「世界の工場」倒産続々 景気減速の中国、輸入急落 北京=斎藤徳彦、ワシントン=五十嵐大介2016年1月14日00時18分 写真・図版 昨年末に解散に追い込まれた「中天信電子」の工場。入り口の掲示板に、解散や未払い給料についての通知が多数、貼られていた=7日、広東省深? 写真・図版 モノのやり取りで世界最大を誇る中国の貿易額が昨年、リーマン・ショック時以来となる減少に見舞われた。国内景気の減速に悩む中国にとって輸出の不振は最大の誤算だ。輸入の急落は世界経済にさらなる混乱を広げている。 「経営不振で資金繰りがつかず、全従業員に解散を告げざるを得ない」 広東省深?市。スマートフォンやテレビ機器の生産を請け負う従業員3千人規模の「中天信電子」の工場にある掲示板に、昨年10月の社内イベントで仮装して笑顔で歌う従業員らの写真を覆い隠すように、12月25日付の「解散通知」が貼られていた。 寮を去る準備をしていた元従業員の男性は語る。「工場が多すぎるんだ。海外の注文も減り、製造業はいま、真冬だよ」 「世界の工場」の最先端として知られる深?では、高い伸びが期待できる新分野があると、各社が一斉に工場をつくる。需要減は、増えすぎた工場の淘汰(とうた)を引き起こす。スマホなどのハイテク関連でも、昨年は世界市場の伸びが見込みを下回り、液晶など関連メーカーが次々と倒産した。 深?の最低賃金は過去10年で約3倍になった。輸出に有利だった「安い人件費」という条件は失われ、中国メーカーですら工場をインドなどに移す。周辺の「珠江デルタ地帯」では昨年、大型・中型に限っても80近い工場が閉鎖されたと報じられた。 6年ぶりの輸出減について税関総署は「日米欧などと比べて減り幅はまだ小さい」と強調する。高速鉄道(新幹線)などの設備輸出を増やす考えだが、現場の痛みは増している。 輸入はもっと減った。「市場」としての中国が持つ重みが増している各国への影響は大きい。象徴が、鉄鉱石や大豆など中国が最大の輸出先であるブラジルだ。昨年の輸出額は約1900億ドル(約22兆円)となり、前年より15%減った。主要株価は約7年ぶりの安値を記録した。 日本企業も建機関連の輸出減などの影響を受ける。コマツの推定では、中国で主要建機の毎月の需要は昨年4月以降、前年と比べ4〜5割減が続く。スマホ生産設備などの需要も振るわない。日本工作機械工業会によると、15年1〜11月の工作機械輸出額は前年同期より約2割減った。 為替市場では、中国人民銀行が昨年8月に人民元レートの切り下げに踏み切って以降、近年にない元安が進む。中国への輸出には、さらに不利となる。(北京=斎藤徳彦、ワシントン=五十嵐大介) 中国の貿易額、6年ぶり前年割れ 国際経済の不安要因に 上海ディズニーリゾート、6月16日開園 中国本土で初 乙武洋匡さん「パラリンピックを無くしたい」 中国、スウェーデン国籍のNGOスタッフ拘束 香港書店長ら失踪「中国当局が越境し拘束」 広がる疑念 中国、初の国産空母建造を公表 海洋進出の拡大狙いhttp://digital.asahi.com/articles/ASJ1F5STWJ1FUHBI029.html 中国の未来を悲観的に見なければならない理由 農民を豊かにできなければ真の大国にはなれない 2016.1.14(木) 川島 博之 中国国営通信が大失態、誤植で習主席の「辞任」報じる 「中国アフリカ協力フォーラム」で演説する中国の習近平国家主席(2015年12月4日撮影)。(c)AFP/MUJAHID SAFODIEN 〔AFPBB News〕 ?20年以上にわたり奇跡の成長を謳歌して来た中国経済が曲がり角にある。2015年の第3四半期の成長率は6.9%、実態はもっと悪いとされる。年明けに株式市場が急落したことを見ても、中国経済が岐路に立つことは明らかであろう。 ?今後、中国はどのような道をたどるのであろうか。新年にあたり、少し焦点を引いて、長期的な展望を考えてみたい。 今後の中国は「農村」にかかっている ?