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(回答先: 海外ネット配信にも消費税課税 アマゾンなど薄れる優位性、販売に影響か(SankeiBiz) 投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 9 月 29 日 19:35:55)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45562
文/アレクサンドラ・オルター
電子書籍の売上が急に鈍化した
5年前、紙の本の将来が読めないことで出版界全体がパニックに陥った。
読者が新しい電子デバイスに移行するのに伴い電子書籍の売上は急増し、2008年から2010年の間に1,260%も上昇した。それは書店に対し、棚を物色中の客は後でオンラインで購入する本を見つけるために店舗を使っているのだとの警告を発することになった。
紙の本の売上は落ち、書店は営業を維持するのが困難になった。そして出版社と著者たちは、紙の本より安い電子書籍が自分たちのビジネスで共食い状態になることを恐れた。
そして、2011年にボーダーズ社が倒産宣言した時、業界が恐れたことは現実となった。
出版業界の動向を追っている非営利調査グループ「書籍業界研究グループ」の元事務局長であるレン・ヴラホスは、「電子書籍は、まっしぐらに空に向かう宇宙船でした。そしてほとんどの人が、我々は、デジタル音楽が辿った道を進んでいるのだと考えていました」と語っている。
しかし「デジタル黙示録」は、少なくとも予定通りには訪れなかった。かつてアナリストたちは、電子書籍は2015年までに印刷本を超えると予言したが、その代わりに最近はデジタルの売上が急速に鈍化している。
現在は、電子書籍に飛びついた人々が紙の本に戻る、もしくはデバイスと紙の両方を使い分けるハイブリッド型読者になりつつある兆候が見られる。
約1,200の出版社からのデータを収集している米国出版者協会によると、今年の最初5ヵ月間で電子書籍の売上は10%落ちたという。昨年は、電子書籍の市場占有率は約20%で、これは数年前と同水準だ。
出版業界は、もちろん技術上の大きな変化の影響を避けることはできない。
しかし電子書籍の人気が低下しているのは、出版業界は音楽やテレビなど他のメディアよりもうまく、押し寄せるデジタル技術の波を乗り越えるだろうことを示唆しているのかもしれない。
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独立系書店の活況
ネットフリックス社やパンドラ社などをモデルにした電子書籍のサブスクリプション・サービスは、本好きな人々を電子書籍の熱狂的ファンに転換させるのに悪戦苦闘している。中にはサービス提供をやめたところもある。
消費者がタブレットやスマートフォンへと移行するのに伴い、電子書籍専用機器の売り上げも急落している。デジタル時代の申し子である若い読者は、今でも紙ベースで読む方を好むという調査結果も見られる。
紙の本の驚くべき回復力により、多くの書店の業績が上向いている。不況とアマゾン社が仕掛けた競争のために打ちのめされた独立系の書店は、力強い復活の兆しを見せている。
米国小売書店協会の統計によると、5年前には1,660ヵ所に1,400店舗しかなかったメンバー書店数が、2015年には2,227ヵ所、1,712店舗に増えている。
「デジタルサイドでのビジネスが横ばい状態になったことが、我々にとって有利になっています。そのため現在、独立系書店の市場は、ここ長い間に見られた状況より、はるかに健全なものとなっています」と米国小売書店協会のオレン・テチャー会長は述べている。
出版社はこの転換を活用すべく、印刷用インフラや流通・販売のために多くの資金を投じている。アシェット社は昨年末、インディアナ州の倉庫を21万8000平方フィート拡張させ、サイモン&シュスター社もニュージャージー州にある流通施設を20万平方フィート拡大している。
またペンギン・ランダムハウス社は、倉庫の拡大と近代化に約1億ドルを投じて書籍の流通速度を高めている。同社は、昨年、インディアナ州クローフォーズヴィルの倉庫を36万5000平方フィート拡張し、施設規模を2倍以上にした。
「誰もが物理的な本の終焉について語り、もう時間の問題に過ぎないかのように言われました。しかし、今から50年、100年経っても、印刷本は書籍業界でかなりの割合を占めていると思いますよ」と、全世界で250のインプリントを持つペンギン・ランダムハウスの最高経営責任者マーカス・ドールは言う。米国では、印刷本は同社の売上の70%以上を占めている。
流通改革 配本スピードを向上させる
ペンギン・ランダムハウス社は2011年から、独立系書店に対し、書籍購入のピークである11月から1月の間、わずか2日で配本することを保証している。
ハーパーコリンズ社はじめ他の大手出版社も、これに倣っている。配本速度を高めると、書店は、最初は少量の注文を出し、必要に応じて補充してゆくことが可能になる。そうすることで、返本率は約10%低下した。
