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非現実的な経産省の廃炉試算
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2016.02.22 きっこのブログ
1週間ほど前に、福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」を廃炉にした場合の費用がおよそ3000億円に上るという試算を、日本原子力研究開発機構が福島第1原発事故後の2012年に行なっていたことが分かった‥‥という報道があった。ザックリした内わけは、解体や放射性廃棄物の処理にかかる費用が約1300億円、廃炉作業中の設備の維持管理費が約1500億円、核燃料の取り出しに約200億円、もうこれで3000億円だけど、これはあくまでも現時点で試算可能な部分だけであって、冷却に使われているナトリウムを取り出す技術は「これから開発する」、核燃料の輸送やナトリウムの処理は「未定」なので、実際には、さらに費用が膨らむことは必至だ。
これは、通常の原子炉と同様に、「廃炉まで30年」という予測をベースに試算されているから、まだ世界で確立されていない「冷却用ナトリウムを取り出す技術」を開発するのに時間がかかれば、そのぶん、廃炉までの年月も延長されるワケで、そうなれば当然、年間200億円もの維持管理費も、この試算にどんどん上乗せされていく。ようするに、この試算は、現時点で分からない部分に関しては棚上げした上に、できる限り低く見積もったものということになる。
それにしても、日本の原子力業界って、どうしてこんなにも無責任なんだろう?だって、この「もんじゅ」だけでなく、福島第1原発にしたって、「溶け落ちた核燃料を取り出す技術」をこれから開発すると言っているのに、やっぱり「廃炉まで30年」という予測をベースにしているからだ。この「廃炉まで30年」というのは、何の事故も起こしていない通常の原子炉の場合であって、これから新しい技術を開発しないと廃炉作業が進まない原子炉には、まったく当てはまらないと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、今回の「もんじゅ」に関する報道を目や耳にした人たちの多くは、「ええ〜!もんじゅの廃炉って3000億円もかかるの〜?」って思ったようだけど、これは、経済産業省が発表している通常の原発の廃炉費用と比較してのことだと思う。経産省によると、原発の廃炉期間は20〜30年、廃炉費用は小型炉(50万キロワット級)が360億〜490億円、中型炉(80万キロワット級)は440億〜620億円、大型炉(110万キロワット級)は570億〜770億円ということになっているからだ。
だけど、こんな金額は大嘘だ‥‥って言うか、現時点では「絵に描いた餅」でしかない。だって、まだ日本では、商業用原子炉の廃炉は1基も行なったことがなく、特に将来の廃炉を想定せずに建設された初期の原子炉に関しては、解体作業だって手さぐりで行なわなければならないため、実際に廃炉作業に着手してみなければ、期間も予算もまったく分からないからだ。
日本で実際に廃炉を行なったことがあるのは、日本原子力研究開発機構の動力試験炉(茨城県東海村)だけで、これは試験炉なので1.25万キロワットしかない。そして現在は、日本原子力研究開発機構の新型転換原型炉ふげん(福井県敦賀市)と日本原電の東海発電所(茨城県東海村)の廃炉作業が進められているけど、前者が16.5万キロワット、後者が16.6万キロワットで、現在の全国の商業用原子炉と比べると遥かに小型だ。
ちなみに、新型転換原型炉ふげんの廃炉費用は、解体費用が約300億円、高レベル放射性廃棄物の処分費用が約400億円、低レベル放射性廃棄物の処分費用が約140億円、廃炉期間中の施設維持費が数百億円で、計千数百億円と見積もられている。日本全国の商業用原子炉の多くは軽水炉なので、ふげんとは炉型が違うけど、わずか16.5万キロワットのふげんでさえも、実際に廃炉にするとなると千数百億円もの費用が必要になるということだ。
そして、小型でも50万キロワット級、大型だと110万キロワット級の商業用原子炉の廃炉作業は、日本の電力会社にとっては未知の世界であり、30年という期間と数百億円という予算さえあれば確実に廃炉にできるなどとは簡単に断言できない。さらに言えば、1基の原子炉を廃炉にした時に生じる高濃度放射性廃棄物の処理方法も決まっていないのだから、何の事故も起こしていない通常の原子炉の場合でも、廃炉費用が数百億円で済むワケがないとあたしは考えている。
‥‥そんなワケで、最初に約3000億円だと試算されていた2020年の東京オリンピックの運営費用が、今では6倍の約1兆8000億円に膨らんでしまった事実を見れば分かるように、こうした試算は、ビフォーアフターに大きな差が出ることが多い。ようするに、事前は批判されないようにできるだけ低い金額を出しておき、計画にGOサインが出てからホントの金額を言う‥‥ということなんだと思う。
だから、原発の廃炉費用にしても、経産省が発表している現在の金額は、あくまでも「ビフォーの金額」なのだ。ふげんのように実際に廃炉作業に着手してみれば、いやおうなしに「アフターの金額」を公表せざるを得なくなるだろう。いくら炉型が違うとは言え、16.5万キロワットのふげんの廃炉に千数百億円かかるのだから、110万キロワット級の商業用原子炉が、その半額で廃炉にできるワケがない。
