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デマ記事の可能性??Re: ニューヨーク市のヘルプデスク職員、自作のAIプログラムに仕事をさせて停職処分
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/252.html
投稿者 よしゆき 日時 2015 年 10 月 03 日 23:56:21: .fHdROTysEMxI
 

(回答先: ニューヨーク市のヘルプデスク職員、自作のAIプログラムに仕事をさせて停職処分・・・そろそろ笑い話では済ませられない? 投稿者 よしゆき 日時 2015 年 10 月 03 日 23:41:42)

先ほどの記事、興味深く思わず投稿してしまったのですがデマかもしれないという記事も多く併せて投稿いたします。
不注意な投稿、失礼いたします。


自作のサポセン応答AIを作ったとされるニューヨーク市の職員は単にロボット声で応答していただけだった
http://cpplover.blogspot.jp/2015/10/ai.html?m=1

以下のような報道記事が上がっている。

ニューヨーク市のヘルプデスク職員、自作のAIプログラムに仕事をさせて停職処分 - BusinessNewsline

日付は執筆時点で"Posted Yesterday, by Anthony Holt"と書かれている。つい昨日、2015年10月2日の最新のニュースだ。ガイジン風の名前も信憑性が高い。おそらくは翻訳記事に違いない。重要な内容は以下の通りである。

ニューヨーク市がヘルプデスクの電話対応の作業を自作のAIプログラムに代行させていたとして、このヘルプデスクの職員に対して停職20日間の処分を下していたことが判った。

この職員は、Ronald Dillonという人物で、彼は自分の声とそっくりの自動音声応答システムを自作してヘルプデスクにかかってくる様々な質問をそのAIシステムを使って答えさせていた。

しかし、対応に疑問を感じた人が通報を行うことで、AIプログラムを使って電話対応を行わせていたことが発覚し、今回の処分に至った。

彼が自作したプログラムは、電話を通じて完璧にヘルプデスクの対応を行うことができるというもので、普通に電話対応を聞いた範囲では、対応を行っているのが人間ではなくロボットプログラムであるということを認識することはできない程の高度なものとなる。

このことは既に、多くのマスコミで報じられる状況ともなっており、ニューヨーク市が仕事をさぼった職員を停職処分にしたという以前の問題として、彼の作ったAIプログラムの出来があまりにも高度すぎることが大きな関心を集めている。

一部報道によるとこのRonald Dillonという人物は数学科を卒業してMBAを取得した秀才で、ニューヨーク市では元々はシステム開発のプロジェクトマネージャーをしていたが、その後、システム部が外部委託となったことを受けて、ヘルプデスクのサポート係に異動になったとしている。

なるほど、実際スゴイニュースだ。ヤバイ級ハッカーをサポセンのような分不相応にスゴイシツレイな職にあてがったために起こった痛快なニュースのように読める。このハッカーのウカツな上司にはケジメが必要だろう。

記事にはRonald Dillonなる人物の実際の応答音声らしきものがある。さて聞いてみると、呼吸や間投詞が多く、ものすごく高度に洗練された合成マイコ音声を使っていることがわかる。さすがネオニューヨークのハッカーは格が違う。

いやそんなバカな。そんな自動応答システムは、仮に作れたとしても、一人の天才の手によって作れるわけがない。「すでに、多くのマスコミで報じられる状況」で、ニューヨークの出来事であるので、さぞかし英語圏の報道も多いであろうと検索してみたところ、以下のような記事が引っかかった。

City Worker Gets 20-Day Suspension for Using Robot Voice to Answer Phone - Civic Center - DNAinfo.com New York

日付は2014年10月31日、去年のニュースである。これによると、

ニューヨーク市の保健局の職員は、カスタマーサービスの電話にロボット声で対応したことにより、20日間の停職処分を受けた。処分を受けた職員のRonald Dillonは同僚と一般市民に対するコンピューター関係の問題を解決する職についているが、上司の注意にもかかわらず、電話の応答に、意図的にロボット風の声を出して応答したという。

