める機会がある。同社は過去1年間で、利益率を上昇させ、二つの非中核事業を売却し、多額のフリーキャッシュフローを生み出した。株価は55ドル。1株当たり14ドルのネットキャッシュと3.50ドルの今年のEPS予想を考慮すると、12倍のPERは割安だ。売上高は成長しており、ビジネスモデルの強化と現金の活用というオプション性がある。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MD514_160118_NS_20160117195357.jpg 英中銀、利上げを急ぐべきでない=MPC委員 By JASON DOUGLAS 2016 年 1 月 19 日 09:11 JST 【ロンドン】英中銀イングランド銀行金融政策委員会(MPC)のフリーヘ委員は18日、利上げを急がない考えを明らかにし、賃金の伸び悩みや高齢化などを理由に挙げた。 同委員は2015年9月の就任以来初めての講演で、経済成長の足取りがしっかりし、インフレ圧力が高まりつつあることを示すさらなる証拠を見極めてから利上げを支持すると語った。 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で講演した同委員は「経済成長は依然減速が続いており、インフレ圧力は減退したり見通しを下回ったりしている。このため、政策金利の引き上げを正当化する条件は整っていないと思う」と述べた。 同委員の発言を受け、金融市場では、イングランド銀行がすぐには米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに追随しないとの見方が強まる可能性が高い。金利デリバティブ(金融派生商品)の相場水準は、投資家が利上げは2017年半ば以降と予想していることを示唆している。 委員は、経済成長は失速したもようだとし、年間インフレ率が中銀目標の2%に戻りつつあるとはまだ確信できないと指摘した。英国の直近11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.1%上昇にとどまった。 さらに、利上げに慎重を期すべきより根深い理由として、多額の負債、高齢化、格差拡大などを挙げた。こうした要因を踏まえると、多くの先進国では経済を安定的に成長させるために必要な金利が従来よりも低い可能性があるという。 「特定の経済成長率に整合する金利は以前よりもはるかに低いのかもしれない。こうした状況は数年、あるいは数十年続く可能性がある」とし、「このようなシナリオがあり得ることを考えれば、利上げを開始してもあまり大幅な利上げは必要ないかもしれないため、他の条件が同じなら、利上げにはより慎重を期すべきだろう」と語った。 関連記事 英中銀、利上げ期待が一段と後退 2016年金融政策:英中銀、現状維持でインフレ兆候待ちか 大統領選で浮き彫りになった米国民の単純化志向 バーニー・サンダース氏(左)とドナルド・トランプ氏 ENLARGE バーニー・サンダース氏(左)とドナルド・トランプ氏 PHOTO: FROM LEFT: ANDREW BURTON/GETTY IMAGES, RANDALL HILL/REUTERS By GERALD F. SEIB 2016 年 1 月 19 日 09:19 JST 11月の米大統領選に向け民主、共和両党の候補が行った最近の討論会は、米国民の一つの側面を厳然と映し出した。複雑化する問題に単純な答えを求めたがる傾向だ。 この米国民の心の動きは、ドナルド・トランプ氏(共和)、バーニー・サンダース氏(民主)など単純で明確な主張を展開する候補には有利に働く一方、ヒラリー・クリントン氏(民主)、ジェブ・ブッシュ氏(共和)など単に応急処置的な答えではなく、より中道的で複雑な意味を含ませた答えを出す候補に不利となっている。 この傾向は民主、共和両党ともその支持基盤がイデオロギー的にさらに左、右にそれぞれ傾き出していることによって助長されている。白黒がはっきりしグレーゾーンがない世界だ。 これは、単純で簡単な答えを売り物にするトランプ候補には特にうってつけの環境だ。先週開催されたサウスカロライナ州の共和党候補者討論会で、同氏が討論を締めくくった発言のエッセンスは、「アメリカを再び偉大にする。すべての事で米国が勝つ」ということだった。 また、サンダース候補も、この世界で居心地良く感じている。物事を白と黒に分けて論ずる傾向があり、自分はその違いが分かる人間だと自負しているからだ。やはりサウスカロライナ州で16日に開催された民主党候補討論会で、同候補は大銀行の規制に関する自身の意見を次のように簡潔にまとめた。「分割だ。それが米国民の望むところと私は信じている」 そうしたアプローチには、多少レーガン元大統領的な感じもある。レーガン氏も複雑な問題に単純な答えを提示する才に長(た)けていた。「ベルリンの壁」を視察した際の演説では「(旧ソ連の)ゴルバチョフ書記長よ、この壁を取り壊しなさい」と呼び掛けた。発言当時は実現性に乏しい夢にすぎなかったが、結局それは達成された。 同時にレーガン元大統領は米国、ソ連に対しすべての核兵器を破棄することを提案した。直感的には訴える提案だったが、レーガン政権の国務長官でさえ、非現実的で、両国が核兵器を廃棄すれば、ならず者国家がその空白を埋めることになり、世界をさらなる危険に陥れると考えていた。 つまり、単純さには限界があり、現実には白黒つけられないグレーな部分がたくさんあるということだ。大銀行の問題に関してはクリントン候補の反論に一理ある。同候補は、単に大銀行を分割することは魅力的な考えにみえるが、主流の大銀行よりさらに危険な業務を行う可能性があるシャドーバンクの問題への対応が抜け落ちている、と指摘した。 そしてブッシュ候補も共和党候補者討論会で、トランプ氏の言うようにイスラム教徒全員の米国入国を禁止することは、重大な外交リスクになることを正しく指摘した。