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億単位の裏金がバレても「政治資金」で届けたらOK 庶民なら「脱税」なのに…現行ルールのガバガバ具合/東京新聞
2024年2月2日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/306792?rct=politics
安倍派が3年分・4億円あまりの裏金不記載について収支報告書を訂正するなどした自民党のパーティー券裏金事件。しかし、これだけの巨額裏金を「政治資金」として届け出れば問題なし、というのはどう考えても間尺に合わない。脱税として立件されるべきだとして、市民団体が1日、東京地検に安倍派幹部らを刑事告発した。「政治資金=非課税」という聖域扱いでいいのか考えてみる。(安藤恭子、宮畑譲)
◆「トカゲのしっぽ切りに終わらせるな」響く怒号
自民党議員を脱税で刑事告発した市民団体の記者会見=1日、東京・永田町の参院議員会館で
自民党議員を脱税で刑事告発した市民団体の記者会見=1日、東京・永田町の参院議員会館で
2018〜22年に自民党安倍派の議員10人が、派閥主催のパーティー券の売上金を税務署に申告せずに脱税したとして市民グループの12人が1日、所得税法違反の疑いで、東京地検に告発状を提出した。提出に先立ち、約40人が東京・霞が関の地検前に集まって「裏金は脱税だ!」「トカゲのしっぽ切りに終わらせるな」と怒りの声を上げた。
告発した「自民党ウラガネ・脱税を許さない会」の藤田高景代表は「庶民なら厳罰を科されるのに、政治家なら2000万円を懐に入れても、収支報告書の修正で済まされる。全国のサラリーマンや零細企業の皆さんから、怒りの声が寄せられている」と訴えた。
◆「あまりに野放図ではないか」
告発されたのは、萩生田光一、西村康稔、松野博一、高木毅、世耕弘成、下村博文、塩谷立の各氏と政治資金規正法違反に問われ立件された池田佳隆、谷川弥一、大野泰正の3氏。
パーティー裏金事件に関し、記者会見する自民党の萩生田前政調会長=1月22日、東京・永田町の衆院第2議員会館で
パーティー裏金事件に関し、記者会見する自民党の萩生田前政調会長=1月22日、東京・永田町の衆院第2議員会館で
告発状によると、安倍派によるキックバック(還流)手法は、
(1)議員が派閥に納めたパーティー券の売上金のうちノルマ以上に売り上げた分の金額を議員の政党支部に還流
(2)ノルマ以上の売り上げ分を派閥の収支報告書に載せず、議員側にも記載しないよう念押しし還流
(3)ノルマ以上の売り上げ分を、議員が派閥に報告せずそのまま「懐」に入れる
—の3通りあった。
報告書に未記載の(2)(3)だけでなく、記載した(1)についても脱税の成立を主張した。大口昭彦弁護士は「非課税の政治資金は、政治家が扱う資金全般とみなされ、検察もそのように(解釈して)捜査運用していると思うが、あまりに野放図ではないか」と会見で指摘した。
◆使い道がはっきりしないまま「政治資金」と言われても
根拠の一つとしたのは、非課税となる所得を限定して列挙する所得税法9条1項。同項のうち政治家の収入に関わる定めは19号のみ。公職選挙の候補者が選挙運動に関して得た利益で、選挙収支報告書の提出がされたものなどと定める。
記者会見で、派閥から受けた還流の使い道について説明する高木毅衆院議員=1月27日、福井県敦賀市で
記者会見で、派閥から受けた還流の使い道について説明する高木毅衆院議員=1月27日、福井県敦賀市で
約4300万円の未記載があったとして略式起訴された谷川氏は「飲食や会合など政治活動に使った」と釈明し、詳細は明らかにしなかった。1019万円の記載漏れを認めた高木氏も「他の議員やマスコミ関係者との飲食費などに充てた」と説明しつつ領収書は残っていないとした。これでは使途がはっきりしない。
弁護団は少なくとも政治家が私的な消費や選挙の買収供応など違法に使った分は、非課税の政治資金ではなく課税対象の所得として扱うべきだとした。
◆「国民からは厳しく税を徴収するのに、権力者なら許される」
記者会見には告発に賛同する有識者も同席。貧困問題に取り組む作家の雨宮処凛さんは「第2次安倍政権発足後の2013年、生活保護費の引き下げが行われた。弱者を苦しめる政策を進める一方で、身内に甘く、私腹を肥やす政治はおかしい」と訴えた。
