原油価格下落、日本経済全体にはいい影響=菅官房長官 [東京 13日 ロイター] - 菅義偉官房長官は13日午後の会見で、原油価格の下落が続いていることについて「わが国は原油の大部分を海外に依存しており、日本経済全体にはいい影響を与える」との見方を示した。一方で菅官房長官は「中国景気への不安や世界経済見通しへの懸念が生じている」とも指摘、国際金融市場の動向を注視して対応していく考えを示した。 (石田仁志) http://jp.reuters.com/article/suga-idJPKCN0UR0ST20160113 原油相場見通し、再び下方修正が相次ぐ サウジアラビアやロシアなど産油大国は、市場シェアを確保するため全力で生産しており、過剰供給を生み出している ENLARGE サウジアラビアやロシアなど産油大国は、市場シェアを確保するため全力で生産しており、過剰供給を生み出している PHOTO: ANDREY RUDAKOV/BLOOMBERG NEWS By GEORGI KANTCHEV 2016 年 1 月 13 日 15:03 JST 原油相場が1バレル=30ドル前後で推移する中、中国の原油需要をめぐる懸念の高まりを反映して、アナリストらが原油相場の見通しを一段と下方修正している。2016年初めの1週間余りで原油相場が12年ぶりの安値をつけたことを受け、今年相場が回復する見通しは後退している。 ウォール・ストリート・ジャーナルが銀行12行を対象とした調査によると、国際指標油種であるブレント原油の今年の平均価格は1バレル=50ドルと予想されている。12月の調査から7ドル下がった。米指標油種のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)については、12月調査よりも5ドル低い平均48ドルとみている。 原油相場は、過剰供給と需要後退が重なり需給がだぶつき、2014年6月の100ドル台から下落している。ブレント原油は12日、31.20ドルをつけた。 WTIの価格推移と銀行12行の相場予想 ENLARGE WTIの価格推移と銀行12行の相場予想 アナリストらは現在、今後数週間で相場は20ドル近くまで下落する可能性があるとみている。こうした見方は先月には主流ではなかった。スタンダード・チャータードでは、主な相場見通しではないものの、原油価格が10ドルまで下がる可能性もあると考えている。 株式相場や金属相場、一部の企業信用力などと同様に、中国経済に対する懸念を背景として原油相場は今年急落している。石油アナリストや投資家はここ1年以上、在庫と生産水準を弱気材料として注視してきたが、ここにきて中国の株価指数も材料に加えている。上海総合指数は新年に入り15%程度も下落した。 ING銀行のコモディティー(国際商品)投資戦略責任者、ハムザ・カーン氏は「簡単なことだ。中国株は崩れれば、石油価格も崩れる」とし、「石油市場は心理に左右されているが、その心理がいまは極めて弱気なのだ」と指摘した。 原油相場関係者にとって、中国は新たな懸念材料ではない。同国は世界第2の原油消費国で、中国経済に対する懸念が、昨年8月に起きた中国発の市場の混乱において原油価格下落につながった。 新たな材料は、弱まりつつある経済情勢を反映する中国の原油需要に関する統計と、需要が減少することへの不安だ。最新の統計によると、11月の石油需要は前月比で4.9%減、前年同月比で2%減となった。バークレイズによると、2014年7月以降初めての減少だった。 Crude-oil prices plunged more than 5% on Monday to trade near $30 a barrel, making the specter of bankruptcy ever more likely for a significant chunk of the U.S. oil industry. WSJ's Bradley Olson explains on Lunch Break with Tanya Rivero. Photo: Bloomberg News 中国の原油需要を手掛かりに、世界の石油需要の伸びは昨年、5年ぶりの高水準をつけた。 原油相場が下落するにつれ、アナリストらの予想も平行して下がってきた。 昨年夏の時点では、調査した銀行の多くが今年は原油相場が70ドル以上まで上昇すると予想していた。現在は、来年にかけてその水準を下回り続けるとみられている。17年については、ブレント原油は平均67ドル、WTIは同63.50ドルと予想している。銀行調査の平均予想は、昨年8月以降、毎月下方修正されている。 原油相場が引き続き弱いことは、世界中の消費者や企業にとっては歓迎すべきことだ。全米自動車協会(AAA)によると、12日時点のガソリン平均小売価格は1ガロン=1.956ドルで、ここ数年間では最も安い。 だが、ロシアからベネズエラまで産油国諸国にとっては、さらに痛みが増すことになる。原油安は石油企業の基盤も揺るがしており、その多くが既に値下がりの長期化に備えている。 英石油大手BPは12日、今後1年程度で資源調査および生産事業部門の労働者を約4000人削減すると発表した。調査会社ウォルフ・リサーチによると、米国では石油・天然ガス生産企業の3分の1が、2017年半ばまでに破綻に傾き再編される可能性がある。 中国は、原油相場を圧迫している一連の要因の一つにすぎない。 米国と欧州における暖冬が、問題に加わっている。バンクオブアメリカ・メリルリンチによると、このために両地域で日量約20万バレルの需要が減っている。 最大の問題は引き続き過剰供給だ。サウジアラビアやロシアなど産油大国は、市場のシェアを確保するために全力で生産している。しかも、イランと主要諸国との間で昨年、核協議をめぐり一部の経済制裁解除が約束され、今年はイラン産原油が市場に数十万バレル加わる見通しだ。 一方、米国の産油量も予想されたほど減ってはいない。昨年4月に日量970万バレルでピークをつけたが、米エネルギー情報局によると、産油量は920万バレル程度で落ち着いており、その後の減少ペースは遅々としている。 ソシエテ・ジェネラルの主任石油アナリスト、マイケル・ビットナー氏は今週のリポートで、「世界の再調整において米シェール(石油生産)が今年初めにその役割を十分果たすくらい急速に減少することについて、市場は自信を失っている」と述べ、「2016年の見通しに対するリスクは、主に下向きだ」と指摘した。 関連記事 原油30ドル割れに耐えられない国とは 原油10ドルに現実味?投資銀行が描くシナリオ 石油株、今後の見通しと推奨銘柄 原油30ドル接近、米石油会社の破産懸念高まる http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AE762_OILPOL_16U_20160112111810.jpg Column | 2016年 01月 13日 13:11 JST コラム:現実味増す原油20ドル、OPEC大幅減産の条件 Andy Critchlow
