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コラム:中国ショック、ドル円には「買い場」か=村田雅志氏(ロイター)
http://www.asyura2.com/15/hasan104/msg/479.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 1 月 15 日 01:18:00: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

コラム:中国ショック、ドル円には「買い場」か=村田雅志氏
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-masashimurata-idJPKCN0US0XD20160114
2016年 01月 14日 19:28 JST


村田雅志ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト
[東京 14日] - 相場格言では、「申酉(さるとり)騒ぐ」。そのためなのか、申年にあたる今年の為替市場は年明け早々、円が全面高となる一方で、新興国・資源国通貨は下落基調で推移。市場のリスク回避姿勢が強まる展開となっている。

ちなみに、日銀の黒田東彦総裁も14日、都内で開かれた第二地銀協会賀詞交歓会でのあいさつで、年明けから「やや騒がしい」と述べ、金融市場の動きを注視する姿勢を示した。

騒がしくなったきっかけは、2つの中国製造業購買担当者景気指数(PMI)だ。元旦に発表された中国当局による昨年12月の製造業PMIは49.7と、景況感の分岐点とされる50を5カ月連続で下振れ。年明け最初の取引となる4日に財新/マークイットが発表した12月の製造業PMIは48.2と、9月以来の低水準で10カ月連続の50割れ。いずれも市場予想を下回ったことで、中国景気の先行き懸念が強まった。

これを受け、株式市場では中国株を中心に下落。中国株式市場では、下落率7%超で取引打ち切りとなるサーキットブレーカー制度が2度も発動され、中国株の代表的な株価指数である上海総合株価指数は3000の大台を割り込んだ。

これに加え市場の不安心理を刺激したのが、基準値が主導する形での人民元の下落である。中国当局が毎朝発表する人民元の基準値(対ドル)は、今年7日まで8営業日連続で下落し、2011年3月以来の安値を記録。8日以降、基準値は下げ止まっているが、景気減速を背景とした中国政府の元安容認観測は根強い。

中国景気の先行き懸念は、中国株や人民元の下落を通じ、世界経済を下押しするとの見方に通ずる。原油先物価格(WTI)は節目とされる1バレル30ドルを一時割り込み、日経平均株価は14日に一時1万7000円割れと3カ月半ぶりの安値に下落した。いわゆるリスクオフの展開である。

為替市場ではリスクオフの強まりを背景に円買い戻しが優勢だ。8日夜に発表された12月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が29.2万人増と市場予想を大きく上回る好結果となった。しかし、ドル円は118円台前半から同後半に小幅上昇したものの、その後117円台前半に失速。日本が祝日だった週明け11日には一時116円台後半と、昨年8月24日以来の安値を記録した。ドル円は120円台前半で引けた昨年末から10日あまりで3円以上も下落したことになる。

資源国通貨や新興国通貨も下げが目立っている。豪ドル円は一時81円を割り込み、2012年10月以来の安値を記録。南アフリカランドは対円で一時6.5円ちょうど近辺に急落し、過去最安値を更新した。

昨年末よりドル円の先行きについては見方が二分していたが、年始から市場のリスク回避姿勢が強まる展開に直面したこともあり、ドル円の下落が続くとの見方が優勢のように思われる方も少なくないだろう。しかし、筆者は今後、市場のリスク回避姿勢が強まり続けることはなく、次第に落ち着きを取り戻すだろうとみている。

結果として、リスクオフを背景とした円買いの動きは後退し、ドル円は昨年8月24日に瞬間的に記録した116円ちょうどの安値を割り込むことはなく、下値を固めながら、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に120円超えを目指す展開になると予想している。

<中国の市場・景気対策余地は大きい、日米金融政策格差も健在>

まず確認すべきは、中国当局が人民元や中国株の急落を放置し続けるとは考えにくいことだ。中国当局は、様々な形で対応策を打ち出し、人民元や中国株といった金融市場の動揺を抑える努力を続けるだろう。後から振り返れば、足元で起きている中国ショックは、昨年8月と同じ形で収束に向かうと思われる。

中国当局はオフショアで営業している中国の銀行と外資系の銀行に対し、ドル購入の制限のほか、オフショア銀行に対するオンショア融資の停止を要請。さらに国有銀行を通じてオンショアだけでなくオフショア人民元市場でも元買い介入を実施した。減少基調にあるとはいえ中国の外貨準備は3兆ドルを超えており、今後も中国当局は必要に応じて元買い介入を実施すると予想される。

中国株も底打ち感が強まるだろう。上述したように上海総合株価指数が節目とされる3000を割り込んだが、14日は日本株が大きく下げるなか、買い戻し優勢の動き。仮に今後も中国景気の減速感が強まれば、市場関係者の大方の見方に反し、同国政府が小規模ながらも財政出動に踏み切る可能性も十分に考えられる。

原油価格の下落を警戒する声が一部から出ており、原油安を主因に米ジャンク債市場が崩壊し、米国景気が大きく後退する、などといった見方も一部メディアを通じ目にすることがある。だが、こうした見方はかなり行き過ぎたものに思える。

米景気は雇用増を背景に拡大基調を維持。昨年第4四半期の成長率は1%台にとどまる可能性が高まっているものの、米国の今冬の天候は昨年と違い安定しており、今年第1四半期には大きく反発すると期待される。

エコノミストの多くが指摘するように、原油安は産油国景気を下押しする一方で、米国をはじめとする先進国や原油輸入国の景気を押し上げる。原油安によってFOMCが今年の利上げ回数を2、3回にとどめる可能性は否定できないが、中国や資源国の景気減速を背景に世界の投資機会が減少するなか、利上げ継続で金利先高観のある米国への資本流入に歯止めがかかるとは考えにくい。結果的に為替市場ではドル買い優勢の地合いが続くことになる。

最近では忘れ去られた感があるものの、日米の金融政策の違いという枠組みは続いたままだ。日銀の黒田総裁は、年末年始にメディアのインタビューに応じ、これまでの実績を誇りながらも、賃金の行方を注視すると発言。しかし一部報道によると、トヨタ自動車グループの労働組合でつくる全トヨタ労働組合連合会は、2016年春闘の労使交渉で、ベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分の要求を月額3000円と15年の要求額の半分にとどめる方針を固めた模様だ。こうした動きが労組側で広がれば、黒田総裁が期待する賃金上昇による2%物価目標への到達は非常に難しいものとなる。

足元のドル円の水準は、日銀短観で示された企業の想定レート(119.40円)を下回っており、日本企業の円高警戒感は強まっていると推察される。市場の動揺が落ち着けば、日銀の追加緩和を期待する声は再び強まると予想される。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。著書に「名門外資系アナリストが実践している為替のルール」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

 

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コメント
 
1. 2016年1月15日 12:10:32 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[152]
人民元相場の迷走、実は当局の思惑通り
By LINGLING WEI
2016 年 1 月 15 日 10:42 JST

 ここ数日の中国の為替政策が不可解に見えたとすれば、それは当局の思惑通りの展開だ。中国人民銀行(中央銀行)に近い複数の関係者はそう語る。

 これらの関係者によると、人民銀行は昨年末以降、人民元相場の設定方法を変更したり、市場への指導や介入を通して突然相場を反転させたりすることで、投資家が人民元に関する同行の意図を理解しにくくなるよう故意に仕向けてきた。

 人民元相場を普通の通貨のように上下させながら、今年全体で緩やかに下落させることが狙いだと関係者らは言う。このように相場を少し変動させれば、元売りのコストが増し、数カ月前から中国政府を悩ませてきた資金流出を抑えることができるかもしれない。

 例えば、年初から数週間の人民銀行の動きを見ると、当初は徐々に人民元安に誘導していたが、投機筋の売りに押された元安ペースが速すぎると見るや大規模な市場介入に転じ、相場を押し戻した。

 マッコーリー証券の中国経済部門責任者、胡偉俊氏は「人民元相場の動きは次第に予測不可能なものになってきた。これこそがまさに人民銀行が狙っていることだ」と指摘する。

 だが人民元は普通の通貨ではない。新たな戦略は一筋縄ではいかず、リスクをはらんでいる。

左から:人民元の対ドル相場、人民銀行の2015年8月以降の動き、中国の外貨準備高 ENLARGE
左から:人民元の対ドル相場、人民銀行の2015年8月以降の動き、中国の外貨準備高
 人民銀行が毎日、相場の基準値を発表するなど、人民元は国内で自由に取引できない。当局としての支配力が及ばない海外では、人民銀行は売り買いだけにとどまらず、コストを要する政策ではあるものの、国境をまたいだ資金の流れを管理することで相場への影響力維持を図る。

 人民元が2015年8月半ばの切り下げ以降、目標水準よりもさらに減価したことを受け、人民銀行は同年秋、相場押し上げのために巨額の外貨準備を投じた。中国の外貨準備は同年12月末時点で3兆3000億ドルとなり、前月からの減少額は過去最大の1080億ドル(約12兆8000億円)に達した。

 予測のつかない為替相場は、人民銀行と政府指導者らが実際は人民元や中国経済をうまく操縦できていないという印象をもたらす恐れもある。人民銀行は2015年8月、人民元の対ドル相場の基準値は新たに前日終値を参考にして設定すると発表したが、2016年1月初めに前日終値と翌日基準値の関係は突然崩れ、設定方法は再び変更されたもようだ。政策がこのように二転三転すれば、長期にわたり投機筋を追い払うことはできそうにない。

 投資運用会社TCWのマネジングディレクター、デビッド・ロービンガー氏は「投資家の間で他の人たちは人民元がさらに下落すると考えているとの見方が広がれば、必ず再び投機の動きが出てくるだろう」と語る。

