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武田薬品工業本社(「Wikipedia」より/Lombroso)
武田薬品、最大の危機…業界帝王がトップ陥落か 容赦なき事業切り離しで解体的改革
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13200.html
2016.01.08 文=編集部 Business Journal
2015年、武田薬品工業ではクリストフ・ウェバー氏が同社としては初の外国人CEO(最高経営責任者)に就任し、注目を集めた。
その武田は同年11月30日、特許が切れた薬の販売事業を本体から切り離すと発表した。後発薬(ジェネリック医薬品)世界最大手のテバ・ファーマスーティカル・インダストリーズ(イスラエル)と16年4月以降、国内に合弁会社を設立して、特許の有効期限が切れた薬(特許切れ薬)の販売を任せる。武田は新薬の研究開発と販売に集中して収益力を高めるのが狙いだ。
合弁会社の出資比率はテバが51%、武田が49%。5人の役員のうち、3人をテバで出す。武田は「長期収載品」と呼ばれる特許切れ薬の販売や医師への情報提供などに携わる社員60人を合弁会社に移す。テバは日本法人のテバ製薬(名古屋市)が新会社に参加し、後発薬の拡販を進める。テバ製薬は16年10月以降、社名を武田テバファーマに変更する。
武田は高血圧症治療薬ブロプレスや消化性潰瘍薬タケプロンなど30品目の販売を合弁会社に移管する。ブロプレスは15年3月期に国内で946億円を販売し、武田にとって国内最大の商品である。それでも、特許切れにより販売は急減しており、15年4〜9月期の販売額は313億円と前年同期比で4割強の減収となった。
■武田の決断の背景
日本の製薬会社が長期収載品を本体から切り離すのは異例だ。高齢化で膨らむ医療費に歯止めをかけるために後発薬の普及率を高めたい国の方針が、武田の決断の背景にある。後発薬は特許の切れた成分を使った薬で、新薬より3〜5割程度安い。政府は15年5月、後発薬の普及率(数量ベース)を13年度の5割弱から20年度までに8割に引き上げる目標を掲げた。
新薬のうち特許が切れて5年以上たっても売れ続けているブランド薬(長期収載品)の価格は下がらざるを得なくなる。対象品目に対する後発薬の普及率が7割の水準に達するまで、通常のペース以上に価格は下がり続ける。
特許が切れた途端に後発薬にシェアを奪われることは米国で顕著だったが、日本市場もこの傾向が強まってきた。武田はブランド薬頼みでは収益を確保できないと判断。本体から切り離すことを決断した。
テバとの合弁会社は武田の連結対象から外れ、持ち分法適用会社になる。武田は新会社に移管するブランド薬の詳細を詰めているが、ブロプレス分だけでも大幅に売上高が減る。利幅は薄いが、大きな売り上げのある特許切れ薬があったからこそ、武田は国内最大手の座を維持してこられた。
武田の医療用医薬品の国内売上高に占める特許切れの薬の比率は45%。その大半を切り離すとなると、大幅な減収は避けられなくなる。14年度に576億円を販売した前立腺がんの薬リュープリンや糖尿病薬アクトスなどは新会社に販売を移管しない方向だ。減収の幅をどこで食い止めるかが、今後の経営上の焦点となる。
この点に関して武田は15年12月28日、「減収の影響は17年3月期で500億円程度になる」と見通しを発表した。特許切れ薬の販売が急減していることや武田に入る販売手数料などを考慮すると、減収のダメージは軽減されるとしている。
■業界勢力図への影響
武田とテバの提携は日本の後発薬品メーカーの地図を塗り変えることになるだろう。製薬会社のグローバルランキング(14年)によるとテバは12位。武田は17位。テバは世界最大の後発薬企業なのだ。
テバは08年9月に興和と合弁会社、興和テバを設立し、日本の後発薬市場に参入した。11年5月、後発薬メーカー第3位の大洋薬品工業の発行済み株式の57%を370億円で取得。最終的に100%の株式を取得して完全子会社にした。総額で1000億円を超える大型のM&Aとなった。
