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日銀・植田総裁が「思考停止」に…!? アメリカ当局に翻弄される「金融正常化」、その日和見主義にみる「金融敗北」の無残な中身/現代ビジネス
鷲尾 香一 によるストーリー
https://www.msn.com/ja-jp/money/other/%E6%97%A5%E9%8A%80-%E6%A4%8D%E7%94%B0%E7%B7%8F%E8%A3%81%E3%81%8C-%E6%80%9D%E8%80%83%E5%81%9C%E6%AD%A2-%E3%81%AB-%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%BD%93%E5%B1%80%E3%81%AB%E7%BF%BB%E5%BC%84%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B-%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%AD%A3%E5%B8%B8%E5%8C%96-%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%97%A5%E5%92%8C%E8%A6%8B%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%AB%E3%81%BF%E3%82%8B-%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%95%97%E5%8C%97-%E3%81%AE%E7%84%A1%E6%AE%8B%E3%81%AA%E4%B8%AD%E8%BA%AB/ar-AA1n8PBG?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=5006e9470360426ca98e7ac0f854237f&ei=11
植田総裁の「爆弾発言」
日銀の金融政策正常化に“暗雲”が立ち込めている。
米国の利下げ政策への展開に加え、自民党の政治資金パーティーを巡る政治の混乱、さらには、今年1月1日の能登半島地震が金融政策変更の抑制要因となる可能性があるからだ。
筆者は一貫して早期に金融政策の正常化に向かうべきだと考えているが、こうした抑制要因に懸念を持っている一人である。
日銀は昨年12月18・19日の金融政策決定会合で、金融政策を据え置いた。その1週間前の12月12・13日に行われた米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げ政策への転換を打ち出していたが、これを見て「日銀は日和見に走ったのではないか」と懸念している。
「金融政策は各国独自の要因をみつつ、独立に遂行するということになっている」
19日の会見で、日銀の植田和男総裁はこう答えた。至極当然の話である。しかし、その後に続く発言で、いまの日銀の姿勢が分からなくなった。日銀の金融政策は米国の利下げが影響するか、との質問にこう答えたからだ。
「FRBが動きそうだから、その前に焦って私どもの政策変更をしておく、そういうような考え方は不適切だ」
だったら、これまでの植田総裁の発言は何だったのか、筆者はそう思わずにはいられなかった。
植田総裁が続けていた「正常化チャレンジ発言」
筆者は12月11日の現代ビジネスの寄稿『ついに日銀・植田総裁が決断へ…10年ぶりの「円安政策終了」でドル円は「1ドル130円台」に突入!そのとき「儲かる人」と「損する人」』で、日銀は12月の金融政策決定会合で、長期金利をゼロ%程度に誘導する長短金利操作(YCC)のさらなる柔軟化はもとより、ゼロ金利政策の終了にまで踏み込む可能性があると予想した。
結果、この予想は実現することはなかったが、筆者の予想の背景には、9月9日付の読売新聞のインタビューで植田総裁があった。
「賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、(マイナス金利解除を含め)いろいろなオプションがある」「年末までに十分な情報やデータが揃う可能性はゼロではない」
このように金融政策正常化の含みを持たせた発言を行った直後の10月の金融政策決定会合では、YCCの柔軟化が行われた。
さらに、12月7日に参議院財政金融委員会に参考人として出席した植田総裁は、金融政策に対する今後の取り組みについて「チャレンジングな状況が続いている。年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になるとも思っている」と発言したことも、筆者の予想を補強した。
つまり、「一段とチャレンジングな状況」という発言が、12月の金融政策決定会合で何らかの政策変更を行う「強いシグナル」と読み解いたわけだが、市場も同様の実感を持ったことは、植田総裁の発言以降、為替相場が約3円も円高に振れたことに表れていた。
ところが、米国のFRB(米連邦準備制度理事会)が12月13日に、利上げ政策の終了と同時に利下げ政策への転換を打ち出したことが、日銀に影響したのだろう。結局、日銀は18・19日の政策決定会合で、政策変更に踏切らなかった。
日銀は「フォワードガイダンス」を明確化せよ
FRBパウエル議長は、FOMC後の記者会見で「利下げ時期が次の問題であり、それを検討し議論している」と明言。さらに、同時に公表されたドットチャート(経済見通し)では、24年に0.25%の利下げを3回行う可能性が高いことまで示してみせた。
FRBやECB(欧州中央銀行)は、将来の金融政策の方向性を示すファワード・ガイダンスを重視する傾向にある。しかも、それは非常に明確に堂々たる態度で行われる。
米国の利下げ政策への転換で、為替相場は一気に4円以上も円高に振れた。さらに、24年に米国が少なくとも3回の利下げを行う可能性があることが示されたことで、今後の為替相場が円高トレンドに転換することもはっきりした。
一方で、筆者がこれまでも指摘してきたことだが、日銀はフォワードガイダンスが一向に上達しない。
植田総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で、先の参議院財政金融委員会での「チャレンジングな状況」発言の意図を問われ、「今後の仕事の取り組み姿勢一般について問われましたので、2年目にかかるところですので、一段と気を引き締めてというつもりで発言を致しました」と発言した。金融政策に対して問われた質問を、個人的な仕事の取り組み姿勢にすり替えてしまった。
これでは、日銀は米国の金融政策の動向に左右されていると見られても仕方がないだろう。
こうした独立性の希薄な運用は、政治からの影響も大きいことを自ら示しているようなものだ。
日銀関係者は、「自民党の政治資金パーティーでの不正問題による政治の混乱も、日銀が金融政策変更を躊躇する要因になりかねない」と指摘する。
そこに、能登半島地震という想定外の大震災発生が加わってしまったのだ。日銀の金融政策変更のタイミングは、非常に判断が難しくなったのではないか。
さらに後編記事『日銀「1・23会合」で植田総裁は「覚悟」を示せ…!1ドル120円の円高反転の「金融正常化」と「2%物価目標」のジレンマのヤバすぎる正体』では、植田総裁を苦しめる金縛りの正体に迫っていく。
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