 上昇か下落かどちらか一方向にしか動かない人民元相場は長らく人民銀行関係者らを悩ませてきた。順調な中国景気を追い風に人民元は上昇の一途をたどるというのが何年もの間、投資家の一般的な考え方だった。

 だが現在は、元売りが膨らむ中で資本流出が加速し、信用逼迫(ひっぱく)懸念が強まっている。

 批判的な向きはこうした現状について、ほぼ全責任は中国政府にあるとした上で、市場の力に委ねて相場を上下させるには人民元の自由な取引を認めることが最善策だと指摘する。

 人民銀行はここ数週間、人民元の自由取引を実現させる意向は見せていないものの、ドルとのペッグ(連動)をやめ、基準値をドル、ユーロ、円など13通貨で構成される指数に連動させる通貨バスケット制を採用する考えを示唆している。

 人民元は2015年12月初め以来ドルに対し約3%下落しているが、この通貨バスケットに対しては差し当たり落ち着いた動きを維持している。

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中国の資本流出懸念、個人の動向が鍵
人民元安を見越した取引、前途多難か
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中国の資本流出懸念、個人の動向が鍵
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人民元が下落する中、中国では個人のドル買いが加速している PHOTO: REUTERS
By
AARON BACK
2016 年 1 月 15 日 08:57 JST
 中国では、個人がこれまで蓄えてきた人民元をドルに両替する動きが加速している。もっとも、資本規制がこうした流れを食い止めることになっているはずだ。中国では個人の外貨両替が年間5万ドル(約590万円)に制限されているからだ。
 ところが、この狭い経路でさえ大きな抜け穴に発展する恐れがある。計算すると、資本流出額はむしろ急速に増えている。世界銀行の推計では、中国都市部の人口は2014年に7億3700万人に達した。
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中国都市部人口の1%が年間5万ドルの両替枠を使い切ると、資本流出額は3685億ドルに達する
 十分な貯蓄を簡単に確保できる最富裕層(都市部人口の1%)が今年、5万ドルの両替枠を上限いっぱいまで使ったとしよう。その場合、資本流出額は3700億ドル(約43兆7000億円)近くとなる。都市部の富裕層の2%が両替枠を使い切った場合は、流出額は7400億ドルに達する。つまり、違法か否かにかかわらず、これだけの資金を海外に持ち出す方法は他にないということだ。
 中国には3兆3000億ドルの外貨準備高がある。今のところは、こうしたドル需要を満たすために当局が介入し、元安圧力を打ち消している。ただ、緩衝材として機能するはずの中国の外貨準備は見かけほど大きくない。外貨準備の一部(具体的な額は不明)は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)向け資金や、石油資産を担保にしたベネズエラ向け融資といった高リスク開発事業など、流動性の低い投資と結び付けられている。しかも、外貨準備が底を突く前からでも警報は鳴り始めるものだ。
 市民の間で不安が広がれば、中国の巨額の外貨準備をもってしても資本流出を抑えることはできないだろう。
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http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AE872_CFLOWH_16U_20160114041229.jpg

陳言の選り抜き中国情報
2016年1月14日 陳言 [在北京ジャーナリスト]
株の“万里の長城”、中国サーキットブレーカーが4日で崩壊した理由
 オーストリア=ハンガリー帝国生まれの作家フランツ・カフカは、生前未発表の古典『万里の長城』で、万里の長城の建設目的と理由を解き明かそうとした。カフカの目には、長城は誰の目からも見えるが、このような城砦(じょうさい)を建設した意義を明確に説明するのは大変難しいと映った。

 皇帝が北方部族の襲来を防ぐために建設を命じたという人もいる。しかし、カフカは中国の皇帝の意図は、奇想天外ではないと感じた。皇帝が命じる前に、関連した考え方がすでに存在していた。北方部族への備えというのは長城建設の本当の理由ではなく、正解は中国文化そのものから探し出さなければならない、と考えた。

 時は流れて、2016年1月に飛ぶ。中国証券監督管理委員会(証監会)は証券制度上の万里の長城を構築した。サーキットブレーカー制度である。この制度は「自動相場停止制度」とも呼ばれ、株の値動きが規定の限界点を越えた時、取引所はリスクをコントロールするために取引の一時停止措置を取ることを指している。しかし、残念なことに、この証券制度上の万里の長城は、北京郊外に2000年以上も聳え立っている燕の長城と違って、わずか4日で倒壊した。

秀才が構築した
サーキットブレーカー制度

 サーキットブレーカー制度の停止後、「財新ネット」の張楡記者は記事で、次のように書いた。「サーキットブレーカー制度には意見聴取の段階で、様々な意見が出ていた。業界は取引の持続性、変動性について憂慮を示したが、最終的に法案に十分盛り込まれず、この制度は懐妊半年、享年4日の短命政策に終わった」。

 昨年5月以降、中国の株価指数先物の1日当たりの振幅が次第に拡大し、「極端相場」が頻出し、サーキットブレーカー制度の導入を求める声が強まった。株価暴落後、市場改善の緊急システムとして、国際経験を参考にして、多くの専門家、学者が株取引サーキットブレーカー制度の導入を提起した。

 8月末になると、早い段階で取引所が上級監督層に提起していたサーキットブレーカー制度構築に関する報告が、何度も書き直されてから、最終的にトップレベルの決定を経て現行の規則が選択された。新華ネット、中国証券報等がこもごも同制度導入の必要性を論評した。

 9月7日、上海、深セン両取引所と中国金融先物取引所は同時に「サーキットブレーカー制度関係規定についての公開意見聴取に関する通達」を発し、市場に2週間のフィードバック時間を与えた。市場からはこの「意見聴取原案」で提起された細部について、多くの意見が噴出した。財新の記者は取材の過程で、ディーラー、ファンド、プライベート・エクイティ・ファンド(PE)等の市場関係者が具体的な内容に対して、異なる見方を示し、こうした制度はパニックを醸成する等々の憂慮を示した。

「原案」に対する市場各方面からの意見、提言は4861本に達したにもかかわらず、「最終的に実施に移された規則はこの『原案』を大幅に改められたものではなかった」と、財新ネットの記者は書いている。

 11月14日、上海取引所はサーキットブレーカーの全面的なテストを行った。12月4日夜、正式に2016年1月1日の施行決定を対外的に発表した。

制度開始からわずか4日で
「夭逝」したサーキットブレーカー

 1月4日、株式市場は12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が予想を下回り、人民元レートが取引開始早々に暴落するなどのさまざまな悪材料が重なり、上海、深セン両市場は小幅下落で寄り付いた。13時12分、下落幅が第1段階のブレーカー制度発動数値の5%に達し、上海、深セン両市場、株価先物取引は15分間停止した。初のブレーカー発動時に、上海の下落幅は4.96%、深センは6.47%、中小企業向け市場「SMEボード」は6.50%、新興企業向け市場「ChiNext」は7.10%に拡大していた。

 13時27分、相場は取引を再開したが、下落幅は引き続き拡大し、大幅な売りによって、6分後にブレーカー発動第2段階の7%に達した。取引の新ルールを根拠に、市場は13時33分、取引を停止し、同日の取引は再開されなかった。初日に2度もブレーカー制度が発動され、取引停止になることを、市場は全く予想していなかった。

 1月7日、中国語の慣用句で「速い雷に耳をふさぐ暇がない」というように、取引開始からわずか13分間で株価が急落したために対処が間に合わず、サーキットブレーカーが再び発動され、市場の一時停止から直接全面停止に追い込まれた。わずか1分で5%から一足飛びに7%へと下落幅が広がった。ディーラーたちは「出勤したらすぐ退勤だ」と、冗談を交わしていた。

 サーキットブレーカー制度の停止の情報は早くから流れ、7日夜、人々は正式発表前から、携帯やパソコンの前で証監当局の発表を見守っていた。22時33分、取引所、証監会はサーキットブレーカー制度の一時停止を通達した。わずか4日の施行で、初のサーキットブレーカー制度は「夭折」した。

 証監会の中国式ライン「ウィーチャット」に流れたサーキットブレーカーに関する記者の質問に対する回答の閲読量は、数分の間に優に10万件を超えた。この制度は半年熟成させたが、デビューわずか4日で最終的に撤回され、練り直されることになった。

政策の失敗によって
一瞬のうちに失われた130兆円

 中国人民大学の洪○教授(○=さんずいに景+頁)はサーキットブレーカー制度を次のように論評した。「証監会当局者が最も望んでいた意図は裏切られ、市場の取引ルールを随意に変えようとしたが、試合をしながらルールを変えるようなもので、市場関係者の判断を混乱させ、彼らがどうすれば良いか分らなくさせ、市場を乱高下させた」。

 中国株式市場の乱高下は内発的な問題である。市場化改革が加速され、経済構造の調整が行われている時期に、成長の急激な減速、通貨デフレのリスクがまさに高まりつつある。中国上場企業の利益の乱高下は、経済の不確定性に伴って上昇している。こうしたリスクは簡単に取引ルールの操縦を通じて抑制されるものではない。

 中国の株式市場を見ると、日本などの国外証券市場と異なり、個人投資家が絶対多数を占め、保険などの機関投資家は重要な地位を占めていないことが分かる。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」現象が、中国の株式市場の現状を大変よく描写している。日米の株式市場が採用しているサーキットブレーカー制度に倣って、中国の株式市場の特性を理解せずに、やみくもに導入したこの制度は、中国の株式市場の乱高下を拡大し、最終的には新制度を失敗させた。

