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[大震災から5年]柏崎刈羽原発、遠い再稼働
新潟県・東電、安全巡り溝 供給受けぬ県、徹底追求
東京電力柏崎刈羽原子力発電所の安全性を巡り地元新潟県の泉田裕彦知事と東電の溝が埋まらない。背景には東電が同県に電力を供給していないため、徹底して安全性を追求できる新潟県特有の構図がある。原子力規制委員会による安全審査は進んでいるが、仮に合格しても再稼働への道のりはなお遠い。「世界最大の原発」を巡る両者の議論に終わりは見えない。
発電出力が世界最大の柏崎刈羽原発は全基停止が続く(新潟県柏崎市・刈羽村)
「本当に2カ月も福島第1原発事故の炉心溶融(メルトダウン)が分からなかったとしたら東電に原発を運転する資格はない」。5日午後、県庁に年始のあいさつに訪れた東電・広瀬直己社長に対して泉田知事はかねて主張する同社の情報公開の問題点について厳しく問いただした。
東電と認識ずれ
広瀬社長は「情報は全て出しているつもりだが、知事の懸念が払拭できないということであれば真摯に対応していかなければいけない」と答えた。しかしこのやり取りは1年前の会談とほぼ同じ。安全認識について理解がずれたままの現状が浮き彫りになった。
原発の再稼働は規制委の審査に合格後、立地自治体の知事などの同意を経て実現する。東電は経営再建に不可欠として柏崎刈羽原発の再稼働に向け安全審査を申請。審査はすでに終盤を迎えつつある。だが、合格判定が出たとしても、今の状況では、再稼働の議論はすぐには進まない。
東電は放射性物質の放出量を抑えるフィルター付きベントの設置や国際原子力機関(IAEA)の安全調査で、課題として指摘された15項目を踏まえた改善策を進めるなど泉田知事の理解を得たい考え。しかし「福島事故の検証・総括なしに再稼働議論はしない」と主張する泉田知事を前に議論の前提条件を解消できていないのが現状だ。
「安全原理主義」とやゆされることもある泉田知事の東電に対する強気の背景には、電力供給を巡り他地域とは違う構図がある。通常、再稼働ができないために電気料金が上がると、地元経済には大きな打撃となる。しかし、同県に電力を供給しているのは東北電力。供給地域外に設けた原発の再稼働を目指す東電は、ひたすら理解を求めるしかない立場だ。
地元の電力会社ではないことに加え、東電の原発再稼働の判断は福島事故後初となる。事故の当事者だけに泉田知事が東電に対して厳しい安全対策を求める要因の一つとなっている。
また柏崎刈羽原発を再稼働したとしても地元経済への影響が限定的であることも県内で再稼働への機運が高まらない背景としてある。地元企業に影響が大きいのは、福島事故以来、東電が経費節約のため、タクシーや飲食を控えていることで、この傾向は柏崎刈羽が動いても続くからだ。
「東電が福島事故時にメルトダウンを認識したのはいつか」「貯水機能が地震で失われることはないのか」。県が独自に原発事故の検証などをする技術委員会では、東電の担当者を交え安全性への議論が続くが、議論を重ねるごとに課題が見つかり終わりは見えない。委員の中には「これでは知事が納得する結果は出ない」との声も出始めた。
実際、規制委員会の審査や技術委員会が進む間も、ケーブルの不適切敷設といった細かいミスが相次ぐなど、県が求めた安全対策に東電は十分に応えているとは言いがたい。昨年12月には、福島事故の際、2号機で蒸気逃がし安全弁の部品が高熱で劣化していた可能性が発覚するなど「福島事故の検証」の不備が今も見つかっている。
姿勢不変の見方
今年10月には任期満了に伴う新潟県知事選が予定されている。泉田知事は出馬についての意向を明らかにしていないものの、地元では出馬するとの見方が大勢だ。また「新潟県民は東電から電力供給を受けていないのだから、経済合理性ではなく徹底的な安全性を求める」(県幹部)と、知事が誰になっても東電に対する厳しい姿勢が大きく変わらないとの声は地元でも根強い。
東日本大震災の発生に伴う福島事故からまもなく5年を迎える中、再稼働議論が始まる見通しは依然として見えない。「福島事故の検証・総括」という知事の要求を解決し、再稼働に向けた道筋を付けられるか。東電にとって2016年は柏崎刈羽原発の再稼働を占う勝負の年になる。
(新潟支局 篠原英樹)
[日経新聞1月18日朝刊P.37]
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