[ロンドン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 原油価格が1バレル=20ドルになるというのは、掛け値なしの予想だ。石油輸出国機構(OPEC)の加盟各国がさまざまな意見対立をいったん脇に置いて大幅な減産に合意しなければ、世界的な供給過剰の継続と中国経済の先行き不透明感の強まりを背景に、20ドルの局面が現実化してもおかしくない。 逆にロシアなどOPEC非加盟の有力産油国の協力があれば、大幅減産は可能になる。 北海ブレント先物は年初来で15%も下落し、いくつかの大手銀行は価格見通しを下方修正している。モルガン・スタンレーは現在、原油価格が人民元安とイランからの新規供給で20ドルまで下がる恐れがあると予想。ゴールドマン・サックスも昨年11月に似たような見解を表明した。OPEC内でも弱小加盟国は不安を抱いている。 ナイジェリアの石油相が12日に発言したように、一部のOPEC加盟国は公然と臨時総会の開催を要求している。ただし最有力加盟国のサウジアラビアや同国と親密な関係にあるペルシャ湾岸諸国が首を縦に振らない限り、臨時総会が開かれる公算は依然として乏しい。 臨時総会を阻んでいるのは、サウジとイランの関係悪化ではなく、ロシアの存在だ。ロイター調査によると、OPEC非加盟ながらも世界最大の産油国であるロシアは今年、日量1100万トン近くと旧ソ連崩壊後の最高水準まで生産量を拡大すると見込まれる。 だからOPECにとっては、自分たちが減産してもロシアが追随しなければ、市場シェアを失うリスクがある。事情に詳しい関係者の話では、もしもロシアの同意があったなら、昨年12月のOPEC総会で有力加盟国は日量200万バレルの減産を受け入れただろうという。 一部加盟国は減産の議論を続けているが、原油市場に効果を及ぼすには恐らく300万─400万バレルの減産が必要になるとみられる。 こうした大幅で協調的な減産が実施されれば、原油価格はすぐさま安定化する。しかしもしもOPECがロシアと事前に合意せずに臨時総会を開いたとすれば、価格は下げ止まりそうにない。次の動きは、ロシアがどんな手を打つかになってくる。 ●背景となるニュース ・ナイジェリアの石油相は12日、OPECの一部加盟国が価格下落に対応するための臨時総会開催を要請していると語った。 ・原油価格は、モルガン・スタンレーが人民元安とイランからの新規供給で1バレル=20ドルまで値下がりする恐れがあると警告し、下げ幅が拡大した。 ・OPECは昨年12月の総会で減産を合意できず、生産枠も決められなかった。 http://jp.reuters.com/article/opec-nigeria-breakingviews-idJPKCN0UR0C020160113 Business | 2016年 01月 13日 16:03 「金より安全」の声も出るJGB、収益性高く投資マネー流入
[東京 13日 ロイター] - 中国問題や原油安を背景としたリスクオフの流れを受けて、「安全資産」とされる日本国債に投資マネーが流入している。日本国債は大規模な日銀買い入れを受けてボラティリティが低下した結果、リスク対比の収益性が相対的に向上。かつて安全資産の代表格だった金の投資環境が、ドル高などの影響で厳しくなる中、日本国債の安定性を評価する声も出ている。 財務省の対外及び対内証券売買契約等の状況(月次・指定報告機関ベース)によると、海外勢は2015年に対内中長期債投資で7兆5258億円買い越した。買い越しは2年連続。対内短期債投資でも9兆8150億円の買い越しで、その規模は4年ぶりの高水準となった。 メリルリンチ日本証券・チーフ金利ストラテジストの大崎秀一氏は「海外勢のJGB買いは、アベノミクスで外債投資が活発になった結果、ベーシススワップのマイナス幅が拡大し、低コストで円調達が可能になったことが影響している」と指摘する。 その上で「JGBは日銀買い入れによってボラティリティが低下。米国債や独国債と比べて安定した収益性を得ており、安全資産として選好されている」と話す。 市場筋がまとめた2015年のアセット別パフォーマンス(年換算、リスク調整済み)で、日本債券インデックス(国債、野村BPI)はプラス0.90%。TOPIX.TOPXが0.52%、世界BIG債券インデックス(米ドル建て、シティ)がプラス0.23%などで、S&P500や金、商品(CRB)、原油はマイナスとなった。 今年に入ってからは、金価格XAU=もリスクオフの流れの中で「安全資産」としての買いが入り、一時5%近く上昇したが、中期的には中国などの需要減やドル高がマイナスに働くとの見方も多い。 安全資産の代表格とされてきた金に代わり、「海外投資家から安全資産として日本国債を再評価する声もある」(外資系金融機関)という。 10年最長期国債利回り(長期金利)は13日、一時0.205%を付け、15年1月に付けた過去最低金利の0.195%を射程圏に捉えた。「債券投資戦略の1つであるキャリー・ロールダウン効果を安定的に享受できる環境下で、現行利回り水準の4倍を超えるリターンを挙げていることになる」(国内金融機関の債券関係者)という。 年明けから円高・株安・原油安とリスクオフの流れが強まっているグローバルマーケット。「市場の混乱によって、日銀の出口戦略に関する議論がしばらく封印されることを踏まえると、現行の国債買い入れスキームは維持されるだろう」(同関係者)との声が出ている。 「国債利回りはかなり低水準だが、それでも日銀買い入れ継続によって一段の低下圧力が根強い。何らかの形で、リスク調整目的に売りが出る場面も予想されるが、需給が一段と引き締まる中で、金利上昇幅が限られるとみられ、引き続き好パフォーマンスが期待できるのではないか」と、メリルリンチ日本証券の大崎氏は述べている。 (星裕康 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/jgb-idJPKCN0UR0NV20160113