 古代中国で、人々は万里の長城を建設して外部から不確実性を封じ込めようとし、現代中国では、政府が内発的な要因による市場の乱高下を封じ込めようとしたが、どちらも為政者が計画と抑制に惚れこんでしまった。その思考や姿勢は、今も昔も変わりはない。残念なことに、これによって中国経済は巨額の損失を被った。第一財経は、この4日間にA株市場から6.6兆元(約130兆円)が蒸発した、と報じている。
http://diamond.jp/articles/-/84544


 

【第45回】 2016年1月14日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
投機資金の流れの変化で円高が進む可能性がある

 国際的な投機資金の流れが大きく変化しており、これが世界の金融市場に大きな動きを与えている。
 日本では、株価が下落し、国債利回りが低下している。また、円高が進んでいる。これは、海外からの資金が日本に流入し、株式ではなく国債に向かっている結果と解釈できる。つまり、投機資金のリスクオフ現象が生じているのだ。
 この動きが日米金利差拡大より大きな影響をもてば、円高が進み、日本経済に大きな影響が及ぶ可能性がある。
市場動揺の原因は中国ではなく
アメリカの金融正常化
 一般には、現在の世界金融市場の動揺は、中国株式市場における株価下落が原因だと言われている。しかし、基本的な背景は、アメリカの金融正常化である。
 中国の株価下落とアメリカ金融正常化は、ほぼ同時に進行しているので、どちらが原因かの区別は難しい。
 しかし、以下に見るように、世界金融市場の大きな動きは、アメリカの金融政策の節目に生じている。そして、いま生じている現象は、この一連の動きの継続と考えられるのである。
 国際的な投機資金の動向変化は、いま突然始まった現象ではない。アメリカ金融政策の縮小と停止に伴って、これまで数年間にわたって生じていた。
 その始まりは2013年5月で、このとき、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長がテイパリング(金融緩和政策の段階的縮小)を示唆した。この影響で、新興国の通貨が減価し、株価も下落した。
 14年10月にFRBが正式に金融緩和の停止を宣言したが、それに先立ち、夏から秋にかけて、緩和停止を予測した投機資金に、以下に見るような大きな変動が起きた。
 図表1には、MSCIエマージング・マーケット・インデックス(新興国の大型および中型株式で構成される指数)を示す。これを見ると、13年5月、14年9月に下落していることが分かる。これは、上で述べたアメリカ金融緩和縮小や停止の影響だ。
 このときには回復したが、15年の夏に大きく下落した。
◆図表1:MSCIエマージング・マーケット・インデックス
(資料)Bloomberg
 原油価格は、図表2に見るように、09年には1バーレル40ドル程度であったが、その後急上昇し、11年からは100〜120ドル程度の価格であった。それが14年の秋から急低下したのである。
 これほど急激な価格変動は、実需給の変化によるものでなく、投機資金の動向の変化によるものだ。14年夏からの下落は、図表1の新興国の株価下落と同時に進行している。
 日本銀行国際商品指数(OCI)も、14年夏から急低下している。
 このように、14年夏に、アメリカ金融緩和停止を予測した投機資金の動きの変化によって原油価格が下落し、国際商品価格が下落したのだ。それが新興国の株価を下落させた。
◆図表2:原油価格の推移
(資料)EIA
新興国、産油国から逃避した資金が
セイフヘイブンの日本に流入
 図表3に見られるように、アメリカの10年国債利回りは、2013年後半から14年初めにかけては2.5〜3%程度の水準であった。しかし、その後徐々に低下し、15年の初めには2%を割り込んだ。その後上昇したが、2.5%未満の水準にとどまっている。
 これは、新興国、産油国から逃避した資金がアメリカに流入し、安全資産である10年債に投資されていることを示すと解釈できる。
◆図表3:アメリカの10年国債利回りの推移
(資料)FRB
 日本の10年国債の利回りも、15年夏以降、傾向的に低下している(図表4参照)。これも、日本がセイフヘイブンとみなされ、国際投機資金が流入している結果であると解釈できる。
◆図表4:日本10年国債利回りの推移
(資料)財務省、国債金利情報
 国際収支統計によって、対内証券投資(非居住者による居住者発行証券への投資)の中長期債のネットを見ると、図表5のとおり、14年10月、15年10月に増大した(どちらの場合も、月間のネット流入額が3兆円を超えた)。これは、国債利回りの推移と整合的な動きだ。
◆図表5:日本への対内証券投資(中長期債)
(資料)財務省、国際収支統計
日本への投資にも
リスクオフの傾向が見られる
 東京証券取引所の投資部門別売買動向によると、外国人投資家は、2015年は、7年ぶりに売り越しとなった。年間の売り越し額は、約2500億円になった。
 とくに15年夏には、日本株で利益を確定する動きが顕著となり、6月から9月まで売り越しが続いた。売り越し額は、8月は1.2兆円、9月は2.6兆円と巨額なものであった。オイルマネーも、欧州を経由して逃避したと見られ、売りが過去最大となった。
 先に述べたように、中長期債では、日本への対内投資が増大している。したがって、海外から日本に対する証券投資についても、「株式から国債へ」というリスクオフが生じていると考えられる。
 国債への投資増と株式の売り越しを比較すると、つぎのとおりだ。
 中長期債のネット対内投資額は、14年で12.3兆円、15年は10月までで9.2兆円である。他方で、株式の外国人投資家売り越しは、15年で約2500億円だ。だから、債券への流入額のほうがはるかに大きい。したがって、リスクオフは、円高をもたらすことになるだろう。
 ここで、簡単にリスクオフについて触れておこう。
 国際的投機資金は、金利の低い国で資金調達して、金利の高い国に投資する。
 利回りの高い新興国への投資から、利回りが著しく低い日本の国債への変更は、この原則とは逆のように見える。しかしそうではない。
 なぜなら、金利にはリスクプレミアムが含まれているからだ。日本の国債は、リスクが低いとみなされる。だから、表面上の利回りが低くても、それに投資されるということは十分ありえるのだ。
 投資家の投資戦略が、リスクテイクからリスクオフに変わったのではなく、対象のリスクプレミアムが上昇したのだ。その結果、危険資産から安全資産への移動が生じているのである。
投資資金の変調で
円レートはどうなるか
 では、以上で見た投資資金の変調は、円レートにいかなる影響を与えるだろうか?
 まず、為替レートに影響を与えるのは、経験的に見て、2年国債や3年国債の金利差であると言われる。そこで、日米2年国債の利回りの推移を見ると、以下のとおりだ。
 アメリカの2年国債の利回りは、図表6に見られるように上昇している。
◆図表6:アメリカの2年国債利回りの推移
(資料)FRB
 それに対して、日本の2年債の利回りは、図表7に見られるように、2015年秋以降、急速に低下し、11月初めから現在までマイナスが続いている。
 つまり、日米金利差は拡大しているわけである。これは、円安を引き起こすことになる。
◆図表7:日本2年国債利回りの推移
(資料)財務省、国債金利情報
 したがって、円レートについて、先に見たリスクオフによる日本への資金流入と、いま見た日米金利差の拡大は、逆方向の動きを持つことになる。どちらが優勢になるかは、判断が難しいが、以下の点に留意する必要がある。
 第1に、為替レートは2、3年債の金利差に影響されると述べた。しかし、これは経験則に過ぎず、日米2、3年債の金利差が拡大すれば必ず円安になるわけではない。また、日米金利差に変化がなくても、為替レートが大きく動く場合もある。実際、12年秋から顕著な円安が進行したが、この間に日米の2年債金利差は、ほとんど変化していなかった。
 第2に、アメリカにおいて、2年債の金利動向と長期債の利回りの動向は必ずしも一致していない。
 実際、上で見たように、2年債の利回りは上昇しているが、10年債利回りは低下している(つまり、イールドカーブが平坦化している。こうした動きは、金融引き締め時に普通に見られる現象である)。
 したがって、アメリカの金融緩和終了によって日米の金利差がどの期間の金利についても拡大するとは、必ずしも言えないわけである。
 第3に、日米2年債の金利差が拡大するといっても、金利差はせいぜい1.5%程度である。06年頃には、日米金利差拡大によって円安が進んだが、このときの金利差は4%を超えていた。
金利差よりもリスクオフが優先で
円高が進む可能性がある
 以上のように考えると、リスクオフのほうが優先になる可能性がある。
 すなわち、日米2年債の金利差縮小というよりは、日本と新興国、ないしは産油国との間の資金移動のほうが、為替レートにより大きな影響を与えるのではないだろうか。そうなれば、円高が進む可能性がある。
 実際、図表8に見るように、世界株安が進んだ15年8月には、1ドル=125円程度から121円程度への円高が進んだ。そして、今回も、15年12月の123円程度から118円への円高が進んでいる。
 以上で見た傾向が、いつまで、またどこまで続くかは分からない。しかし、仮に円高が進めば、日本経済には大きな影響が及ぶだろう。
◆図表8:円ドル相場の推移
(資料)日本銀行
http://diamond.jp/articles/-/84546 

 
2016年1月14日 闇株新聞編集部
日本株下落を漫然と眺めていてはいけない!
脱中国、原油輸入戦略、円高転換に舵を切れ!
闇株新聞による今後の相場展望
日本株は新年早々厳しいスタートになりました。原油価格は安値を更新、円高も進んでいます。いきなり出口の見えないトンネルに入ってしまったかのようにも思えますが、経済に潜む闇を白日の下にさらけ出す刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」の見方はちょっと違っているようです。

昨年8月の「中国ショック」再来か!?
株価や為替も当時の水準に接近している

 日経平均が戦後最悪となる大発会から6営業日連続下落を記録しました。1月14日現在の株価は1万7178円で、昨年9月29日の安値1万6930円に接近しています。

 昨年9月の安値と言えば、8月18日の「中国ショック」から始まり1カ月以上も続いた大幅下落の底でした。この時も中国はサーキットブレーカーを発動させて株式市場の取引を何度も停止させました。原油価格の暴落や円高も伴い、現在と非常によく似た状況です。

 その上海市場はと言うと、やはり昨年8月26日の安値に接近しています。一方、原油株価は今回はサウジアラビアとイランの衝突もあって一時1バレル=30ドル割れ(1月14日現在)と昨年8月の安値37ドル台をも大きく下回っています。

 円相場は1月8日付本連載(「2016年は円安終了」を予想する3つの理由、1ドル=118円の「トリガーポイント」を突破!)でも詳しく解説したように円高が進み、1月11日に一時1ドル=116.68円まで上昇しました。こちらも昨年8月24日の1ドル=116.18円に急接近しています。

 要するに、日経平均は「上海市場の急落」「原油価格の急落」「円高」の3つの材料で急落し、同じように3つの材料が揃っていた昨年8〜9月の安値に急接近していることになります。

 日経平均や円相場(そしてたぶん原油価格も)はテクニカル的にいったんリバウンドする水準に来ていますが、市場関係者の見通しは見渡す限りの総悲観といった状況です。こういう時こそ冷静に状況を見極め、考える必要があります。

ここを耐えても中国経済は復活しないが
原油安と円高はチャンスに変えられる!

