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日本の農林水産物は、中国産よりも危険だって!? 食の安全基準で、この国は大きく後れを取っていた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47194
2015年12月30日(水) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
■安全基準が世界と大きくかけ離れている
安倍政権は日本の農林水産物・食品の輸出拡大を目論んでいる。今年10月1日付で農林水産省に輸出促進課を新設。水産物、加工食品、コメ・コメ加工食品、青果物、牛肉、茶などを「戦略8品目」と位置づけ、12年に農林水産物の輸出額が約4500億円だったのを20年までに1兆円に拡大する方針だ。
TPPの大筋合意を受けて、海外の農産物が日本に輸入され、日本の農家の経営が圧迫されることがよく報じられるが、逆にこのTPPを活用して輸出強化を図れば、日本の農家にも活路が見いだせることをアピールする狙いもある。
しかし、「大きな障壁」も複数残されており、現状のままでは輸出拡大策は「画餅」に終わってしまう可能性も高い。
「戦略8品目」の輸出拡大計画を見ると、水産物(1700億円→3500億円)、加工食品(1300億円→5000億円)、コメ・コメ加工食品(130億円→600億円)、林産物(120億円→250億円)、花き(80億円→150億円)、青果物(80億円→250億円)、牛肉(50億円→250億円)、茶(50億円→150億円)といった具合だ。
輸出拡大で最も大きな「障壁」となるのは、日本の農産品や加工食品は、世界の安全管理基準と大きくかけ離れている点だ。世界市場で通用する国際的な認証規格を日本の農家ら多くの生産者が取得していないのだ。
国際的に認知されている認証規格の一つが、「グローバルGAP(適正農業規範)」だ。栽培履歴が管理できやすいように作業内容の記録を小まめに残していくなどの国際的な認証規格で、有害物質や異物混入など安全面で危害が発生するリスクを最小に抑えるための管理手法でもある。厳格な要求事項と運用規則で構成されている。
たとえば、農薬散布の工程で誰がいつどの種類の農薬を散布したのかを記録するほか、従業員以外が作業場に入る場合は、入退室の記録を細かく残さなければならない。危害が発生すれば、誰がいつどのような作業をしたかを把握できるようにするためだ。
また、作業場には救急箱の設置も義務付けられ、常備薬の中身まで問われる。労働環境に対するチェックだ。2011年からは選果・出荷段階まで管理範囲が拡大、出荷場の蛍光灯などの照明器具はフィルムでカバーしなければならない。万一、破損した場合の異物混入を避けるためである。
グローバルGAPを取得していれば万全というわけではないが、生産者の経営に対する姿勢を問う指標の一つであり、何よりも事故の発生比率を抑え、万が一事故が起こった際には原因を特定しやすくする仕組みでもある。
■日本で取得している農家はわずか200戸!
消費財流通で世界最大の業界団体「TCGF(ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム)」の食品安全部会「GFSI(グローバル・フード・セイフティ・イニシアティブ)」は、要求水準を満たす安全規格だけを認定しており、その一つがグローバルGAPだ。特に青果物や野菜は、グローバルGAPがなければ、欧米市場では大手流通が購入しない傾向が強まっている。
日本でもイオングループの動きが先行しており、16年度から委託農家に対してグローバルGAPの取得を取引条件の一つにする計画だ。
しかし、日本ではグローバルGAPを取得している農家は現状では200戸程度しかない。日本の農家でこうした規格取得が進まないのには大きく3つの理由がある。
まずは精神論的な問題だ。よく日本の農産物は、「日本人が作ったので安心安全」「日本のきれいな水と土地で作ったのでおいしい」とアピールされるが、これは所詮イメージに過ぎない。
日本人は真面目だからということも一般論に過ぎない。さらに、味の良さと品質管理は別の次元の話であることが日本のほとんどの農家は理解できていない。
ここで言う品質管理とは、生物的危害(食中毒など)、化学的危害(残留農薬など)といったリスクを低減することである。世界市場で勝負するには、精神論やイメージではなく安心安全を科学的に証明しなければならないのである。誤解のないように断っておくが、味にもこだわり、安全管理も世界水準に合わせることが理想であり、ビジネスを拡大していくには両方不可欠だろう。
■日本は農業も「ガラパゴス」
