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なぜ、東京で 白内障、心筋梗塞が激増するのか? ――エッセンシャル版・緊急特別講演会 【パート3】
http://diamond.jp/articles/-/82736
2015年12月26日 広瀬 隆 [ノンフィクション作家] ダイヤモンド・オンライン
ついに伊方原発の再稼働に関して、中村時広愛媛県知事がGOサインを出した。
「1977年9月30日稼働」以来、38年経った「老朽化」の心配もさることながら、中央構造線上にそびえる伊方原発の危険性については、本連載でも再三触れてきた。
同時に、2015年8月に1号機、10月に2号機が再稼働し始めた川内原発とまったく同じ「加圧水型」の原子炉は、「沸騰水型」の福島第一原発とは比べものにならない危険性があると、本連載第21回で指摘した。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が増刷を重ね、第6刷となった。
本連載シリーズ記事も、累計313万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破し、大きな話題となっている。
そんななか、10月23日に、広瀬隆氏がダイヤモンド社で緊急特別講演会を開催。当日は南相馬出身の人や高速バスで遠くからたくさんの人が会場を訪れた。
予定の1時間を大幅に超え、2時間にわたった講演会のエッセンスを凝縮してお届けする。さらに、現況から展望される今後の原発ゼロ時代の到来について、7回の連載記事をお届けする。
では、注目の第3回をお送りしよう。
■順天堂大学の血液内科が発表した衝撃データ
「原発問題はフクシマだけの問題であるから、東京に住んでいる私には関係ない」と思っている人にぜひ見てほしいデータがあります。
東京の人間は非常に危ない状態にあります。このことについては、それを裏づけるデータがいくつかありますので、ダイヤモンド書籍オンラインのリンク(第24回)をここに示しておきます。全身に血液が流れるので、血液が癌の転移を引き起こすという意味で非常に重大です。
このリンクに示したように、血液系疾患の患者数が激増しています。
首都圏の病院でも、骨髄形成症候群(血液関連の癌)が2〜5倍という状態です。
またほとんどの人は、放射能というと、「癌」、「白血病」しか考えないのですが、「白内障」も増えています。
東京や首都圏の人間は、本人がほとんど無意識でも、確実に被曝しています。この事実は、断言しておきます。私は、フクシマ原発事故が起こってからできるだけ外出しないようにしました。ただ、当時、講演会の依頼があるたびに全国各地に引っ張りまわされたので、私自身も、かなり被曝しています。
この深刻な被曝がいつごろまで続いたかが問題ですが、フクシマ原発事故が起こってから2ヵ月後の5月11日に福島大学が高空の放射能測定結果を発表しました。このグラフは、縦軸に地上からの高さをキロメートル単位で示してあります。飛行機の絵がある高さが10キロメートルで、ジャンボ機が飛行するおよそ1万メートルです。
横軸が放射線の量で、セシウムのガンマ線が濃紺の折れ線で示され、ストロンチウムやトリチウムのベータ線がピンクの折れ線で示されています。
このような高空に大量の放射性物質が浮遊していた、つまり原発からは放射性物質の大量の漏洩が続いていることが確認されたのですから、これらが風に運ばれて、南下して首都圏へ、また北上して東北の北部にまで、大量に流れていたのです。事故が起こってから2ヵ月後でも、これほど大量にです!! 実際には、分っている限り2015年6月頃までは、これほど深刻な被曝量でした。
そうしたなかで、誰も、眼が被曝していたことには、ほとんど意識がなかったはずです。しかし水晶体のある角膜に、1000分の1mmという、目に見えない、つまりミクロン単位の微小な放射性物質がつくと、白内障になり、眼の濁りが出てきて、数年〜10年後ぐらいから悪化し、最悪の場合は失明してしまいます。こうした被害は、アメリカのスリーマイル島原発事故でも、チェルノブイリ原発事故でも、多くの被害者を出しているので、明らかになっています。