 確かに、上海株式の急落は中国経済の悪化を反映したものであり、日本経済や企業業績への影響も大きいはずです。残念ながら中国経済が本格的に回復する可能性は、ほとんどありません。

 そもそも中国経済の「真の姿」は大きく改竄されている可能性が大です。この問題は「我慢して耐えていればそのうち良くなる」という類のものではありません。中国に依存している企業は「このままでは大変なことになる」とハッキリ認識しなければなりません。多少の犠牲や一時的な株価下落は覚悟して「脱中国」を目指すべきです。

 一方で原油価格の急落は、産油国の運用資産の取り崩しで日本株への売り圧力になる可能性こそあるものの、日本経済全体への影響は間違いなく大きなプラスであり「国家的チャンス」と考えるべきものです。

 幸か不幸か日本は消費する原油のほとんどを輸入に頼っています。石油はこれから買い手市場になるので世界のパワーバランスでは「原油をたくさん輸入すること」が武器になるはずです。

 最後に円高についてですが、米利上げ決定後の動きは急ではあるものの、まだ2014年10月の日銀追加量的緩和直前の1ドル=105円台に比べればはるかに円安です。

 現在のように世界経済が低迷している時期は、仮に円安になっても輸出拡大などで日本経済にプラスとなる部分は少なく、逆に輸入物価を上昇させてしまいます。また何よりも日本経済や日本の資産が縮んでしまうことになり、「円安政策」は日本経済の体力を奪うことになります。

 いつまでも「円高になると株価が下落する」と恐れているのではなく、ここははっきりと「円高政策」に転じる時期に来ていると考えます。この世界的なデフレの中で、2%の物価上昇という「超アナクロ」な目標のためにやっている「異次元の」量的緩和など、サッサと縮小してしまうべきです。

 年間2〜3%でも円高になると世界が認識したなら、利回りがゼロの日本国債を含めて日本への投資魅力が大幅に増すため、まだ世界に溢れかえっている投資資金を日本に集中させることができ、フローではなくストック面から日本経済を活性化できるでしょう。

 株式市場に一時的なショックは出ると思いますが「脱中国(中国依存を軽減する)」「原油輸入を国家戦略に」「円高転換」に取り組む時期に来ていると考えます。年初来の株価下落を「漫然と眺めている」のではなく、ここは発想を転換して日本が大きく変わるチャンスであると前向きに考えるべきです。
http://diamond.jp/articles/zai-print/84571


 

米CEA委員長、国内経済の好調に自信
By NICK TIMIRAOS
2016 年 1 月 15 日 11:18 JST

 米大統領経済諮問委員会(CEA)のファーマン委員長は、金融市場の混乱を引き起こしている世界経済成長減速の影響について、引き続き冷静な見方を示した。

 ファーマン委員長はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで「海外(経済)が(昨年)の米成長率を押し下げたことは間違いない」とし、「これは米経済にとって大きな影響だ。向こう1年間にこの分野が好影響をもたらすとは期待していない」と述べた。

 だが、米経済では個人消費が依然として最も重要な原動力で、海外からの逆風が強まる中でも国内の堅調が経済成長の継続を可能にする公算が大きいとし、「個人的には、国内の部分をより重視している」と話した。

 ファーマン委員長と米国家経済会議(NEC)のザイエンツ委員長は、今年と来年の国内支出を押し上げる昨秋の予算合意はやや追い風だとの見方も示した。

 多くのエコノミストがエネルギー価格の下落による家計や企業への恩恵が国内エネルギー業界の落ち込みを埋め合わせるとみているが、積極的なエネルギー開発と米国の燃費向上は燃料費が下落しても以前ほどの効果がないことを意味している。

 ファーマン委員長は、原油価格が下落している理由も重要だと指摘。市場への供給増加による価格下落と現在のように世界需要の鈍化による下落は別物で、後者はより複雑な影響を及ぼしかねないとした。

 委員長は、足元の下落は「(世界経済の)鈍化による症状だ」とし、「中国経済は数年前に比べ成長率が数%落ちている。これは全世界に影響を及ぼす大幅な減速だ」と述べた。

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世界経済成長率見通し、3年連続で引き下げ=世銀
米経済の成長は継続へ、海外リスクは要注意=WSJ調査

米経済の成長は継続へ、海外リスクは要注意=WSJ調査 ACKER/BLOOMBERG NEWS
By JOSH ZUMBRUN
2016 年 1 月 15 日 06:53 JST

 経済と金融市場をめぐる最大の疑問は、世界の多くの地域で経済がぐらつく中で米経済が堅調さを保つことができるかどうかというものだ。

 民間エコノミストの大半は米経済が成長を続けるとみる一方、海外経済の軟調で米国の成長がどうなるかについて懸念を強めている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がまとめたエコノミスト調査によると、米経済が2017年にリセッション(景気後退)に入る確率は17%と予想される。これは3年ぶりの高率だ。また、回答者の8割は、米経済への下ぶれリスクが存在するとの考えを示した。

 モルガン・スタンレーのエレン・ゼントナー氏は「米経済の成長をストップさせるには、海外の不安要素が何らかの形で米経済にもたらされるメカニズムが必要になる」と指摘。クレジット市場動向の悪化や株式市場の下落がその手掛かりになる恐れがあると説明した。

 エコノミストの懸念がさほど強くないのは、米国が他の経済大国ほど貿易に依存していないためだ。米国の海外諸国への輸出はここ数十年で増加したが、それが国内総生産(GDP)に占める割合は13%程度にすぎない。これはブラジル以外の主要国と比べ最も低い。米国以外の経済が低迷しても、そうした軟調な国に輸出される製品・サービスが米経済全体に占める割合は比較的小さい。

 それでも、金融市場の大規模な混乱は起きた。海外経済の軟調が米経済から活力を奪うとの懸念から、株式相場は昨年のピークから10%近く下落した。ここ数日では原油が約10年ぶりに1バレル=30ドルを割り込んでおり、海外需要の弱さを浮き彫りにするばかりか、製油業者の苦境継続を予感させている。

 BBVAコンパスのナサニエル・カープ氏は、数々の異なる要素の間で「相関性がこれまでになく強くなっており、未知の領域に入っている」と話した。

 WSJ調査では、米国は国際貿易水準が低下するリスクに少なくとも「いくらかのエクスポージャーがある」との見方を回答者の57%が示し、79%はこの米国へのリスクは金融市場を通じてのものだと答えた。

 それでも米国では1億人以上がサービス業に従事している。ヘルスケア、教育、専門職、企業向けサービス、小売り、運輸、娯楽・接客など、国内の企業や個人を主な相手にしている業界だ。これらの業界が中国経済の減速やブラジルのリセッションをきっかけに不調に陥ることはそうない。

 エコノミック・アウトルック・グループのバーナード・バウモール氏は「18兆ドル(約2100兆円)規模の(米)経済を頓挫させるには相当規模の混乱が必要であり、今年の成長を妨げるような要因は見当たらない」との見方を示した。

 世界経済が減速すれば、米国では一部業界が他業界よりも大きな打撃を受けるとみて間違いない。多くの輸出企業が含まれる耐久財製造業では4万人の雇用が失われた。主に原油相場の急落が打撃となっている鉱業と林業では合計13万1000人を削減した。

 デシジョン・エコノミクスのアレン・サイナイ氏は「鉱業は恐慌、製造業はリセッションに陥っている」と話した。

 だが米経済全体では過去1年間で月間平均22万人の雇用増を遂げた。教育や保健関係、専門職や企業向けサービスの分野においては昨年、120万人以上の雇用拡大があった。小売り、建設、娯楽・接客業でも約95万人が新たに雇用された。

 エコノミストは、この雇用増の勢いにより米経済の拡大は続くが、雇用増加ペースは減速するとみている。就業者数の伸びは16年1-3月期に約20万2000人となったのち、年末までに18万人に縮小するとみられる。16年は国内総生産(GDP)成長率が2.5%となり、失業率は年末までに4.7%に下がるというのが、エコノミストの予想だ。