保健局によれば、2013年の2月から4月にかけて、少なくとも5回はロボット声(記事中では、Siri風、droid模倣という表現も使われている)で応答したという。

調査に使われた録音では、Dillonは電話口で、「ゆっくりとした、抑揚のない、過剰に明瞭な発音」で話したという。

Dillonによれば、ロボットを真似たのではなく、単に上司に渡されたマニュアルをゆっくりと読み上げただけだという。

Dillonは速いブルックリンなまりで話すので、うまく聞き取れないことがあるために単語ごとに読み上げたのだという。

Dillonはまた、彼はあまり人から好かれない性格であるため、上司が見せしめのために処罰を加えたのだと主徴している。

取材に答えたDillonは、上司から自分の声の抑揚について注意されたので、なるべく聞き取りやすい声を出すように努力しただけだと答えている。

裁判では、Dillonは上司に反抗するために意図的にロボット声を出したと判断された。

Dillonは1976年から保健局で働いていて、これまでにこのような処分を受けたことはない。

Dillonはかつて保健局のプロジェクトマネージャー(技術的なものであるとは書かれていない)であったが、3年前に本人の意思に反してサポセン業務に配置転換させられたという。サポセン業務はDillonには経験がなく、十分にこなす能力もない。「パワハラである」と主張している。

さて、もうひとつの記事がある。

NYC Health Department worker answers phone in robot voice - NY Daily News

日付は2015年9月29日。去年30日の停職処分を受けたRonald Dillonは、またもやロボット声を模倣したかどで、20日の停職処分にあったと報じているニュースだ。

保健局に寄せられる苦情のほとんどはDillonのロボット声に対するものである

上司によれば、Dillonは自分の技能と教育が現在のサポセン業務には分不相応であるが、配置転換が認められないため、仕事をサボタージュしているのであるという。

Dillonはこれを否定したが、裁判では認められなかった。

自動応答AIを開発したなどという話は英語圏のニュースには一切見当たらない。  

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コメント
 
1. 2015年10月20日 02:05:08 : jXbiWWJBCA

人工知能はビジネスをどう変えるか
「ヒト・モノ・カネ」から「ヒト・データ・キカイ」へ 
2015年10月20日
安宅 和人  ヤフー チーフストラテジーオフィサーバックナンバープロフィール
急速に実用化が進み出した人工知能。今後、人の仕事が機械に奪われるかのような議論も多いが、そもそも「知的作業」とは何か。そして人が得意な作業と機械が得意な作業を分類して考えないと、議論は錯綜したままである。一方で、ビッグデータの登場と情報処理技術の急速な発展により、人工知能が今後のビジネス環境に歴史的な変曲点をもたらすのは間違いない。人がやるべき仕事が決定的に変わる世界では、価値の概念も変わる。人工知能がもたらすビジネスへの影響を、脳科学とデータ分析に造詣が深い筆者が語る。『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』11月号より、抜粋してお届けする。