白内障が東北で激増している、統計データも、さきほどのリンク先に示してあります。
一番こわいのは、猛毒物プルトニウムです。
アメリカの環境保護局EPA(Environmental Protection Agency)が発表しているデータを見ると、アメリカ西海岸のカリフォルニアで多量のプルトニウムが検出されました。プルトニウム燃料を使って運転していた福島第一原発3号機が大爆発をした日からちょうど10日後、2011年3月24日にグーンとプルトニウムの数値が上がっています。これ以降、なぜかEPAはデータを出していません。この分野で信頼できる科学者のアーニー・ガンダーセンさんがたびたび警告したように、ロッキー山脈でもプルトニウムが検出されていますし、東京の都心でもウランのような放射性物質が検出されています。
茨城県つくば市にある、気象庁気象研究所では、放射性物質のモリブデンや、テクネチウムが検出されたと、地元紙・常陽新聞が報道したのが、2011年7月16日です。このニュースを聞いたときは、私は、もうダメだと思いました。このことも、すでにダイヤモンド書籍オンラインで書きました。
つくば市は福島第一原発から170kmも離れています。つくば市まで沸点4877℃でガス化するテクネチウムが飛んできたということは、原子炉内でメルトダウンした燃料が気化して、あらゆるものがガスになって放出されたということです。
原子炉内で、一番危険な甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素は184℃でガスになりますから、天ぷらの温度ですぐガス化する。それが日本全土に降り積もりました。セシウムはよく議論されていますが、白血病を起こす沸点1384℃のストロンチウムはほとんど議論されていません。
一番危険な猛毒物プルトニウムでさえ、3232℃でガス化します。
こういう危険な放射性物質が見えないガスになって東京を含む東日本地域に襲いかかりました。沸点が低い放射性物質はみんな、原子炉内でガス化していたわけです。
それが、東京に飛んでこないはずがないのです。大事故直後の2011年3月17日に、私はCS放送の「朝日ニュースター」という番組で。
「今、みなさんはテレビのいい加減な学者たちから、東京は大丈夫だという話を聞いていますが、そんなことはあるはずがない! 危険な放射性物質がガス化してみんな、東京にきていますよ」
ということを話しました。
■セシウムは「盛岡」より「新宿」が6倍!ヨウ素は「盛岡」より「新宿」が100倍!!
福島県では、美しい阿武隈山地に放射能が大量に降り積もりました。
北のほうに流れた放射性物質は、奥羽山脈にぶつかってそこで大量に落ち、南のほうは茨城県から千葉・埼玉・東京に向かって山がないため、一気に直進して東京から神奈川にきたわけです。
特に、新宿の高層ビル群に大量にぶつかりました。高層ビルの福島側と、その裏側では全然放射線量が違いました。
しかし、マスコミは一切この事実を報道せず、多くの人たちは平気で通勤していました。
「この人たちは大丈夫なのか?」と思っていたのは、私だけでしたでしょうか。あまりにも非常識で、普通の生活をする人たちを見て、私の頭がオカシイのかと思いました。それぐらい誰もが普通に通勤して、子どもたちも2011年4月に入って、普通に通学しているじゃないですか。
「子どもたちの通学を止めさせろ」と叫んでいたのですが、誰も聞いてくれない。あの期間に、多くの人が被曝をしました。東京・新宿と盛岡市では、セシウムで新宿のほうが6倍です。この数字は、自治体の測定値なので、おそらくエアコンのフィルターなどで付着物を測定したものと思いますが、文科省の測定ではないので、信用していいです。
甲状腺癌を引き起こす放射性ヨウ素は、新宿のほうが盛岡の100倍ですよ!(2011年11月25日公表値)。
特に2011年は6月ぐらいまで、多くの人がすさまじい被曝をしました。
■東京の荻窪も“チェルノブイリ危険地帯第4区”!
