04. 2014年12月09日 07:54:22
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ロシアのガス輸出:パイプライン計画撤回の波紋 2014年12月09日(Tue) The Economist (英エコノミスト誌 2014年12月6日号)ロシアの大規模パイプラインの計画撤回は友好国に1つの教訓を与えた。 天然ガスのパイプラインは、エネルギーだけでなく影響力も輸出する。ロシアが計画していた「サウスストリーム」プロジェクトは、欧州南東部で影響力を取り戻そうとする試みの柱となる400億ドル規模の旗艦プロジェクトだった。 欧州連合(EU)が支持する、カフカス地方からガスを運ぶ「ナブッコ・パイプライン」が頓挫した後、ロシアの計画は多くの支持を得た。支持した国の中には、クロアチア、スロベニア、そして今、意志の強いビクトル・オルバン首相の下で独自の道を歩んでいるハンガリーのほか、伝統的にクレムリンと友好的な国々(オーストリア、ブルガリア、イタリア、セルビア)が含まれていた。 旗艦プロジェクトが突如撤回された理由 今年、サウスストリームはEUの権威に課題を突きつけていた。
欧州委員会は、パイプライン敷設計画は違法だと述べていた。EUの自由化されたガス市場の規則では、パイプラインとパイプラインを流れるガスの双方を企業1社が所有することができないからだ。 サウスストリームの関係国は、規則の適用除外を求めていると語っていた。 ところが12月1日、トルコを訪問中だったロシアのウラジーミル・プーチン大統領が突如、プロジェクトは中止されたと発表した。この方針転換はプーチン氏の味方を激怒させ、その他すべての人を当惑させた。一体何がロシアに、国の信用を台無しにするようなことを促したのか? 方針転換の主な理由は、お金だ。原油価格の急落は、ロシアの国家財政と企業の財務に多大な負担をかけた。 株式の大半を政府が所有するロシアの巨大エネルギー企業ガスプロムは最初からサウスストリーム計画を気に入っていなかった。サウスストリームは高くつくプロジェクトで、事業的な根拠よりも政治的な根拠(ウクライナを迂回し、欧州で影響力を買うこと)の方が圧倒的に大きかった。 EUのガス消費は減少している。ガス価格も下落している。一方で競争は激化している。従来、ロシアに100%依存していたリトアニアは、液化天然ガス(LNG)の輸入基地を開設したばかりだ。 ブルガリアの元政治家でエネルギー専門家のユリアン・ポポフ氏いわく、もう1つの理由は、加盟国に対するEUの圧力が奏功したことだという。 イタリアは11月、サウスストリーム計画は優先事項ではないと述べた。オーストリアは支援を減らした。ブルガリアは、ブリュッセルとワシントンからの活発なロビー活動を受けて、エネルギー政策(および政府)を変えた。 プーチン大統領の計算 プーチン露大統領、南欧パイプライン計画の打ち切りを突如表明 プーチン大統領はトルコ訪問中にサウスストリーム計画の撤回を発表した〔AFPBB News〕 ロシアの代替計画は、トルコへのガス輸出を増やすことだ。だが、今年発表された中国向けの新規ガス輸出と同様、そのような取り決めには高額な甘い汁が必要になる。 プーチン氏は、エネルギーに飢えた欧州諸国が計画撤回コストに対する不満をブリュッセルにぶつけることを望んでいるのかもしれない。ブルガリアは4億ドルの通過料収入を失うことになるとプーチン氏は述べた。 だが、プーチン氏のかつての友人たちが別の教訓を学ぶ可能性の方が高そうだ。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42401 高齢化する欧州には移民の新しい血が必要だ 2014年12月09日(Tue) Financial Times (2014年12月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 社会の高齢化、労働人口の減少、生活水準の停滞によって定義される欧州では、移民は部分的な経済的解決策であると同時に、それ自体が政治問題でもある。 移民と、移民が労働市場と福祉制度に与える影響は間違いなく、来年の英国の総選挙で熱を帯びた争点となり、北欧諸国からギリシャに至るまで、さまざまな国で政治的論議を形作ることになるだろう。 