1. 2015年10月20日 19:53:30
: OO6Zlan35k
コラム:黒田日銀「ピーターパン効果」の正念場=植野大作氏 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト [東京 20日] - 今月30日に日銀の金融政策決定会合が開催される。午後早くに公表が見込まれる結果次第で日本株やドル円相場が大きく上下動する可能性があるため、当日はデスクランチを余儀なくされる市場関係者が激増しそうだ。かくいう筆者もその予定だが、30日会合では7対3ぐらいの確率で何らかの追加緩和策が講じられるとみている。理由として、以下の3点を挙げておきたい。 第1に、最近の国内経済指標が、かなり明確な「景気下振れ警報」を発している。9月30日に発表された8月の鉱工業生産・速報値は市場予想の前月比1.0%上昇を大きく下回り、0.5%低下と予想外のマイナスとなった。7月の0.8%低下に続き、2カ月連続の減産だ。10月15日に改定された確報値では前月比1.2%低下とマイナス幅がさらに下方修正されたことから、代表的な景気一致指標である鉱工業生産は4―6月期に続いて2四半期連続の減産となる可能性が濃厚だ。 今後発表される9月分のその他経済指標の内容次第では、7―9月期の実質経済成長率までもが「2四半期連続のマイナス」になり、市場が「テクニカル・リセッション」を意識する可能性もゼロとは言えなくなってきた。 中国発の景気下押し圧力への警戒感から、米国は9月の利上げ開始を見送った。ユーロ圏でも追加緩和期待が強まっている。地政学的に見て中国景気減速の影響を最も強く受けやすい日本の中央銀行だけが無手勝流の金融政策を決め込んだ場合、市場の対日景況感はさらに下振れのリスクにさらされそうだ。 <追加緩和見送りならピーターパン効果がしぼむ恐れも> 第2に、政府・日銀が掲げてきた「出来るだけ早期の物価目標2%の達成」にも黄信号がともり始めている。8月分の「コアインフレ率(生鮮食品を除く消費者物価上昇率)」は、前年比0.1%下落とデフレ克服にはほど遠い状態だ。 物価の基調を判断する上で、日銀が最近独自に作って強調し始めた「日銀版のコアコアインフレ率(生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価上昇率)」は、前年比1.1%上昇と目標2%の半分よりやや上の水準に位置しているが、山頂まで5.5合目の段階で、安倍首相が「デフレ克服までもう一息」と表現しているのは、やや気の早すぎる印象も否めない。 黒田日銀総裁は今月7日の会見で、デフレ克服について「道半ば」との判断を示していた。確かに今後、原油下落の前年比効果が剥落すればコアインフレ率はプラス圏に浮上してきそうだが、ドル円相場が現状の120円前後で推移した場合、円安の前年比効果も剥落してくるので日銀版コアコアインフレ率は逆に低下してくる可能性もある。 物価の基調を多面的な角度からみるために作った独自の指標が、かえって裏目に出るかもしれない。日本経済の足踏みがこの先も長引けば、長期的な物価安定の確保に不可欠な需給ギャップ縮小が見込めなくなるリスクは一段と高まる。 第3に、これほど明確な景気下振れリスクが明滅している局面で追加緩和が見送られた場合、日銀が物価の安定回復の経路として期待する「世の中の期待に働きかけてデフレマインドを融解させる」という「ピーターパン効果」が急速に萎(な)えてしまいかねない。 周知の通り、ピーターパン効果とは、黒田総裁が国際会議でピーターパンの物語にある「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」との言葉を引き合いに出し、中央銀行の政策運営に際して「大切なことは前向きな姿勢と確信」と述べたことから、名づけられたものだ。 各社の先行報道によれば、30日会合で見直される日銀の展望リポートでは、これまで「2016年度前半頃」としていた物価目標2%の達成時期が再び先送りされるそうだが、物価予測の下方修正だけ行って金融政策は据え置きとの決定を下した場合、「日銀の金融緩和はすでに技術的な限界、あるいは道義的な臨界点に達しているので、追加策を打ち出す余地が無くなっている」との議論が再燃する可能性がある。 その後、日銀の想定通りに物価が上がり始めればよいが、そうならなかった場合、「日銀による楽観的な物価予想は万策尽きて追加緩和の意志と能力を喪失してしまったことを覆い隠すための方便ではないか」との見方が強まり、「孤高の物価見通し」を示して「動かぬ日銀」が市場のデフレ心理克服の障害になる、という状態に逆戻りしかねない。 今回の展望リポートで提示される物価目標2%の新たな達成時期は「2016年度頃」などに変更されるようだが、もしも当該年度中にデフレ克服が宣言できなかった場合、17年4月には消費増税が始まるため、18年4月に任期が切れる黒田総裁の在任中に現行の異次元緩和の出口戦略を語ることが極めて難しくなる可能性もある。 その際、「物価目標2%の安定確保」という目標自体が無理筋だったことを素直に認めて出口戦略に着手する、という選択肢もないわけではない。だが、それでは、「大胆な金融緩和によるデフレ克服」を看板政策に掲げてアベノミクスを始めた政府と日銀がまるで敗戦処理に乗り出したかのような印象を与える。異次元緩和からの撤退計画が唐突に語られ始めた場合、国内外の金融・為替市場に想定外の混乱を引き起こす可能性がある。 