01. 2014年11月12日 07:14:06
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オバマの大敗は なぜ安倍政権にとって朗報なのか? 3人の共和党上院議員が強力な援軍に 2014年11月12日(Wed) 古森 義久 米国の中間選挙の結果は日本の安全保障にプラスの効果をもたらす――。こんな意外な展望が浮かんできた。なぜなのか、その理由を説明しよう。 11月4日の米国の中間選挙は共和党の大勝利だった。連邦議会の上下両院議員と州知事の選挙ではいずれも共和党側が圧勝した。民主党にとっては「地すべり」的な敗北だった。 この選挙がもたらした最大の政治変化は、上院の多数派が与党の民主党から野党の共和党へと替わったことである。こうした変化の背後には、間違いなく同じ民主党のオバマ大統領の人気低落があったと言える。大統領への信任投票という意味合いもあったのだ。 さて、今回の共和党側の大躍進は今後の米国の内外での政策にどう影響していくのだろうか。それについて様々な観測が語られている。特に日本にとってはTPP(環太平洋経済連携協定)がらみの影響が予測されている。 米国議会の上院では、民主党側にTPPに「待った」をかける保護主義志向の議員が多い。そのことがオバマ大統領のTPP促進にブレーキをかけてきた。だが、新議会で多数派となる共和党は自由貿易志向が強いため、今後は大統領の前進が加速され、日本に市場開放の合意を求める勢いが強まる――という予測である。 だが日本にとって、より注目されるのは、上院の多数派が共和党になることによってアメリカ全体としての対中政策、対日政策が変わり得る可能性だ。オバマ政権の安全保障や外交の政策が複雑な形で変わり得るのである。 外交や安保の政策に強大な影響を及ぼす連邦議会上院 安全保障や外交の政策の遂行は、行政府のオバマ政権がもちろん第一義の責任を有する。だが米国議会、特に上院の果たす役割も大きい。国防費など予算を決める権限、外交人事を承認する権限とそこから生じる発言力、条約を批准する権限から派生する外交や安保の案件への種々の影響力など、連邦議会上院のパワーは強大である。 その上院では、外交委員会や軍事委員会が行政府の外交や安保の政策を審議し、賛否を表明する。審議にあたっては、委員会が特定な政策テーマで公聴会を開き、国務長官でも国防長官でも担当の政権高官を呼び、意見を述べさせ、質問をぶつける。委員会として決議を採択し、政権への支援や抗議を表明する。そして関連予算の内容に注文をつける。この立法プロセスによって、行政府の外交、安保の活動に大きな影響を及ぼすことができるのである。 上院のこうした機能を仕切るのは、多数派の政党から選ばれる各委員会の委員長や副委員長である。これまでは与党の民主党が多数派だったから、同じ党の大統領であるオバマ氏への批判的な言動も限られてきた。だが、その状況は一変する。今度は野党の共和党が委員会の関連活動を牛耳れるようになるのだ。 オバマ政権にとって、共和党多数の上院の動きはすでに不吉な展望を示している。オバマ大統領はイラク、アフガニスタンをはじめ、エジプト、シリア、ウクライナなど米国の関与をとにかく避け、米国のグローバルパワーを縮小させ、権威の失墜をもたらしてきた。同時に世界各地での混乱や動乱が広がった。イスラム教過激派組織の「イスラム国」への対応も遅きに失する感じだった。 オバマ大統領のこうした安保と外交への姿勢に最も激しい非難を浴びせてきたのが上院の共和党の有力議員たちだった。具体的には、軍事、外交の両委員会で活動してきたジョン・マケイン、外交委員会の共和党側筆頭議員だったボブ・コーカー、さらには情報委員会の同筆頭議員だったリチャード・バー氏らである。 例えば「イスラム国」への対策にしても、マケイン議員らは地上軍の投入を求めた。オバマ政権の態度はあまりに消極的であり、その軟弱さが世界各地での動乱を引き起こしたと非難する。 2015年1月に始まる新議会ではマケイン議員が軍事委員長、コーカー議員が外交委員長、バー議員が情報委員長となる見通しとなった。