中国の将来についてエコノミストの意見は分かれている。楽観派は、高度成長は無理としても1人当たりのGDPが8000ドル程度であることを考えると、年率数%の成長は可能と見る。それによって2025年頃には米国と肩を並べるようになると考える。 ?悲観派は、中国の不動産バブルは深刻であり、その崩壊によって成長が止まると見る。日本ではそれをきっかけにして共産党支配が崩壊するとの予測に人気があるようだ。 ?筆者は農業・農村から中国を見てきたが、今後、中国が成長を続けて米国をもしのぐ大国になるかどうかは、その農村政策にかかっていると考えている(「農業」政策ではない)。 ?これまでにも何度も言ってきたことだが、中国を人口13億人の国と見ることは適切ではない。中国は都市戸籍を持つ4億人と、農民戸籍である9億人によって構成されている。そして、農民戸籍を持つ人の中の3億人が都市に出稼ぎに出ている。その多くは「農民工」と呼ばれ、工場で働いている。 ?彼らを低賃金で働かせることによって、中国は安い工業製品を作り出すことに成功した。それが奇跡の成長をもたらしたが、その果実は都市戸籍を持つ人々が独占してしまった。日本に爆買いにやって来る人々は、ほぼ全員が都市戸籍である。 工業による成長の限界 ?今後、中国がより豊かな国になろうと思うのなら、奇跡の成長に取り残されてしまった農民戸籍を持つ9億人を豊かにする必要がある。だが、それは極めて困難な作業になる。 ?農民工の賃金を無暗に上げることはできない。現在、農民工の月給は日本円にして6万円程度にまで上昇した。そのために、工場が中国よりも開発の遅れたベトナムやバングラデシュに移る動きか加速している。“China+1”である。これ以上、農民工の待遇を改善し続ければ、輸出競争力を失う。 ?そしてより重要なことは、すでに多くの部門が過剰設備を抱えており、もはや工業によって国を豊かにすることができなくなってしまったことだ。 ?このまま農民を農民工として働かせていても、一向に農工間格差を是正することはできない。この先、農民を豊かにするために残された道は、農村にサービス産業を起こすことだ。現在、どの先進国においても産業の中心はサービス産業である。 一向に埋まらぬ戸籍格差 ?そのような目で見ると、中国の未来は限りなく暗い。農民を馬鹿にしてきたことのつけが回って来たとも言ってもよい。 ?そもそも、「都市戸籍」「農民戸籍」などと言って、戸籍によって人を区別することがおかしい。戸籍制度は共産党が作ったものだが、このような制度ができた背景には、農民を一段下の人間として見る中国の伝統があった。だが、農民をないがしろにしてきたことは、中国が経済発展を続ける上で大きな足かせになっている。 ?国務院人口調査(2010年)によると、中国の大都市(城と呼ばれる)の人口は4億人であるが、そこに住む人の22%は大学を出ている。23歳に限って見れば大卒の割合は42%にもなる。一方、約6億人が住む農村(郷と呼ばれる)の大卒割合は2%に過ぎない。23歳に限っても8%。都市と農村の教育格差は大きい。 ?工業が発展する際には勤勉な人材が求められる。学歴は中卒や高卒程度でも十分だろう。しかし、サービス業が発展する際には創造性が豊かな人材が不可欠だ。それには高度な教育が必要になる。 ?中国の未来を悲観的に見なければならない理由が分かるだろう。都市と地方の教育格差が中国ほどではない日本でも、地方にサービス産業を根付かせることに苦労している。それを考えれば、大卒人口が2%でしかいない中国の農村にサービス産業を育成することは不可能に思える。 岐路に立つ中国 ?マクロな観点から見ると、戸籍制度によって都市住民と農民を峻別した中国は工業化に適した社会であった。しかし、農村部でサービス産業が発展し難い社会になっている。その結果として、米国を上回るような国になることができない。 ?米国は田舎にもそれなりに教育が行きわたり、規制緩和が進み、言論や報道の自由もある。サービス産業が発展するインフラが整っている。