 WSJは1月8日から12日にかけて、銀行、企業や研究機関のエコノミスト76人を対象にアンケートを行った。ただし、全員が全ての質問に回答したわけではない。

 今回の調査では、新興国市場の見通しに対する楽観が後退した。新興国市場が軟化すると見込む向きは53%で、強含むとみるのはわずか18%にとどまった。

 中国経済は、政府主導のインフラ事業への依存度を低くし内需を喚起する取り組みが行われる中でここ数年、成長が減速している。だがアナリストは中国発の経済指標をほとんど信頼しておらず、実際にどれほど成長が減速しているかを把握できずにいる。中国での資源消費が下降線をたどる中、国際商品(コモディティー)相場は大幅下落した。それがひいてはロシア、サウジアラビアなど主要産油国の経済を締め付けている。

 最近までブラジル、メキシコなどの国に多く流入していた海外からの投資資金は流出に転じ、これらの国の通貨はドルに対して急落した。こうした不安定が世界のあちこちに影響し、米国に跳ね返ってくるかどうかの予測はつかない。

 デロイトのダニエル・バックマン氏は「米国の投資家がどれほどの新興国市場リスクを抱えているかはほとんど知られていない」と話した。

 米国は過去に起きた海外の混乱を何とか乗り切り、時には安全逃避先として恩恵を受けることすらあったが、今回もそれが繰り返されるという保証は全くない。

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米経済は「当然ながら」悪化する=JPモルガンCEO
By EMILY GLAZER
2016 年 1 月 15 日 05:52 JST

 米金融大手JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)は14日、過去5年にわたり拡大を続けてきた米経済は今後悪化する可能性が高いとの見方を示した。

 ダイモンCEOはこの日、2015年10-12月期(第4四半期)決算発表後の電話会議で、米経済は「これまでにないほど好調だ」とし、「当然ながら悪化していく」と述べた。

 リセッション(景気後退)入りを予想する段階にはないとしつつ、直近のデータは米経済が好況期の頂点に近く、まもなく下降傾向に転じる可能性があることを示唆していると指摘した。

 ダイモンCEOは米経済が過去5年間に2〜2.5%の成長を遂げたことに触れ、雇用は約500万人増え、家計形成、自動車販売、賃金も上向いたとし、景気は「引き続きまあまあ」な状態にあるとの見方を示した。

 だが、世界的に大きな変化があり、市場は中国の成長減速と商品(コモディティー)価格の下落に対して調整していると指摘。「願わくはこれは何か悪いことの前兆ではなく、全て落ち着いてもらいたい」と話した。

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米国債市場、FOMCタカ派委員のインフレ発言に揺れる
By MIN ZENG
2016 年 1 月 15 日 09:03 JST

 米国債市場では、連邦準備制度理事会(FRB)当局者のインフレに対する見方が微妙に変わったことに注目が集まっている。

 セントルイス地区連銀のブラード総裁は14日、原油価格の下落でインフレ率はFRBの目標とする2%への上昇が遅れる可能性があると述べた。これを受け、米国債市場では短期債が買われた。

 同総裁の発言を受け、FRBが今年緩やかに利上げするとの期待が強まった。トレードウェブによると、FRBの金利政策の変化に敏感な2年債の利回りは1カ月ぶりの低水準となる0.887%を付けた。

 米国債市場のインフレ期待も低下した。10年物の物価連動国債(TIPS)と固定利付債の利回り差であるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は一時1.445%と、昨年9月以来の低水準に達した。これは投資家が今後10年間のインフレ率(年平均)を1.445%と予想していることを意味する。

 今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つブラード総裁は、原油安が再開する中で市場ベースのインフレ期待指標が低下していることが「気がかりになっている」と述べた。

 CRTキャピタルのシニア国債ストラテジスト、イアン・リンジェン氏は、ブラード総裁は「典型的なタカ派」であるため、原油やインフレ期待に関するその発言には「かなり効き目がある」と述べた。

 FRBにはインフレと労働市場の健全性に目配りする使命があり、政策措置はその両方を正しい軌道に維持するために策定される。

 FRBは昨年12月、労働市場の改善を追い風に2006年以来の利上げに踏み切った。だが、インフレ率は数年にわたりFRBの目標2%を下回っている。

 この一年は原油価格の急落がその一因だった。FRB当局者の多くはここ数カ月、エネルギー価格の下落は一時的であり、FRBは中期的にインフレ率を2%の目標へ押し上げられるはずだと主張している。

 ただ、多くの投資家は依然疑いを抱いており、原油価格は下げ続けている。供給過剰や世界需要の低迷を背景に、今週は原油価格が約10年ぶりに一時1バレル=30ドルを割り込んだ。

 ドル高もFRBのインフレ目標達成を困難にしている。14日発表された2015年12月の米輸入物価指数は前年同月比で8.2%低下した。前年比での低下は1年5カ月連続。

 これらの要因がインフレ期待を低下させ、FRBの政策見通しに課題を突き付けている。

 R・W・プレスプリッチの国債・エージェンシー債取引責任者、ラリー・ミルスタイン氏は「インフレが目標を下回り続ける中、世界的な逆風が国内の成長を遅らせ、FRBに様子見を続けさせるとの懸念がある」と述べた。

 CMEグループによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む2016年3月利上げの確率は14日時点で38%。1カ月前は46.8%だった。

 ブラード総裁の発言を受け、投資家はFRBの引き締めに備えてここ1年にわたり選好されている取引の持ち高を削減した。

 多くの投資家は短期債を売り、長期債に資金を移動してきた。短期債はFRBの政策転換に影響されやすいとみているためだ。だが14日は長期債が売られ、短期債を買い戻す動きが見られた。

 2年債と10年債の利回り差は1.178%に拡大。13日は1.159%へ縮小し、終値ベースで2008年1月以来最小を記録していた。


FRB、17年初め頃までバランスシート維持か=WSJ調査
By BEN LEUBSDORF
2016 年 1 月 15 日 02:37 JST

 米連邦準備制度理事会(FRB)は現在4兆5000億ドル(約530兆円)に上るバランスシート規模を、今年末あるいは2017年初めまで維持する公算が大きい。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が実施した最新のエコノミスト調査で明らかになった。

 FRBは14年10月に量的緩和(QE)第3弾を終了した。だが満期を迎えた保有証券の償還金は再投資しており、資産ポートフォリオの縮小には踏み切っていない。昨年12月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)政策声明では「フェデラルファンド(FF)金利水準の正常化が順調に進行するまで」再投資を続ける方針を示した。

 WSJの調査に応じた企業のエコノミストや経済学者のうち、23%は16年にバランスシート縮小を始めると予想したが、66%は17年とみている。18年を見込む向きは8%で、残る3%は19年と予測した。

 全米小売業協会(NRF)のチーフエコノミスト、ジャック・クラインヘンツ氏は「2016年の経済動向に大きく左右される」としつつ、FRBが今年12月からバランスシートの縮小に踏み切るとの見通しを掲げた。

 それぞれの回答は16年6月から19年6月まで幅があるが、16年末から17年初めにかけてが多い。中央値は17年1月で、最も多い30%が支持している。16年12月と17年3月の回答がそれぞれ16%でこれに続いた。

 ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ジム・オサリバン氏は「差し迫っていないことは確かだ」と述べ、17年7月から資産ポートフォリオが縮小し始めるとの見方を示した。

 WSJは今月8〜12日にエコノミスト76人へアンケート調査を実施した。だが全員が全ての質問項目へ回答したわけではない。

FRB、次回利上げは3月か=WSJ調査

By BEN LEUBSDORF
2016 年 1 月 15 日 04:34 JST

 米連邦準備制度理事会(FRB)は今月26・27日の政策会合で短期金利の追加引き上げを行わないとみられていることが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の最新月例調査で明らかになった。調査対象の大半は3月の利上げを見込んでいる。

 調査に回答したエコノミストの約66%が、FRBはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3月15・16日に引き上げるとの見通しを示した。回答者の約25%は6月14・15日、約7%は4月26・27日、1%は2017年序盤の会合まで利上げを待つと答えた。数値は四捨五入しているため、合計で100%にはならない。

 今月の会合での利上げを予想したエコノミストはおらず、確率は平均ではわずか9%と推計された。

 ただ、エコノミストは3月の追加利上げも確信しているわけではなく、平均55%の確率が見込まれた。金融市場もその不確実性を共有しており、CMEグループによると今週FF金利に織り込まれた3月の利上げ確率は47%だった。

 PNCフィナンシャル・サービシズのチーフエコノミスト、スチュアート・ホフマン氏は「世界の株式および商品(コモディティー)価格の下落が続かない限り」FRBは3月に追加利上げを実施するだろうと述べた。一方、バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミスト、イーサン・ハリス氏は、3月、4月、6月の会合は「すべて可能性がある」としつつ、次回の利上げは6月と予想した。

 セントラルフロリダ大学のショーン・スナイス氏は「緊急性がないため、FRBは金利の蛇行上昇を容認できる」とし、6月の追加利上げを予想した。

 FRBは7年間ゼロ近辺にとどめていたFF金利の誘導目標を昨年12月に0.25〜0.50%へと引き上げた。利上げは広く予想されていたが、これに先立って実施されたWSJ調査では追加利上げの時期について、65%の回答者が3月、14%が4月、16%が6月を見込んでいた。

 FRB幹部らは金利を段階的に引き上げる方針を示している。フィッシャー副議長は先週、年内に0.25%の引き上げを4回行うとの見方は「概算」で、「何回になるか判断できる十分な材料が今はない」と述べた。

 民間エコノミストは平均で16年末のFF金利を1.14%とみており、今年3回の0.25%の引き上げが示唆される。

 FRBは追加利上げを急いでいる様子は見せていない。アトランタ地区連銀のロックハート総裁は11日「個人的には、12月に知っていたことよりも多くが分かったとは感じていない」と話し、「個人的な姿勢は十中八九、1月の会合からその後の会合まで見極める方向になるだろう」と述べた。