中国株:上海総合、3000割れ−国内経済めぐる投資家の懸念収まらず 2016/01/13 18:09 JST (ブルームバーグ):13日の中国株式相場は下落。昨年の株価急落局面の最悪期以来の安値となった。昨年12月の輸出が予想外に増加し、当局が人民元相場の安定化に取り組んでいるものの、国内経済をめぐる投資家の懸念を和らげることができなかった。 上海総合指数は前日比2.4%安の2949.60と、3000を割り込んで引け、昨年8月26日以来の安値を付けた。ペトロチャイナ(中国石油、601857 CH)が下落。同銘柄は指数に占めるウェートが高いことから政府系資金を使った当局の買い支えの対象とみられていた。CSI300指数を構成する全10業種が値下がりした。 華西証券の魏瑋アナリスト(上海在勤)は、「投資家はこの市場を信頼しておらず、輸出が若干回復したことが指標で示されても、依然として悪い経済状態にあると懸念している。われ先に売ろうとしている」と指摘した。 君康人寿保険によると、世界的に株価が反発したにもかかわらず本土株が取引終了前の1時間で下落したのは、企業の大株主が株価上昇に乗じて保有株を売却するとの懸念がある。中国当局は先週、企業の大株主による保有株売却に新たな制限措置を導入すると発表した。 君康人寿保険の呉侃ファンドマネジャー(上海在勤)は「前回の相場急落が市場の地合いを大きく損なっており、投資家は依然として大株主が保有株を売却すると恐れている」と指摘した。 CSI300指数は1.9%安。工業株や通信、ヘルスケア銘柄を中心に売られた。中国遠洋(チャイナ・コスコ・ホールディングス、601919 CH)は5.7%下げ、ZTE(中興通訊、000063 CH)は2.3%安、楽普(北京)医療器械(300003 CH)は4.8%安。 香港市場ではハンセン中国企業株(H株)指数が0.7%高で終了。一時は3.1%高まで上昇した。ハンセン指数は1.1%高で引けた。 原題:China’s Stocks Tumble to Lowest Levels Since Last Year’s Rout(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:上海 Zhang Shidong szhang5@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Richard Frost rfrost4@bloomberg.net Kyoungwha Kim 更新日時: 2016/01/13 18:09 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0VJRS6KLVRD01.html 円下落、人民元安定や株高でリスク回避緩和−対ドルで118円台前半 2016/01/13 16:16 JST (ブルームバーグ):13日の東京外国為替市場では円が下落。中国人民元の安定や株価の上昇を背景に投資家のリスク回避姿勢が和らぐ中、円に売り圧力が掛かった。 ドル・円相場は1ドル=117円台後半から一時118円36銭と3営業日ぶりの水準までドル買い・円売りが進行。午後4時10分現在は118円17銭前後となっている。中国人民銀行(中央銀行)はこの日、人民元の対ドルでの中心レートを4営業日連続で前日とほぼ同水準に設定した。中国が発表した昨年12月の貿易統計では、輸出(人民元ベース)が予想外の増加となった。 SMBC信託銀行プレスティアの尾河真樹シニアFXマーケットアナリストは、「人民元はコントロールはできているが、少しずつ自由化していく流れの中で元売り圧力はある程度市場に任せるという流れも少しあるだろうし、元安に行けば輸出が改善するということもある」と指摘。「過度のリスク回避姿勢が少し和らいでいる」と語った。 ユーロ・円相場は1ユーロ=127円台後半から一時128円16銭と2営業日ぶりの水準までユーロ買い・円売りが進み、同時刻現在は127円92銭前後。一方、ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.08ドル台後半から値を切り下げ、一時1.0811ドルと3営業日ぶりのユーロ安・ドル高水準を付けた。 中国と原油 中国の税関総署が発表した12月の貿易統計によると、輸出は人民元ベースで前年同月比2.3%増加した。11月は3.7%減だった。輸入は人民元ベースで4%減と1年2カ月連続で減少したが、前月の5.6%減から減少幅が縮小した。貿易黒字は3820億元(約6兆8700億円)となった。 人民銀は13日、人民元の中心レートを1ドル=6.5630元に設定した。中国が人民元相場を安定化させる取り組みを強化したことで、世界の金融市場の混乱が和らぐとの楽観から前日の欧米株式相場は上昇。13日のアジア市場では東京株式相場が7営業日ぶりに大幅反発した。 上田ハーローマーケット企画部の山室宏之氏は、為替市場は足元、リスクオフトレードによる円買い一辺倒の状態から脱し始めており、ポジションが偏っていることを感じさせると指摘。契機さえ得られれば、短期的にリスクオフポジション巻き戻しの動きが強まる可能性が高いとし、「株式市場の反発が円ロングポジションを炙り出す展開につながるかに注目したい」としていた。 一方、中国株はプラス圏で推移していたが、午後にかけて下げに転じ、上海総合指数は3000割り込んで引けた。 三井住友銀行市場営業部NYトレーディンググループの柳谷政人グループ長(ニューヨーク在勤)は、中国人民元による人民元買い介入もあり、中国発の話はいったん収まっているが、「これがすぐに完全収束するとは思えない」と指摘。「波乱を引き起こすリスクはまだ高い状態なので、もろ手を挙げてもう終わりというにはほど遠いのではないかと思う」と話した。 12日のニューヨーク原油市場でウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は続落し、一時、12年ぶりに1バレル=30ドルを割り込んだ。アジア時間13日の時間外取引では上昇し、30ドル台後半で推移している。 ナショナルオーストラリア銀行の通貨戦略グローバル共同責任者、レイ・アトリル氏(シドニー在勤)は、「中国は別として、世界的に圧倒的な影響を金融市場に与えているのは執拗(しつよう)な原油価格の下落だ」とし、当面円は買われやすく、資源国通貨には下落圧力がかかるはずだと述べた。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 青木 勝, 崎浜秀磨 更新日時: 2016/01/13 16:16 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0V3Q66JIJUW01.html