それに対して、中国の農村部は教育の普及が著しく遅れ、かつ規制が多く、言論や報道の自由がない。そんな状況でサービス産業が発展することはない。 ?農村部の教育に多額の投資をするなどして格差の縮小に勤めれば、少々回り道になっても中進国の罠にはまり込むことなく、少しずつ成長を続けることができるだろう。しかし、農民を馬鹿にして彼らを低賃金労働者としてしか見ないような態度を貫けば、中国がこれ以上に発展することは難しい。 ?工業化が一段落した現在、中国はまさに岐路に立っている。2016年は中国が今後どのような道をたどるかを見極める上で重要な年になるだろう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45733
中国の鉄鉱石輸入が12月に急増、過去最高に−価格下落が追い風 2016/01/13 21:32 JST (ブルームバーグ):中国の鉄鉱石輸入は昨年12月に急増し、過去最高に達した。一方、国内での需要縮小を背景に生産がだぶついた鉄鋼の輸出も膨らんだ。 13日に公表された税関統計によると、12月の鉄鋼石輸入量は前月比17%増の9627万トン。通年の輸入量は2.2%増の9億5272万トンで、やはり過去最高となった。 この統計は英・オーストラリア系のリオ・ティントやBHPビリトン、ブラジルのヴァーレが中国で市場をシェアを拡大しつつあることを示してもいる。 船舶ブローカー、バンケロ・コスタの調査責任者ラルフ・ レシュチンスキ氏は「中国はオーストラリアやブラジルから安く鉄鉱石を手に入れられるため、国内の供給需要が低下した」と指摘、中国国内の鉄鉱石生産は8%減少したと見積もった。また「鉄鉱石価格と輸送料が考えられないほど安いので、鉄鋼生産は増え続け、国際市場にあふれている」と述べた。 中国の鉄鋼各社は縮小する国内需要を補おうと、記録的な水準で輸出を続けている。鉄鋼製品の輸出は12月に前月比11%増の1066万トンと、統計上2番目の多さだった。通年では20%増の1億1240万トンで過去最高。中国は世界全体の鉄鋼のほぼ半分を生産し、海上輸送される鉄鉱石の3分の2以上を購入している。 原題:China’s Iron Ore Imports Surge to Record as Prices Hammered (2)(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:シンガポール Jasmine Ng jng299@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Jason Rogers jrogers73@bloomberg.net 更新日時: 2016/01/13 21:32 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0W3576S972A01.html
中国貿易額減 内需、輸出入落ち込み 世界経済に影響も 毎日新聞2016年1月13日 22時38分(最終更新 1月13日 22時38分) アメリカ 経済政策・財政 速報 経済 【北京・井出晋平】中国の2015年の貿易総額が、6年ぶりに減少した。欧州などの景気低迷で輸出が減少したことに加え、中国国内の内需も振るわず、輸入も落ち込んだのが要因。今後も人件費の上昇や景気減速が続くとみられ、拡大を続けてきた中国の貿易は曲がり角を迎えたと言える。一方、世界最大の貿易国・中国の変調は、世界経済の先行きに影響を及ぼす可能性がある。 「15年の我が国の貿易は、複雑で厳しい1年だった」。13日、記者会見した中国税関総署の報道官は、そう話した。同署が同日発表した15年の貿易統計によると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は、前年比8%減の3兆9586億ドル(約463兆円)となった。減少は、リーマン・ショックの影響があった09年以来だ。 