二つ目の理由として、こうした規格を取得し、毎年監査を受けて更新していくには維持・管理コストがかかるため、経営規模の小さな農家には負担が大きい点がある。グローバルGAPの場合、取得の初期コストで約100万円、維持管理費で年間数十万円必要となる。小規模農家にとっては馬鹿にならない負担額と言えるだろう。
三つめ目の理由は、日本版の「JGAP」は存在するものの、審査などの運用が甘いため、GFSIが認定していない点がある。JGAP以外にも各自治体や農協単位の「GAP」は乱立しており、いずれも第三者による審査を受けていなかったり、運用規則がなかったりして、到底世界に通じる水準にない。
たとえるならば、刑法は存在しても、それを運用する刑事訴訟法がないようなものである。日本版GAPは、要は「ガラパゴス化」しているのだが、日本の大部分の農家がそれにまだ気づいていない。
この課題について政府はすでに気づいており、今回の輸出増大策の中で国際的に通用する新たな安全規格の策定に取り組む。農水省は補助金を出して、2015年度中に新たな輸出用GAPを作って、GFSIに認定されるように働きかける計画だ。
しかし、泥縄の感は否めず、新たな規格を作っても、その信用性を担保する審査の中立性や能力がすぐに向上するのかといった疑問も残る。
国際標準への対応力の低さは、グローバルGAPだけではない。たとえば、欧米では食品や食肉の業者には「HACCP」と呼ばれる衛生管理の認証規格の取得が義務付けられている。GFSIも認定する規格だ。これは、米航空宇宙局(NASA)生まれの管理手法で、原料の入荷から製造出荷までの工程で想定される危害を予測し、それらを予防する工程管理システムのことだ。
牛肉を輸出するためにも、食肉加工業者はこのHACCPの取得は不可欠だが、まだ日本では完璧ではない。農水省によると、国内では大企業のHACCP取得率は7〜8割程度、中小企業にいたっては3割弱しかないそうだ。
■ミラノ万博で起きたトラブル
日本の食材が国際標準の壁にぶちあったケースは、今年イタリア・ミラノで開催された万博でも見られた。ミラノ万博のテーマは「食と農業」。日本館は食材の輸出増加を狙って日本食を食べられる施設を設置した。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあって人気を博した。
しかし、その前にイタリア政府と日本政府でちょっとしたトラブル対応への協議があった。和食の出汁を取る鰹節は精製工程で発がん物質が付着しているとしてEUが輸入を認めなかったのだ。万博開催中だけ特例でどうにか輸入を認めてもらったが、認められなかった大きな理由は、日本の鰹節工場がHACCPを取得していなかったからだ。
「一般的には中国の食品管理は杜撰なイメージがあるが、中国は国際標準の重要性を理解しており、HACCPを取得した中国の鰹節工場で生産されたものが海外で流通するようになっている」(食品関連コンサルタント)そうだ。
結局、日本の生産者が国際標準に対応できていないため、海外の業者に市場を奪われていることになる。こうした現実を感情論ではなく、冷静に見つめる時期に来ているのではないか。
輸出増大に向けての「障壁」はまだある。それは政治的な課題でもある。コメ輸出では中国市場向けが最も有望視されている。インバウンドで日本に旅行に来た中国人が日本食の味を覚えて、口コミで中国でも日本食人気がさらに高まっている。
先述したように、輸出増大策の中でコメと加工品は130億円から4・6倍の600億円にまで引き上げる計画だ。コメの世界の消費量の約3分の1に当たる1億5000万トンが中国で消費されている。世界最大の消費国であり、日本の消費量(約800万トン)の20倍近い。コメの輸出拡大のためには中国市場を欠くことはできない。
しかし、国内から中国本土へのコメの輸出の拡大は実上不可能だ。その理由は、植物検疫条件によって、「全農パールライス神奈川精米工場」で精米したコメしか中国は輸入を認めないからだ。
農水省も、他の設備が整った工場で精米したものも輸出できるように、「中国に交渉を投げかけているが、なしのつぶての状態」だそうだ。背景には、冷え切った日中の政治問題もある。
さらに内外価格差の問題もある。中国での米価は日本の10分の1程度とされる。さらに減反政策の一環で、国内では飼料用のコメに多額の補助金が出ることから、農家はその生産に力を入れ、収益が高くない輸出用のコメ生産に協力する農家は少ない。
世界的に日本食人気は高まっており、日本食レストランは全世界で12年に5万5000店舗だったのが15年には8万9000店舗にまで増えた。日本の農産物や食品には輸出のチャンスはあることは事実だが、現状ではまだ課題も多い。
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