歴史的変曲点をもたらす3つの変化
 2015年5月28日、深層学習(ディープラーニング)を搭載した、世界で初めて大規模で展開するサービスGoogleフォトがリリースされた。このアプリは、スマートフォンなどに保存された写真データを、自動で分類し、合成写真まで作成する。これはユーザーのデバイス上の画像データをクラウドで管理する仕組みだが、世界の億単位の人が数千枚、数万枚の写真、つまり兆単位の写真を一気に上げ始めた。
 その写真の仕分け、連続写真の合成のスピードは驚くほど的確かつ速い。1000人で取りかかっても7、8年はかかると思われる処理を、このサービスは1日でやってのける。人間の200万倍以上のスピードだ(注1)。このサービスに使われている深層学習は、現在最も注目されているAI(人工知能)の要素技術の一つであり、その可能性はたしかに計り知れない。しかし、深層学習だけを取り出していま起きつつある変化の本質を理解することはできない。
 これから起きる変化の本質は、深層学習、分析手法など情報科学的な技法の革新だけでなく、学習データの質と量、これを実装するコンピュータの情報処理力の3つの変化がセットで起きることにある。
(1)情報科学
 これまでの人工知能研究の中心にあるのは、機械学習とデータマイニングだが、大半の産業分野での利用はこれからだ(注2)。これらが幅広く広まることに加え、深層学習の実用化が進むことが相乗的に質的な変化をもたらす。
 機械学習(マシンラーニング)とは、コンピュータが経験からルールや知識を学習し、賢くなる技術である。
 ここで「賢くなる」と言っているのは何らかのタスクのパフォーマンスが上がることだ。言わば、処理スピードやテストの点数が上がるなどだ。データマイニングとは、知られていなかった意味のある情報をデータから抽出する技術のことをいう。
 機械学習とデータマイニングは独立の概念ではあるが、相互に関係性が深く、ここから先、便宜的に機械学習と統一して表現する。
 これらを活かし、「数十億種類のキーワードに対する検索」「100万単位の商品アイテム(SKU)別の購買時のレコメンデーション」といった、つい20年前から見ればほぼ奇跡か魔法といえることがインターネット上で可能になっていることを見ても、そのインパクトの大きさがわかるだろう。
 なお「深層学習」は、情報抽出を多階層にわたって行うことで、高い抽象化(メタ化)を実現する機械学習の一つだ(注3)。深層学習によって、これまで人間の指示なしで扱えなかった抽象的な概念を教え込まなくともコンピュータがみずから把握できるようになることが増える。結果、抽象概念の学習、取り扱いが一気に容易になる。
 また、これまで人間が教え込む必要があった「分析の軸」(特徴量)も深層学習は自力で把握する。これまでの機械学習では、「特徴量」を設定するには、対象領域に対する知識や、人手による試行錯誤が要求されたが、深層学習はこれを不要にする。
 いま現在、深層学習が確実に機能することがわかっている応用範囲は、画像認識、音声認識、薬物活性予測、ゲームプレーなどに限られているが、その実用化は、多くの分析的な活動にかつてないタイプの変化をもたらす可能性がある。
(2)データ
 どれほど機械学習、深層学習などの技術が発達しても、それらを正しく機能するように機械が学習するには大量のデータが必要だ。これを実現するのが、従来型の多様性が低く、リアルタイム性が少なくサンプルの一部しかカバーしないデータだけではなく、多様性とリアルタイム性の高い全量データ、つまり「ビッグデータ」の出現だ。
 その背景には、従来のコンピュータ利用データだけでなく、ソーシャルメディアやセンサーから爆発的にデータが生まれ利用可能になっていることがある。
 たとえば、スマホからは、GPS、磁気、加速度など搭載された多様なセンサーから大量のデータが発生する。これらのデータがたとえば人の歩き方、活動量、活動場所などの情報となり、それをベースに人間の関係性、お店や街の混雑状況、健康状態などの学習が可能になる。
 ただし汚れたデータ、解析不可能なデータばかりではどうしようもない。どれほど大量のデータと優れた分析体制があったとしても、学習に使えるレベルのデータがなければAIは機能しない。十分に質の高いインプットがないとAIは機能しないのだ。
 ビッグデータと機械学習は相互に入れ子の構造である。ビッグデータの活用には多くの場合、機械学習が必要であり、機械学習を磨くためにはビッグデータが有効だ。
(3)情報処理力
 以上の機械学習、深層学習の利活用の前提になっているのは、膨大なデータからのリアルタイムに近い学習能力の実現、すなわち、高い情報処理力だ。特に深層学習は情報の特徴抽出を多階層にわたって行うため、強い計算能力を有することが不可欠だ。
 これまでバッチ処理でしか取り扱いが困難であった機械学習、深層学習をリアルタイムに近い形で処理していくことの効果は大きい。解析に一時間半かかっていたものが、1分(約100倍)、10秒(約500倍)で返ってくることで、データの持つ力を即座に利用できるようになるからだ。数時間前はこうでしたという話と、いまこれが起きています、という話の違いだ。
 この変化は、個々の半導体チップの性能向上だけでなく、画像処理に本来特化したチップであるGPUの計算能力までも活用するようなアーキテクチャーの発達、利用可能なCPU/GPUの数が爆発的に増えること、加えて、Hadoop、Sparkといった分散処理技術、オンライン処理技術が広まることによって実現する。
 以上に見てきた通り、ビッグデータが生まれ、情報処理力が爆増する一方で、情報の抽象化技術において深層学習という革新が起きている。
 AIは機械、ソフトウェアによる知覚と知性の実現だ。もっとも初歩的には、自力で判断するものはすべてAIといえなくはない。サーモスタットや部屋の温度に合わせて活動を変えるエアコンもこの意味ではAIだが、本稿では、この情報科学、データ、情報処理力の3つを掛け合わせたもの、すなわち機械学習、自然言語処理など必要な情報科学を実装したマシンに十分な学習を行ったものをAIとして議論したい(図表1「AIにまつわる誤解」を参照)。