最大の貿易相手である欧州連合(EU)向けや日本向けの輸出が減少した影響で、輸出は2.8%減の2兆2765億ドルとなった。 一方、輸入も、14.1%減の1兆6820億ドルと大幅に減少した。国際的な資源価格の下落で原油などの輸入額が減少したこともあるが、工作機械や自動車部品、液晶パネルなどの輸入も落ち込み、内需の低迷ぶりを裏付けた形となった。 中国の貿易総額は、01年末の世界貿易機関(WTO)加盟後、09年を除き、11年まで毎年2桁の伸びを示してきた。12年以降は伸びが鈍化したものの、中国は13年にモノの貿易で米国を抜いて世界一になった。 しかし、中国国内の人件費の上昇で輸出競争力が低下しており、安価な製品を大量に輸出する仕組みが成り立ちにくくなっている。また、国内景気の減速で、世界中から大量に資源を輸入する構図も変わりつつある。中国の需要減少は、資源価格の下落に拍車をかけており、産油国や資源国の景気を下押しする可能性もある。 日本企業「減速警戒」「下支え期待」 中国の15年の貿易総額が6年ぶりに前年割れになったことを受け、日本メーカーの間では改めて中国経済の減速を警戒する声が上がった。ただ、「今後、公共事業などで景気は下支えされる」と期待する見方も出ている。 「中国での需要が想定以上に弱含んでいる。業績への悪影響が少なからず出そうだ」。中国にスマートフォンの部品を輸出する日本の大手メーカーの関係者は警戒感を強める。 同社は16年3月期で中国向けスマホ部品の販売拡大を見込んでいたが、昨年夏以降、需要が減少。関係者は「中国は巨大な市場で事業から撤退することはないが、景気の動向を注視したい」と気を引き締めた。 建設機械大手のコマツでは、11年ごろから中国向けの売り上げが低迷。工場やビルなどの土木事業に使われる建設機械の販売状況は景気の先行指標とも言われ、同社は「今年も下落基調は変わらず、前年同期比で4?5割程度の売り上げ減を見込んでいる」と説明。ただ、建機業界の関係者によると、地方政府で公共事業の予算を拡充する動きも出始め、景気下支えに向けて明るい兆しもあるという。 三井物産の中国現地法人「三井物産有限公司」の小泉芳雄・経済研究部部長は「中国は金融緩和などで景気を下支えしながら構造改革を進め、『世界の工場』から『消費大国』に生まれ変わろうとしている。(景気動向だけでなく)日本企業はこうした変化に対応できるかが問われている」と指摘している。【永井大介、片平知宏】 関連記事 貿易総額8%減 15年、6年ぶりマイナス 12年ぶり、一時30ドル割れ 中国景気減速で NY 12年ぶり30ドル割れ 中国の景気減速影響 貿易額8%減 15年、6年ぶりのマイナス 年初から下落1814円 背景にオイルマネー縮小も あわせて読みたい 中国 貿易大国、曲がり角 15年8%減、世界経済に影響も
中国 貿易額8%減 15年、6年ぶりのマイナス 【北京・井出晋平】中国税関総署が13日、発表した2015年の貿易統計によると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は、前年比8%減の3兆9586億ドル(約463兆円)となった。貿易総額が前年割れしたのは、リーマン… 原油先物相場 NY 12年ぶり30ドル割れ 中国の景気減速影響 http://mainichi.jp/articles/20160114/k00/00m/020/121000c
