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認知症 抗精神病薬“慎重な投与が必要”[NHK]
4月11日 19時21分
認知症に伴う幻覚などの症状が現れたときに投与される「抗精神病薬」について、初めて投与された高齢者は、全く投与されていない人に比べ死亡率が2倍以上高くなったことが順天堂大学の研究グループの調査で分かりました。研究グループは「リスクを医療者や家族が把握し慎重に薬を使うことが必要だ」と指摘しています。
抗精神病薬は、BPSDと呼ばれる認知症に伴う幻覚などの症状が現れたときに投与されるもので、調査は平成24年から25年にかけて、順天堂大学の研究グループが全国357の医療機関でアルツハイマー型認知症の高齢者合わせておよそ1万人を対象に行いました。
まず、調査の開始時点で、すでに抗精神病薬の投与が続けられていたグループの4800人余りと、全く投与されていないグループの4800人余りについて半年後の死亡率を比較したところ、ほとんど差はありませんでした。
ところが、調査の期間中に初めて薬を投与された85人について、全く投与されていないグループと比べると、半年後の死亡率が2.53倍高くなったことが分かりました。肺炎や心不全で死亡した人が多く、薬を飲み始めてから2か月から半年の間に死亡率が高くなる傾向がみられたということです。
研究グループの代表で順天堂大学の新井平伊教授は、調査によって薬を使い始めるときのコントロールの重要性が明らかになったとしたうえで、「リスクを医療者や家族が把握し慎重に薬を使うことが必要で、どうしても使わざるをえない場合は少量で短期間が望ましい」と指摘しています。
抗精神病薬を巡ってはNHKが去年、認知症の専門医を対象に行ったアンケート調査で、寝たきり状態になるなどの重い副作用が出ていたケースがあることが分かっています。アメリカでは死亡率を高めるとして使用を控えるよう警告が出されていて、日本でも薬の使用に関するガイドラインが見直され長期間の使用を避けるなど医師に対し、慎重に投与するよう求めています。
BPSDとは
認知症に伴って、BPSDと呼ばれる幻覚や妄想などの心理症状やはいかい、それに攻撃的になるなどの症状が出ることがあります。BPSDは、必要な介護サービスを利用したり、家族の対応のしかたを変えたりすることなどで改善する場合もあります。しかし、介護の現場では家族などの負担も大きいことから症状を安定させるために抗精神病薬などの精神科の薬が使用されているのが実態です。
認知症の高齢者への抗精神病薬の投与について、アメリカでは11年前(2005年)、死亡率が1.7倍程度高くなったとして使用を控えるよう警告が出されています。日本では厚生労働省の研究班が薬の使用に関するガイドラインを見直し、基本的にはBPSDの治療に抗精神病薬などは使用しないとしたうえ、やむを得ず使用する場合は少量で始め、長期の使用は避けるなど医師に対し慎重な投与を求めています。
副作用が出た女性は
抗精神病薬の副作用で食事がとれなくなり寝たきり状態になった女性もいます。
6年前、認知症と診断され、都内のグループホームで暮らす82歳の女性です。おととし1月、妄想やグループホームの職員への暴言が激しくなったりするなどBPSDの症状が現れるようになりました。対応に困った職員が医師に相談したところ、抗精神病薬が処方されました。
女性はおよそ1か月間薬を飲み続けた結果、妄想や暴言などの症状は治まりましたが、薬の副作用で姿勢が傾いて転びやすくなったほか飲み込む力が低下し食事をとることもままならなくなりました。日中もほぼ寝たきりの状態になり異変を感じた家族や職員が医師に相談し、薬の服用を中止しました。その後、女性の状態は徐々に回復し、再び食事や散歩ができるようになりました。
女性の長女は「抗精神病薬を飲み始め急に状態が悪くなり驚きました。あのまま薬を飲み続けていたら今頃どうなっていたんだろうと怖くなります。母が好きなものを食べたり、散歩したり、自分らしく生活させてあげたいです」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160411/k10010475321000.html?utm_int=news_contents_news-main_004
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