ペンギン・ランダムハウスは、大手顧客数社を対象とする印刷書籍在庫管理を行うため、データ主導型のアプローチを開発した。これは、プロクター&ギャンブル社などの製造業者が、石鹸を始めとする家庭用品を自動的に在庫補充する手法を真似た戦略だ。
現在、同社は一日に1000万件以上もの販売記録を追跡し、それをチェックしてゆく。そして過去の売上に基づき、各ベンダーに対し特定書籍を何冊注文すべきかを提案するのだ。
「これは極めて簡単なことです。棚にある書籍しか売ることができないわけですからね」と、ドール氏は言う。
テキサス州オースティンで1970年に設立された書店「ブックピープル」では、今年の売上は昨年の11%増。2015年は、同店始まって以来の高収益を上げたと共同オウナーのスティーブ・ベルクは語る。
彼は、事業成長の理由の一つとして、印刷本の安定化と出版業界における新しい業務手法の導入などを指摘できるとする。新しい業務手法とは、ペンギン・ランダムハウスが導入した、迅速に書籍の在庫補充を行うための、いわゆる高速補充プログラムなどを指す。
彼は「電子書籍の脅威は、弱まった感じです」と言う。
他の独立系書店も、紙の本への回帰傾向が見られると口をそろえる。
コロラド州ボールダーにある「ボールダー・ブックストア」の書籍バイヤー、アーセン・カシュカシャンは次のように言っている。
「人々は確かに戻って来ています。以前はキンドルで読む方が多かったのですが、今は違います。皆さん、少なくとも両方のやり方で読んでいます」
電子書籍はなぜ失速したか
デジタル形態の書籍は、出版社がCD-ROMを使った実験を始めて以来、すでに何10年も市場にある。しかし、消費者の間でそれが受け入れられるようになったのは、アマゾン社がキンドルを発売した直後の2008年になってからだ。
キンドル、そしてKoboのeリーダー、バーンズ&ノーブルから出たNook、iPadなどのデバイスが、何百万という書籍購入者たちを電子書籍リーダーへと引き寄せた。
これらのデバイスは、シームレスかつ即座に購入できるものだった。出版社のデジタル部門の売上は、人々がギフトで電子書籍リーダーをもらったクリスマスシーズンやその直後に急増した。
しかし、その後スマートフォンやタブレットが出現し、消費者の間で電子書籍リーダーが時代遅れのものになるや、それまで、2ケタ、3ケタの成長率だった売上は一気に落ち込んだ。
フォレスター・リサーチ社によると、2011年には約2000万台だった電子書籍リーダーの売上台数は、昨年は約1200万台と大幅に低下している。またニールセンの調査では、「本は主に電子書籍リーダーで読む」とする人の割合は、2012年の50%から、2015年には32%へと減少している。
電子書籍の価格が高くなっていることも、読者の印刷本回帰を促しているかもしれない。
ここ一年のうちに、出版社がアマゾン社と再交渉し、自社の電子書籍の価格は自ら決められるという新たな条件が導入された結果、多くの出版社が価格を上げ始めている。13ドルの電子書籍とペーパーバックの値段が大して変わらなくなったため、印刷バージョンに戻ることにした消費者もいるだろう。
アマゾン社のサイト上では、ドナ・タート著「ゴールドフィンチ」のような人気書籍のペーパーバック版の中には、デジタル版より何ドルか安いものもある。米国出版者協会の報告によると、今年初めの5ヵ月間で、ペーパーバックの売上は8.4%上昇している。
電子出版革命はこれで終焉?
もちろん、ピクセルと印刷の間の覇権争いが、これで終わったわけでない。
業界アナリストや出版社の経営者たちは、電子出版革命の終焉を宣言するのは時期尚早だとする。
これから魅力的な新しいデバイスが現れるかもしれない。実際、すでに携帯電話で電子書籍を読む人が増えている。アマゾン社は最近、50ドルの新しいタブレットを発表しており、これにより新たに多くの消費者を電子書籍に引き寄せることができるかもしれない(第一世代のキンドルは400ドル)。
また、実際には電子書籍を買い、読んでいる人の数は増えているが、ただ伝統的な出版社から購入していないだけなのかもしれない。
出版社が発表する電子書籍の売上減少の数字では、安くて数多くある自費出版の電子書籍にシフトした何百万人という読者は対象に入っていない。これら自費出版の電子書籍は、1冊1ドル以下というものも少なくない。
キンドルのシニア・バイス・プレジデントであるラッセル・グランディネッティによると、アマゾン社における電子書籍の売上は、依然として上昇傾向にあると言う。電子書籍市場の約65%を牛耳るアマゾン社は、昨年、月10ドルの一律料金で無制限に電子形態の本を読める、電子書籍の定期購読サービスを始めた。そこでは100万冊以上の書籍が提供されているが、多くは自費出版の著者によるものだ。
出版業界の幹部の中には、世界の変化があまりにも激しいので、デジタルの潮流は衰えつつあるとは宣言できないとする者もいる。
サイモン&シュスター社の社長兼最高経営責任者であるキャロライン・リーディは、「今は、ただ一時停止しているだけなのかもしれませんよ。次世代の人たちはスマートフォンで本を読みたがり、また市場が爆発的に成長することもあるのではないでしょうか?」と語っている。
(翻訳/オフィス松村)
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