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「緊急事態宣言拡大 どうなる日本経済」(時論公論)/櫻井玲子・nhk
2021年08月18日 (水)
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/453338.html
櫻井 玲子 解説委員
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新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、日本経済の先行きに、懸念が高まっています。
今週発表された、最新のGDPの数字をみても、景気の勢いは依然として弱く、本格的な回復への道のりは、不透明です。
緊急事態宣言の対象や期間が広がる中、先行きはどうなるのか。
そして、日本経済が直面する課題は何か。を考えます。
【鈍い回復】
まずは、ここまでの日本経済の動きをみていきます。
今週発表された、ことし4月から6月の3か月間のGDPは、前の期にくらべて年率換算で1.3パーセントのプラス成長となりました。
2期連続のマイナス成長は免れたものの、前の期がマイナス3.7パーセントだったことを考えると、この落ち込みを取り戻すほどの力強さは、なかったことが、わかります。
今回好調だったのは設備投資と輸出。
デジタル化に向けた企業の投資が増えたほか、日本より一足早く回復をみせている、アメリカや中国向けの輸出が伸びました。
一方、個人消費は、店の休業や時短が続く中、前期比プラス0.8パーセントにとどまりました。
政府が外出自粛を要請していた時期にもかかわらず、外食や娯楽といったサービス消費が予想外に伸び、市場関係者を驚かせましたが、それでも、コロナ拡大前の水準とくらべると、6.5ポイントも下回っていて、「正常化」には、ほど遠い状態です。
振り返れば、ことし前半で、東京で緊急事態宣言が出されていなかったのは、6か月のうち、正味2か月足らず。
製造業を中心とする企業の活動で、この難局を、なんとか持ちこたえた、というのが実状でしょう。
【崩れた景気急回復シナリオ】
では、この先の景気の見通しは、どう考えればよいのでしょうか。
夏のはじめごろには、ワクチンの接種のスピードが加速し、秋以降には、感染症に一定の収束がみられるのではないか。
その上で外食や宿泊の分野で「リベンジ消費」といわれる爆発的な消費が起きて、景気もX字回復するのでは、というバラ色のシナリオを期待する声が、多く、聞かれました。
しかし、デルタ株という感染力が従来型にくらべて2倍以上はあるといわれる変異株の出現と、医療体制のひっ迫で、そのようなシナリオはいまや崩れたといえるでしょう。
政府は、10月までに、国民の8割がワクチンを2回接種できる体制を作る、と説明しています。
ただ、接種が目標どおり、順調にすすんだとしても、景気回復の時期は、年末から来年に「後ずれするのは間違いない」というのが多くの専門家の見方です。
足元では、緊急事態宣言の対象が13都府県に拡大され、期間も、来月12日まで延長されました。
その経済損失は1兆円規模にのぼるとみられています。
ファストフード店や学習塾など、年齢が低い人たちが集まる場所でも、感染が広がっています。
【厳しい見通し】
また、心配なのはこれまで好調だった企業部門にも懸念材料が浮上していることです。
海外では、東南アジアでの感染拡大により、部品の供給が滞るケースも出始めています。
原材料価格の高騰もあり、企業の収益が減るのも、懸念されます。
「年内にコロナ前の経済規模を回復する」という政府の見通しも、達成は、難しいのでは、という指摘があがっています。
そして、さらなる長期戦への覚悟が必要だ、という厳しい声もあがっています。
「変異株の出現で、国民がワクチンを2回打てば、みんなが無条件にマスクを外せる生活に戻る、というわけではなくなった。経済の正常化が一気にすすむかは疑わしい」というのです。
コロナワクチンの接種で先行しているイスラエルのように、3回目のワクチン接種を始めた国もあります。
追加の接種や、行動制限を求められる局面が、長く続く可能性もあります。
【どう考える日本経済の課題】
さて、このように、先行きの見通しが不透明な中、どのような対応策が、考えられるのでしょうか。
新型コロナウイルスの1年半にわたる影響で、人々の間で「コロナ慣れ」「コロナ疲れ」が起きているという指摘もあります。
となれば、まずは政府ができる限り、時間軸も含めた見通しや政策の優先順位を示し、その実現のための行動を急ぐことが、カギになるのではないでしょうか。
例を一つあげてみます。政府や自治体は今、ワクチンの接種を最優先課題と位置づけ、若者への呼び掛けも強めています。
ですが、そもそも予約がとれない!という状況は依然、続いています。
また、大企業の正社員は職域接種がすすみ、ワクチン休暇もとれるけれど、中小企業で、あるいは非正規で働いていると、ワクチン休暇の制度もなく、接種が遅れている、という声もききます。
そこで、たとえば、ワクチンが2巡するまでの2か月間を、対策の集中期間と位置づけ、医療体制の大幅な拡充、テレワークやワクチン休暇の徹底、治療薬の確保と普及を一気に実現するために、あらゆる手立てを尽くす、といったことはできないか。
また、医療崩壊を食い止めるためにも、財政的な支援と具体的な行動規制を、セットで打ち出す局面にきているという指摘もあがっています。
【困っている人達への支援】
もう一つの切実な問題は、待ったなしの支援を必要としている人たちへの迅速な対応です。
コロナの影響が長期化する中、日本経済の「二極化」、つまりコロナ禍でむしろ好調な企業や業種と、苦境にたたされている人たちとの差は、開いています。
こうした中、コロナ対策として計上された昨年度の予算が執行されず、今年度への繰越金が30兆円にも、のぼったことが先般、話題になりました。
企業の資金繰りを、実質無利子無担保で支援するおカネや、休業要請に応じた飲食店への協力金、それに中小企業の業態転換を支援する補助金などが、年度内に使われなかったためです。
不正を防ぐための審査に時間をかけたり、都道府県の事務作業が追い付かなかったり、といった事情や、支援を特定の時期に集中させず、分散させたい、という狙いがあるのはわかります。
ただ、ほんの少しの支援の遅れが、人々の暮らしに致命的な打撃を与えることがあるのも事実です。
今すぐ、必要とする人に支援を届けるという点にもっと力を入れてほしいと思います。
【格差が固定化する懸念】
最後に、より中長期的な課題についてです。
コロナの影響で、実は、格差の拡大や、人口減少といった、日本がこれまで抱えてきた問題に拍車がかかっています。
富裕層が、金融緩和の影響による株価の値上がりで資産を増やす一方で、非正規で働く人は仕事が減って貯金を取り崩し、生活ラインぎりぎりの子育て家庭がその日の食事から、子供の進学先まで、頭を悩ませる日々が続いています。
こうした格差がコロナの長期化で、固定化すること、が心配されます。
また婚姻件数、つまり結婚した人の数も、去年は戦後最少となり、少子化を加速させるのではと懸念する声もあがっています。
こういった構造的な問題にも目を向け、生活に苦しんでいる世帯への支援や、必要に応じた支給条件の緩和、といった地道な政策を、滞りなく行う。
また、子育て世帯への思いきった負担軽減といった、次の世代にとっても意味のある投資に、重点を置くべきだと考えます。
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先行きの不確実性が高まる中、日本経済の本格的な回復を実現するには、効果的な感染防止対策や医療体制の充実、それに困窮者世帯や若い世代への支援、そのすべてを並行して、迅速に行うことが不可欠です。
医療と経済を支えるための総力戦が、今、求められています。
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