伊藤教授:中国ショック発の円高「まだ大丈夫」、テーパリングは次期総裁 2016/01/13 14:07 JST (ブルームバーグ):投資家のリスク回避による円高が日本経済に及ぼす悪影響は限られる−−。もし大幅に加速したり、物価下落の基調が鮮明となれば、政府・日本銀行は座視しない、と米コロンビア大学大学院の伊藤隆敏教授はみる。 日銀の黒田東彦総裁が財務官だった当時の1999年から2年間、副財務官を務めた経歴を持つ伊藤教授は9日、都内でインタビューに応じ、ドル・円相場は「120−125円が気持ちの良いレンジだ」と指摘。世界経済や金融市場に対する懸念が一段と深刻化し、「115円になって、110円に向かって行かない限り、それほど深刻ではない」との見解を示した。 世界の金融市場では、中国の人民元切り下げや景気指標の悪化を受け、年初から原油安と株安・金利低下が進行。ドル・円は11日に116円70銭と同様の混乱が生じた昨年8月以来の円高値を付けた。 円高は輸出企業の収益減や物価の押し下げ要因となるが、伊藤教授は「企業収益はまだ大丈夫だ。かなり貯蓄もしている」と指摘。黒田総裁が2%の物価目標を目指して金融緩和を続けると信じるなら、対ドルで110円や100円での定着はあり得ず、中期的に「せいぜい120円近傍」で推移すると言う。 黒田総裁はフランス銀行主催のシンポジウム講演原稿の中で、異次元緩和は「インフレ期待に直接的に働きかける」と指摘。長年のデフレで「人々の間に染み付いたデフレマインドを転換するのは簡単ではない」としながらも、「問題が物価である以上、その役割を果たすのは中央銀行だ」とした。 「もし企業の投資計画に悪影響が及び、インフレ期待が下がるようなら、黒田総裁は何かやるだろう」。伊藤教授は、前年比の伸びがゼロ%前後で低迷する消費者物価指数が、原油安や円高の影響を受けて、生鮮食品を除くコアCPIだけでなく、酒類以外の食料とエネルギーを除くコアコアCPIや日銀が独自に試算する生鮮食品とエネルギーを除くコア指数まで低下するようであれば、「追加緩和の確率はじわじわと上がっていく」と予想する。 市場の混乱 ニューヨーク原油市場のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は12日の相場で一時、12年ぶりに1バレル当たり30ドルを割り込んだ。伊藤教授は、原油安が止まらないのは「中国経済の減速が大きい」と指摘。景気指標からは「6%台の成長が続いているとは考えにくい」と言い、原油安は「世界的に経済成長にプラスのはずだが、中国経済の減速を示す代理変数とみられている」と語った。 市場には「中国当局の経済政策のコントロールに対する不信感もある」。伊藤教授は、年初来の株式市場の混乱など「政策が賢く作られて賢く運用されているとは思えない事例が続いている」と語る。原油市場に関しては、産油大国のサウジアラビアが価格低迷の容認で米シェール産業の台頭阻止を狙っているとされる一方、サウジとイランの関係が悪化しても両国が本気で戦うとは当事者も周辺国も考えていないとも説明した。 主な貿易相手国の通貨に対する円の総合的な強弱を示す名目実効為替レートは96.94と2014年10月末の追加緩和より前の高水準まで達している。伊藤教授は最近の円高は、異次元緩和の導入と追加緩和を背景とした昨年までの円安に「出尽くし感が出てきた上に、中国ショックが起き、逃避通貨の円が買われている」と指摘する。 市場が落ち着けば逃避需要は剥落するが、国内景気が徐々に回復する一方、米利上げはほぼ織り込まれているため、円の反落は「120円くらいまで」と、伊藤教授は予想している。気持ちの良いレンジの「上限だが、それほど問題になることではない」と言う。 テーパリング、次の総裁は大変だ 日銀が2%の物価目標を達成するため「量的・質的金融緩和」を導入してから2年半が過ぎた。その間に実施した追加緩和などの結果、日銀による今年の長期国債買入額は約120兆円と16年度の市中発行額の8割超に及ぶ見通しだ。 ただ、原油安などにより物価の重しは根強く残っており、日銀は昨年10月末に物価見通しを引き下げ、2%到達の時期を「16年度後半ごろ」に先送りしている。市場関係者の日銀見通しに対する評価は厳しく、ブルームバーグが昨年12月にエコノミストを対象に実施した予想調査では、生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)前年比が2%程度に達すると見込むのは38人中1人だけだった。 1日付の日経新聞は、日銀が29日に公表する展望リポートで16年度の物価見通しを1.4%から1%前後へ下方修正する検討に入ったと報道。原油の反発がなければ、2%目標の達成時期も16年度後半ごろから先送りする可能性が大きいと伝えた。 過去に日銀副総裁候補に浮上したことのある伊藤教授は、原油安による物価上昇の遅れや17年4月の消費増税を考慮すると、黒田総裁は「たぶん任期中にテーパリングをやらないのではないか」と指摘。「18年3月まではテーパリングの議論すら必要ないという感じで行けるかもしれない」と言い、「次の総裁は大変だ」と述べた。 物価上昇を目標とする政策では、「インフレ期待が2%に収束するのが遅れているなら、実際のインフレ率は2%をオーバーシュートしてもよい」と指摘。「すぐにテーパリングするのではなく、2.5%くらいまで行ってからでもよい。2%は中心値なので、上下0.5−1ポイントの間に中期的に収めたいというのがインフレ目標だ」と説明した。 消費再増税先送りも 安倍晋三首相は14年4月の消費税率引き上げ後に低迷した景気などを考慮して、10%への消費税再増税を従来予定の15年10月から17年4月に延期した。首相はリーマンショック級の出来事がない限り、消費増税を実施する構えだ。 伊藤教授は、政府が景気の浮き沈みなどではなく「軽減税率の範囲やシステムの準備などの技術的な理由で先延ばしする」可能性はあるとみている。軽減税率の導入が衆参同日選を想定して公明党に譲歩したという「政治の貸し借りに使われていると根強く言われている。消費増税の日程も同様に絡んでくる可能性がある。軽減税率の準備が整わなかったから1年先送りというのは不思議ではない」と話す。 財政健全化への影響は「日銀が国債を買い続けているうちは、それほど問題は起きない」と指摘。「大目に見れば東京オリンピックがある20年まで引っ張れる。消費税率を上げなくても、景気も潜在成長率も高めにいく」と述べた一方で、オリンピックで景気のピークを迎えた後の「21年、22年は金融を引き締め、財政を緩める政策ミックスが必要になるかもしれない」と語った。予定通り10%に引き上げた上で「19年か20年のオリンピック直前に13%に引き上げておくべきだ」と言う。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net;東京 氏兼敬子 kujikane@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 崎浜秀磨, 山中英典,青木勝 更新日時: 2016/01/13 14:07 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0UDKF6S973N01.html Business | 2016年 01月 13日 15:38 JST 日経平均は7日ぶり大幅反発、中国懸念後退で全面高に [東京 13日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は7日ぶりの反発。前日比496円の大幅高となった。米国株高などを背景に序盤から買いが先行。ドル/円が118円台を回復したことに加え、輸出・輸入ともにマイナス幅が縮小した12月中国貿易統計も支えとなった。東証33業種全てが上昇。東証1部の値上がり銘柄は94%に上るなど、全面高商状となった。