ちなみに、2002年に電事連が発表した「2045年までの長期試算」では、全国の商業用原発52基と再処理工場に関して、廃炉のための解体、撤去、放射性廃棄物の処分の費用として、約26兆6000億円という試算が出ている。原発も再処理工場も稼動期間が40年と定められているので、2002年の時点では全国にある原発52基と再処理工場のすべての廃炉作業を2045年までに開始しなくてはならず、そのための試算を行なったワケだ。
で、この約26兆6000億円のうち、約7兆円を占めているのが再処理工場にかかる費用なので、原発52基の廃炉費用は約20兆円ということになる。この52基の原子炉は、炉型や規模の違いはあるけど、とりあえずザックリと割り算してみると、「20兆円÷52基=3846億円」てワケで、1基あたりの廃炉費用は、経産省の試算とは大きく異なるものとなった。
1基あたりの廃炉費用を360億円〜770億円と見積もっている経産省、一方、3846億円と見積もっている電事連、同じ原子力ムラの住人でも、立場が違うとこれほどまでに試算も違ってくるのか。そして、わずか16.5万キロワットのふげんの廃炉に千数百億円かかるという事実から推察すれば、50万キロワットから110万キロワットの商業用原子炉の廃炉に必要な費用はどちらの試算のほうが正しいのか、これは一目瞭然だろう。
そして、通常の原子炉でも1基の廃炉に3846億円もかかるということであれば、今回の「もんじゅ」の廃炉費用が約3000億円というのは、高いどころか安すぎるくらいだろう。もちろん、最初に書いたように、この約3000億円には「冷却用ナトリウムを取り出す技術」を開発する費用などが含まれていないのだから、これより高くなることは分かっているけど、たとえ2倍の6000億円になったとしても、まだまだ安いとあたしは思っている。
これまでに1兆1000億円もの予算を投入しながら、不正に次ぐ不正、贈収賄に次ぐ贈収賄、事故に次ぐ事故で、20年経っても1ワットの電気も発電できないどころか、現状を維持しているだけで25万世帯ぶんもの電力を無駄遣いし続けている「もんじゅ」など、1日も早く廃炉にすべきなのだ。現在、「もんじゅ」の維持費は年間に約500億円と言われているけど、今後30年、このままにしていたら、「500億円×30年=6000億円」をドブに捨てることになる。それなら、その6000億円と30年を使って廃炉にしたほうが遥かに建設的だろう。
‥‥そんなワケで、ここまで廃炉費用のことを中心に書いて来たけど、廃炉には費用だけでなく、長い時間がかかる。まだ日本では商業用原子炉の廃炉作業は行なったことがないので、経産省が発表している「20〜30年」というのも、費用と同じく「絵に描いた餅」であり、実際には50年かかるか100年かかるか分からない。実際、2005年に「廃炉庁」を新設し、政府が前面に立って老朽化した原発の廃炉に取り組んでいるイギリスでは、現在、廃炉作業中の24基を完全に解体し終えるまでに「約90年」と試算している。
廃炉専門の省庁を新設して、政府が本気で取り組んでいるイギリスでさえ「廃炉まで約90年」と言っているのに、すべて電力会社に丸投げしている日本が、どうすれば「20〜30年」で廃炉作業を終えられると言うのだろうか。それどころか、「溶け落ちた核燃料を取り出す技術」をこれから開発すると言っている上に、事故から5年経っても汚染水を止められない福島第1原発も、「冷却用ナトリウムを取り出す技術」をこれから開発すると言っている「もんじゅ」も、同じく「30年」で廃炉にできると言う。
だけど、あたしは、安倍政権や経産省や電力会社が言い続けてきた「廃炉まで30年」という「絵に描いた餅」はまったく信じていないし、こんな数字は「原発の稼動期間が40年」という決まりから逆算されたものでしかないと思っている。もしも「廃炉まで50年」と言ってしまったら、原子炉を増設しても新設しても廃炉作業中の原子炉のほうが多くなってしまい、「原発を最重要ベースロード電源」と位置づけている安倍政権にとって都合が悪くなるからだ。
‥‥そんなワケで、この「廃炉まで30年」という経産省や電力会社の廃炉計画は、原子力ムラの面々が原発推進のために捏造した「都合のいい数字」だとあたしは思っているけど、それでも、この廃炉計画の中には正しいことも書かれている。それは、廃炉工程の第1段階の「原子炉を停止して核燃料を取り出してから5〜10年は放置して放射線量が下がるのを待つ」という部分だ。最低でも5年は待たないと放射線量が高くて解体作業に着手できないということは、すでに実証されている事実だからだ。つまり、福島第1原発の事故から5年を迎える現在、日本の大半の原子炉は5年以上停止しているため、今すぐにでも解体作業に着手できる状態だということになる。これは、日本が本気で脱原発に向けて大きく舵を切る最大のチャンスと言えるだろう。安倍晋三首相がホントに日本を「美しい国」、そして「未来の人たちに誇れる国」にしたいと思っているのなら、「1億総活躍大臣」などという国民をバカにした大臣なんか必要ないから、まずは「廃炉庁」と「廃炉担当大臣」を新設して、口先だけでなく本気で福島第1原発の事故収束と全国の原発の廃炉に取り組んでほしいと思う今日この頃なのだ。
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