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コラム:米利上げでも円高へ、日銀緩和は春か=上野泰也氏
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasunariueno-idJPKCN0UT0K0
2016年 01月 15日 17:14 JST
上野泰也みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
1月15日、みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、年内の米利上げ回数がどう転んでも、結局のところ今年は円高ドル安に動くと予想。提供写真(2016年 ロイター)
[東京 15日] - 今年のドル/円相場の見通しは市場で割れているようだが、筆者は「円高派」に属しており、年間の予想レンジは108―125円である。そして、最も重要なポイントだと考えているのは米国の追加利上げの困難さだ。年内の追加利上げは最大で2回だろう。
ドル/円のレンジシフトは、「リスクオフ」の中で、年末年始から始まっているように見える。120円前後のレンジから117―118円台中心のレンジへと移行してきており、125円はかなり遠くなった。
次の大きなヤマ場は、米国の年内の利上げ回数がどうなるかを見ていく上でカギを握る、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)だろう。筆者は最近、機関投資家の方々に対し、年内の米利上げ回数がどう転んでも、結局のところ今年は円高ドル安に動くだろうと説明している。ケース分けして考えると、以下のようになる。
●年内の利上げがFOMC参加者の見通しどおり4回(ないしそれ以上)になる場合
中短期ゾーンにおける日米の金利差が現在の市場の織り込みよりも大きくなることは、短期的には円安ドル高の材料に使われるとみられる。
だが、一段のドル高は「自爆」シナリオ、すなわち米企業業績のさらなる悪化や輸入物価下落を通じたインフレ率の鈍化につながる。新興国などのマネーフロー変調が増幅されるという悪影響も出てくるだろう。米国の利上げ路線は早晩行き詰まり、2000年8月の日銀ゼロ金利解除失敗と同じような政策ミスを米連邦準備理事会(FRB)が犯してしまったという見方が、市場で急速に広がる可能性が高い。
米国のリセッション(景気後退)入りを市場が意識する中で株価は下落し、長期・超長期ゾーンの米国債利回りは急速に低下。市場は利下げを催促する様相を呈するとみられる。為替市場では円高ドル安が進む可能性が高い。
●年内の利上げが2回以下にとどまる場合
年間4回というFOMC参加者の昨年12月時点の金利見通しが未達に終わるということである。根が深い「中国リスク」などからマーケットが不安定化したり、米国の賃金・物価統計の数字がはかばかしくなかったりするようだと、イエレンFRB議長は利上げ路線の「一時停止」ボタンを押すだろう。すると「利上げ局面はすでに終了」「次は利下げ」といった見方が市場で浮上し、当然のことながら円高ドル安が進みやすくなる。
2%のインフレ目標に向けた物価上昇見通しが立ちにくいことが利上げ回数抑制の主因となる場合は、円高の進行はおそらくマイルド。だが、「リスクオフ」の深刻化によって利上げが困難になる場合は、円高の進行は急激なものになり得る。
なお、間にはさまる利上げ3回のケースでは、状況次第でどちらかに近い動き方になるだろうが、どちらかと言えば、利上げ4回のケースに近くなる可能性が高い。
FOMC議事録(昨年12月15、16日開催分)の内容などから考えて、追加利上げ問題で今後大きな焦点になるのは、雇用の改善ペースではなく、1)物価(個人消費支出デフレーター)が目標の2%に接近していく見通しが本当に立つのかどうか、2)中国を中心とする米国外の経済・金融情勢にまつわるリスクの大きさ、の2点である。
そのように整理した上で足元の状況を照らし合わせた場合、3月といった早いタイミングでの追加利上げは非常に困難で、最も早いチャンスは6月と見るのが順当だろう。
さらに言えば、昨年12月の最初の利上げは日銀の「ダム論」的な、「たられば」をベースにした主張をしながら、差し迫ったインフレリスクが皆無であるにもかかわらず、なんとか実現にこぎつけたものである。政策転換の失敗例である2000年8月の日銀によるゼロ金利政策解除と似ている点は数多い。
<日銀追加緩和は4月濃厚、切れるカードはあと2枚か>
今年のドル/円を見ていく上でもう1つ注目されるのは、日銀が追加緩和に動くタイミングである。
黒田東彦日銀総裁は1月4日と5日に、報道されたもので3回、追加緩和の用意があることを強調する発言を行った。
1回目は、4日昼頃に全国信用金庫協会の名刺交換会で行った挨拶。「必要ならば、さらに思い切った対応を取る」という発言が報じられた。2回目は、4日午後に生命保険協会の賀詞交歓会で行った挨拶。「必要と判断すれば、さらに思い切った対応を取る用意がある」という発言があった。3回目は、5日午後に連合の新年交歓会で行った挨拶。上記と同様の発言が報じられた。
だが、いずれの発言も市場で材料視されなかった。中国の動向が市場で最大の関心事になっていたからだろう。
日銀が追加緩和に動くタイミングについて筆者は、主要企業の16年春闘における賃上げの動向を見極めた上で、4月の金融政策決定会合で黒田総裁が追加緩和カードを切る決断を下すというシナリオを掲げている。
ただし、円高ドル安が早い段階で大幅に進行してしまうと、それより前の金融政策決定会合で追加緩和が急きょ決まる可能性が膨らむことになる。昨年1月16日につけたドル安値(円高値)である115.85円を決定的に割り込むことが、追加緩和に向けて日銀が「臨戦態勢」に入る前提条件とみられる。
ドル/円がそこまで円高に動いてくるまでの間は、2%の物価目標達成に向けて日銀は引き続き「本気」であり、必要が生じた場合は躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和に動く方針だというメッセージを総裁が繰り返すことにより、円高圧力を少しでも和らげようとするだろう。
もっとも、そうしたメッセージを発する中で、黒田総裁はジレンマに直面し得る。追加緩和に関するレトリックを強化し過ぎると市場の「期待値」が高くなってしまい、実際に追加緩和に動いた際に市場の失望を招いてしまいかねないのである。
ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁による「追加緩和予告」発言をもとに市場が勝手に「期待値」を高くしていき、実際にECBが追加緩和に動くとその内容への失望感からユーロ相場が急上昇したことは、まだ記憶に新しい。日銀にとって、追加緩和したものの為替は円高に動いてしまったという事態は最悪だろう。黒田総裁の円高けん制トークには「微妙なさじ加減」が要求されてくる。
また、追加緩和の手法を従来の延長線上の措置であるマネタリーベース年間増加ペースの10兆円上積みと見る場合、昨年12月に日銀が決定した「量的・質的金融緩和」を補完する諸措置が短期間のうちにきわめて大きな効果を発揮する場合を除き、追加緩和カードはせいぜい2枚(マネタリーベース10兆円上積み×2回)までとみられる。
先々のさまざまなリスクを考える場合、数少ないカードをどこで切るかという戦術面の熟慮も、日銀には要求されてくる。たとえば7月の参院選より前にカードを2枚とも切ってしまったというような事態は、日銀としては間違っても避けたいのではないか。
*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。
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