人民元の対ドル基準値は1ドル=6.5630元と、前日基準値比でほぼ変わらずとなった。また、中国12月貿易統計は輸出が前年同月比1.4%減となり、減少率が市場予想の8%を大幅に下回ったほか、11月の6.8%から縮小。輸入は7.6%減と14カ月連続のマイナスとなったものの、市場予想(11.5%減)ほど悪くはなかった。11月は8.7%減だった。 年初から6日連続安となっていた日経平均は、複数のテクニカル指標が売られ過ぎのサインを示していた。「さすがに下げ続けたため、一旦買い戻しが入りやすい。このところ人民元安が止まりつつあることも安心材料となった」(明治安田アセットマネジメント取締役執行役員の小泉治氏)という。 上海株はマイナスとなる場面があったが、アジア株は総じて堅調に推移。日経平均は大引けにかけて1万7700円台を回復し、前日に下げた分を取り戻した。もっとも「公的資金やロングオンリーの海外勢など大口投資家の動きは見えず、投機筋の買い戻しに過ぎない」(外資系証券)との声も聞かれ、上値追いには慎重な姿勢も垣間見えた。 日経平均ボラティリティ指数.JNIVは前日の31ポイント台から27ポイント台まで13%近く低下。東証1部の売買代金は前日比で約16%減の約2.5兆円にとどまった。 個別銘柄ではサカタのタネ(1377.T)がしっかり。12日に発表した2015年6─11月期連結決算は、営業利益が前年同期比54.5%増の49億9300万円となり、上期の好業績が買い手掛かりとなった。 半面、明光ネットワークジャパン(4668.T)は軟調。12日に通期の連結業績予想の下方修正を発表し、嫌気された。学習塾のアルバイト講師に対する不適切な労働時間管理が判明。未払い分の賃金を一時金で支払うために特別損失を計上した。 東証1部騰落数は、値上がり1833銘柄に対し、値下がりが77銘柄、変わらずが25銘柄だった。 日経平均.N225 終値 17715.63 +496.67 寄り付き 17449.12 安値/高値 17414.55─17717.75 TOPIX.TOPX 終値 1442.09 +40.14 寄り付き 1422.17 安値/高値 1420.21─1443.01 東証出来高(万株) 213909 東証売買代金(億円) 24961.38 (長田善行) http://jp.reuters.com/article/tokyo-stock-idJPKCN0UR0LT20160113?sp=true 債券先物が最高値更新、米債高や好需給で−長期金利は過去最低に接近 2016/01/13 15:48 JST (ブルームバーグ):債券相場は続伸。先物は連日で過去最高値を更新したほか、長期金利は過去最低水準に接近した。前日の米国債相場が原油先物相場の下落を受けて反発したことや、現物債需給の良好さを背景に買いが優勢となった。 13日の長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比2銭高の149円40銭で開始。午後に入ると水準を切り上げ、一時149円54銭と前日の夜間取引で付けたこれまでの最高値149円44銭を上回った。結局は12銭高の149円50銭で引けた。 現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)高い0.22%で始まった後、徐々に水準を切り下げ、一時は0.205%と、2015年1月20日に記録した過去最低水準の0.195%に1bpまで接近した。 新発5年物の126回債利回りは0.01%と、昨年1月26日以来の低水準を付けた。新発20年物の155回債利回りは0.5bp高い0.925%で始まった後、水準を切り下げ、0.91%と昨年1月22日以来の水準まで低下した。 マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長は、「中国発のリスクオフはいったん小康状態だが、米雇用統計発表以降の米金利低下や原油安が債券市場全体の追い風。日銀の買い入れ増を受けたフラットニング相場が続いている」と説明した。「10年債利回りは史上最低の0.195%が視野に入り、5年債利回りについても、2年金利のマイナス化が常態化する中で、投資家の買いなどが集まっている可能性もある。債券先物は材料というよりも高値追いが始まっており、過熱感を感じる」と語った。 12日の米国債相場は上昇。米10年債利回りは前日比7bp低下の2.10%で引けた。原油相場が2003年以来の安値を付けたほか、米3年債入札では最高落札利回りが10月以来の低水準となったことなどが買い手掛かりとなった。この日の東京株式相場は上昇。日経平均株価は前日比2.9%高の1万7715円63銭で引けた。 バークレイズ証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストは、「超長期国債の買いオペ増額は追加緩和でないため、インフレ期待や株高など伴わず需給要因だけが効く」と指摘し、「イールドカーブのブルフラット化は数カ月単位の比較的に長いテーマ」だと話した。 物価連動債入札 財務省がこの日午後に発表した表面利率0.1%の10年物価連動債(20回債)の入札結果によると、最低落札価格は104円40銭と予想の104円35銭を上回った。最高落札利回りはマイナス0.364%。応札倍率は2.47倍と昨年5月以来の高水準となった。 野村証券の中島武信クオンツ・アナリストは、物価連動債入札結果について、「市場の期待値が非常に低かったので予想を上回った。昨日と今日で1円近くも調整していたので、応札が集まった。名目値が低過ぎる面もあったと思う」と分析した。 ブルームバーグによると、10年物固定利付国債と物価連動債との利回り差で、市場の予想インフレ率を示すBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)は足元で0.6%を割り込み、財務省が物価連動債の発行を再開した13年10月以降で最低を記録している。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 池田祐美 yikeda4@bloomberg.net;東京 山中英典 h.y@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 山中英典 更新日時: 2016/01/13 15:48 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0TUHN6JIJUP01.html