 調査の内訳によると、FRB幹部らは全ての会合が行動をとり得る「生きた会合」だと繰り返し主張しているものの、エコノミストは引き続きイエレン議長が会合後に記者会見を開く3月と6月の会合で追加利上げに動く可能性が高いと考えている。1月と4月は記者会見を予定していない。

 WSJは1月8日から12日にかけて、企業や研究機関のエコノミスト76人を対象に調査を行った。全員が全ての質問に回答したわけではない。

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FRBのインフレ目標達成、さらに後ずれか
By
JUSTIN LAHART
2016 年 1 月 15 日 10:13 JST
 米国のインフレ見通しを引き下げる時がまた来たようだ。それは同時に、米連邦準備制度理事会(FRB)が懸念をさらに深める時でもある。
 コモディティー(国際商品)価格の大幅下落やドル高、そして海外経済の不調の影響が米国のインフレに及ぼす影響は一時的なものだとされている。しかし、こちらの事情おかまいなしに遊びに来て居座る悪友のように、これらのインフレへの影響はしばらく続くとみて間違いなさそうだ。
 その最新の証拠は、14日に労働省が発表した輸入物価指数だ。12月は前月比1.2%、前年同月比で8.2%、それぞれ低下した。石油製品を除くと前年同月比3.7%の低下で、低下幅は2009年以来の大きさとなった。
 こうした輸入物価の落ち込みは今後、消費者物価に反映され、インフレ率をさらに押し下げるはずだ。さらに、市場の混乱や値下がりが続く原材料、ドル高の影響が輸入物価にまだ現れていないため、一段の低下が見込まれる。
ENLARGE
石油製品を除く輸入物価の前年比変化率
 一方、全米自動車協会(AAA)によると、14日のガソリン平均価格は1ガロン(約3.8リットル)=1.94ドルと、金融危機後の最低水準まで下落した。ガソリン先物価格が年初来で16%下げたことを考えると、こちらもまだ下値余地がありそうだ。
 これは他の分野の価格にも影響する。例えば、製品の運送費が下がれば、その下落分の一部は消費者の購入価格に反映される。それが消費者のインフレ期待をさらに押し下げるかもしれない。FRBはインフレ期待が将来の実際のインフレ率を大きく左右するとみている。
 FRBの次の利上げ時期として予想されている3月の連邦公開市場委員会(FOMC)までに、足元の世界市場の混乱は収まっているかもしれない。しかし同時に、FRBの2%というインフレ目標の達成はさらに後ずれしていそうだ。
 12月にFRBが示した今年4回利上げするとの予想は、現時点では修正を余儀なくされそうにみえる。
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• FRBインフレ目標達成、原油安で遅れも=セントルイス連銀総裁
• 原油安、米追加利上げの先送り招く可能性も
http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MC478_import_M_20160114113838.jpg 



FRBインフレ目標達成、原油安で遅れも=セントルイス連銀総裁

By DAVID HARRISON
2016 年 1 月 15 日 01:01 JST

 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は14日、原油価格の一段安でインフレ率は連邦準備制度理事会(FRB)の目標とする2%への上昇が遅れる可能性があると述べた。

 2014年から下落基調にある原油価格は、ここ最近で1バレル当たり30ドル近辺まで急落した。その影響が広がり始めた結果、市場のインフレ期待も低下している。ブラード総裁はインフレ期待について、実質インフレ率の主要な構成要素だとし、インフレ期待への下押し圧力は将来の実質的な物価上昇も抑制しかねないとの見方を示した。

 テネシー州メンフィスで講演したブラード総裁は、「ここ数週間に原油価格が再び下落し、これに関連して市場のインフレ期待指標が低下するのではと懸念されている」と指摘した。

 より緩やかな物価の上昇軌道がFRBの利上げペースに与える具体的な影響には触れなかった。

 ただ、FRBがインフレの根底にある傾向を見極めようとする際、原油相場の短期的な変動には通常とらわれないが、現在は原油価格が市場のインフレ期待に影響を及ぼしていることが見て取れると述べ、二つの要素が深い相関性を持つと指摘。つまり原油安は過去に考えられていた以上に将来のインフレに対して長引く影響をもたす恐れがあると説明した。

 その上で「より懸念されるのは、インフレ期待そのものが原油相場の変動に伴って変わり始めることだ」と述べた。

 長期のインフレ期待は「原則的に原油相場の変動に無関係であるべきだ」としつつ、「この二つの変動要因の相関性は過去1年半で相当高まっている」との認識も示した。

 一方で、全体として原油安は自動車販売や個人消費に追い風となるため、米経済にとり「強気要因」だと語った。

 ブラード総裁は昨年、米経済は借入コストの上昇に十分耐え得るとして利上げを後押ししていた。だが追加利上げについては、特にインフレ関連など今後の指標次第だとも述べていた。



ECB、預金金利大幅引き下げに一定の支持=議事録
By TODD BUELL
2016 年 1 月 14 日 23:16 JST

 【フランクフルト】14日公表された議事録によると、欧州中央銀行(ECB)の一部のメンバーは昨年12月の定例理事会で、預金金利のより大幅な引き下げを支持していた。一段の金融緩和への関心が理事会内に存在することを示した格好だ。

 議事録では預金金利をめぐる議論が微妙なものだったことが浮き彫りになった。預金金利は2014年6月からマイナスに設定されている。

 理事会内には決定した0.1%よりも大幅な引き下げを求める向きもあった。一方で、大幅な引き下げは副作用を伴い、欧州の金融状況を逆に引き締める恐れがあると考える出席者もいた。

 国債買い入れの期間延長など、他の措置については大半が支持したことも明らかになった。ただこれらの措置は市場の期待には及ばず、発表当日は失望感が広がった。

 議事録によると、預金金利の0.1%引き下げは「重大な副作用を誘発する可能性は少なく、必要性が生じればさらに引き下げる余地も残せるという利点がある」と考えられた。

 より大幅な引き下げに関しては「一部のメンバーの見方では、長期にわたり副作用をもたらす恐れがある」とされた。大幅利下げによって商業銀行が「損失埋め合わせのため貸出金利を引き上げようとすれば、追加緩和でなく結局は金融情勢の引き締めにつながりかねない」ためだという。

 だが同時に「一部のメンバーは今回、0.2%の引き下げを支持」した。これで緩和効果を強められるとの見方に加え、現時点で銀行の金利と金融の安定に重大な負の影響が出ていないことを理由に挙げた。

 ECBは12月3日の定例理事会で、預金金利を過去最低のマイナス0.3%に引き下げた。一方で債券買い入れ策を少なくとも2017年3月まで延長することを決めた。

米新規失業保険申請、先週は28.4万件へ増加
By ANNA LOUIE SUSSMAN AND ERIC MORATH
2016 年 1 月 14 日 23:09 JST

 【ワシントン】米国では先週の新規失業保険申請件数が増加した。ただ、労働市場の悪化ではなく、年末年始の休暇シーズンを一因とする変動とみられている。

 米労働省が14日発表した9日までの週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比7000件増の28万4000件となった。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がまとめたエコノミスト調査では27万5000件と予想されていた。

 申請件数の増加は、小売店や物流センターなどで歳末商戦を過ぎて雇用が減少したことを反映した可能性がある。また暖冬で建設業の雇用が先月増加していたため、本格的な冬を迎えた1月にその反動が出ているとも考えられる。

 週ごとのばらつきをならした4週移動平均は27万8750件と、昨年7月以来の高水準を記録したが、2015年の平均(27万8000件)に近い水準を維持している。

 2日までの週の新規申請件数は27万7000件で、従来発表と同じだった。

 同週の継続申請件数は前週比2万9000件増の226万3000件となった。継続申請件数は1週間遅れで発表される。



TPP「関税をゼロにしても成長が見込めるとは思えない」
2016年01月15日(金) 05時00分
〈週刊女性1月26日号〉
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 TPPの大筋合意が報じられた昨年11月から、テレビや新聞は歓迎ムード一色。輸入品が安くなる、輸出が増える、地方の特産品も海外進出と景気のいい話ばかり。きわめつきは昨年末に政府が出したTPPによる経済効果の試算。GDP(国内総生産)が13.6兆円も増えるとはじき出した。

 これを「大粉飾決算」と批判するのは、経済アナリストの森永卓郎さん。

「輸出の儲けは余分に、農業や畜産などの輸入が増える損害は少なめにカウントするというインチキをやって、さらにTPP対策の政府消費を上乗せするという方法で出した数字。普通に計算すればマイナスになるに決まっています。正直に言わない政府はアンフェアです」

 TPP問題に詳しい立教大学の郭洋春教授(開発経済学)も首をかしげる。

「'13年にTPP参加を表明したとき、安倍政権が出したTPP発効10年後の経済効果はGDPが3・2兆円増でした。しかも当時の計算は、今回より関税が引き下げられた状態、つまり関税ゼロを前提に出した数字。なのに減るどころか増えるなんて意味不明です」

 そもそもTPPとは何か。環太平洋戦略的経済連携協定の略称で、世界地図にある12か国が参加交渉を進めているほか、フィリピン、インドネシア、韓国も参加の意向を示している。

 TPP交渉の行方をウォッチし続けているNPO『アジア太平洋資料センター』事務局長の内田聖子さんは、その特徴をこう話す。

「TPPは完全に関税をゼロにするのが大原則。また参加国の間で自由に貿易をするにあたり、それぞれの法律や制度が妨げになれば、最終的には規制緩和しルールを統一していくことになっています。