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 冒頭に掲げたGoogleフォトはまさにこの典型的な例だ。深層学習のアルゴリズムを実装した大きな並列処理のシステムに、グーグルがこれまで集めてきた膨大な量の写真を使って教育した仕組み(AI)を使い、情報処理を進めているのだ。
 そもそも知性とは「さまざまな事柄を正しく理解し、経験から学び、分析的に考え、課題を解決する」力といえるが、「さまざまな事柄を正しく理解する」こと一つ取っても、抽象化して知覚する力が高くないと、たとえば腕時計とは何かさえ理解できない。
 これまではコンピュータが対象物や言葉の意味を把握することまで人間は期待してこなかったが、ついにAIがそのベースになる特徴を自力で把握する(=助力なしに区別する)ことが可能になってきた。機械が何らかの共通項をもとに概念をグルーピングし(=気づきを得)、さらにそのグループ同士の共通項を抽出する力が跳ね上がっている。
 しかも近い将来、この進化が止まる理由は計算力の限界以外にないように見える。人間にも見えていない特徴(共通項)を機械が発見し、それが活用される日はそれほど遠くないだろう。
 深層学習を含めたAIが広まることによって、人間の知覚能力、認知的な仕事が劇的に機械にサポートされるようになる。
 我々は歴史的な変曲点に立っている可能性が高い。
1)
サービス立ち上げ当初、仮に1人につき、1日1000枚、同時に1000万人しか利用者がなかったとしても、毎日100億枚、当初上がっていたことにな る。このランダムに上がる写真の仕分けや合成を人手でやれば、1人1日せいぜい5000枚程度ぐらいしかできないことを考えると、200万人日必要。すな わち1000人でやったとしても労働ベースで2000日かかるわけだが、これが毎日平然と処理される。
2)
AIの実現に必要な基礎技術には機械学習、データマイニングの他にも、人間が普通に使っている言葉をコンピュータに処理できるようにする「自然言語処理技 術」、画像をコンピュータに処理できるようにするための「コンピュータビジョン」、手や身体の機能の実現を図る「ロボティックス」などがある。
3)
学習によってつながりの強度が変わる神経系の接合部分(シナプス)を模したニューラルネットワークの一種。脳神経系のように多層の情報処理を行う。大量のデータとハードウェアの性能向上によって花開いた。

次のページ  AIが代替する業務とは
AIが代替する業務とは
 以上の3つの変化により、目的が明確な情報処理や分析的業務の多くが自動化する。
 いわゆる情報をさばく、処理する活動においては、一定数の事例を教えて後は機械学習に判断させれば、これまで膨大な時間がかかっていた情報処理が驚くほど短い時間で終わるようになる。
 さらに、この処理の最中も学習は進み、その精度はますます上がる(注4)。これは抽象的な推論や論理的な判断を含めた話だ。与えられたり、学習したりしたルールからの推論や過去の例からの推定は、劇的に自動化される。未知の関係性も大量に見つかるようになり活用が進むようになる。
 機械学習をベースにしたAIの利用には主に三つに分けられる。「識別」「予測」「実行」だ。それぞれに現時点で見えている応用を見てみると、以下のようなものがある(図表2「機械学習によるAIの利用用途の広がり」を参照)。