同年9月に興和との合弁事業を解消し、興和テバを完全子会社にした。12年4月に大洋薬品と興和テバが統合し、テバ製薬が発足した。テバ製薬の売上高は700億円規模。
国内の上場している後発医薬品メーカーは日医工(15年3月期売上高:1270億円)、沢井製薬(同1054億円)、東和薬品(同714億円)が上位3社。テバ製薬の売上高は非公開だが、武田とテバの合弁新会社に参加することで大幅にアップすることになる。一気に、国内に売上高1000億円を目指すと宣言していた。社名は武田テバファーマに変わることをテコに、さらに売り上げを伸ばす。
後発薬メーカーのトップに浮上するものと見られている。武田は名を捨てて実を取る。特許切れ薬事業を分離することの衝撃は、予想以上に大きいのだ。
ウェバー改革の第2弾は、非重点分野の呼吸器薬事業の切り離しだ。武田は15年12月16日、海外展開している呼吸器事業を英製薬大手、アストラゼネカに売却すると発表した。売却額は5億7500万ドル(約700億円)。16年3月末までに売却を完了する。
売却の対象はぜんそく薬ダクサスとアルベスコ、アレルギー用点鼻薬オムナリスの治療薬3品。臨床試験にまで至っていない初期段階の新薬候補7品も譲る。治療薬3品と新薬候補のほとんどは、11年に買収したスイスの製薬大手、ナイコメッドが手がけていたものだ。3品の売上高は15年3月期の実績でおよそ240億円である。武田は、がんや消化器領域を重点分野に定め、経営資源を集中する方針だ。もともと呼吸器薬に力を入れていなかったこともあり手放すことにした。
世界8位のアストラゼネカは、欧米のビッグ・ファーマ(大手製薬会社)のM&A合戦の渦中にある。14年春、世界首位の米ファイザーがアストラに買収を提案した。その時の金額はなんと10.2兆円。買収提案を拒否し、独自路線を貫いている。さらに、M&Aの標的にならないためにアストラはM&A攻勢に打って出た。15年11月、高カリウム血症の治療薬を開発中の米ZSファーマを3300億円で買収。12月にはオランダと米国に拠点を置く抗がん剤を開発中のベンチャー企業、アセルタ・ファーマを4900億円で手に入れると発表した。
アストラは主力の高コレステロール血症治療薬クレストールが米国で特許切れになったのを受けて、買収で活路を開こうとしている。武田から呼吸器薬事業を買収するのは、その一環だ。
■国内製薬トップの座が危機に
武田の15年3月期連結決算の最終損益は1457億円の赤字となった。1949年の上場以来初めての赤字転落だ。99年に発売したかつての主力薬アクトスに対して、米食品医薬品局が長期服用することで膀胱がんの危険が高まると指摘。集団訴訟の対象になり、和解金や訴訟関連費用など3200億円を引当金として計上して赤字に陥った。
16年3月期の最終損益は680億円の黒字になる見込みだ。しかし、国内2位のアステラス製薬の1750億円に大差をつけられ、3位の第一三共の750億円にも及ばない。
武田は収益力を回復させるために後発薬を切り離し、呼吸器薬事業を売却。経営資源を新薬開発に集中する。武田は08年にバイオベンチャーの米ミレニアムを9000億円かけて買収。手に入れたがんや消化器領域の新薬候補が、ようやく発売時期を迎えつつある。
武田は特許切れ薬の切り離しで、大幅な減収になることは避けられないだろう。500億円程度の減収にとどまるかどうかは予断を許さない。大型の新薬が育つのは先のことになる。
『会社四季報 2016年新春号』(東洋経済新報社)によると、武田の17年3月期の売り上げ予想は1兆9000億円(16年同期を1兆8500億円としている)。500億円のマイナスにとどまれば、16年3月期並みの売り上げになる。一方、『四季報』のアステラス製薬の17年3月期の売り上げ予想は1兆5100億円。アステラスが大きく業績を伸ばしても、首位は死守できるかもしれない。
だが、製薬業界の帝王に永らく君臨してきた武田は、国内トップの座から滑り落ちるという、会社設立以来最大の危機を目前にしていることは間違いない。
(文=編集部)
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