http://www.asyura2.com/14/iryo4/msg/887.html
Tweet |
これが本当の「ガン10年生存率」だ 〜部位別・年齢別に一覧表にまとめました
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48385
2016年04月17日(日) 週刊現代 :現代ビジネス
国民病と言われて久しい、がん。治療の甲斐あって治った人の割合は、どれほどなのか。その新指標となる「10年生存率」が公表された。だが報道された数字だけでは本当に知りたい情報は分からない。
■「残された命」を知りたい
〈部位別の10年生存率は▽食道29・7%▽胃69・0%▽大腸69・8%▽肝臓15・3%▽肺33・2%……〉
今年1月末、こんな数字が新聞各紙の紙面に躍った。全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が、1999年から2002年までにがんと診断された約3万5000人を追跡調査し、日本で初めて集計・公表した、がんの「10年生存率」だ。
日本では2人に1人がかかる国民病、がん。男性では3人に1人、女性では4人に1人が、がんで命を落とすとされる。
胃、肺、肝臓など、さまざまな部位で発生するがんだが、実際にがんにかかってしまったら、どのくらいの割合で治るのかは、患者本人やその家族に限らず、私たち国民の多くの関心事だ。
東京医科歯科大学特任教授で、光仁会第一病院院長の杉原健一医師は、こう解説する。
「実は、これまでにも『5年生存率』が集計・公表され、医療の現場では一つの目安と見なされてきました。これは『診断から5年経って生存している人の割合』であり、治療の結果、再発もなく生存して5年が経てば、『まず、がんが治ったと考えていいだろう』ということです」
ではなぜ、5年ではなく10年での生存率が、新たに公表されることになったのか。
その背景には、新しい抗がん剤の登場などによって、再発しても長期間生存できる技術が普及しはじめたことがある、と杉原医師は指摘する。
「再発しても5年以上、生存する方が増えてきた。そうなると5年生存率の『治った』と判断する指標としての意味が揺らいできます。新たな指標として何年分の生存率がいいのかは、まだ医学界でも定まっていませんが、今回は初めて10年生存率までのデータが公表されたということなのです」
■これがあなたの数値だ
医療技術の進歩によって、長く闘いつづけ、生還を勝ち取ることもできるようになった、がん。だからこそ10年生存率に、いま注目が集まっている。
だが、新聞やテレビで報道された数字と、実際のデータを見比べると、あることに気づく。
たとえば、冒頭にあげた胃がんの「69・0%」という10年生存率。これには、どんな人の10年生存率を示しているのか、何の説明もついていない。つまり、この数字は、患者の年代も性別も度外視して、15歳から94歳までデータの取れた男女すべてで計算された10年生存率なのだ。
だが、考えてみてほしい。「若い人のほうが、がんの進行が速いらしい」とか「男性の方が女性よりがんになりやすい」など、がんをめぐっては年代や性別による傾向の違いが、世間でも人の口にのぼっている。ならばすべての患者でザックリと計算された数字では、それが自分にも当てはまるものなのか不安になるのは当然だろう。
本当に知りたいのは、自分の年代・性別で、そのがんにかかったと診断されたら、どれくらいの割合で治るのか、という情報のはずだ。
そこで本誌は、公表されたデータを詳細に解析。男性のがん死亡数で上位4位までを占める、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がんについて、男女の40~70代での5年生存率と10年生存率を表にまとめた。
まずは、表の見方だ。たとえば「友人は俺と同じ54歳だが、肺がんと診断されたそうだ」という場合。右の肺がんの表で、「50代」「男性」の「全期計」という生存率を見てほしい。10年生存率は33・1%だ。
さらに詳しく知るためには、友人が診断で肺がんの第何ステージと宣告されたかが重要になる。その下のT~Wの数字を見てほしい。ステージTなら10年生存率は72・6%だが、ステージUでは37・4%、ステージVになると23・4%と、生存率が大幅に下がっていくことが分かる。「全期計」の生存率は、そのすべての例をまとめて計算した数字に過ぎない。
もちろん、がんが進行しており、ステージVを超えていれば、事態は深刻だ。だが逆にステージTであれば7割以上の人は10年を超えて生きることができる。ここには大きな落差がある。
冒頭にあげたような、男女の性別さえ混ぜ合わせて算出された「肺がんの10年生存率33・2%」といった数字はあまりに大ざっぱで、大した意味を持たないことが、お分かりいただけただろう。
ステージによって大きく変わる10年生存率。前出の杉原医師はさらに、こう指摘する。
「今回のデータを、がん患者でない方々、健康な人にもぜひ見てもらいたいのは、『ステージが早い段階なら、がんの多くが治っていて10年以上生きられる』ということを確認できるからです。
