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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第96回 10月の嵐
http://wjn.jp/article/detail/9391208/
週刊実話 2014年10月23日 特大号
1年前の10月1日に“何”があったか、覚えておいでだろうか。筆者は、明確に記憶している。
そう、安倍晋三総理大臣が記者会見し、消費税率を'14年4月に8%に引き上げることを発表したのである。
安倍総理の会見を受け、筆者は本連載『第47回 国民経済の崖』において、
《安倍総理大臣が'14年4月に消費税を現行の5%から、8%へと引き上げることを発表した。結果的に、我が国の国民経済は'14年4月に「崖」に突き当たることが確実になった。》
と、書いた。
あれから1年が経過し、日本経済は実際に「国民経済の崖」へ激突した状況にある。4〜6月期のGDP成長率が年率7.1%減という衝撃的な数値になってしまったことは記憶に新しいだろうが、その後も状況は好転していない。
9月30日に総務省が発表した8月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり28万2124円で、物価変動の影響を除いた実質値で対前年同月比4.7%の減少となってしまった。
さらに、同30日に厚生労働省が発表した8月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価上昇分を加味した実質賃金指数が同2.6%減で、消費増税による物価上昇に賃金上昇が追いついていない現状が露わになった。筆者が注目している「決まって支給する給与」で見ると、実にマイナス3.3%である。
実質賃金(決まって支給する給与)がマイナスになるのは、これで16カ月連続になる。日本国民は、デフレが深刻化した時期と同様に、現在も貧困化に苦しめられていることになるわけだ。
結局のところ、実質賃金が下落し、さらに家計貯蓄率が落ち込んでいる国、すなわち、
「国民が貧困化し、家計に余裕がなくなっていく国」
において、消費増税を強行した以上、政府が期待していた、
「反動減の反動増」
は、起きえないという話なのである。
と言うより、貧困化が進む国において消費税を増税し(=実質賃金の押し下げ)、反動減の反動増が起きるというロジック(論理)があるならば、是非とも教えて欲しいものだ。
さすがに、7〜9月期の経済成長率が対前期比で「マイナス成長」ということにはならないとは思うが、いずれにせよ政府が目論んでいた「V字回復」は海の藻屑と消えた。
これには甘利明経済再生担当大臣も、
「(駆け込み需要の)反動減の収束に手間取っている」
と、景気の失速を認める方向に発言を修正しつつある。
8月の経済指標は、支出面(家計の消費支出)や所得面(実質賃金指数)に加え、生産面も悲惨な状況になっている。同じく9月30日に発表された鉱工業生産指数の速報値では、「生産・出荷の減少」と「在庫の増大」が継続していることが明らかになったのだ。
具体的な数値を書いておくと、生産(対前月比、以下同)がマイナス1.5、出荷がマイナス1.9、在庫がプラス1である。対前年同月比でみると、生産マイナス2.9、出荷マイナス3.5、在庫プラス4.7。
予想通り、生産・出荷が減少し、在庫が増加するという「最悪」の組み合わせに終わったわけだ。
'97年を参考にすると、今後の企業は「生産調整」に突入し、国民の所得を引き下げ、消費を減らし、さらに在庫が積み上がり、またもや生産調整が進むという悪循環に突入することになるだろう。
というよりも、8月の鉱工業資産指数速報値を見る限り、企業はすでに生産調整に入っている。それにもかかわらず、7月と比べてすら在庫が積み上がっているということは、今後、さらに生産調整が進むことを示唆しているわけだ。
何しろ、8月の生産指数は「対前月比」でもマイナスになってしまっている(7月は、対前年比はマイナスだったものの、対前月比はプラスであった)。
9月は、例により政府発表では「増加の見込み」となっているが、率直に書かせてもらうと、「見込み」「期待」「予測」といった不確定な数値は、もはやどうでもいい。
政府の「失政」により景気が失速し、国民が貧困化しているというのが、現実の日本の姿なのだ。
安倍政権は、現時点で消費税の再増税凍結と緊急経済対策を決断するべきである。さもなければ、安倍総理が“第2の橋本龍太郎”となることは確実だ。
それなのに、驚くべきことに、安倍総理は9月23日にNYで記者会見した際に、今年秋の臨時国会において、経済対策のための'14年度補正予算案を提出する可能性について、
「まったく考えていない」
と否定したのである。
また、谷垣禎一幹事長は、内閣改造前の8月18日の時点で、
「(消費税を)10%にもっていけない状況になると、アベノミクスが成功しなかったとみられる」
と、語っている。
確かに、「緊急経済対策」や「消費税再増税の凍結」は、安倍政権の経済政策(消費増税含む)が失敗であったということを認めることになるだろう。とはいえ、現実に失敗だったのだ。
現在の安倍政権は失政を認めることができず、明らかに間違った道を突き進もうとしている。
ならば、日本国民はどうしたらいいのか。国民一人一人が「真剣に」考える必要があるのである。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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