中国の12月貿易統計、輸出は前年比1.4%減 輸入7.6%減 [北京 13日 ロイター] - 中国税関総署が13日発表した2015年12月の貿易統計は、輸出が前年同月比1.4%減となり、減少率が市場予想の8%を大幅に下回ったほか、11月の6.8%から縮小した。 中国当局が昨年終盤に人民元急落を容認したことで輸出が押し上げられた可能性もありそうだ。 輸入は7.6%減。14カ月連続のマイナスとなったものの、市場予想(11.5%減)ほど悪くはなかった。11月は8.7%減だった。 貿易収支は600億9000万ドルの黒字。黒字額は市場予想(530億ドル)を上回ったほか、11月の541億ドルから拡大した。 野村はリサーチノートで「12月の貿易統計は全体として、低水準ではあるものの、経済の安定化を示す一段の兆候となった」と指摘。「しかし、進行中の構造的な逆風を考慮すれば、成長の下向きトレンドが年内に再び見られると予想している」とした。 一方、人民元建ての貿易統計は、輸出が前年同月比2.3%増、輸入が4.0%減となった。貿易収支は3821億元の黒字。 税関総署によると、2015年通年の輸出は前年比1.8%減、輸入は13.2%減となった。貿易収支は3兆6900億元の黒字。 同国の15年第4・四半期の経済成長率は世界的な金融危機以降で最も低い水準になるとみられ、景気の急減速を回避するために一段の政策措置を求める声が強まりそうだ。 税関総署の当局者は、外需の低迷により、16年の中国の貿易が困難に直面する可能性があると指摘。15年の輸出低迷は、外需の弱さが主因の一つだったと述べた。 人民元の下落については、輸出を刺激し輸入を抑制するが、輸出への影響は時間の経過につれて薄れるとの見方を示した。 http://jp.reuters.com/article/china-y-idJPKCN0UR09520160113 ブラジルでカーニバルが続々中止 深刻な不況が予算を直撃、サンバパレードどころじゃない 2016.1.14(木) Financial Times (2016年1月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
リオのカーニバル、サンバのリズムで最高潮に 昨年のリオのカーニバルには100万人近い観光客が殺到した〔AFPBB News〕 ?胸の飾りを仕舞い、山車も片付けるように。カーニバルは中止された――。 ?ブラジル各地の町や市で、何よりも大事な年中行事であるカーニバルのパレードの中止を強いられるところが相次いでいる。少なくとも1930年代以降で最も深刻な景気後退になるだろうと予想されているためだ。 ?この伝統的な祭りが開かれる5日間――今年は2月初めに予定されている――は、ブラジルがトラブルに見舞われていても国民は一息付けるのが普通だ。 ?あの2008年の世界金融危機でさえ、人々の意気込みと消費意欲を弱めることはなかった。 ?ところが、今回は深刻な景気後退に陥っているうえに失業率とインフレ率が上昇しており、さらにはジルマ・ルセフ大統領の政権がブラジル史上最大の汚職スキャンダルの渦中にあることから、ブラジル国民はパーティーをするような気分ではない。 「救急車購入のためにカーニバル中止」 ?サンパウロ州にある人口300万人の街カンピーナスも、祭りの行事を控えめにせざるを得なくなった都市の1つだ。今年は、地元のサンバスクールが集う大人気のパレードを公費で支援するのをやめた。カンピーナス市役所のガブリエル・ラパシ文化部長は、地元企業の業績不振で売上税の税収が急減しており、同市には今年のカーニバルの費用130万レアル(32万2000ドル)を負担する余裕がないと述べている。 ?「必須とは言えないサービスを真っ先に削ることになる」と同氏は言う。「我々にしてみれば、2015年も非常に厳しい状況だった。2016年はもっと厳しくなると聞いている」 ?カンピーナスから車で2時間のところにあるポルト・フェヘイラでもカーニバルは中止になった。同市は30年以上前にパレードを主催し始めたが、今年は初めて取りやめた。市長はこの決断について、新しい救急車の購入に必要な12万レアルを確保するためだと話している。 ?ブラジルの北端に位置するアマパー州の州都マカパと、南端にほど近いラブラス・ド・スルも祭りを延期した。これに続く自治体は今後数週間で増えると見られる。 ?街中での非公式なパーティーは予定通り行われる見込みだが、お祭りムードは例年よりも弱まりそうだ。 ?快楽主義的なカーニバルのお祝いは、ブラジルでは最も重要な休日だと考えられている。 ?昨年には、華やかなパレードをひと目見ようと100万人近い旅行者がリオデジャネイロを訪れた。 ?市街は陽気に騒ぐ人々で埋め尽くされるが、ほとんどの都市では、複数のサンバスクールが地元の自治体から資金援助を得て行うパレードが祭りのハイライトになっている。 お面やコスチュームの生地も販売不振 ?カーニバル用のお面作りではリオデジャネイロ最大級の規模を誇るコンダル社のオーナー、オルガ・ヴァレス氏は、今年は祭りを控えたこの時期に売上高がほぼ3分の1落ち込んでいると打ち明けた。同氏は1994年にスペインから渡ってきたが、これほどひどい年は記憶にないという。 ?「ここの景気は、ほとんどの人が想像している以上に悪くなっている。うちで4万レアルとか5万レアル使ってくれていたお店が、今じゃ3000レアルの注文しか出してくれない」とヴァレス氏は言う。 ?年間9万着超のコスチュームの布地を供給しているカルナバル・ストアという会社をサンパウロで経営するクラウディア・サクラバ氏は、今年は売上高が15%減って十数年前の創業以来最も厳しい年になりそうだとこぼしている。 ?「私の近所でも、本当にたくさんのお店がつぶれていますよ。不景気のせいでね」 ?ブラジルの政治・経済の将来を見にくくする不確実性に加え、通貨レアルの下落も輸入される布地の価格を押し上げている。 ?世間の空気が重苦しいことは、ジェトゥリオ・ヴァルガス財団算出の消費者信頼感指数がここ数カ月間で最低値を何度も更新していることからも明らかだ。ルセフ大統領の支持率も同様な軌道を描いている。 ?「マイナス成長が続き、失業率が上昇し、2ケタのインフレが続くという機能不全を起こしたマクロ経済が不安感をもたらしている」。ゴールドマン・サックスの中南米担当チーフエコノミスト、アルベルト・ラモス氏はそう分析する。 ?ブラジルの中央銀行が複数のエコノミストを対象に行った調査によれば、ブラジル経済は2015年に3.7%縮小した。今年はさらに2.99%縮小すると見込まれている。 ブラジルが自ら招いた経済問題 ?景気不振に対する国民の怒りは殊のほか激しくなっている。ブラジル国民の多くは、足元の経済問題は自ら招いたものだと考えているからだ。 ?ルセフ氏の与党・労働党はコモディティーブームによる収入増で大胆になり、政権を握っていた過去13年間の大半でポピュリスト的な財政拡張政策を推進した。 ?しかし、持続可能な経済成長に必要な大規模な構造改革だとエコノミストらが見なす施策については、無視してきた。 ?気前のよい財政政策は数百万人の国民を貧困から救い出すのに貢献し、貧しい国民に力を与えた。だが、コモディティー価格の急落に弱いという経済の体質には手が付けられなかったため、今回の危機に至る道を拓く要因にもなった。 ?財政赤字拡大への懸念が広がる中、格付け会社のフィッチは先月、ブラジルの信用格付けを投機的なレベル(ジャンク級)に引き下げた。これにより、ブラジルの債券をジャンクと見なす大手格付け会社は2社になった。ルセフ大統領は弾劾手続きにも直面しており、国営石油会社ペトロブラスでの大規模な汚職疑惑においては、連立政権の閣僚の名前が数多く取りざたされている。 不況深刻、五輪に波及=支持率低迷で混乱拍車−苦境の大統領、就任1年・ブラジル ペトロブラスのスキャンダルや弾劾手続きに苦しめられているジルマ・ルセフ大統領〔AFPBB News〕 ?ブラジルの貧しい人々は昔から、カーニバルには自分の英雄(ヒーロー)のお面をかぶる。ルセフ大統領や、その前任のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏もそうした英雄に数えられる。 ?しかし前出のヴァレス氏によれば、飲んで歌って大騒ぎする人々の間では、この2人でさえも人気がない。 ?「うちで売れているのは魔女とモンスターのお面だけ」と同氏は言う。「今年は、政治家にとって良い年じゃありませんね」 By Samantha Pearson in Sao Paulo http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45768 中国を追い、周辺国が潜水艦を相次ぎ増強 日本の技術を安全保障協力の柱に 2016年1月14日(木)長尾 賢