たとえば、胃がんであれば、60代男性のステージTでの5年生存率が97・6%、10年生存率が94・1%ですから、早期に見つかれば年齢にかかわらずほとんど治ると言っていい。そのためにも、自分は健康だと思っている人にもぜひがん検診を受けてほしいのです」
年代や性別ごとのデータを細かく集め、表にしてみることで、より深くがんの傾向について知ることもできる。
たとえば、肺がんの表を見ると、どの年代でもおおむね、男性に比べて女性の10年生存率が高いことが分かる。次ページに掲載した大腸がんでも同様に女性のほうが10年生存率は高い傾向にある。
このことは、肺がんや大腸がんについては、女性のほうが治る人が多いことを示している。ちなみに、女性のがんでの死亡者数は1位が大腸がん、2位が肺がんだ。にもかかわらず、生還する人が多いことは、女性の生命力の強さを物語っていると言える。
さらに衝撃的な事実もデータから浮かび上がってくる。次ページの大腸がんの表と、肝臓がんの表を見てほしい。
見比べてもらいたいのは、表の色合いだ。肝臓がんの表のほうが、全体的に黒っぽいことが分かるだろう。
今回は表中の数字を20%ごとに色分けしているが、生存率が低くなるほど色を濃くしている。つまり肝臓がんの表の色が濃いということは、それだけ肝臓がんの生存率が低いことを表している。
男性のがんの死亡者数順位で見ると、大腸がんが第3位であり、肝臓がんは第4位となるが、データが指し示すのは、肝臓がんが「かかる人は比較的少ないが、かかってしまうと死亡する割合が高い」という事実だ。
さらに、肝臓がんの表で5年生存率と10年生存率を比較してみると、他のがんには見られない、このがんの危険な特徴を知ることもできる。
肝臓がんの表中の、各年代の5年生存率と10年生存率を比べてみてほしい。50代の男性で、ステージTの肝臓がんと診断された人の場合、5年生存率は62・0%。約6割の人が5年は生き延びるということになる。ところが10年生存率になると、27・8%に急落してしまう。これは、たとえば大腸がんで同じ50代男性、ステージTと診断された人の5年生存率(98・8%)と10年生存率(97・4%)がほとんど変わらないのとは大違いだ。
前述の通り、これまで多くのがんでは、「再発もなく5年間、生き延びれば、がんが治ったと考えていい」と思われていた。ところが、肝臓がんは5年を過ぎてから再び暴れ出し、命を脅かすことがあることが、10年生存率と比較することではっきりと分かるのだ。
なぜ、肝臓がんは10年経ってもリスキーなのだろうか。それは、肝臓がんの主な原因の一つである肝炎ウイルスを駆除しきれず、がんの治療を行ったあとも、再び肝臓が攻撃され、がんが再発するケースが多いためだと考えられるという。
新しい事実をさまざまに読み解くことができるがんの10年生存率。
厳しい数字を突きつけられることもあるが、「絶望することはない」と前出の杉原医師は語る。
「今回の10年生存率のデータは、あくまで1999年から2002年に診断、治療を行った約3万5000人の症例を集計したものです。全がん協もホームページで注記していますが、それからすでに14年が経っていて、その間にがんの治療技術も格段に進んでいます。ですから、ここに出ている数値を見て、悲観する必要はないのです」
がんの治療技術は日進月歩だ。10年間の追跡調査を行うためには、必然的に10年前までに診断、治療を受けた人の「その後」を追うしかない。となれば、いま「がんです」と診断を受けた人やこれからがんが見つかる人については、この10年生存率が示す割合よりも、さらに高い確率で病を克服し、10年後も生き延びる可能性が高いのだ。
さらに、新潟大学名誉教授で水野記念病院理事の岡田正彦医師は、今回の10年生存率は、まだまだブラッシュアップされていくだろうと指摘する。
「今回の10年生存率は、築地にある国立がん研究センターを頂点とする全国のがん関係の公立病院、各県立がんセンターのデータを集めたものです。それは一つの成果であり、大きな進歩で、とてもよかったと思います。ただし、これはあくまで国立がん研究センターを頂点とする関係医療機関で登録されたデータによる統計なのです。
欧米の多くの国では『がん登録』というものがあって、50年ほど前から全国民のがんのデータを収集してきました。それに対して、日本は先進国でありながら、『がん登録』が義務付けられたのは今年の1月1日から。やっと全国規模で一括管理されるシステムが動き出したところなのです。
今回公表されたデータは大きな一歩ですが、やがて発表される『がん登録』によるビッグデータの統計は、さらに日本のがんの実態に即したものになっていくでしょう」
今後ますます精密になり、重要性を増していくがんの「10年生存率」。あなたが本当に知りたい情報にたどり着くためには、年齢や性別、がんのステージなど、自分の条件にあった数値を見ることが大切なのだ。
「週刊現代」2016年4月16日号より
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。