この3委員会がまさに米国の立法府で安保と外交を管轄するのである。反オバマ色の最も強い3議員が3有力委員会の権限を握ってしまうのだ。 オバマ政権とは正反対の3議員の見解 中国や日本への政策をめぐっても、これら共和党有力議員たちの意見はオバマ政権とは180度に近い違いを見せる。 マケイン議員は尖閣諸島については施政権だけでなく領有権も明確に日本側に帰属すると主張し、中国の言動はまったく違法の侵略行為だと断じる。「最も重要な同盟国である日本への中国の侵略を、オバマ政権は正面から非難しない」と指摘し、オバマ政権の日本への態度は有力同盟国をないがしろにしていると批判する。 マケイン議員は2008年の大統領選で共和党の候補となり、オバマ氏に破れた人物だが、長年、上院で活動し、外交委員会と軍事委員会の有力メンバーとなってきた。 コーカー議員も中国の海洋領有権の野心的な拡大を厳しく非難する。尖閣諸島への中国の動きに対しても、オバマ政権にもっと強固な抑止の対応を求める。中国に対しては北朝鮮の核武装を許容していると指摘して、抗議する。その一方で日米同盟を最重視することを唱え、安倍政権の同盟強化策を高く評価してきた。コーカー議員はこれまで外交委員会の共和党筆頭議員だったが、同党の多数派獲得により、外交委員長になることが確実視されている。 バー議員も中国の軍事拡張に一貫して懸念を表明し、中国の日本やフィリピンに対する海洋領有権主張にも疑問を呈する。オバマ政権の対中政策にも批判を述べてきた。同議員が新たな委員長となる情報委員会は、外交や安保を陰で支える政府の情報収集活動を監視する。 上院外交委員会の共和党側にはもう1人、注目すべき議員がいる。若手ホープとして期待され、2016年の大統領選挙での同党候補の一員にも目されるマルコ・ルビオ議員である。 ルビオ議員はこれまで外交委員会の東アジア太平洋問題小委員会共和党側筆頭議員として、日本や中国に絡む課題を果敢に取り上げてきた。マケイン議員同様に中国の海洋領有権拡大を非難し、尖閣諸島については主権は日本側に帰属すると明言する。さらにルビオ議員は「中国は日本領土の尖閣諸島周囲の日本領海に不法に侵入している」とも主張し、オバマ政権に強固な対応措置を取ることを求めてきた。 安倍首相の対外姿勢を賞賛 マケイン、コーカー、ルビオ3議員は昨年から今年始めにかけて個別に日本を訪れ、いずれも安倍首相と個別に会談した。その際にはみな中国の尖閣諸島への行動を「不当な侵略行動」と非難した。同時に3議員とも安倍首相の対外姿勢には賞賛を送った。 ルビオ議員は歴史問題にも関心を示し、安倍首相の靖国神社参拝にオバマ政権が「失望」を表明したことを批判した。戦死者追悼の方法は個別の諸国が独自に決めることであり、特に同盟国の首相の追悼方法を公開の場で叱責することは間違っていると強調するのだった。 新議会の上院で対中政策や対日政策を審議することになる外交委員会は、こうした新たな指導者を迎え、オバマ政権や中国当局に日本の立場や日米同盟の効用を訴えていくことになりそうだ。オバマ政権も上院のそうした動きは無視できない。上院共和党の意向がオバマ政権の政策方針に少しずつ折り込まれていく展望も有力である。 安倍晋三首相は、こうした上院議員たちの援軍を心強く思っていることだろう。中国も、米国連邦議会の全体を代表することになる共和党上院議員たちの発言を無視することはできないと見るのが妥当である。 【政治の行き詰まりにうんざりしていた米国民。あわせてお読みください】 ・「中間選挙後の米国:ワシントンへの帰還」 ( 2014.11.10、The Economist ) ・「共和、民主両党から見放されたオバマ大統領」 ( 2014.10.31、堀田 佳男 ) ・「米国外交を弱めるオバマ大統領の『ヒポクラテスの誓い』」 ( 2014.08.19、Financial Times ) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42182
