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「野村総合研究所 HP」より
税理士や公認会計士は消えてビル清掃員は残る!高報酬の知的職業ほど人工知能に奪われる
http://biz-journal.jp/2015/12/post_13053.html
2015.12.28 文=編集部 Business Journal
12月2日、野村総合研究所が「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」という研究結果を発表して話題を呼んだ。
同研究所では、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究により、国内601種類の職業について、人工知能(AI)やロボットで代替される確率を試算した。その結果、10〜20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業が、AIやロボットで代替される可能性があるという。
「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」には、「一般事務員」「受付係」「建設作業員」などが並び、逆に「代替可能性が低い100種の職業」には、「アートディレクター」「経営コンサルタント」「俳優」などが挙げられている。
12月25日付記事『AI=人工知能、甚大な社会的被害を生む危険…信じられない単純ミス連発も』では、当サイト連載「ビジネスのホント」および『ビジネスをつくる仕事』(講談社)著者の小林敬幸氏の解説により、AIの強みと弱みを考察したが、今回はAIによって「代替される仕事と、代替されない仕事」「我々の働き方はどう変わるか」について考えたい。
■本当にAIの進化で仕事がなくなるのか?
小林氏は、「技術的にはAIで代替可能でも、経済的に割に合わなければ、人間に取って代わることはない。つまり、AIがやるより人間がやったほうがコストパフォーマンスが良ければ、代替されることはないだろう」と語る。
「例えば、AIやロボットで代替される仕事として『ビル清掃員』や『保管・管理係員』が挙げられるが、これはAIやロボットにとっては難度が高く、膨大な開発費も必要だ。一方で、現行の人間に払っているコストがそう高くないのであれば、すぐに代替されることはないだろう。
また、金融相場や小売の商品売り上げ予測などは、何十年も多額の資金をかけて、コンピュータと人間の知恵を総動員してシステムを開発してきた。その分野において、AIがすぐに圧倒的なコストパフォーマンスを出せるかどうかは、まだわからない。
それらを鑑みると、真っ先に代替されそうなのは、『開発において多額の追加費用が必要でなく、現行の人間には高い報酬を払っている仕事』となる。一番危ないのは、現時点で高報酬を得ることができる『言語と論理力を使う知的職業』だろう。
つまり、公認会計士、税理士、判例チェックをする法律事務所員、フォーマットに基づいて戦略立案を行う一部の経営コンサルタントや企業内の戦略企画部の仕事などが当てはまる。
また、言語処理の進化を活用するのであれば、政府発表の経済データの報道やグルメ・旅行など専門的であるが定型的な文章を書く記者・ライターなども、代替される可能性があるだろう」(小林氏)
いわゆるホワイトカラーのビジネスパーソンも、油断はできない。小林氏は「知的で複雑な作業をしているようでいて、実はフォーマットと前例に基づいた仕事をしている人は、AIに代替される可能性が高い」と警鐘を鳴らす。しかし、続けて「一方、AIの弱点である『共感力』と『前例の少ないケース』に対応し、独自の創意工夫ができる人は、かえって価値が高まるだろう」と語っている。
「ある職種が丸ごとなくなるというケースはまれで、ひとつの職種の中にAIに代替可能で価値が下がる仕事と、AIが代替できないため価値が上がる仕事が出てくるだろう。
例えば、コールセンターの場合、通信販売の受注業務は大部分がAIで代替できるが、『共感力』が必要なクレーム対応や、商品を売り込むアウトバウンドコールなどは、人間のオペレーターが必要だ。そして、そのオペレーターの士気を高め、束ねることのできるスーパーバイザーは、ますます価値が高まる」(同)
■「仕事がなくなる」のではなく、「働き方が変わる」
AIに代替される仕事がある半面、かえって人間の価値が高まる仕事もはっきりしてくるようだ。AIには、前述したように「共感力がない」「前例の少ないケースに対応できない(ために単純なミスが生まれる)」という弱点がある。そのため、小林氏は「AIが完全に人間の仕事を代替することはないだろう」と語る。
「どんな仕事に対しても、人間が最終チェックをする必要があるからだ。そうしないと、大きな被害を生む事故が起きたり、企業価値を損なう事態になる可能性がある。
結局、人間はAIと共存し、協力し、利用しながら仕事をすることになるだろう。つまり、AIの進化によって、我々は『仕事がなくなる』というより、『働き方が変わっていく』ことになる。
そして、そこでは、AIが苦手なことに秀でた人間の価値が高まる。つまり、『人間に対する共感力』『多様な分野の現実を知っている』『独自の洞察と創意工夫ができる』という点だ。それらを生かした仕事をすれば、むしろAIを味方につけ、AIの仕事を補完しながら、生産性を上げることができる。
さらに言えば、AIによる代替以前に、今の仕事の社会的価値がなくならないように気をつけたほうがいい。例えば、監査法人が見抜けないような企業の不正会計事件が続けば、社会や株主たちは『監査に多額の費用をかける意味がない』と判断するかもしれない。
そうなると、AIの活用による安くて中立的な会計チェックで済むように制度が変わり、監査法人の仕事がなくなるかもしれない。これは、何も他人事ではない。今の仕事の社会的価値がなくなるというのは、ホワイトカラーをはじめ、それぞれの職場で実際に起こり得る出来事なのである」(同)
「近い将来、今の仕事の約半数がなくなるかもしれない」と聞くとゾッとするが、現実的には「近い将来、我々の働き方が大きく変わる可能性がある」ということだろう。
今の我々に求められているのは、「AIの急激な進化」という、まさに「前例の少ないケース」において、人間ならではの知恵を使い、付加価値の高い仕事をすることなのかもしれない。そうすれば、AIを逆に利用するようなかたちで共存することができ、かつてないほどの生産性を上げることができるだろう。
(文=編集部)
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