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知って得する! 年金特集/竹田忠・nhk
2022年05月06日 (金)
竹田 忠 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/467856.html
きょうは、知って得する年金特集です。
年金制度が4月から大きく変わりました。
受け取る額が、本人の選択しだいで、さらに大きく変わることになりました。
いつから、どうやってもらえばいいのか?
担当は竹田忠解説委員です。(たけだ・ただし)
Q@年金制度が変わる、これは暮らしを大きく左右する話しですよね。
A
そうなんです。
やはり年金というのは、人生設計の柱ですから。
今回変わった点、たくさんあるんですが、
きょうはこの3つを見てみます。
▼さらば年金手帳
▼“繰り下げ”の上限が75歳に
▼“働く年金”が使いやすく
QA最初は、さらば年金手帳。
年金手帳って、年金制度の象徴みたいなものですよね?
それが、さらば・・なんですか?
A
そうなんです。その手帳が実は、4月から新規発行が停止されてます。
年金手帳は、本人に基礎年金番号を知らせることが大きな役目だったんですが、
今後はかわりに「基礎年金番号通知書」というものを、20歳になる人に送ると。
通知書は、お知らせの文書と一体になっていまして、
ミシン目で切り離すと、クレジットカードの大きさになります。
この通知書は、すでに年金手帳を持っている人には発行されませんので、
手帳をお持ちの方は、今後も、番号の控えとして
大切に保管しておいてほしいと厚生労働省では呼び掛けています。
QB次は“繰り下げ”の上限が75歳に。
“繰り下げ”というのは、まだなじみのある言葉ではないですよね?
A
そうなんです。でもこれが今回の最大の改正点なんです。
どういうことかというと、
年金のもらいはじめは65歳が標準なんですが、
これはあくまで標準であって、本人が希望すれば、早くも遅くもできる。
65歳より早くするのを“繰り上げ”、
遅くするのを“繰り下げ”といいます。
以前は、60歳から70歳までの間の選択、だったんですが、
新たに最大75歳まで繰り下げできるようになった。
これによって、年金の額も、変わってきます。
たとえば、もらいはじめは一ヶ月単位でずらすことができまして、
繰り下げの場合は、一ヶ月遅らせるごとに0.7%、額が増えます。
なので、65歳でもらえる額を100とした場合、
70歳まで遅らせると142%
そして最大、今回改正された75歳まで遅らせると184%になります。
QC1.8倍ですか!
A
そうなんです。逆に、繰り上げの場合は、額が減ります。
一ヶ月早めるごとに0.4%減額されます。
その結果、最も早く、60歳からもらうと、年金は76%に減ります。
そして、注意が必要なのは、
・繰り上げでも、繰り下げでも、
いったんその額でもらいはじめたら、あとから変更はできません。
・その額が一生、続くことになります。
QDもらう時期をずらすだけで、額がこんなに変わって、
しかも、いったん選んだら変更できない。
これは、相当、判断が難しいですよね、悩みますね。
そもそもなぜ、こういう仕組みにしたんでしょう?
A
一言でいえば、人生100年時代に備えるためです。
どういうことかというと、
現在、平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳。
ただ、これはあくまで平均ですから、もっと長生きする人が増えます。
厚生労働省の推計では、およそ20年後には、
65歳の人が90歳まで生きる割合は
男性は42%、女性は68%に達します。
さらに100歳まで生きる割合は
男性で6%、女性で20%にのぼります。
まさに、人生100年が、現実になりつつあるわけです。
この長くなった老後を支えるためには、
働けるうちは、できるだけ長く働いて、収入を維持して
働けなくなったら、それまでの繰り下げで増やしておいた年金を
その後一生もらう、
そうすればより安心できるのでは、という狙いなんです。
QE安心して長生きできる、というのはみんなの願いだと思うんですけど、
でも、みんながみんな、長く働けるわけではないし、
お金がなくて、早く年金がほしいという方もいらっしゃいますよね?
A
おっしゃる通りです。そこはいろんな事情があって、
いつからもらうかは、一人ひとりの判断なわけです。
そうすると、どうしても気になってくるのが、
年金を標準でもらう場合と、ずらしてもらう場合とで
受け取る年金の総額が、どう違ってくるのか?違わないのか?
これについて厚生労働省は、
年金は損得で考えるものではない!という立場なので
積極的な説明は控えていますが、
でも、年金を受け取る側としては、どうしても気になりますよね。
さきほど触れたように、
年金の増額率と減額率はそれぞれ公表されてますので、
それをもとにすれば、実はだれでも大体の計算はできるんです。
それがこのグラフです。
縦軸が年金の総額で、横軸が年齢です。
たとえば、70歳からもらいはじめると、
受け取る年金の総額は、おおよそ82歳で、
65歳から標準でもらう総額を追い越します。
また、75歳からもらい始めた場合は、
およそ87歳で、65歳の標準に追いつき、追い越します。
つまり、繰り下げを選んだ場合は、
何歳からもらおうと、ほぼ12年たてば、
65歳の標準に総額で追いつき、追いこす、という計算になります。
ちなみに、75歳と、70歳の場合を比較すると、
75歳が、70歳の場合を追い抜くのは
およそ92歳、ということになります。
なので、この場合はかなり長生きすることが必要になる計算です。
一方、繰り上げの場合では、
最も早く、60歳からもらい始める総額は
81歳で、65歳からの総額に抜かれます。
このように、いつからもらえば得か損かというのは
結局は、その人の寿命しだい、ということになってくるわけです。
QFその人の寿命しだい、という話しですが、
そうなると、年金を繰り下げて待っている途中で
その人が亡くなってしまったら、どうなるんですか?
年金を全くもらえないまま、ということになるんですか?
A
はい、その場合は、遺族の方が受け取れます。
たとえば、70歳まで繰り下げている途中の人が
69歳で死亡してしまった場合は、
65歳から、亡くなるまでの間、
標準でもらえるはずだった年金を、
遺族の人が、年金の時効5年の範囲内で
まとめてもらえることになります。
QGそういうことですか。
年金をいつからもらうか、という判断が、
こんなに大変なものとは知りませんでした。
で、その繰り下げや繰り上げをする場合、
その判断をいつ、どうやってすればいいんでしょう?
A
はい、そこも重要なポイントですよね。
ただ、たとえば年金を繰り下げる場合、
いつまで遅らせるか、ということを最初から決めておく必要はないんです。
というのも、65歳になる3か月ほど前に日本年金機構から書類が届きます。
ここで手続きをしなければ、自動的に繰り下げとみなされます。
ですから、とりあえず、元気で働けるうちは、繰り下げをしてみて、
そろそろ仕事をやめようと思ったら、
そこから年金事務所に行って手続きをして
増額した年金をもらいはじめる、ということができるんです。
一方、繰り上げの場合は、できるだけ早く、
年金事務所に行って相談することが必要です。
QHそういうことですか。
最後の三つ目、働く年金が使いやすく、ですが。
A
はい、これも長く働くことを後押しする改正です。
具体的には、在職老齢年金と言われる、
働きながらもらう年金が、カットされにくくなった、という話しなんです。
対象となるのは、60歳以上65歳未満の人です。
たとえば、給与が30万円、年金が10万円の場合、
基準額の28万円を超える、12万円が超過となり、
この超過分の半分の6万円が年金からカットされていました。
結果、10万円の年金がわずか4万円になっていた。
しかし改正後は、
この基準額が47万円に上がって、年金がカットされにくくなって、
この場合は、年金が全額受け取れるようになった、ということなんです。
人生100年、年金制度をうまくつかいこなすことが
今後ますます重要になってくると思います。
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