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(1)識別
●情報の判別・仕分け・検索(言語、画像ほか)
●音声、画像、動画の意味理解
●異常検知・予知
(2)予測
●数値予測
●ニーズ・意図予測
●マッチング
(3)実行
●表現生成
●デザイン
●行動の最適化
●作業の自動化
 2045年にシンギュラリティ(技術的な特異点)が来てコンピュータが人間を超えるという説があるが、以上の活動の多くで、すでに2015年夏の現段階でも、人間が太刀打ちできないものが多いことは認識しておく必要がある。
 AIに任せるとなると、作業の頼み方も変容する。
 これまで人間の世界では「軸はこう取って、こういう比較をして、データは○○を使ってチャート化してほしい」というような具体的な指示が多くあった。しかし、深層学習を実装したAIに対しては、むしろ「〇〇のメッセージが出るようにチャート化をしてほしい」(最終アウトプット)と指示を出し、その方法やプロセス(how)については機械に任せる世界になっていく。
 これらの変化は、最初はゆっくりと起きているように見えるかもしれないが、データやコンピューティングパワーの爆増に伴って、技術的にも適用範囲が幾何級数的に進んでいることが明らかになる。人間は、急速で幾何級数的な変化を理解することができないのが欠点だとよくいわれるが、それを乗り越えていま、我々は未来を見据える必要がある。
 従来型の業務の進め方が、このように機械学習を利活用したアプローチに変わることで、情報処理的な業務は、生産性、そこから先のスケール拡大のしやすさ(スケーラビリティ)とともに桁違いに向上する。また、AIが人間の既存の活動を代替するだけでなく、AIの活用が新たな付加価値を生み出すことも広がっていく。
 AIは分野を問わないインターネット同様の汎用技術だ。この影響をあまり控えめに考えていると、足をすくわれる可能性がある。AIとデータが産業革命(第一の機械化)の時のような不連続変化、情報産業革命(第二の機械化)を引き起こす可能性は高い。
4)
ただし機械学習には通常少なくとも数千レベルの学習データ、パラメーター数が万単位と多い深層学習の場合、さらに桁違いに多いデータが必要。手法、モデル、データ次第だが、日や週単位の教育が必要なケースは珍しくない。