 従来の貿易協定に比べ、きわめて自由化の度合いが高いのです。発効後3年で再協議が約束されているように、1度入れば関税ゼロに向けて交渉が進められます。しかも後戻りできません」

 金や物だけに限らず、人やサービスも参加国の間を自由に行き来できる。つまり「企業の自由な経済活動と市場へのアクセス」(郭教授)こそがTPPの目的。そこへ日本も加われば「成長戦略の切り札」になると安倍晋三首相は強調するが、郭教授の答えはノーだ。

「工業製品でいうと、日本とアメリカの貿易額はTPP全体の約9割を占めています。関税率も、もとから日米ともに低い。25年かけて自動車の関税をゼロにしたところで、輸出が急激に伸びて成長が見込めるとはとうてい思えません」
http://www.jprime.jp/tv_net/nippon/22825

前場の日経平均は反発、戻り売りで伸び悩む
[東京 15日 ロイター] - 前場の東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比126円27銭高の1万7367円22銭となり、反発した。前日の米国株高の流れを引き継ぎ買いが先行。寄り付き後に前日比で350円を超す上昇となったが、買い一巡後は戻り売りが広がり、前場中盤には一時46円高まで上げ幅を縮小した。

このところ値幅の大きい上下動を続けてきたことに加え、外部環境の不透明感は継続しており、積極的な買いは手控えられた。原油安を背景としたオイルマネーによる売り圧力も引き続き警戒された。

上昇スタートとなったトヨタ自動車(7203.T)が下げに転じたほか、ソニー(6758.T)やメガバンクがマイナス圏で午前の取引を終了。石油関連株や小売、陸運など内需の一角は総じて底堅く推移したが、証券など金融関連の下げが目立っている。

市場からは「8─9月の日本株の急落局面では東証1部の1日の売買代金は3─4兆円に膨らんでいたが、直近ではそこまで至っておらず、まだ売りが出きっていない印象もある」(岡三証券ストラテジストの小川佳紀氏)との声も聞かれた。

東証1部の騰落数は、値上がり1376銘柄に対し、値下がりが450銘柄、変わらずが108銘柄だった。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-st-idJPKCN0UT056


2. 2016年1月15日 13:04:48 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[157]
2016年01月15日(金) 長谷川 幸洋
中国バブル崩壊の予兆!これで「衆参ダブル選」の可能性がますます高まった

【PHOTO】gettyimages
野党も「ダブル選モード」に
「夏は衆参ダブルの同日選」という観測が広がっている。自民党内で隠然たる影響力を持つ二階俊博総務会長が1月9日、地元・和歌山市で「政権幹部が同時選挙をしたいと思っているのは間違いない」と述べるに至って、観測はさらに強まった形だ。なぜ同日選なのか。

二階氏は13日にも都内の講演で「同日選の最中に災害が起こった場合、どうするか。不意を突かれたら大変だ」とバランスをとる一方で「衆院解散がまったくないとは言い切れない」と同日選の可能性を指摘した。地元発言のほうが歯切れがいいのは当然だろう。

二階氏に限らず、谷垣禎一幹事長や稲田朋美政調会長、佐藤勉国会対策委員長など自民党幹部はそろって同日選の可能性に言及している。年が明けたとたんに、自民党内は早くも「選挙モード」に突入した感じだ。

こうなると、野党も臨戦態勢に入らざるをえない。たとえば、民主党の細野豪志政調会長はテレビ番組で「衆院解散はあると思う。そこを考えたときに、政策の一致を前提に新党は必要だ」と解散を前提に考え始めた。

昨年12月4日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46714)で書いたように、私は半年前にマスコミで初めて同日選の可能性を指摘した。昨年7月12日放送の『そこまで言って委員会NP』で「来年は同日選だ」と話したら、同席していた飯島勲内閣官房参与が「私も同じ見立てです」と同意したのを思い出す。

飯島氏を除いて当時、いわゆる「政治評論家」たちは「また長谷川があんなことを言っている」という感じの冷ややかな受け止め方が大半だった。私自身は「なんで分からないの?」と内心、プロたちの感度の鈍さに半ば呆れていた。

同日選はほぼ確実とみていい
プロがなぜ間違うかについては、先のコラムや前回の解散総選挙(これも私の見立てが的中した)を総括した2014年11月14日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/41078)で書いたから、ここでは繰り返さない。

はじめ半信半疑だった評論家たちも「流れに乗らざるをえない」とみたのか、いまごろになってようやく同日選の可能性を口にするようになってきた(それでも1月2日放送のテレビ番組(https://www.youtube.com/watch?v=WbIdIJqYxCg&feature=youtu.be)では、私と同席したコメンテーターが「同日選はない」と否定していたが…)。

「同日選になるかどうか」は金融関係者の間でも関心が高い。すぐ後で述べるように、同日選予想は消費税増税の行方と密接に絡んでいるからだ。ある外資系投資銀行の幹部は「同日選の話を聞きたい」と数年ぶりに電話をかけてきた(これは時間がなく、お断りした)。

いずれにせよ、同日選はもうほとんど確実とみていい。なぜなら、安倍晋三首相は繰り返し否定しているが、夏に同日選に持ち込めば、安倍政権が圧勝するのは間違いないからだ。それには、大きく3つの理由がある。

まず、野党がバラバラだ。野党は戦う前から負けている。共産党は「国民連合政府」構想を唱えていたが、民主党が乗ってこないと分かって、志位和夫委員長は「現時点では難しい」と白旗を揚げてしまった。

共産党が唱えたのは「戦争法を廃止するために野党が一致団結して国民連合政府を」という主張だった。そもそも安全保障関連法を「戦争法」などとレッテル張りした基本認識がトンチンカンなのだが、それを差し引いても「すでに成立した法律を廃止するためだけに政権を目指す」という政治センス自体がどうかしている。

戦争をしようとしているのは、だれなのか。安倍政権か北朝鮮、それとも中国か。北朝鮮の相も変わらぬ戦争意欲(!?)は先日の核実験でも証明された。中国が尖閣諸島に領土的野心を抱いているのも、あきらかだ(先の番組では司会者が「中国は日本本土には攻めてこないでしょう」と発言したので仰天した。尖閣諸島が奪われても九州が奪われなければいい、という発想なのか)。

「政権を担う」というのは、夢の世界の話ではない。生身の人間が働いて稼ぎ、子どもを学校に送り、親の面倒をみて、平和に食べていくのを支えていく。そういう話だ。安保関連法さえ廃止できれば、それでいいというような政党には、とうてい政権を任せられない。

多くの国民が迷っていること
共産党は昨年夏、デモ隊の前で野党党首らとスクラムを組めたので「いまや革命近し」と舞い上がってしまったのではないか。シュプレヒコールで頭に血が上った共産党を「真夏の夜の夢」から覚めた民主党が拒否したのは当然である。

安倍晋三首相がここへきて憲法改正に言及しているのは、野党分断を確実にする狙いがある。憲法改正を争点に掲げれば、党内に改憲派を抱える民主党は足元がふらついてしまう。もともと改憲派である維新の党との合流話も難しくなるに違いない。

衆院解散・総選挙となれば、なおさらだ。参院選で野党統一候補を擁立する目論見が熊本選挙区を除いて、うまく進んでいないのに、衆院議員が1人しか当選できない小選挙区で戦うとなったら、野党共闘はまず成立しない。

だからといって、安倍政権が衆参両院で3分の2の議席を確保したら、本当に憲法改正に踏み出すかといえば、そこは昨年12月25日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/47090)で指摘したように、安倍首相は慎重だろう。

なぜかといえば、憲法改正は国会議員が決めるのではなく、国民投票で国民が決める話であるからだ。世論調査で改正賛成派が反対派をわずかに上回ることがあっても、だいたい回答者の3〜4割が「どちらとも言えない、よく分からない」と答えている。

つまり国民の多くが判断に迷っているのだ。この中間層が本当の鍵を握っている。中間層が反対に回れば、改正はできないのだ。だからこそ二階総務会長や高村正彦副総裁は3分の2の議席を確保したとしても、改正の国会発議には慎重な姿勢を示している。私は安倍首相も同じ判断、とみる。

中国バブルの崩壊=リーマン並みの衝撃
次に、内閣支持率が高い。慰安婦問題の解決で韓国と合意したと思ったら、直後に北朝鮮が4度目の核実験をした。さすがの朴槿恵大統領も北の暴走を止めるために「中国の役割が重要だ」と中国に対して注文をつけた。

慰安婦問題に一応のメドをつけたからこそ、韓国は中国と距離を置いて、日米とスクラムを組んで北朝鮮をけん制する路線に復帰できた。安倍外交の重要な成果である。しかも、肝心な安保法制の見直しは終えている。失業と倒産が減っていることもあり、これでは支持率が落ちる理由がない。

3つ目は消費税問題だ。安倍首相は12日の衆院予算委員会で「リーマンショック級の出来事がない限り、予定通り引き上げていく」と答弁した。中国バブルの崩壊こそがリーマン・ショック並みの衝撃になるだろう。

年初来の株安が、中国の日本経済に対する悪影響を象徴している。1月10日放送の『そこまで言って委員会NP』で同席した中国人実業家の宋文州氏は「中国経済はこれから3年ダメ。でも体制が崩壊しない限り、2018年から復活する」と言っていた。

中国パスポートを持つ(したがって中国の悪口は口が裂けても言えない)宋氏でさえも「私は昨年春に中国株をぜんぶ売り払った」と言っていた。しかも、18年からの復活は「体制が崩壊しない限り」という前提付きなのだ。