図1:関係国配置図 昨今、日本の周辺地域で潜水艦の数が増えている。以下の図2から4は、1990年代から2020年代までの、各国の潜水艦保有数の動向(計画も含む)をまとめたものである。東シナ海沿岸国、南シナ海沿岸国、インド洋沿岸国に分けてまとめてみた。米国と中国はすべての地域にかかわるため図5として別にまとめている。 こうしてみてみると、どの地域も潜水艦の数が増えていることが分かる。東シナ海周辺国の潜水艦は、1990年代から2015年の間に2倍弱(19→34隻)に増えている。各国の導入計画がその通りすすめば、2020年代には4倍近く(72隻以上)になる可能性がある。南シナ海周辺国の潜水艦も、すでに3倍(6→18隻)まで増えており、2020年代には6倍以上(38隻以上)になる可能性がある。インド洋も同様だ(36→41隻)。2020年代には1.5倍弱(51隻以上)になるかもしれない。 図2: 東シナ海沿岸国・地域の潜水艦保有数動向 参照: The International Institute for Strategic Studies, “The Military Balance”ほか、報道など 図3:南シナ海沿岸国の潜水艦保有数推移 参照: The International Institute for Strategic Studies, “The Military Balance”ほか、報道など 図4:インド洋沿岸国の潜水艦保有数推移 参照: The International Institute for Strategic Studies, “The Military Balance”ほか、報道など 米国と中国はどうだろうか。図5はそれを表したものだ。意外なことに両国とも潜水艦を減らしている。米国は127隻から73隻へ、中国は94隻から70隻になっている。ただ、米中のデータには注意が必要だ。新しく増やした潜水艦の数に限って見ると、米国は11隻、中国は41隻で事情が大きく違う(図6)。もともとあった米中の大きな実力差は、年とともに縮まりつつある。実際、米海軍幹部は米下院軍事委員会で、中国海軍の潜水艦保有数は2015年2月の段階で米海軍を上回ったと報告している(注1)。 図5:米中の潜水艦保有数推移 参照: The International Institute for Strategic Studies, “The Military Balance”ほか、報道など。中国の2020年代の潜水艦保有数については不明。 図6:2000〜2014年の各国の新規潜水艦配備数 参照: The International Institute for Strategic Studies, “The Military Balance”ほか、報道など (注1)「中国の潜水艦保有数、米国を上回る=米海軍幹部」(ロイター、2015年2月26日) ※この報告では米国の潜水艦保有数は71隻になっている。 なぜ潜水艦? 各国はなぜ潜水艦戦力を増強するのであろうか。潜水艦の特徴は少なくとも3つある。 1つ目は、潜水艦が純粋に国家を相手にした軍事用の武器であることだ。人道支援や災害派遣では役に立たない。2つ目は、潜水艦は軍事用としてはコストパフォーマンスがよいことである。潜水艦は隠れ、敵を待ち伏せて戦う。敵の海軍は、潜水艦がどこにいるのかわからないので不安になる。不安になると、行動が慎重になる。つまり潜水艦は、隠れているだけで抑止力を発揮する。だから小さな海軍でも、潜水艦を保有していれば、大国の海軍にプレッシャーをかけることができる。 3つ目は、潜水艦が相手国の軍事情報を収集する手段として有用なことだ。