現在の日銀執行部が現行政策の枠組みを変更するつもりがないのなら、なるべく早く目標を達成するために必要な追加策を提示して市場の期待をつなぎとめた方が、結果的には異例の金融緩和からの卒業時期を早める確率が高くなるのではなかろうか。 <市場と日銀の景気・物価認識「温度差」が招く株安・円高リスク> もちろん、実際に追加緩和の要否に関する最終判断を下すのは日銀だ。中国発の景気下押し圧力が物価目標達成の障害になるリスクについて、黒田総裁は今のところ非常に楽観的な見解を示している。このため、30日の会合では3割程度の確率で追加緩和が見送られる可能性もあるだろう。 ただ、このところの経済指標が喚起している国内景気・物価下振れ注意報に対して市場が抱きつつある警戒感と日銀が示している楽観的な認識の間には、かなりの温度差がある。 仮に30日会合で追加緩和が見送られた場合、市場が失望して株安・円高の反応が強まる可能性もあるだろう。その際、日銀短観9月調査で示された大企業・製造業の今年度の事業計画前提レート(1ドル=117.39円)を大幅に下回る円高水準が定着してしまったら、日本の企業業績にも下振れ懸念が伝染して株安と円高の共鳴現象が加速しよう。「物を言う株主」が増えている現局面で、企業経営者が思い切った賃上げを是認するのは難しくなるリスクがある。 その場合、「過去最高の企業収益が起点になって賃上げの動きが広がり、消費と設備投資が両輪となって経済の好循環が本格稼働する」という政府・日銀のシナリオに強い疑義を唱える市場関係者が増えることになりそうだ。結果的に、日銀が今月末の追加緩和を見送っても、いずれ市場に催促されて何らかの施策を講じざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。 むろん、この先の米国経済が思いのほかしっかりとした回復軌道を歩んでいることが判明すれば、年内の利上げ期待が再燃、日銀が追加緩和を行わなくても自然体でのドル高・円安・株高局面が復活する可能性もあるが、もしも逆のシナリオが炸裂した場合に押し寄せてくる景気下押し圧力を平然と受け止められる基礎体力が、現在の日本経済に備わっているとは思い難い。 「金融政策が後手に回り始めた」との印象を与えることなく、日銀が次の一手を繰り出すのに残された考慮の時間はそれほど長くない可能性がある。30日に提示される「当面の結論」に注目したい。 *植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。 http://jp.reuters.com/article/2015/10/20/column-daisakuueno-idJPKCN0SE06020151020 金融危機後、個人資産が欧州で最も減ったのはアイルランド=ECB [フランクフルト 20日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)の統計によると、金融危機後に個人資産が最も減少したのはアイルランドで、逆に最も増えたのはドイツとオランダだったことが分かった。 2009―13年を対象に調査したところ、アイルランドでは1人当たり1万8000ユーロ(2万0500ドル)以上、スペインでは約1万3000ユーロを失った。資産価値の急落が原因。 ギリシャでは、同様の理由で名目資産が約1万7000ユーロ減少した。 半面、オランダとドイツでは1人当たりの資産がそれぞれ3万3000ユーロ、1万9000ユーロ程度増えた。金融投資への支援が一因となった。 http://jp.reuters.com/article/2015/10/20/ecb-policy-eurozone-idJPKCN0SE0FI20151020 カナダ自由党の政権獲得、当面は加ドルとエネルギー株の重しに [オタワ 20日 ロイター] - 19日に投開票されたカナダの総選挙で、野党第2党の自由党が過半数議席を獲得したことで、翌20日の金融市場では、カナダドルとエネルギー銘柄に売り圧力がかかりそうだ。 投資家はとりあえず、自由党政権と「ジャスティン・トルドー首相」の実力を慎重に見極めたい構えだ。 過半数議席を獲得したことで、不安定な少数政権が誕生する事態は回避されたが、市場が新政権に慣れるには時間がかかるとみられる。 ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのシニアマーケットアナリスト、スコット・スミス氏は「保守党政権はこれまで9年間続いた。カナダ国内外の投資コミュニティーは、政策を予想できた」としている。 自由党は、景気押し上げに向けてインフラ支出を拡大し、100億カナダドルの財政赤字を3年続けるという計画を示している。スミス氏は「トルドー氏が財政赤字の期間中に経済を効率的に運営し、4年目に均衡財政に戻すことができるのか、疑問が残る」との見方を示した。 エネルギー株は、トルドー氏のエネルギー政策が不透明なことが、重しとなりそうだ。トルドー氏は太平洋岸につながる石油パイプライン「ノーザンゲートウェイ」計画には反対の姿勢を表明する一方、石油を米国に送る「キーストーンXL」計画については支持するとしている。 *写真を追加しました。 カナダ総選挙、トルドー氏率いる自由党が勝利見通し 25 of 25 http://jp.reuters.com/article/2015/10/20/canada-election-markets-idJPKCN0SE0O820151020 |