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ソフトバンクショップ
利用者メリットなしのソフトバンク新料金…今こそ「原価ガラス張り」方式を導入すべき
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13268.html
2016.01.13 文=町田徹/経済ジャーナリスト Business Journal
ソフトバンクが先週(7日)、大手携帯電話会社3社のトップを切ってスマートフォン(スマホ)の新料金プランを公表した。安倍首相の昨年9月の是正指示を受けた措置で、月額は4900円(通信と通話を合わせた総額、税別)。従来の最安プランに比べて1600円下がる。これをポジティブに評価するかどうかは、ユーザー次第だ。素直に値下げを喜べる人もいれば、依然として不満な人もいるだろう。
残念なのは、今回の是正論議が一度限りの試みに終わる気配が濃厚なことである。というのは、今回、政府には継続的な通信料金の是正指導を行うツール(規制権限)を獲得するチャンスがあったにもかかわらず、総務省の通信官僚たちがその千載一遇の好機をみすみす逃したからである。
規制権限の拡大は、予算や天下りポストの獲得と並んで、官僚が本能的に目指すもののはず。いったい、総務官僚は何を考えているのだろうか。
■「自主的に」政府の要求に応じる携帯各社
安倍首相の指示を受けて、高市早苗総務大臣は昨年12月半ば、携帯3社に対し「月額5000円以下」をめどに新プランを導入するよう要請した。ソフトバンクは、今回公表した新プランを4月から導入するとしており、自主的に政府の要求に応じたことになる。
新プランの内訳は、データ通信料金が月額2900円(上限1ギガバイト)と、従来(2ギガバイトまでで3500円が最安)より600円の値下げになった。あわせて、データ通信のヘビーユーザーにしか認めていなかった「通話し放題ライトプラン」(月額1700円で、5分までの通話がかけ放題)の組み合わせを認めた。従来、組み合わせができた「通話し放題プラン」の月額2700円(時間、回数の制限なし)。これと比べて、この部分でも1000円安くなる。
一方、従来と同じ300円のネット接続料(「S!ベーシックパック」)の支払いを義務付け、総額(月額)を4900円としたのである。
当初から予想されていたことだが、この新プランは一部のライトユーザーを想定したものだ。決して多くのユーザーのニーズを満たすものとはいえない。乗り換えられるユーザーは一部に限られる見通しだ。
というのは、データ通信量の上限が1ギガバイトでは、若い世代を中心に動画視聴やゲーム、テザリングなどでスマホのデータ通信を多用する人のニーズを満たせないからである。また、新プラン契約の前提になる期間2年の“縛り”が嫌だという人や、ほとんど通話はしないので月額1700円の定額ではなく使った分だけ精算する仕組み(従量制)にしてほしいという人もいるはずだ。
ソフトバンクに続いて、NTTドコモとKDDI(au)が近く、それぞれの新料金プランを公表する見通しだが、両社ともソフトバンクと似たり寄ったりの内容になる可能性が大きい。もうひとつの課題である、端末向けの過大な販売奨励金の是正も、隔靴掻痒の結果に終わる公算が高い。
■首相指示の真の狙い
ここで、一連の騒ぎの発端になった昨年9月の経済財政諮問会議における安倍首相の指示を振り返ってみよう。それは、「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題である。高市総務大臣には、その方策等についてしっかり検討を進めてもらいたい」というものだった。明らかに首相の趣旨は、一部の人しか恩恵をこうむらない割安料金プランの創出ではなくて、ユーザー全体の料金負担の軽減にあったはずである。
今回の新プランの発表で、首相の指示が充足されたと考えるのは早計だろう。国から無料で割り当てられる周波数という高い参入障壁に守られながら、携帯大手3社はそろって日本企業のトップテンに入る収益を稼ぎ出している。自由な競争にさらされる一般企業とは話が違う。認可業種がこれほどの業績を継続的に上げていれば、提供しているサービスの料金が高止まりしていると見なすのは当たり前のことである。他の産業の売り上げを損ねていると考える経営者も少なくないはずだ。
そのほかにも、携帯電話には多くの問題がある。端末購入代金の補助や料金プランへの加入に当たって消費者の選択の自由を制限する“2年縛り”が横行していることはもちろん、携帯電話会社の費用科目からでなく、利用者が支払う料金の科目から販売奨励金の原資がねん出されていることや、誤解を招きかねないセールストークを含めて、あの手この手で端末を乗り換えさせようとする携帯ショップの強引な営業姿勢など、手付かずの問題が山積みなのだ。こうした問題は、放置できない。
■「接続会計」制度を復活すべし
そこで今一度、料金高止まりが起きた原因と、今回の値下げ議論が中途半端に終わった原因を考えてみよう。
答えは明白だ。旧郵政省時代の1990年代半ば、関東地域で7社体制(PHSを含む)ができるなど競争が進んだことから、総務省が料金規制権限を放棄したことに遠因がある。その後、淘汰が進み大手3社体制に収れんしていく中、新規参入の促進に失敗したにもかかわらず、規制権限の復活を怠り、大手3社が寡占を強めるのを許したことが元凶なのである。今回は権限もノウハウも持ち合わせない政府が異例の介入をし、強制力のない要請をしたのだから、実効性が乏しいのは当たり前である。
総務官僚には、今回の論議を一過性のもので終わらせず、継続的に取り組む選択肢があった。時間をかけて携帯電話市場の正常化を狙うのならば、首相の指示を盾に規制を復活する好機だったのだ。だが、官僚たちはそうしなかった。
取材してみると、突然の首相指示に戸惑う声や、今さら携帯電話会社と事を構えて軋轢を起こしたくないという声などさまざま。価格競争を促せば、日本の携帯電話独自の工夫ができなくなり、グーグルやアップル、マイクロソフト、フェイスブックといった米国企業を利するだけと、競争政策に否定的な声も聞かれた。
しかし、料金の高止まりや販売奨励金への料金の転用、携帯ショップの乱暴な営業姿勢などは、競争政策というよりは消費者行政の問題である。そして、これらを是正するためにも規制権限は必要である。
そこで提案したいのが、かつて固定電話の規制体系の整備前に導入された「接続会計」制度を、携帯電話分野で試すことだ。
この制度は情報開示の一環で、通信網を新規参入事業者に開放(接続)する際の原価をガラス張りにする。今なお、NTTの東西社は開示を続けているが、携帯に導入すれば行政やライバル、ユーザーが携帯3社の懐事情を把握する手掛かりになる。育成が課題になっているMVNO(仮想移動体通信事業者)向けの接続ルールづくりにも役立つし、利用者が支払う通信料金の安易なセールスへの転用にも歯止めをかけやすくなる。目に余るようならば、本格的な規制権限の復活を、国民的な議論の俎上に上げればよいだろう。
今一度、安倍首相には、継続的に携帯問題の正常化を目指すよう指示してもらう手があるのではないだろうか。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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