次のページ  AIと人間の棲み分け
AIと人間の棲み分け
 ただ、いかにこれまでにない変化が起きているといっても、AIは知性のすべてをカバーするわけではない。AIの全体像を把握するには、AIができないことを認識することが欠かせない。
(1)AIには意思がない
 AIには個体としての意識がない。情報を処理する機械にすぎないため、どうありたいという願いや欲望も、判断のベースとなる価値観、性格もない。そのためどのような状態をどう目指すべきだという、いわゆる目標設定、ゴール設定、ビジョンを立てることができない(注5)。
 同じ状況にあってもどのような状況を目指すかというのが人それぞれであるように、経営者、責任者が変われば会社や事業の性格が変わる。ゴール設定は人間の意思が生み出す重要な機能として残る。
 識別と実行を組み合わせたAIベースのパーソナルアシスタント(注6)があたかも人格を持つように振る舞うため勘違いしがちだが、マシンに機械学習を搭載したからといって、自我や意思が自発的に生まれることは当面考えられない(注7)。
(2)AIは人間のように知覚できない
 肌触り、気持ちよさ、美しさなど人の価値観の多くは、ロジックというより感じ方や感情と連動している。「このペンを手に持っているとなんか気持ちがよい」とか「なんか書き心地がいい」といった感じ方ができるのは、人間が大きさと重さ、柔らかさのある手や指を持ち、そのうえ、さまざまな感覚器をこの密度で手のひらや体全体に持っているからだ。その感じ方を、AIが持つことはない。
 一般的なペンに対して、人間が共通して気持ちいいと感じる状態は認識できても、まったく新しい形の筆記具への評価はできない。人間の身体が生み出す生の知覚、モーリス・メルロ=ポンティの言うところの「〈肉的な〉経験(注8)」が欠落しているのだ。色、香り、肌触りなど物理量ではない質感の理解をAIに期待することはできない(注9)。
 また、感情は扁桃体などの我々の脳の構造から生まれるため、AIは感情を識別できたとしても感情(好き嫌いの判断)を持たない。したがって「この辺が気持ち悪いからスッキリさせよう」などという問題意識をAIが自発的に持つことはない。
(3)AIは事例が少ないと対応できない
 AIは前例、類似事例をもとにそこから状況を認識し、論理的に判断する。この強みが裏目に出る。
 人間は前例のない状況でも、普通には利かないアナロジーを利かせ、見立てていく。1回や2回の経験からも即座に気づき、学ぶ、これは生命にとってのある種のサバイバルスキルといえる。
 AIの情報をメタ化して把握する力がどこまで上がるか次第ではあるが、当面この問題は続くだろう。
(4)AIは問いを生み出せない
 AIは、問いを投げかける力を持たない。計算はできるが問題や式をつくれない電卓に似ている。生産的な批判もできない。
 人間の知性の源といえる「複数の視点から本質的なポイントを見つける」「コンテキストに合わせた現象の総合的な理解とその意味合い出し」というような広く深いパターン認識も期待するのは困難だ。「こういう事実がわかり、この間見たこういう報告、また異なる分野でのこういう変化を見ると、実はこういうことが起こっているんじゃないか」というような、知的生産の基本になるような投げ込みは期待できない。
 言い換えれば、AIは我々が日々普通に行っている問題提起、課題設定ができないのだ。問いの投げ込み、解くべき課題(イシュー)の明確化、その先の入り組んだイシューや事象の切り分け、構造化は人間の仕事として残る(図表3「課題解決プロセスにおけるAIのボトルネック」を参照)。

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(5)AIは枠組みのデザインができない
 オプション出し、課題に沿った判断の軸整理、総合的なデザインなど、生活や経営のさまざまな局面で求められる多面的な価値観を伴う判断は、問題のフレーミング(スコープ、枠組みの整理)からみずから行う必要がある。場合によっては新しいコンセプトを表す言葉を生み出す必要もあるが、こうした判断を下すことはAIには難しい。
 明確な目的を持たせてロゴやウェブサイトなどをデザインするのはAIでも可能となるが、「何をやらせるかをデザインする」こと、それを言語化、可視化することは人間の仕事として残る。全体として俯瞰し、機械で何をするかをデザインするのは人間の仕事だ。
(6)AIにはヒラメキがない
 セレンディピティ、out of box thinkingといわれている「普通には思いつかないアナロジー」「まったく新しい組み合わせ」などにハッと気づく力だ。
 たとえば2枚の布を貼り合わせれば袋をつくることができるが、1枚の紙でも丸めれば筒になる。このようなことをAIが自力で気づくことはない。
 AIは、人間がこれまで気づかなかった関係性を異質なデータを投げ込むことで見つける可能性は大いにあるが、その意味合いを自発的に見出すことは難しい。つまり、クリエイティブな思考にとても強いわけではない。
(7)AIは常識的判断ができない
 人としてのルールと常識的判断は、我々一人ひとりが社会での膨大な経験の中から学んできたものであり、AIにある程度は教え込むことができても、すべてについて我々が言語化し、教えることは困難だ。
 またこれは場面、社会、時代によっても異なり、我々自体が「郷に入れば郷に従え」とみずから言い聞かせている通り、常に人間自身が学習しつつ環境に適合している部分でもある。空気感的に状況変化していくようなものも含めて、教え込んでいくのは現実的ではない。
 たとえば、「人を傷つけてはいけない」などの普遍性が高く不可欠なルールは教え込むとしても、細かいところや場面による違いに至るまでAIに教え込むことは当面のところ相当難しい。幼稚園児など、小さな子どもを大人の会話の横に座らせておくと時たま、不適切な発言や行動をしてしまうことと似た問題だ。
(8)AIには人を動かす力、リーダーシップがない
 AIはどれだけ論理的で、洞察に富む、効果的な提言ができても、対人的な影響力を持つのは困難だ。デリケートかつ複雑なコミュニケーションも当面できそうにない。
 この世に絶対はなく、これら8つは今後もそうであり続けるとは言い切れないが、いずれも解決が困難であることは確かだ(これらAIにできないことから、人間の知覚および知的プロセス全体におけるAIの現状を比較すると、図表4「知覚と知的能力の広がりにおけるAIの現状」のようになる)。