元官僚の政策アナリスト古賀茂明さんは「国民からは1円でも厳しく税を徴収するのに、権力者なら許されるというのは、明らかな差別」と述べた。「何年にもわたり何百万、何千万円と記載しないというのは、普通に考えて許されることじゃない。悪いことは悪いと一掃してほしい」
◆「雑所得」扱いと注意を呼びかけている一文が
裏金は脱税に当たらないのか。国税庁は毎年、確定申告前に議員へ向けて「政治資金に係る『雑所得』の計算等の概要」と題する文書を作成し、衆参両院に配布している。
文書には、「政党から受けた政治活動費や、個人、後援団体などの政治団体から受けた政治活動のための物品等による寄付などは『雑所得』の収入金額になりますので、所得金額の計算をする必要があります」と下線を引いて注意を呼びかける一文がある。ということは裏金、キックバックは雑所得となり課税対象なのではないか。
納税者でごった返す昨年2月の確定申告会場。政治家への課税も適切に行われるべきだが…=名古屋・名駅のウインクあいちで
納税者でごった返す昨年2月の確定申告会場。政治家への課税も適切に行われるべきだが…=名古屋・名駅のウインクあいちで
「こちら特報部」が国税庁に取材すると、「収入(裏金)が個人の場合、雑所得。政治活動のために支出した費用を差し引いた後、残高は課税対象になる」との答え。では、「脱税で調査しないのか」と重ねて聞くと、「調査するかしないかはお答えしない」としつつ、「提出された確定申告を見て、必要があれば調査する」とした。
裏金の原資となった政治資金パーティー。政治団体が開催している場合、法人税法の対象となる。ただ、基本的に収益事業を行わない公益法人や政治団体などは物品販売や製造業など課税対象が34事業と定められ、政治資金パーティーは該当しないとされる。
◆パーティーは「興業」扱いが妥当との意見も
リクルート事件を踏まえた1994年の政治資金規正法改正で政治家個人への献金は禁止された。だが、それに代わって企業・団体による政治資金パーティー券購入が政治家の集金手段の主流になっていった。今回の事件で、キックバックが慣例化するほど集金システムが完成していたことが、はっきり分かった。
立正大法制研究所の浦野広明特別研究員(税法学)は「利益率が8〜9割になるともされる政治資金パーティーが課税対象に認められないのはおかしい。形式的ではなく、実質的に見ないといけない」と指摘し、パーティーを34事業のうちの「興行業」に含めるべきだと訴える。ただ、国税庁に見解を尋ねると、「興行はスポーツや音楽といった見せ物に限定されている」との答えだった。
とはいえ、国税庁が認める通り、少なくとも個人の所得には政治活動費も課税対象になるし、確定申告を求めている。しかし、実際に裏献金やパーティー券に絡み、脱税で国会議員が立件されるケースは極めてまれだ。
その背景として、元東京地検特捜部副部長で衆院議員も務めた若狭勝弁護士は「個人に入ったお金なのか、資金管理団体などに入ったお金なのか、帰属先を認定する難しさがある」と解説する。さらに、「政治活動に関する所得を脱税とみなした事例は少なく、積み重ねがない。そのため線引きを決めるのが難しい。検察が立件するには額の問題もある。脱税としては1億円くらいからが相場だ」と言い、脱税での立件にはハードルが高いとの認識を示す。
◆これから確定申告の時期…国税庁は役割を果たせるのか
一方、元国税調査官でフリーライターの大村大次郎氏は「個人や一般企業に比べ、国会議員に対しては税務調査に入ることは少ない。遠慮、忖度(そんたく)していると言われても仕方がない」と考える。
これから確定申告がまもなく始まろうという中、政治家にも踏み込んだ調査をしなくては徴税の公平さに国民から疑念の目が向けられかねない。大村氏は「ほかの納税者と同じように公平に調査しなければ、国民から納得を得られない。国会議員も聖域とせず、調査するべきだ」と話す。
前出の浦野氏もこう強調する。「国税庁は弱きを挫(くじ)き、強きを助けている。多額の脱税を見つけ、検察庁に告発しなければ、それは法における不作為だ」
◆デスクメモ
政治資金規正法は、政治資金を「民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財」とする。浄財ゆえに不可侵ということで、検察も国税庁も遠慮しているのか。だが、本来は逆では。そのようなお金を受ける立場だからこそ、一般国民よりも厳しく是非を問われるべきだろう。(歩)
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