FX Forum | 2016年 01月 13日 14:28 JST コラム:視界不良の米金融政策が招く波乱相場=鈴木敏之氏 三菱東京UFJ銀行 シニアマーケットエコノミスト [東京 13日] - 年初から市場が大きく荒れる中、8日に発表された12月米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比29.2万人という強烈な増加をみせた。米国の金融政策は「ビハインド・ザ・カーブ(手遅れ)」「オーバーキル(過剰引き締め)」という、文字通り相反するリスクをはらみ、展望が持てない不透明の極みに陥っている。 基軸通貨ドルの政策金利を決める際に重視すべきは世界全体の経済状態なのか、それとも米国の国内経済状態なのか。仮にそれが米国の物価安定と雇用の最大化を図ることだと割り切ったとしても、判断は難しいだろう。肝心の米経済指標の強弱が極端に二極分化してしまっているからである。 自動車は、昨年1年で1739万台も売れた。失業率は、過去の基準では完全雇用を達成したといえる5.0%にまで下がった。雇用者数は、この3カ月でみると月平均28.4万人も増加している。 失業率と賃金上昇率の関係はフィリップス曲線であって、フィリップス直線ではない。これは、労働需給のひっ迫が進むと、賃金上昇率が加速することを意味する。その変曲点を見過ごせば、金融政策は「ビハインド・ザ・カーブ」となり、債券相場が一気に崩れる。それは、株式市場も動揺させかねない。 世界の資金は高金利ドルに向かい、各国の市場でも値崩れが起きる。ただ、米国ではインフレが心配で、金融緩和策をとれないという悩ましい制約に直面することになる。 <ISM製造業景気指数50割れの重み> 一方で、米供給管理協会(ISM)が発表する製造業景気指数は、50割れ目前の低空飛行を続けた後、11月分、12月分と50を割ってしまった。昨今、購買担当者指数は多数あり、それぞれ安易に50を改善・悪化の分岐点というが、ISM製造業景気指数の50割れは重みが違う。 米国経済に占める製造業の比率は小さいとの指摘もあるが、その比率が小さくなった後もISM製造業景気指数50割れは過去、景気後退と重なり続けている。今回も同指標の低迷がこのまま続けば、景気後退入りということになりかねない。また、そもそも失業率が5%まで下がって、自動車が年間1739万台も売れて、なぜ50を割ってしまっているのかが悩ましい。 このように強弱の指標が共存する場合に判断の重要な指針となるのが、アトランタ連銀が公表する「GDPナウ」だ。この数字は、当該期の国内総生産(GDP)成長率の事前推定値を推計しているものだが、経済状態の今をとらえる指標として重宝されている。2015年第4四半期の推定値は8日付で0.8%まで低下している。 また、一部の指標には、景気拡大が成熟期に入った兆候がみられる。最近は景気先行指数の上昇も鈍い。ここで、利上げを進めれば、たとえ段階的で「緩やかな(Gradual)」ペースでも、オーバーキルになるかもしれない。 つまるところ、国際金融市場の動揺が起きている根源的かつ悩ましい理由は、原油価格の低下が止まらないなど世界経済の成長が不安定なのに、基軸通貨ドルの利上げが進められるということだ。 米国経済に強めの動きがあっても、世界の需給ギャップを埋められるような勢いではない。中国についても、成長の鈍化が見込まれており、投資機会が少なくなるので、貯蓄は国外に活路を求めようとする。世界で最も流動性のあるドルでまともな金利がつくようになれば、資金はそこに向かう。 連続利上げで、米国までも減速すれば、世界経済の停滞は一段と深まることになりかねない。それは、ドル高の波となって、米国経済の負担になり、継続利上げどころではなくなるかもしれない。 <市場の期待形成も困難に> インフレ率が現実に高まるまで待ってから動けば、強い利上げが必要になってしまうが、それは避けなければならないと、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は、記者会見で公言している。そのように考えるならば、不退転の覚悟で手を打つべきだろうが、これまでの政策の進め方はそうではなかった。 厳寒と西海岸ストという一時的要因による落ち込みと言いながら、昨年第1四半期の数字の悪化をみて、6月の利上げ開始を見送った。8月に市場の動揺が起こると、その終息が見えても9月の利上げ開始を見送った。 一方で、不透明感が強まることを防ぐべく、「テイラールール」のような金融政策ルールを尊重するという方策もあろう。実際、イエレン議長はかつて、ルールの効能をたたえていた。ところが昨今、その政策反応関数の根幹が揺らいでいる。実質均衡金利がゼロ近辺にまで低下していると試算されているが、この実質均衡金利が今後、回復するのかわからないとフィッシャーFRB副議長が講演で言っているのである。 その場合、ルールでは金融政策運営のしようがなくなる。どのように利上げを進めていくかの期待形成が重要だといくら言ったところで、市場も期待形成のしようがない。 つまり、FRBが米経済指標の強弱を評価しきれない中で、世界の金融経済情勢は不安定しており、米金融政策は過剰引き締めのリスクをはらんでいる。それは、基軸通貨ドルの相場を不安定化させるリスクにもつながる。一方で、インフレ率上昇への対応が遅れれば、対応コストが大きくなると言うが、FRBに不退転の覚悟で対応に臨む姿勢はこれまでのところみられなかった。金融政策ルールの根幹となる均衡利子率の算定も事実上放棄してしまっている。 これが今の米金融政策の姿であり、先が読めなくなっている。この不透明性に翻弄されて、今年の金融市場は動揺することになりかねない。 *鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-toshiyukisuzuki-idJPKCN0UR0ES20160113
中国と投機筋の闘い、元相場の救いにならず オフショア人民元のオンショア人民元に対するディスカウント率 ENLARGE オフショア人民元のオンショア人民元に対するディスカウント率 By AARON BACK 2016 年 1 月 13 日 13:10 JST 中国は人民元売りを仕掛ける海外投機筋に宣戦布告した。だが、人民元問題の根本的原因ではなく、一つの症状を攻撃しているにすぎない。 中国人民銀行(中央銀行)は11日と12日の2日間、香港市場を中心とするオフショア人民元市場へ積極的に介入した。国有銀行を通じて大量のオフショア人民元を買い入れ、本土市場のオンショア人民元相場との大きな差を縮めることに成功した。 オフショア人民元は先週、オンショア相場を2%余り下回る水準で取引されていた。人民銀行にとってこうした内外の価格差は当惑の種だった。両市場の乖離(かいり)ではっきりしたのは、人民元安が続く「根拠はない」という政府の確約を、不安におびえる海外市場は信じていないということだ。 中国政府はまさに市場を機能不全に陥らせた。