写真を拡大

 以上の機能はいずれも大半の知的生産、労働において不可欠だ。したがって、知的生産全体においてAIは人間を代替するというより、人間を幅広くアシストする存在になる。その結果、特殊な知識と訓練を積んできた多くの知的専門職(会計士、法律家、医師、航空パイロット、建築家、石油地質学者など)の仕事の相当部分が自動化する。
 これらのプロの仕事は、こういうAIを使い倒しつつ価値を提供するように変わっていくだろう。
5)
単なるPDCAサイクルでのアルゴリズム的な定量目標ではなく、事業、チーム、自分としてどういう姿を目指したいのかという定性部分も含めた総合的な目標、アスピレーション設定。
6)
アップルのSiri、ウィンドウズフォンのCortana、マイクロソフトの展開するLINE上の女子高生AIアカウント「りんな」など。
7)
脳のように複数の積層したニューラルネットワークを相互に構造を持たせてつなぎ、十分な入力を与え、出力する仕組みをつなぐことができれば、何らかの意識が自発的に発生する可能性は否定できないが、いまのところ空想の域を出ない。
8)
モーリス・メルロ=ポンティ『メルロ=ポンティ・コレクション』ちくま学芸文庫、1999年、pp. 152−156。「〈肉〉の経験」とも(M.メルロ・ポンティ著『見えるものと見えないもの』みすず書房、1989年、pp. 207−210では「肉的経験」)。
9)
いずれも脳神経系の中で刺激の翻訳として生み出される。たとえば、色という物理量は存在せず、あるのは波長だけである。波長と色との関係は、網膜の視神経 に存在する光受容体の周波数特性によって生まれるが、波長の混合や明暗がどのような感覚を呼び起こすかは、脳神経系の中での信号の伝達、統合から生み出さ れるものであり、測定可能な対象ではない。