潜水艦は隠れて情報収集ができる。秘密の多い国際情勢の中で、正確な情報を把握するには、潜水艦による情報収集が有用だ。 つまり、潜水艦を増強している国は、強大な国家を対象として抑止力を発揮すること、そして、情報収集を目的としていることになる。まず米海軍に対抗しようとして中国海軍は潜水艦を増強した。その潜水艦は、東シナ海、南シナ海、インド洋でまでも活発に活動するようになった。その結果、中国海軍に対抗しようとして、中国の周辺国も潜水艦を増強したのである。だから2000年代後半以降、中国の海洋進出が活発化すればするほど、各国の潜水艦保有計画にも拍車がかかり、ますます増加する傾向になっているのだ。 拡大する潜水艦輸出競争 現在、この潜水艦競争は、新たな段階に入り始めている。それは、輸出競争だ。中国に対抗しようとする中国の周辺国は、潜水艦を輸入して増強した。例えばベトナムはロシアから潜水艦を輸入し、訓練はインドに依頼している。 これをみた中国は、インドの周辺国に潜水艦を輸出し始めた。具体的には、パキスタンへ8隻、バングラデシュに2隻の輸出を計画している。インドが海軍を動かす際に、周辺国の潜水艦がどこにいるかは、常に心配になる。中国としては、潜水艦を輸出することでインド海軍の動きを抑えることができる。中国は今後、パキスタンが原子力潜水艦を保有する計画も支援する可能性がある。 このような動きに対して、インドは米国から対潜水艦用の哨戒機を輸入するなどして対抗している。インドはロシアからリースしている原子力潜水艦をもう1隻増やして、2隻体制にする予定だ。さらに国産原潜9隻も建造予定で、1隻目が就役に近づいている。潜水艦の輸出入は、競争激化する地域の防衛力近代化競争の象徴的存在になっている。 日本にとって鍵になる潜水艦外交 ここからいえることは何か。まず、米国に比べ、他の国が潜水艦戦力を増強していることは、米国の存在感がそれだけ落ちていることを示している。第2に、潜水艦を増強していることは、国家間のパワーゲームが激化していること、特に中国と、その影響力拡大を懸念する国々との間で競争が高まり始めていることを示している。第3に、このような環境の中で、潜水艦輸出が外交カードとしてより影響力を増しつつあることも示している。 こうしてみると、日本の存在は重要性を増している。日本は優れた潜水艦を保有する国であり、現在、潜水艦戦力を18隻から24隻へ増強している最中だ。そして、その潜水艦を友好国との協力増進のために使い始めている。具体的にはオーストラリアへの輸出を決めた(注:日本はオーストラリアから受注してはいない)。中国の急速な海軍力近代化に対抗して、日米豪で協力してパワーバランスを維持しようとする努力の一環だ。 中国が潜水艦を増強する速度は速いことから、今後、日本は、友好国とのより緊密な協力が必要になる。そのためには、オーストラリアだけでなくインドや東南アジア各国に対しても、協力を促進する必要がある。具体的には、潜水艦や哨戒機、潜水艦探知用のソナーなどを含めた輸出、運用ノウハウの共有、潜水艦を使った共同訓練、情報共有などが挙げられるだろう。日本にはすぐれた戦力、人的・技術的基盤があるのだから、それを外交カードとしてどれだけ生かすことができるか、日本の政治力が問われている。 日印「同盟」時代 日本とインドの安全保障関係が進展している。2005年以降、首相が相互訪問。2012年には海上合同演習も始まった。そして2014年にはインド共和国記念日の軍事パレードの主賓として、安倍晋三首相が招かれた。従来にはなかった動きだ。日印関係に何が起こっているのか。そこにどのような可能性があるのか。このコラムで検証する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/261283/011200003/?ST=print
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