米国の若年世代、マイナスの貯蓄にあえぐ By JOSH ZUMBRUN 2014 年 11 月 10 日 13:35 JST 世代別にみた貯蓄率の推移(左表)と35歳未満世代の負債と純資産の推移(右表) リセッション(景気後退)後の倹約ムードの後、若い米国人たちは貯蓄をやめてしまった。 35歳未満の成人、いわゆるミレニアル世代(1980年から2000年代前半の間に生まれた若年層)の貯蓄率はマイナス2%となっており、資産を切り崩しているか、借金をしていることが、ムーディーズ・アナリティクスの調査で判明した。これとは対照的に、35〜44歳の年齢層の貯蓄率はプラス約3%、45〜54歳はプラス6%、55歳以上はプラス13%となっている。 貯蓄率のシフトは、過去5年間の経済成長や持続的な雇用創出にもかかわらず、ミレニアル世代の個人的な資金繰りがいかに危うくなっているかを示している。貯蓄の欠如は、リセッション後の経済情勢のなかで、若年労働者の経済的な弱さが増し、予想外の出費のための金銭的な緩衝がない若者たちが少なくないことを示す。そしてそれは転職がますます困難になり、リタイアメントは言うまでもなく、住宅購入のような将来の目標から彼らが一層遠ざかることを意味する。 ムーディーズ・アナリティクスの主任エコノミスト、マーク・ザンディ氏は、「(マイナスの貯蓄は)目先は、支出と経済成長にとってプラスだが、長期的にはこれらの貯蓄しない世帯は将来支出する能力を損なっている」と述べた。同氏は、同社エコノミスト、マスタファ・アケイ氏とともにこの調査統計を算出した。 確かに、米国人の貯蓄は全体としては増加し続けている。商務省の貯蓄に関する主要統計によれば、リセッション以降の全国的な貯蓄(率)増加が示されている。ベビーブーマーやその他の比較的高齢な世代がリセッション期間中に培った慎重な貯蓄習慣を維持しているためだ。 しかし、新たなムーディーズ調査では、貯蓄率の様相が世代別集団の間でいかに多岐にわたっているかが示されている。同調査は、連邦準備制度理事会(FRB)が開発した技術を用いて、FRBの「消費者金融調査」と「米国金融会計」報告を統合して算出している。 26歳のエミリー・ターナーさんは2010年にビラノバ大学を卒業し、現在メリーランド州南部に住んでいる。デジタルコンサルタント兼ウェブデザイン会社からもらう給与の大半は貯蓄に回らないし、株式などに投資する機会もこれまでなかったという。 26歳のターナーさんは、給与の大半は交際費や旅行などに消えてしまうと話す Melissa Golden for The Wall Street Journal 彼女の給与の大半は、交際費や旅行などに消えた。中米旅行、南カリフォルニアでの結婚式、テキサス州オースティンでのバチェロレッテ・パーティー(花嫁の女友達が祝うパーティー)などへの費用だ。 これとは逆の兆候、つまり貯蓄率がプラスを続けるかもしれない兆候はかつて存在していた。ムーディーズによれば、リセッション後、2009年には35歳未満の貯蓄率は5.2%に上昇し、35〜44歳の世代のそれをも一時的に上回っていた。 貯蓄の欠如から生じる問題は、今後長い間、影響をもたらすだろう。貯蓄しない人々は将来、金持ちになる公算がほとんどない。ミレニアル世代の大多数が貯蓄できないか、あるいは貯蓄する選択もできないならば、富の不平等への米国人の懸念は続くだろう。 若い世帯の富は、所得以上に減少している。それ以前の世代をみると、1995年に35歳未満だった米国人(ベビーブーム後の1960、70年代に生まれた世代で、しばしば「ゼネレーションX」と呼ばれる)の得ていた賃金は、インフレ調整後で今日の若年世代よりも9%多かった。FRB統計によれば、現在、平均的なミレニアル世代の純資産は1万0400ドル(約120万円)で、ゼネレーションXの1万8200ドルを42%も下回っているという。 http://jp.wsj.com/articles/SB12342273157179233952604580267703357724966#printMode
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