香港のオフショア人民元の翌日物借入金利は12日、約70%に急騰し、元売りを続けられないほどの高水準となった。 中国は人民元売りを仕掛ける海外投機筋に宣戦布告した ENLARGE 中国は人民元売りを仕掛ける海外投機筋に宣戦布告した PHOTO: REUTERS 元買い介入の犠牲になったのが、活気あるオフショア人民元市場を育て、人民元を世界で広く利用される通貨に発展させるという長期的な政策目標だ。流動性を圧迫することで中国はオフショア市場に新たなリスクをもたらした。投資家に対する同市場の魅力は減退する恐れがある。いつものことながら、支配力を維持することが中国政府にとっての最優先事項で、他の目標は二の次にされている。 オフショア人民元市場に対する支配権を行使することは簡単だ。香港のオフショア人民元建て預金は2015年11月時点で8640億元(約15兆4800億円)だった。3兆3300億ドル(約59兆6700億円)に上る中国の外貨準備をもってすれば容易に押さえ込める。 むしろ大きな問題は中国本土からの資金流出だ。人民元相場の買い支えはコストを伴っており、中国の外貨準備は2015年中に5000億ドル減少した。ゴールドマン・サックスの推計によると、同年12月だけで中国政府は介入に1300億ドル費やした公算が大きい。介入には、国内のマネーサプライ(通貨供給量)が減少しデフレ圧力が増すという厄介な副作用がつきまとう。 オンショア人民元とオフショア人民元の価格差を縮める目的は、人民元安が続くという投資家の見方を払拭(ふっしょく)することにある。だが、元安を招く資金流出には根本的な背景要因がある。米国は利上げを継続するとみられているが、中国では経済成長が減速し、金利が低下しているため、投資利回りが押し下げられている。結果として、投資資金は必然的に中国を離れ、他にリターンを求めている。 中国が元の取引にいつでも介入できることを踏まえると、目先は元の売り持ちに危険が伴うかもしれない。だが、元相場の長期的な方向性は依然として下向きであるため、取引しやすいオーストラリアドルなど資源国通貨も押し下げられるだろう。 中国にとって小さなオフショア人民元市場を力で支配することは可能だが、国内からの資金引き揚げをやめるよう国民を説得しない限り、そうした支配はうわべだけのものになりそうだ。 関連記事 中国の不透明な為替政策、市場を翻弄 人民元安予想は「非常識かつ不可能」=政府高官 中国、元安誘導の危険な道 通貨政策の転換が裏目に http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AE760_YUANHE_16U_20160112042422.jpg 焦点:介入でオフショア人民元への不信増大、先安観変わらず [香港 13日 ロイター] - オフショア人民元市場は、5年前の創設時には中国の金融自由化の象徴ともてはやされたが、最近は通貨の統制回復に向けた戦場へと様変わりしている。投資家は振り回され、将来性に懐疑的な見方が広がっている。
一般に「CNH」として知られるオフショア人民元をめぐっては、昨年8月の突然の元切り下げを受けて投資家心理が悪化。さらに、中国人民銀行(中央銀行)がここ数週間に講じた相場押し上げ策によって信頼感が一段と揺らぎ、中国の為替政策への不透明感が高まることになった。 オンショアとオフショア相場は、先週には2%以上の開きがあったが、人民銀行の介入などの結果、スプレッドは12日にほぼ解消した。 香港にある欧州系多国籍企業の財務担当者は「通貨価値や調達コストがこれほど急激に変動すると、ヘッジはほぼ不可能だ。人民元にまとまったエクスポージャーを持つ企業には頭の痛い問題」と述べた。 2010年に誕生したオフショア人民元市場は香港からシンガポール、台湾、ロンドンへと広がった。人民元は、中国国内の市場では当局による厳しい管理下に置かれているため、オフショアで市場実勢に沿った相場で取引できることは投資家に大きな魅力となっている。 オフショア市場は人民元の国際化にとって不可欠だ。中国政府は、資本勘定の開放を進め、2020年までに上海を世界金融ハブにするという目標を掲げており、世界全体の人民元建て預金残高は、2015年のピーク時には2兆元(約3000億ドル)近くまで拡大した。 <介入で広がる不信感> ところが、中国人民銀行はここ数週間、投機の原因となっていたオフショアとオンショアの人民元相場の差を縮小するための措置を相次いで打ち出した。そのため、市場の信頼性をめぐる疑念が広がっている。 中国当局は、オフショアで営業している中国の銀行と外資系の銀行に対して、ドル購入の制限のほか、オフショア銀行に対するオンショア融資の停止を要請。さらに、国有銀行を通じた大規模な介入にも乗り出した。 介入で流動性が干上がり、翌日物の人民元調達コストが高騰。通常は10%を下回っているが、12日朝方には一時96%まで上昇した。 人民銀行は昨年9月、オフショア人民元市場に初めて介入した。しかし、今回の介入規模はそれをはるかに上回る。欧州系銀行のトレーダーの試算によると、人民銀行はこの1週間で100億─200億ドルのドル売り介入を実施したという。9月は10億─30億ドルだった。 東亜銀行(香港)のシニアマーケットアナリスト、ケニックス・ライ氏は「頻繁に介入すれば、人民銀行の人民元市場自由化への本気度やその政策の信頼性について、投資家の確信が揺らぐことになる。過度の介入は人民元の国際化にとってマイナス」との見方を示した。 大規模な介入にもかかわらず、人民元の先安観はなお強い。 1年物ノンデリバラブル・フォワード(NDF)が示唆する相場は1ドル=6.89元で、現在のスポットのオフショア相場から人民元が4.9%下落することになる。ゴールドマン・サックスは来年末時点の人民元の予想をこれまでの6.8元から7.3元へと大幅に修正した。 *見出しを修正しました。 (Saikat Chatterjee記者、Michelle Chen記者 翻訳:吉川彩 編集:橋本俊樹) http://jp.reuters.com/article/china-markets-offshore-yuan-idJPKCN0UR0RN20160113 2016年 01月 13日 15:45 JST デフレ終わったが経済バラ色でない=富士通総研・早川氏
[東京 13日 ロイター] - 元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは、13日の講演でアベノミクスについて論評し、「円安・株高をもたらし点ではマル、物価上昇では三角、経済成長率はバツ」と指摘。大胆な金融緩和を提唱するリフレ派は「デフレさえ脱却すれば経済バラ色と主張していたが、デフレが終わっても経済成長が高まった事実はない」と断じた。 http://jp.reuters.com/article/hayakawa-idJPKCN0UR0M920160113 2016年 01月 13日 14:00 JST コラム:中国発の市場混乱に不意を突かれた日本 Quentin Webb