これは文部科学省が発表している東京の汚染地図ですが、山のある多摩地区は当然のことながら高度に汚染され、ギリギリ山梨県境まで汚染されました。
この地図を見ると、「新宿」と「杉並」が汚染されていませんが、これはウソなのです。土壌が大汚染されているのに、航空機からの空間線量で、机上の計算でつくった気休めの地図です。放射性物質を実測したものではないのです。
真の危険性を調べるため、私は、わが家のある東京・荻窪(福島第一原発から230km離れた場所)の土壌の汚染度を、信頼できる人に分析してもらいました。この人たちは、チェルノブイリ原発事故以来、ずっと放射能測定を続けてきた専門家です。つまり、継続して測定している人たちが、フクシマ原発事故の真の危険度を知ることができるのです。この内容は、『東京が壊滅する日』にくわしく書きましたので、お読みください。
杉並区のわが家も、目の玉が飛び出るように汚染されていることが判明しました。
その結果、1平方メートルあたり、わが家は1万7160ベクレルあり、子どもが遊ぶ近くの公園の土では9万2235ベクレルという驚異的な数値でした。杉並区の住宅地のど真ん中ですよ。
ところが、同じ10月に文部科学省が空間線量から推定した汚染分布地図では、今の分布図のように、杉並区も新宿区も“安全地帯”となっているではないですか! その汚染された公園では、幼稚園児たちが遊んでいたというわけです。
■これから何が起こるのか?――知られざる「ホットパーティクル」の恐怖
私は30年以上前から、この問題に医学的に取り組んできたので、これから何が起こるかを理論的に申し上げます。
1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の教訓はこうです。
ソ連では、当時の白ロシアが分離独立して、現在、「ベラルーシ」と呼ばれています。チェルノブイリ原発はベラルーシ国境近くのウクライナにありました。
ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故のあとに亡くなった人たちの体を解剖すると、体内に高濃度の放射性物質の粒子「ホットパーティクル」がいっぱいありました。これもダイヤモンド書籍オンラインでくわしく書きましたので、そちらを参照してください。
東京に住んでいるわれわれも、この高レベルの放射性物質を吸い込んできたのです。
フクシマ原発事故のあと、多くの人が線量計を買って、危険かどうかを調べてきましたが、アメリカと東京では、空間線量がほとんど変わりません。つまり空間線量の測定では、こうした危険な「ホットパーティクル」を検出できないわけです。
■「放射能の実害」から科学的に分析
結論を申し上げます。フクシマ原発から放出された放射能は、トテツモナイ天文学的な量です。その内訳や計算は『東京が壊滅する日』にくわしく書きましたので、参照してください。大量の癌患者・死者を出したアメリカのネバダ核実験の風下地帯より、日本のほうが汚染度が高いのです。
見すごされている事実として、首都圏はトテツモナイ人口密度だということがあります。これは福島県の比ではありません。
これからこの日本で、100万人以上の方が、フクシマ原発事故の汚染で亡くなります。
一瞬でみんなが死ぬわけではない。だから、気づかない。それがおそろしいのです。
時間をかけて、病室の中でゆっくりと殺されてゆく。音もなく、家族だけが知っている。そうして亡くなっていくのです。
私が申し上げている事実は、「放射能の実害」にあります。
もし、原発から出る放射性物質が、人間の体内で「実害がない」ならば、どんどん原発を建てたらいい。
しかし、私が調査してきたスリーマイル島事故(1979年)、チェルノブイリ事故(1986年)だけでなく、『東京が壊滅する日』で紹介した、アメリカネバダ州での大気中核実験(1951〜58年で計97回)がおこなわれた場所から220kmも遠く離れた、田舎町のセント・ジョージでの悲劇、ロシアがひた隠しにしてきた「チェリャビンスク40」での史上最大の惨事を科学的に分析すると、放射能災害は必ず大量発生します。
■必ず起こります。
ただ、東京には1300万人以上もいますので、100万人が何年かにわたって亡くなっても、精細な統計疫学で分析しないと、はっきり統計には出てきません。知るのは当事者の家族だけです。
人殺し政策の好きな安倍晋三の日本政府が、賠償金打ち切りのために、次々と危険地帯への住民帰還政策を進めています。新聞やテレビも「フクシマ事故の影響はもう終った」かのような報道をしています。
こうしてますます、フクシマ事故の大災害がいま現在、深く静かに進行しています。この体内被曝は、医学的な時限爆弾ですから、時間が経過すると共に発症するのです。
■なぜ、『東京が壊滅する日』を緊急出版したのか――広瀬隆からのメッセージ
このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。
現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。
2011年3〜6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文部科学省2011年11月25日公表値)という驚くべき数値になっている。
東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。
映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951〜57年で計97回)や、チェルノブイリ事故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。
1951〜57年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発〜東京駅、福島第一原発〜釜石と同じ距離だ。
核実験と原発事故は違うのでは? と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに危険度が高い。
3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。
不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。
子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。
最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?
同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。
51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。
「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真実!
よろしければご一読いただけると幸いです。
<著者プロフィール>
広瀬 隆(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『日本のゆくえ アジアのゆくえ』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。
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