同候補は「それは(過激派組織の)『イスラム国(IS)』を崩壊させるのに必要な国々の連合を形成できなくなる政策だ」と指摘、「クルド人はわれわれの最も強力な盟友だ。しかし彼らもイスラム教徒だ。彼らでさえこの国に入ることを許さないのか」とトランプ氏に問いかけた。 ブッシュ氏はここ数カ月、2度にわたり演説でイスラム国をどのように打ち破るかについての包括的で洗練された計画を詳細に説明した。最初はカリフォルニア州のレーガン記念図書館で、もう1回はサウスカロライナ州のシタデル大学での演説だった。しかし、同党のテッド・クルーズ上院議員の「砂がガラスに変わり暗闇で光る」ほどの「じゅうたん爆撃」によってイスラム国戦士たちをせん滅する、との発言の方がより注目された。 選挙運動では、複雑な問題に対して単純明快な答えを探すことがありがちだ。しかしその傾向は常に予備選挙の方が強い。本選挙で誰に投票するかを決めていない有権者や、イデオロギー的に中道で無党派の有権者ではなく、党の主張の信者たちを対象にしているからだ。そしてこの力学は両党ともイデオロギー色を強めている今回の予備選挙では、より強まっているのかもしれない。 最新のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースの共同世論調査では、有権者自身のイデオロギーと候補者のイデオロギー色について質問した。共和党の予備選投票者では、61%が自身が保守的だと回答し、35%は大変保守的だと答えた。 これらの回答者の多くは、クルーズ候補の方が自身よりさらに保守的だと考えていた。ただ、トランプ氏やジョージ・W・ブッシュ前大統領より自分の方が保守度合いは強く、ジェブ・ブッシュ候補よりは断然保守度合いが強いと考えていた。しかしブッシュ候補は2000年代初めにフロリダ州で知事を務めていた当時、非常に保守的と考えられていたのだ。 同様に民主党予備選の投票者では、53%が自身をリベラル派だと回答、中道的との回答者は35%にとどまった。回答者の多くがサンダース候補の方が自分よりリベラルであると考える一方、オバマ大統領、クリントン元大統領、ヒラリー・クリントン候補よりは自分の方がリベラルだと思っていた。回答者のほぼ半数がクリントン候補を自分より中道派だとみていた。 大半の有権者は心の奥底では、現実の世界は単純でないことを承知している。ただ同時に、ここ数年ワシントンで行われてきた政治的な妥協策を見つけようとする努力が単に空回りしてきたことも認識している。 今回の大統領選候補者は、複雑な問題に対する精緻な解決策を持っており、かつ多極化する社会の中でそれを実現させることができると有権者を納得させることを求められている。 関連記事 米大統領選【特集】 クリントン氏、サンダース氏と激しい舌戦 民主党討論会 米大統領選、支持獲得を目指す候補者たち 米共和党討論会、先行する2人とその他大勢の構図くっきり トランプ氏、大統領になってもツイート続行 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MD666_CAPJOU_M_20160118112015.jpg International | 2016年 01月 19日 10:03 独運輸相、国境閉鎖準備をメルケル首相に要請 難民流入 [ベルリン 18日 ロイター] - ドイツのドブリント運輸相はメルケル首相に対し、難民の流入を食い止めるために国境の閉鎖を準備するよう求めた。欧州全体で難民に関する合意に達することができない場合には、ドイツ単独での行動も辞さないとの姿勢を示した。 同相は独紙ミュンヒナーメルクールに対し、ドイツは世界にこれ以上「友好的な顔」は見せられないと指摘。新たに流入する難民の数が近いうちに減らなければ、ドイツ単独でも行動すべきと述べた。 メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)に所属するドブリント運輸相はその上で「国境閉鎖が避けられない事態にわれわれは備えなければならないことを強く忠告したい」と述べた。 http://jp.reuters.com/article/europe-migrants-germany-idJPKCN0UX01Z International | 2016年 01月 19日 10:57 JST インドネシア、「イスラム国」関連の大規模攻撃を懸念=警察長官 [ジャカルタ 19日 ロイター] - インドネシアのバドロディン・ハイティ国家警察長官は18日、過激派組織「イスラム国」で訓練を受けた戦闘員がインドネシアに帰国し、首都ジャカルタで今月14日に発生した銃撃・爆発よりも大規模な攻撃を実施する可能性があると述べた。 ジャカルタ中心部では14日、イスラム過激派の武装グループによる攻撃があり、同グループの4人を含む計8人が死亡した。 長官はロイターのインタビューで、過激派はクリスマスと新年の時期を狙った攻撃を計画していたが、警察の捜査により阻止されたとの見方を示し、「(14日の攻撃は)『プランB』だったとみている」と述べた。 その上で、シリアとイラクで過激派組織「イスラム国」の戦闘員について、「前線にいる戦闘員は訓練を重ねている。帰国すれば暴力・テロ行為を行う可能性があり、危険だ」と指摘。彼らが爆発物を扱う訓練を国内で行えば、より規模の大きい攻撃が行われる可能性があると述べた。 当局は「イスラム国」に加わるため中東に渡航したインドネシア人は約500人に上るとしている。このうち約100人は帰国しているとみられるが、専門家は、戦闘経験があるのは15人程度との見方を示した。 同長官は、警察がインドネシアの過激派ネットワークの監視を強化する方針を明らかにした。 http://jp.reuters.com/article/indonesia-blast-police-idJPKCN0UX03G
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