[香港 12日 ロイターBREAKINGVIEWS] - 日本は中国の抱える問題に不意を突かれた格好だ。日本は自国より大きな隣国の経済状況に非常に敏感だが、中国経済の健全性には今、暗雲が立ち込めている。 市場の混乱は、投資家を円の買い戻しに走らせ、日本企業の利益や物価を脅かしている。また、すでにデフレ不況との闘いに苦しむ政策当局にとっては、今回の市場不安は最悪のタイミングで訪れた。 中国は日本にとって最大の輸出相手国の一つであり、輸出全体の18%を占める。オーストラリアのような資源大国よりは中国発の危機にさらされるリスクは低く見えるかもしれないが、米国やドイツなど西側の経済大国と比べるとはるかに高い。 それどころか、こうした輸出データは、アジア2大経済大国のつながりを控えめに表しているにすぎない。中国経済が減速すれば、日本製の炊飯器やエアコンの大きな買い手である他のアジア新興国経済も後に続くことになる。 海外需要が減少すれば、日本企業は投資を抑え、ひいては成長に歯止めがかかることになる。HSBCのエコノミスト、イズミ・デバリエ氏は、中国の成長率が0.5パーセントポイント低下すると、すでに低いレベルで推移している日本の成長率も0.4パーセントポイント落ち込むと試算している。 外国為替もまた別の問題を生み出している。円安は安倍晋三首相の経済回復計画にとって不可欠だ。日本銀行による大規模な国債買い入れに助けられ、ドル/円相場は約3年の間に1ドル80円を下回る水準から120円を超える水準にまで円安が進行。そのおかげで、日本経済は活性化され、輸出主導の企業セクターは記録的な業績を上げている。 だが、今年に入ってこのように市場の変動が激しい場合、円は避難通貨となる。これまでのところ、そうした動きは抑えられており、円はまだ1ドル117円を超える水準で推移している。しかしこれ以上、円高が進むなら、輸出収入は抑制され、輸入品の価格低下を招き、新たな物価下落圧力が生まれる可能性がある。 問題は、年間80兆円もの国債を買い入れている日銀が、すでに全力を出し切っている感があることだ。さらなる手を打つことには消極的なようにさえ見える。買い入れプログラムを拡充しても、買うための国債が不足する可能性もある。現金給付や株式の購入、マイナス金利といった代替策は賛否両論を呼び、必ずしも効果的とは言えないだろう。 重債務国である日本政府が、代わりに減税や支出を増やす考えがあるようにも思えない。中国で起きていることが、懐疑論者が主張するような悲惨な事態にならないことを日本は願うしかないだろう。 *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 http://jp.reuters.com/article/column-china-market-turmoil-japan-idJPKCN0UR0FQ20160113 ユーロ圏国債、ECBの防波堤が機能 ECBの政策は落としどころをうまく見つけつつあるようだ PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES By RICHARD BARLEY 2016 年 1 月 13 日 14:19 JST 映画「スター・ウォーズ」のセリフではないが、ユーロ圏の国債市場は「シールドを起動」したようだ。欧州では先週、中国市場の混乱が波及し域内の株式市場は猛烈な売りを浴びた(欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数は週間ベースで6.7%安)が、これまで同様の局面で乱高下してきた国債市場は平穏だった。 欧州中央銀行(ECB)の量的緩和は、その効果こそ強力だが、どんな問題でも解決するわけではない。 ユーロ圏では先週、ポルトガルとギリシャを除く全加盟国の10年債利回りが低下(価格は上昇)した。ポルトガル国債利回りの上昇幅は0.1%にとどまった。株式相場が急落したことを考えると、ほとんど注目に値しない動きだ。ギリシャ国債の場合は、ユーロ圏市場全体との連動性を失って久しい。しかも重要なことに、ECBの国債買い入れの対象にはまだ入っていない。 これまでの市場混乱期とは異なり、ユーロ圏諸国の国債が再び北と南で二分されるという状況にはない。市場で広がった不安は欧州の出来事とは関係がなかった、と言うことだろう。つまり、欧州中央銀行(ECB)の国債買い入れが域内市場への影響を防いだ、とも言えるだろう。 とはいえ、投資家は依然としてユーロ圏加盟国を選別している。ユーロ圏債務危機の際に見られたような極端なやり方ではないだけだ。市場がユーロ圏諸国の国債に関して織り込む相対的なリスクは変化し続けている。 10年物ドイツ国債との利回り差(青:13年末、赤:14年末、緑:15年末)【単位:パーセント】 これまで「勝ち組」と考えられていた国債の一部は「負け組」に転じている。例えば、フィンランド国債は債務危機を無傷で乗り切ったものの、同国の経済状況が低迷しているためトリプルAからの格下げ圧力にさらされている。フィンランド国債のスプレッド(ドイツ国債との利回り差)は徐々に拡大しており、フランス国債のスプレッドに迫りつつある。他方、景気低迷が続くフランスは現在、リスクの高さという点でベルギーをやや上回っている。そのベルギーも債務残高は国内総生産(GDP)比で109.7%に達している。 よく言われることだが、危機後に最も順調に回復している国として際立っているのがアイルランドだ。10年債でみると、足元のアイルランド国債の利回りはフランス国債よりも0.1%高いにすぎない。アイルランドが先週実施した新発10年債30億ユーロの入札には96億ユーロもの応札があった。 一方、投資家はユーロ圏特有のリスクになお反応している。今週はスペインの10年物国債利回りが急上昇している。カタルーニャ自治州の新首相に独立派のカルレス・プチデモン氏が選出されたことで、国政レベルの連立協議が難航する恐れが高まった。対照的に、イタリア国債は堅調に推移している。同国の成長見通しが改善しているためだ。 ECBの政策は落としどころをうまく見つけつつあるようだ。つまり、海外の混乱から加盟国政府を守りつつも、加盟国経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)に関するシグナルを消し去るようなことはしないようにしている。ユーロ圏市場の分断状態が続いていることを踏まえると、これをうまくやってのけるのは容易な技ではない。 関連記事 2016年金融政策:ECB、米利上げの影響見極めへ スペイン選挙、生かされなかった改革の機会
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