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(回答先: オーストラリア人記者が“改心”告白：「日本よ、欧米に屈せず捕鯨文化を守れ」 投稿者 あっしら 日時 2014 年 5 月 01 日 03:51:40)
［真相深層］日本、曖昧な捕鯨戦略
国際司法裁で敗訴、「調査」認められず 「商業」再開にも壁
日本の南極海での調査捕鯨に国際司法裁判所（ＩＣＪ）が「ノー」を突きつけてから半月余り。林芳正農相は４月18日、商業捕鯨の再開を目指す姿勢を改めて強調した。クジラの資源が潤沢なことは科学的に証明されている。理を通すなら、反捕鯨国を相手に商業捕鯨の再開を求めて訴訟を起こす選択肢もあるが、日本の戦略は曖昧なまま。クジラを巡る対立はもはや別次元の問題へと漂流している。
捕獲枠と乖離
反捕鯨国のオーストラリアが日本を訴えた今回の裁判。「日本の調査捕鯨は純粋に科学目的といえず、日本政府はこれ以上の許可を出さないよう命じる」。３月31日、国際司法裁判所が出した判決文の骨子はこのようなものだった。
資源管理機関の国際捕鯨委員会（ＩＷＣ）は1982年、資源の減少懸念を理由に商業捕鯨の一時中断（モラトリアム）を決めた。ノルウェーやアイスランドはこの決定に異議を唱え、商業捕鯨を続ける道を選んだ。日本は反捕鯨の米国の意向を尊重し「調査」として南極海と日本沿岸を含めた北西太平洋で捕鯨を続けることになった。調査するのは最大で年間50億円以上の補助金を受ける日本鯨類研究所など。捕れたクジラの肉は副産物として売り、費用回収に充てている。
国際司法裁判所が日本の調査捕鯨に疑義を呈した根拠のひとつが捕獲枠と捕獲数の乖離（かいり）だ。日本は調査に必要な数量として南極海で年間1035頭の捕獲枠を設けているが、近年は３割も捕っていない。それも大半はミンククジラで、鯨種間の関連性を調べるのに必要としてきた他の品種はゼロに近い。
鯨肉はピーク時、年間消費量を上回る４千〜５千トンの在庫を抱えていた。日本は過激な反捕鯨団体「シー・シェパード」の執拗な妨害が捕獲が減っている理由だと主張したが、聞き入れられなかった。かつて水産庁で捕鯨問題を担当した国際東アジア研究センターの小松正之客員主席研究員は「日本の捕獲減少はシー・シェパードの妨害の前から始まっていた。国際司法裁判所は日本が在庫調整のため、シー・シェパードを口実に捕獲を減らしたと判断したのだろう」とみる。
判決は南極海が対象だが、日本は北西太平洋でも捕獲枠をとり切ってこなかった。今後、反捕鯨国が訴訟を起こせば同海域の操業も差し止めを命じられる可能性がある。
国際捕鯨委の基盤をなす国際捕鯨取り締まり条約（ＩＣＲＷ）は「鯨類資源の持続可能な利用」をうたっており、90年までには資源評価を踏まえて商業捕鯨の再開を検討することになっていた。「現在のクジラ資源が回復したことは科学者の合意事項」（東京海洋大学大学院の加藤秀弘教授）だ。科学を無視し見直しを拒み続けている反捕鯨国は条約に反しているともいえる。
需要5000トン足らず
だが商業捕鯨再開に対する日本の本気度も定かではない。商業捕鯨では調査のような税金投入ができなくなる。日本水産などかつて捕鯨を手がけた水産会社は今や国際企業だ。国内の年間需要が５千トン未満で、海外からの反発も強い捕鯨を再開する利点は少ない。東海大学海洋学部の大久保彩子講師は「商業捕鯨が認められれば日本の捕鯨は消える可能性がある」と指摘する。
豪州や米国などの反捕鯨国もかつては鯨油目当ての漁を大々的に行っていた。70年ごろから声高に反捕鯨を唱えるようになった背景には、有権者の支持を得やすい環境保護を旗印にしたいという政治的な思惑や、石油によって鯨油が不要になったという極めて実利的な理由がある。豪州ではホエールウオッチングが一大観光産業でもあり、シー・シェパードは日本の捕鯨を妨害することで多額の寄付金を得ている。
加藤教授は「科学や資源以外の多くの要素がクジラの問題には付きまとっている」と話す。反捕鯨国の主張の大筋は「理」ではなく「利」に基づくものである。その是非はおくとして、日本はよって立つ「理」が曖昧で批判すべき反捕鯨国の「利」を崩せなかった。水産庁ＯＢはこぼす。「日本は何を目指して戦ったのだろうか」
（吉野浩一郎）
［日経新聞５月１日朝刊Ｐ．２］
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