英国で躍進続ける反移民政党UKIP 欧州委員会のある報告書は、2060年までの移民と人口増加の予測を盛り込んでおり、この論議の炎に油を注ぐと見られる。こうした推定が、思惑を抱く政治家ではなく、党派に属さない欧州連合(EU)の専門家の手による研究成果だという事実は、原則として予測の信憑性を高める役目を果たす。 欧州議会選、英で反EU政党が勝利へ 今年5月の欧州議会選挙で大躍進した英国独立党(UKIP)は、最近の英国議会の補欠選挙でも立て続けに勝利した〔AFPBB News〕 11月27日に英国家統計局(ONS)が発表した統計によると、2014年6月までの1年間で英国への移住者の純流入数が26万人に急増した。 この予想外に高い数字は、反EU、反移民を掲げる英国独立党(UKIP)が2カ月足らずで2度目となる議会補欠選挙での勝利を収め、与党・保守党に衝撃を与えた後に出てきたものだ。 最新の世論調査は、UKIPが次の総選挙で投票総数の14〜18%を獲得し、第3党となる可能性があることを示唆している。この右派のポピュリスト政党は、それが正しいにせよ間違っているにせよ、自党の切り札の1つは、高いと認識されている移民の水準に対する国民の不安だという立場を取っている。 2060年までに英国への移民純流入が900万人を超えると予測する欧州委員会の報告書は、UKIPのレーダーに引っかからなかったのだろうか? もしそうだとすれば、恐らくそれは、報告書が「2015年高齢化報告:基本的な前提と予測の方法論」という味気ない題名だったためだろう。それでも、欧州委員会の予測は注目に値する。 注目すべき欧州委員会の報告書の中身とは? 報告書は、2060年までにEU加盟国に流入する移民の純増数が合計5500万人になると予想している。ほぼ70%がEU加盟28カ国のうちのわずか4カ国に向かい、イタリアに1550万人、英国に920万人、ドイツに700万人、スペインに650万人流れ込むという。 この予測が正確ならば、移民の政治的影響は英国を超えて大きく広がることになる。考え方がUKIPに近いイタリアの反移民政党・北部同盟に対する支持は、ポー渓谷以北の牙城を超えて南へ広がっている。 移民排斥運動はドイツやスペインではそれほど目立たないが、オーストリア、フランス、オランダでは政治光景の一部として定着している。 欧州委員会は、何千万人の移民がどこからやって来るかについて予測していない。だが、世界の人口に占めるアフリカのシェアが2010年の15%から2060年には28%に上昇すると予測されていると指摘する。一方、人口全体に占める欧州のシェアは、移民の純流入にもかかわらず、7.2%から5%へ低下すると予想している。 全体としては、EUの人口は昨年の5億700万人から2060年には5億2300万人に増加すると予想されている。とりわけ興味深いのは、個々の国の予測だ。英国の人口は6410万人から8010万人へと増加し、EUで最も人口の多い国になる見込みだ。フランスは6570万人から7570万人に増加するが、ドイツは8130万人から7080万人へ減少すると見られている。 英国がEUにとどまり、スコットランドが英国から分離しなければ、英国はEUで最大の相対的影響力を持つことになり、その影響力は例えば、欧州議会での議席数増加につながる。しかし、この影響力の拡大は、部分的には、英国へやって来る数百万人の移民のおかげなのだ。 高齢化するEU、2060年には65歳以上の人口と生産年齢人口が1対2に 出生率、平均寿命、労働市場の進化など、個々のEU加盟国に関するさまざま仮定が欧州委員会の報告書の基礎を成している。報告書の最も重要な結論は、欧州社会はあまりに急速に高齢化しているため、たとえ移民の純流入数が多くても、EUは2060年までに、65歳以上の人口と生産年齢人口の比率が現在の1対4ではなく、1対2になってしまうということだと言えるかもしれない。 このように粛然たる推定は、移民の受け入れが政治的選択ではなく、むしろ経済的な必要性であるように見える理由を明確にしている。もしかしたら、UKIPは向こう4カ月間で、欧州委員会の報告書のコピーを英国の全有権者の玄関に届けるよう手配すべきなのかもしれない。 By Tony Barber http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42405
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