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憲法と安全保障 平和希求のあり方探る時/毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230503/ddm/005/070/040000c
ロシアによるウクライナ侵攻が続き、東アジアの安全保障環境も厳しさを増す中、76回目の憲法記念日を迎えた。
日本国憲法は9条で戦争放棄と戦力不保持などをうたう。その憲法の平和主義と整合性を取りつつ、防衛力を整備する考え方が「専守防衛」の原則だ。
自衛隊は、自衛のための必要最小限度の実力を持つにとどめ、「盾」に徹する。日本に駐留する米軍が「矛」の役割を果たすことで成り立ってきた。
理想を掲げる9条に対して、日米安全保障条約は同盟のリアリズムに基づく。
「憲法と日米安保がお互いの緊張関係を保ち、一つの円にはならない。これこそが戦後日本の政治外交の選択肢である」
宏池会(岸田派)前会長の古賀誠・自民党元幹事長は、雑誌「世界」のインタビューで語った。
変容する専守防衛原則
かつて宏池会会長だった大平正芳元首相が唱えた「楕円(だえん)の哲学」を援用した。二つの軸が緊張した均衡関係にある方が、物事がうまく進むという考え方である。
憲法は、先の大戦の悲惨な体験を踏まえて生まれた。連合国軍総司令部(GHQ)占領下で制定されたが、平和を願う国民は歓迎した。だからこそ定着し、今日まで続いている。
根底には、1928年のパリ不戦条約から脈々と続く思想がある。第一次世界大戦の反省を受けて戦争放棄を宣言したものだ。
だが、国際情勢の変化に伴い、戦後日本を規定してきた楕円の二つの軸の関係は揺れ動いている。
自衛隊の存在は時代を経るごとに大きくなり、国際社会における日本の役割も拡大した。冷戦終結後には日米安保が再定義された。
第2次安倍晋三政権下では集団的自衛権の行使が可能となる安全保障関連法が施行され、自衛隊の米軍との一体化が進んでいる。
政府が昨年末に閣議決定した安全保障3文書の改定は、その流れの延長にある。「新時代リアリズム外交」を掲げる岸田文雄首相は、日米安保条約締結や安保法制などと並び、「日米同盟の強化にとって、歴史上最も重要な決定の一つ」だと位置づけた。
3文書には「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有が明記され、政府は防衛関連予算を2027年度までに国内総生産(GDP)比2%に倍増させる方針だ。戦後の安保政策の大転換にあたり、専守防衛のあり方が変容している。
米国は同盟国と協力して抑止力を高め、軍事大国化する中国に対抗する戦略を取っている。日本政府の防衛力強化は、それに呼応した動きだ。
安全保障上、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力を各国は必要としている。それが国際政治の冷徹な現実だ。ただ、緊張緩和の努力を欠いたまま抑止力強化に走れば、際限のない軍拡競争を招く「安全保障のジレンマ」に陥る恐れがある。
新たな歯止めの議論を
中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などを受け、防衛力整備に理解を示す世論は広がっている。一方で、平和を願う国民の思いは揺らいでいない。
戦後日本の指針となってきた9条の理想を忘れることなく、目の前の現実に対処するしなやかさが求められる。時代状況に合わせて専守防衛のあるべき姿を考える必要がある。
だが、首相は反撃能力と憲法の整合性を問われると「安保環境は大きく変化した」などと言うだけで、問題に向き合っていない。
専守防衛の観点から自衛隊は何ができ、何ができないのか。新たな歯止めが欠かせない。そのために重要な役割を担うのが国会だ。
防衛力の強化には裏付けとなる予算が必要となる。自衛隊の活動範囲や装備がなし崩し的に拡大しないよう、国会審議で野党は厳しく問いただし、政府は正面から答えなければならない。
外交努力も不可欠である。
日本外交の基軸は日米同盟だが、隣国の中国との関係は経済面などで死活的に重要だ。激化する米中対立に翻弄(ほんろう)されないよう、日本には楕円の知恵を生かした戦略が求められる。
力だけでは平和や安定を維持できない。緊張緩和に向けて地域の国々と対話を重ね、経済・文化の交流を深めることが肝要だ。平和を希求する重層的な取り組みに努めなければならない。
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