中国当局が言動を厳しくチェックしているに違いない宋氏のような人物の口からも「体制崩壊の可能性」が飛び出した点に、私はもっとも注目する。それくらい中国の現状は危うい証拠ではないか。

安倍政権のもっとも重要な公約はデフレ脱却(=消費者物価上昇率2%の達成)だ。だが日銀によれば、デフレはことし年末まで(おそらく来年まで)克服できない。

こんな情勢では、とても増税はできないだろう。そうなると、増税先送りの是非を問うことがダブル選の大義名分の1つになる。

引くも地獄、進むも地獄
野党は増税にどういう姿勢で臨むのか。共産党は増税反対だが、民主党の姿勢ははっきりしない。野田佳彦政権で決めた増税だから、いまさら引っ込められないというなら、安倍政権には好都合だ。増税先送りを掲げてダブル選に突入するだろう。

逆に、野党が増税先送りを言い出すと、安倍政権が先送りしたところで(野党の言う通りなのだから)批判できなくなる。つまり民主党にしてみると、増税を唱えるにせよ先送りを唱えるにせよ、まずい展開になる。「引くも地獄、進むも地獄」なのだ。

最後に一言。左翼陣営には「安倍政権は反知性主義」といったキャンペーンがあるようだ。私は「野党こそが反知性主義」であると思う。野党は総じて経済学の基本に基づいた経済政策を知らず、国際関係論の基本に基づいた外交・安全保障論を知らないからだ。

大学院レベルとまでは言わないが、せめて大学高学年レベルくらいの経済学や国際関係論は勉強したらどうか。そうでなければ世界で相手にされない。「集団的自衛権を容認する日本が徴兵制になる」などというトンデモ論を唱えているようでは、もちろん政権復帰は程遠い。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47386


安達 誠司安達誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」
2016年01月14日(木) 安達 誠司
原油価格の「底打ち」は、ある日突然やってくる〜2016年世界経済のシナリオを「M・O・N・K・E・Y」で考える【その2】

〔PHOTO〕gettyimages
2016年は本当に「ベア(弱気)マーケット」なのか
2016年を占うキーワード「M・O・N・K・E・Y」のうち、今回は、「O・K・E・Y」をとりあげたい。すなわち、原油(Oil)、金(Karat)、為替レート(Exchange Rate)、金利(Yield)である。

これらはすべてマーケットで決まるものであり、しかもお互いが強く連関している。筆者は、今年は予想外のタイミングで、原油価格の底打ちや(長期)金利の上昇が起きるのではないかと考えている。

ちなみに年初から大荒れの各マーケットだが、その状況をみると、原油価格の低下、金価格の上昇、ドル高一服、金利の低下(特に長期金利は米国に連動して動く側面が強いと思われる)が同時発生しており、現段階では筆者の考える方向性とは逆の動きをしている。そして、その間、主要国の株価は軒並み下落している。

そのため、マーケットでは年初から早くも、「2016年は、全般的に『ベア(弱気)マーケット』かもしれない」という見方が増えつつあるが、筆者は必ずしもそうではないと考えている。

理由は、為替レートと原油の「均衡値」が既に「ベアマーケット下のファンダメンタルズ」を十分に織り込んでいると考えているためである。また、ほとんどのマーケットは密接につながっているので、例えば、原油価格の底打ちですべてのマーケットの様相が突然大きく変わる可能性が高いと考える。

そこでまず、各マーケットの価格変動の関係から考えてみよう。

マーケット大混乱の起点は、「ドル高」か「原油安」か
ここでは、「O・K・E・Y」の対象となる、原油価格、金価格、為替レート(ここではドルの名目実効為替レートを用いる)、米国10年物国債利回りに加え、米国予想インフレ率(「10年-10年」のブレークイーブンインフレ率、米国10年国債利回りと米国10年物インフレ連動債の差)、最近話題の中国株(上海総合指数)、日本株(日経平均株価)、米国株(ニューヨークダウ工業株30種)を含む8つの資産価格に長期的にどのような因果関係(変動の順番)があるのかを統計的に検証してみた。

より具体的には、2003年1月から2015年12月までの13年間で月次統計を用い、「グランジャーの因果性テスト」を実施し、各指標間の統計的な関係を検証した。

あくまでも統計的な関係だが、推測される各指標間の因果関係をまとめると以下のようになる。

【各マーケット指標の統計的な因果関係】

ドル名目実効為替レート ⇔ 原油価格 ⇒ 中国株価 ⇒ 米国株価 ⇔ 米国10年国債利回り ⇔ 米国予想インフレ率 ⇒ 日本株価、金価格

注: ⇒は、「因」から「果」への波及を意味する(「因」⇒「果」)。ただし、⇔は、因果関係が両方向に及ぶことを意味する(「フィードバック」の関係)
出所: 筆者が、2003年1月から2015年12月までの月末値を用いてGrangerの因果性テストを行った(ラグは3)結果
@まずは、名目実効為替レートでのドル高が原油価格の低下をもたらす(さらに、逆に原油価格の低下が名目実効為替レートのドル高をもたらすこともある)。
Aこれが中国の株価の下落を経由して、
B米国株の下落や米国長期金利の低下、及び予想インフレ率の低下へ波及する。
Cそして、日本株の下落と金価格の上昇につながっている。

すなわち、今回のマーケット大混乱を統計的に説明しようとすれば、その起点はドル高、もしくは、原油価格の低下であり、これが中国株を下落させ、米国の株価下落や金利低下をもたらし、最後に日本株の下落へ波及した可能性が高いということになる。

ちなみに、原油価格の下落は、中国経済の先行き懸念からもたらされたものであるとすれば、中国経済の先行きを反映する中国株から原油価格への因果関係(すなわち、中国株の下落が原油需給に影響を及ぼし、原油安をもたらすという関係は統計的には確認されなかった)が確認されてもおかしくはない。

だが、残念ながらそれは確認できなかった。ただ、(以下で示すが)中国経済の悪化が世界経済の減速を通じて原油価格の下落をもたらしている可能性は高いので、この関係は、中国株の下落が、必ずしも中国経済の悪化を反映していない独自の動きである可能性を示唆するものであるかもしれない。

1ドル=125円を超えるような円安は考えにくい
ところで、今回のマーケット混乱の起点になっている可能性がある為替レート及び原油価格であるが、このうち、為替レートに関しては、名目実効為替レートの動きがドル円の動きと極めて相関性が高いことを踏まえると、マネタリーベース比率で考えたいわゆる「ソロスチャート」の考え方が適用可能であると考える。

ただ、これについては、既に昨年12月17日の本コラムで言及したように、マネタリーベース比率はあくまでも「均衡値」を示すだけであって、実際の為替レートの水準そのものを正確に説明することは難しい。

実際の為替レートは、中長期的には「均衡値」に回帰する動きを示すものの、短期的には±30%程度乖離して動くことも「ざら」である点に注意する必要がある。

もっとも昨年12月末の米国のマネタリーベースは11月から5%程度減少していることから、昨年12月時点での「均衡値」は多少円安方向に動いていることが想定されるが、それでも1ドル=116〜117円程度のドル円レート水準はなんら驚くような数字ではない。

また、「均衡値」との乖離率でみると、1ドル=125円を大きく超えるような円安は考えにくいという考えは変わらない。

そこで原油価格をどう説明するかだが、ここでは、WTI先物価格の変動を、1ヵ月前から3ヵ月前までのWTI先物価格の変動、世界生産の変動、米マネタリーベースの変動で説明する簡単なモデル(VARモデルの一種)を作り、今回の原油価格の下落がどの程度のショック(世界生産の落ち込み、及び、米マネタリーベースの減少)を織り込んでいるのかを逆算した。

2015年12月時点でWTI先物価格はピーク(2013年8月)から約63%下落しているが、この16ヵ月間で63%の下落は、@世界生産が10.3%減少するようなショック、もしくは、A米国のマネタリーベース残高が56.8%減少するようなショックに見舞われる状況を織り込んでいるという計算結果となった。

これは、原油価格が、前者では、世界景気がリーマンショックをやや下回る規模の悪化、後者では、超過準備が量的緩和実施直後の水準にまで減少する状況を既に織り込んでいることを意味している。

2016年は波乱含みの展開に
資産価格には、一般的に「自己実現的」(一旦、下落し始めると過去の下落を受けて下落幅がさらに拡大していくという性質)な側面が強く出ることが多いため、原油価格の底値を客観的に算出することは困難である。

だが、現在の1バレル=30ドル割れ目前の原油価格の水準は、「『世界景気の先行き懸念(中国経済の景気悪化やそれにともなう周辺地域の成長鈍化も含む)』という世界経済の『ファンダメンタルズ』や、米国金融政策の正常化(利上げプロセスが進展することによって、マネタリーベース残高もある程度は減少していくこと)から原油価格は低下が見込まれる」と予測できる水準を大きく下回っていると考えられる。

そのため、原油価格が一方的に下落する局面はそろそろ終盤に近づいてきたのではないかと予想される。

以上より、原油価格が一旦、下げ止まり、そこから反転するようなことになれば、今度は一転して「ファンダメンタルズ」では説明不可能な金利上昇や予想インフレ率の上昇が実現する可能性がある。

このように、2016年は、1年のシナリオを立てても、それが的中する可能性は低く、短期間でめまぐるしく状況が変わる、波乱含みのマーケットを想定しておいた方がよいかもしれない。


著者: 浜田宏一、安達誠司
『世界が日本経済をうらやむ日』
(幻冬舎、税込み1,620円)
なぜ株価はこれほど上がったのか? 景気回復は本当に続くのか? ノーベル経済学賞に最も近いといわれる、イェール大学名誉教授が語る「経済の真実」とは!

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47361


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