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AIが事業に与える5つの影響
 このようなAIの得意な領域と、AIと人間の棲み分けを踏まえると、ビジネス全体として少なくとも5つの影響が起きると考えられる。
(1)一定規模以上の組織はすべてAI×データ的な取り込みが不可避になる
 すべての事業は問題解決プロセスであり、事業がある程度以上の規模になれば、データドリブンになることは必然である。商品開発、製造、物流、販売、サービス、いずれの業務も同様だ。加えて、大半の業務には「識別」「予測」「実行」の視点で、自動化しうるものが多く存在している。
「自社が最初にやる必要はない」と思われるかもしれないが、ここから起きる変化が幾何級数的に起きるため、スタートの出遅れによるダメージは大きい。自分たちが始めなければ、必ず他の競合や新規参入者が先に始めることになる。
 AIがデータから学習するように、組織もみずからの経験から学ぶ。この双方の学びが効き、先に始めた企業には学習優位が強く働くことになる。先行企業がAIとデータを使いこなして事業や機能をうまく回す方法を見つけ出す頃には、追いつくことはかなり困難になる。業界や機能を問わずAIとデータの利活用が、生産性を上げる基本的なレバーの一つになっていく。
(2)意思決定の質とスピードが上がる
 これは戦術レベルでも戦略レベルでも起こる。戦術レベルでは、日常オペレーションの判断においてその多くを機械に任せることができるようになり、人はより難しい問題に集中できるようになる。
 戦略レベルでは、情報が生々しく可視化されてくるため、意思決定の質が上がる。基本となる経営分析や経営ダッシュボード的な機能の多くは自動化されていくため、人手を煩わせずに、リアルタイムに近い形で情報が可視化される。全量データを活用した判断が基本になり、これまで切り捨ててきたN数(サンプル数)が少ない部分(いわゆるテール)も含めた特徴や意味合いが見えるようになってくることから、より精度の高い意思決定につながる。
 また、これまで人手をかけなければ価値の抽出が困難だった構造化されていないデータ(ツイートやコールセンターへの声、営業と取引先の情報のやりとりなど)からも自動処理の活用により情報を得られるようになる。これにより不連続な変化や異常の検知も格段に早く正確になる。
(3)状況把握から打ち手までが一つのループになる
 AIを導入したプロセスはPDCAのサイクルが本質的に変化する。一度PDCAサイクルを回し始めたら、機械が自動的にかつ止まることなくこのサイクルを回すことになる。つまり自動化された「テスト&学習」がオペレーションに組み込まれていく。
 たとえばリアルタイムの顧客対応、不正検知・対応などが「識別」可能となり、対応結果からの学びも即座にフィードバックされていくようになる。「予測」の広がりで与信スコアリングや需要予測がなされれば、そのままレート算出や受発注につながっていき、その結果がまた次の予測に反映されていく。
 マーケティングも消費者の意図を予測し、顧客の意思決定の流れに沿ってインタラクションを提供するオンデマンド的なものになっていく。同時に、そこからのフィードバックを即座に反映するループが回るようになっていく。
(4)集合知的なAIをつくれるかどうかのゲームになる
 AIでは、病理診断であれ、音声認識であれ、機械が学習する元データが豊かになればなるほど正確さが増す。データを提供する人の数が増えれば増えるほど、機械は「賢く」なるのだ。逆に、一人のデータだけを使っても、AIはほとんど役に立たない。
 このように同じAIプラットフォームを使う人同士は、情報からの学習効果を相互に使えるようにすることが前提になる。集めれば集めるほど、AIの生む価値が高まるからだ。プライバシー問題への配慮は必要だが、AIの恩恵を受けることの価値を多くの人が理解し、受け入れてもらうようになっていく。つまり、自動化における集合知が一般化する。
 この延長で考えると、スケールのあるデータホルダー間や、データホルダーとAIプラットフォーム間のコラボレーションが価値を生むことは明らかだ。このような特質を持つためAIゲームにおいては、合従連衡、データ&AIという意味での利活用連合が大きく進む可能性が高い。
(5)ヒューマンタッチがより重要になる
 情報処理の仕事の多くが自動化すれば、当初はプラットフォームの良し悪しのゲームが相当あるが、いずれこなれてくれば機械にできない人間的な接点(ヒューマンタッチ)がこれまで以上にビジネスでの価値創造、価値提供の中心になっていく。
 人間は合理性を求める一方、人の温かみ、ヒトを通じた価値を大切にする生き物だ。AIが毎回正確に同じものを提供してくれるサービスと、不揃いでも誠心誠意、生身の人が提供してくれるサービスなら、後者の価値が高いケースは多い。
 デザインにおいても、単にAIによって過去の知見を活かし最適化されたものより、ヒトがヒトならではの感性と技を活かし、こだわり抜いたものにはセレンディピティとヒューマンタッチが感じられ、付加価値はずっと高い可能性が高い。
 AIとデータに得意なことはAIとデータに任せ、浮いた余力をこういうヒトにしか生み出せない価値の打ち出し、ヒトにしかできないこだわりや温かみの実現をどうやって行っていくかがビジネスの勝負どころになっていく。
本稿の全文は『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』11月号に掲載されています。

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自己変革の組織風土を
醸成する5つのプロセス
理念や価値観を個人の行動レベルに落とし込めているか? 成功体験の積み重ねや成果を組織で共有するプロセスを経ているか?
「DHBR最新号から」の最新記事» Backnumber
• 人工知能はビジネスをどう変えるか「ヒト・モノ・カネ」から「ヒト・データ・キカイ」へ (2015.10.20)
• 機械は我々を幸福にするのか「グレート・デカップリング」という現実  (2015.10.13)
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー

2015年11月号
本体 1,907円+税
特集:人工知能
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